それではよろしくお願いします。
「ん〜…寝たぁ…」
昨夜の死闘から一夜明け、俺は見事に爆睡していた。
気づいたらホテルにいた俺は、イヴ先生に、睡眠時間を凝縮する魔術をかけてもらい、実際には、3時間くらいしか寝てないが、9時間分ぐらいは寝た充実感がある。
つまり、何とか間に合ったという事だ。
「さてと…腹減ったな」
とりあえず、腹ごなしだな。
そう思い、俺は特設食堂に向かった。
「何にしようかな?」
ここは関係者の共用スペースで、俺達関係者はタダで使用出来る施設だ。
徹底的な監視の下にいるので、当然不正は不可能だ。
しかもバイキング形式なので、選びたい放題。
昨夜の件で、かなり消耗したのだろう。
とにかく腹が減って仕方ない。
そう考えながら、バクバクと食べ進めていると
「こんにちは、アルタイル君」
ふと声をかけられる。
顔を上げると、そこには日輪の国のサクヤが、トレーを持って立っていた。
「サクヤ?どうしたんだ?」
「なにかお腹に入れようと思ったのですが…。貴方はよく食べるのですね。ご一緒しても?」
彼女のトレーには、軽食が少しだけ乗っている。
まあ、次試合だしな…腹いっぱい過ぎるのも考えものなのだろう。
…というか、腹ぺこキャラっていうか、大食いキャラだと思われてね?
「どうぞ。昨日の夜、ちょっとバタついてな。さっきまで精も根も尽き果ててたから、腹減って仕方ねぇの」
「なるほど…普段からそうという訳では、ないのですね」
「普段は、普通の量だぞ?」
そう話しながらも、俺は食う手を止めない。
「ふふ、これから戦う相手を前に、態度を変えないのですね」
何を言うかと思えば、変な事を。
「別に恨み辛みで戦う訳じゃないんだから、変に構える必要もなくない?ま、お互い清く正しく戦おうか。…ご馳走様でしたっと!」
そう言って、俺は手を合わせる。
その時、突然ガヤガヤとした連中が入ってくる。
「ん?…ってうちじゃん。悪ぃな、何時でも何処でも騒がしくて」
「ふふ、気にしないでください。仲良さそうでいいじゃないですか」
そう言いながら、お互いのんびりしていると、
「サクヤはん…
突然、とんでもないカミングアウトが聞こえた。
声の方を向くと、サクヤに似た服を着た男が、システィ達と話していた。
「ッ!?サクヤ…本当か?」
「…ええ」
マシかよ…やりにくいな。
もちろん手を抜く気は無いが、加減はしないと、最悪殺しちまう。
「…アルタイル君。もし手を抜こうとか、考えていたら…許しませんよ」
そう強く睨み付けてくるその目は、絶対に譲れない覚悟が見えた。
「もちろん、
「…分かりました。そこは我慢します。ですから…必ず、手を抜かないでください」
俺は黙って頷いたのを確認してから、サクヤは男の方に向かい、強引に引っ張り出して行った。
俺はそのまま皆に近付き、声をかける。
「厄介な奴らだな。日輪の国は」
「アイル!?いつの間に!?」
「ずっとここで飯食ってた。さてと…分かってるな、システィ。お前は俺達を引っ張っていく立場だ。変な同情とかは捨てとけよ」
「う、うん!分かってるわよ!」
その妙な空元気に、密かにため息をつく。
(このバカ…この期に及んで…甘ったるい事を…。しかもあの細目、厄介なものを刺しやがったな)
ふと先生を見ると、先生も険しい顔をしている。
お互い懸念は同じらしい。
だが、口は挟めない。
これは…システィ自身の問題だがