ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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16巻の話突入です。
それではよろしくお願いします。


魔術祭典編第5話

「ん〜…寝たぁ…」

 

昨夜の死闘から一夜明け、俺は見事に爆睡していた。

気づいたらホテルにいた俺は、イヴ先生に、睡眠時間を凝縮する魔術をかけてもらい、実際には、3時間くらいしか寝てないが、9時間分ぐらいは寝た充実感がある。

つまり、何とか間に合ったという事だ。

 

「さてと…腹減ったな」

 

とりあえず、腹ごなしだな。

そう思い、俺は特設食堂に向かった。

 

「何にしようかな?」

 

ここは関係者の共用スペースで、俺達関係者はタダで使用出来る施設だ。

徹底的な監視の下にいるので、当然不正は不可能だ。

しかもバイキング形式なので、選びたい放題。

昨夜の件で、かなり消耗したのだろう。

とにかく腹が減って仕方ない。

そう考えながら、バクバクと食べ進めていると

 

「こんにちは、アルタイル君」

 

ふと声をかけられる。

顔を上げると、そこには日輪の国のサクヤが、トレーを持って立っていた。

 

「サクヤ?どうしたんだ?」

 

「なにかお腹に入れようと思ったのですが…。貴方はよく食べるのですね。ご一緒しても?」

 

彼女のトレーには、軽食が少しだけ乗っている。

まあ、次試合だしな…腹いっぱい過ぎるのも考えものなのだろう。

…というか、腹ぺこキャラっていうか、大食いキャラだと思われてね?

 

「どうぞ。昨日の夜、ちょっとバタついてな。さっきまで精も根も尽き果ててたから、腹減って仕方ねぇの」

 

「なるほど…普段からそうという訳では、ないのですね」

 

「普段は、普通の量だぞ?」

 

そう話しながらも、俺は食う手を止めない。

 

「ふふ、これから戦う相手を前に、態度を変えないのですね」

 

何を言うかと思えば、変な事を。

 

「別に恨み辛みで戦う訳じゃないんだから、変に構える必要もなくない?ま、お互い清く正しく戦おうか。…ご馳走様でしたっと!」

 

そう言って、俺は手を合わせる。

その時、突然ガヤガヤとした連中が入ってくる。

 

「ん?…ってうちじゃん。悪ぃな、何時でも何処でも騒がしくて」

 

「ふふ、気にしないでください。仲良さそうでいいじゃないですか」

 

そう言いながら、お互いのんびりしていると、

 

「サクヤはん…()()()()()()()()()

 

突然、とんでもないカミングアウトが聞こえた。

声の方を向くと、サクヤに似た服を着た男が、システィ達と話していた。

 

「ッ!?サクヤ…本当か?」

 

「…ええ」

 

マシかよ…やりにくいな。

もちろん手を抜く気は無いが、加減はしないと、最悪殺しちまう。

 

「…アルタイル君。もし手を抜こうとか、考えていたら…許しませんよ」

 

そう強く睨み付けてくるその目は、絶対に譲れない覚悟が見えた。

 

「もちろん、()()()()()()()()。だが、お前がどう思おうが、俺はお前を殺したくは無い。だから…()()()()()()()()()。そこは了承してくれ」

 

「…分かりました。そこは我慢します。ですから…必ず、手を抜かないでください」

 

俺は黙って頷いたのを確認してから、サクヤは男の方に向かい、強引に引っ張り出して行った。

俺はそのまま皆に近付き、声をかける。

 

「厄介な奴らだな。日輪の国は」

 

「アイル!?いつの間に!?」

 

「ずっとここで飯食ってた。さてと…分かってるな、システィ。お前は俺達を引っ張っていく立場だ。変な同情とかは捨てとけよ」

 

「う、うん!分かってるわよ!」

 

その妙な空元気に、密かにため息をつく。

 

(このバカ…この期に及んで…甘ったるい事を…。しかもあの細目、厄介なものを刺しやがったな)

 

ふと先生を見ると、先生も険しい顔をしている。

お互い懸念は同じらしい。

だが、口は挟めない。

これは…システィ自身の問題だがら。

 

 

 

「アルタイルはんは、なんて言っとんたんや?」

 

細目の少年【シグレ=ススキナ】は、サクヤにそう問いかける。

 

「…手は抜かないけど、加減はすると。私がどう思ってようが、殺したくは無いから。だそうですよ」

 

その答えを聞いて、シグレは頭に手を当てる。

 

「カ〜!それは何とも我儘な事やな〜!」

 

(やっぱりや。アルタイルはんには全く効かん)

 

シグレは内心、その精神的タフさに呆れていた。

あそこまで言われたら、気にするのは当たり前。

しかし、アルタイルは気にはしていたが、叩き潰す前提で、話を進めていた。

 

(まあええ。このわいが、一世一代の大番狂わせを演出したるわ!)

 

様々な思惑が交錯する中、ついにアルザーノ帝国VS日輪の国の試合が始まった。

 

 

 

次のステージは、深い樹林だ。

 

「さて、改めてルール確認だ。今回は【ライン攻防戦】。古い歴史を汲む方式だ」

 

・西と東に別れて、それぞれ陣取る。

・防衛ラインを超えれば、1ポイント。

・次のセットは攻守入れ替えて、同じ事をする。

・都合12セット行い、ポイントが高い方の勝ち。

・攻守関係無く、魔術、武器、素手問わず直接攻撃はあり。

・倒れても回復タイム内に、復活すれば続行可。

・復活出来ない場合、サブ・ウィザードは脱落。メイン・ウィザードは、その時点で試合終了。

 

「ざっと、こんなもんか。さてと、どうするよリーダー?」

 

システィはしばらく考え込み、尋ねてくる。

 

「アイル、レヴィン。ラインに断絶結界張れる?」

 

「んー…。出来なくはない。だが、オススメしないな」

 

「ええ、そうですね。ここは非常に魔力が分散しやすくなってるようですね。精々、軽い足止め程度。悪手かと」

 

俺達は揃ってその作戦は否定する。

 

「下手に穴熊決めるより、前に出た方がいい。常に攻めるつもりで。相手の陣地でやりあった方がいい」

 

俺は代替案を提案する。

下がりすぎて守ると、案外余裕が無くなる。

それよりも、しっかりとマージンをとり、プレッシャーを与えていった方が、相手もやりにくい。

 

「…そうね。中央、右翼、左翼の3エリアに分けて、【三人一組:一戦術単位】で行きましょう。リーダーはそれぞれ、レヴィン、リゼ先輩、アイル」

 

「ま、妥当ですね」

 

「拝命しましたわ」

 

「了解」

 

「メンバーは、ハインケルとマリアは中央、フランシーヌとコレットは右翼、ジャイル君とジニーは左翼よ。私は、全体指揮と最終防衛ラインを担当するわ」

 

作戦会議は終了し、しっかり頷きあってから、システィが宣言する。

 

「…よし、行くわよ。皆、絶対に勝とう!」

 

 

 

「『水霊爆紗』!」

 

「『雷火清浄』!」

 

「『急急如律令』!」

 

「ほう、それは我々で言う【同調詠唱(シンクロ)】の発展系ですね。ですが…分解した頂きました」

 

「『雷精の紫電よ』!『行け』!『もういっちょう』!」

 

「『紅蓮の獅子よ・憤怒のままに・吼え狂え』!」

 

レヴィン率いる中央隊は、抜群の安定感をみせ

 

「『太乙神数・奇門遁甲・六壬神課』!」

 

「爆砕符!」

 

「出でよ、我が下僕!」

 

「させませんわ!」

 

「おぉぉぉぉぉ!」

 

「後輩達の手前、ここは通しませんわ」

 

リゼ率いる右翼隊は、戦の上手さで翻弄し

 

〖ガアァァァァァァァァァ!!!〗

 

「鬼と打ち合う…だと…!?人間か、アイツ!?」

 

「ええい!鬼式をもっと呼べ!数で圧殺だ!」

 

「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ま、お互いテキトーにやりましょう?」

 

「ほらよ、かっ飛ばせ、ジャイル」

 

アルタイル率いる左翼隊は、力で圧倒する。

各戦場で帝国優勢で進めるそんな中、ついに日輪の国、サクヤが仕掛ける。

 

 

「ッ!?これは…俺のマリオネットみたいなものか!」

 

俺は直ぐに、相手が打ってきた手を見抜いた。

これは、自身と寸分違わない実力を持った分身。

 

⦅全員、前線を下げつつ後退!!!こんな大掛かりな術、アイルのマリオネット以外、長くは持たない!防御と回避に専念、分身体は抜かさせてもよし!そっちは私が対応する!⦆

 

システィの一喝が響く。

…いい判断だ。

 

⦅了解。ちなみに、左に本体はいないぞ。ここを抜くには、リスクがデカすぎる⦆

 

⦅分かってる。私もそこは最初から外してたから。本体は…そこよ!⦆

 

そういって少ししてから、右翼の方から、戦闘音が聞こえる。

…あっちにいたのか、サクヤ。

 

「ジャイル!ジニー!深追いしない範囲で蹴散らすぞ!」

 

「りょ〜かい〜」

 

「うおりゃァァァ!!」

 

そのまま俺達は抑えつつ、右翼後方では、システィと、サクヤの一騎打ちが始まる。

時間いっぱい何とか防ぎ切り、無事初戦は無失点で抑えた。

 

「お疲れ、システィ。よく抑えたな」

 

「ありがとう。流石に強いわよサクヤさん。世界は広いなぁ…。さて、次は私達の番よ!基本はさっきと似たような感じ。でも、中央と右翼間でギャップを作って。そこを私が一気に駆け抜けるわ!」

 

システィの作戦を聞いて、俺達は頷く。

 

「よし!行こう!」

 

こうして俺達の攻勢が始まった。

 

 

「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ふっ!!」

 

ジャイルと、女子生徒が衝突する。

さっきまでとは、別の生徒だ。

それはともかく、さっきからジャイルの動きが読まれてる。

恐らくあの頭の上の変なやつだろうな。

あれが所謂【式占】とやらか。

 

「チッ…。やりにきぃな…」

 

「そういうものよ。あの女が異常なのよ」

 

恐らく、右翼側と入れ替わったのだろう。

となると…少しマズイか?

 

「このまま式神で…!」

 

おっとそれはマズイな。

 

「させませんよ」

 

「『吠えろ炎獅子』」

 

ジニーのクナイと、俺の【ブレイズ・バースト】が炸裂。

何とか均衡を保っている。

しかし右翼側では

 

 

「くぅぅぅ!?」

 

「リゼの姐さん!ウォォォォォ!!」

 

「マルアハ!行って!」

 

左翼側にいたチームの鬼の式神に苦戦していた。

全体より少しずつ、差がつき始めてしまっていた。

 

「よし!このまま…!」

 

「そうは行かないわよ!」

 

しかし、その差こそが帝国側の狙い。

その生じたギャップ差を狙って、システィーナが一気に突破する。

 

「しまった!今すぐ…!」

 

「行かませんわよ?」

 

すぐに後を追う日輪の国の生徒を、フランシーヌのマルアハが、足止めする。

 

「せっかくですもの、もっと一緒に踊りましょう?」

 

そう言ってリゼは優雅にレイピアを突きつけるのだった。

しかし、突貫したシスティーナの動きをサクヤが察知。

何重にも張られた結界に阻まれたシスティーナは、ギリギリで間に合わず、得点失敗。

 

 

次のターンでは、日輪の国側が、式神を用いた物量戦に出た。

システィーナやレヴィン達が、広域魔術で抑えている為、場が混沌と化す。

その間にサクヤが空間転移で一気に近づいたが、高台を占拠したアルタイルの1000メトラ級の魔術狙撃によって、足を撃たれたサクヤは身動きが取れず、得点失敗。

 

 

次のターンでは、帝国側が、中央突破の電撃作戦を敢行。

システィーナを筆頭に、ジャイル、リゼ、フランシーヌ、コレットら突破力に優れたメンバーで、一気に攻め入った。

しかし、サクヤによる空間操作の術が発動。

同じところを何周もさせられてたが、それを傍から見ていて気付いたアルタイルが、その隙を突いて一気にラインに接近。

【次元跳躍】で、システィーナを呼び出し、一気に攻め入ったが、咄嗟に発動された防御用の大鬼の式神、【虎熊】と【星熊】に阻まれ、得点失敗。

 

 

そのまま、一進一退の攻防が続く中、ついに第7セット前半、日輪の国の攻撃の時、試合が動いた。

 

 

魔術の打ち合いをする最中、突然サクヤが胸を抑え、膝を着く。

 

「カハッ…!ヒュー…ヒュー…!」

 

()()()()()()!()?()

 

その様子にシスティーナの手も止まってしまう。

 

(何してるの!私は魔術師…!こっちだって!)

 

システィーナが心を鬼にして、魔術を発動しようとした瞬間

 

(ねぇ…それでいいの?)

 

「え?」

 

再び手を止めてしまうシスティーナ。

 

(本当にいいの?サクヤさんを倒す大義や覚悟が、私にはなるの?何不自由なく過ごしてきた私が、家族を守る為に、病気を押して、ずっと苦労してきたサクヤさんを…倒していいの?それって本当に正しい事なの?)

 

「わ、私は…」

 

そしてその隙をついて

 

「が、『元柱固具(がんちゅうこしん)八遇八気(はちぐうはっけ)五陽五神(ごようごしん)陽動二衝厳神(おんみょうにしょうげんしん)害気を攘払し(がいきをゆずりはらいし)四柱神を鎮護し(しちゅうしんをちんごし)五神開衞(ごしんかんえい)悪鬼を逐い(あっきをはらい )鬼道霊光四隅に衝徹し(きどうれいこうよすみにしょうてつし)元柱固具(がんちゅうこしん)安鎮を得んことを(あんちんをえんことを)慎みて我(つつしみてわれ)五陽霊神に願い奉る(ごようれいじんにねがいたてまつる)!【布留部・由良由良止・布留部(ふるべ·ゆらゆらと·ふるべ)】』!!!」

 

十種神宝(とくさのかんだら)布瑠の言(ふるのこと)】。

帝国で言うところの【死霊魔術(ネクロマンシー)】のようなものだ。

死霊達がシスティーナの動きを拘束する。

 

「それでは…このセットは、頂きます」

 

そう言ってふらつきながらも、ラインを超えるサクヤ。

ついに、日輪の国が1ポイント獲得し、試合が大きく動き出した。




日輪の国の呪文難しい!
滅茶苦茶長いし複雑!
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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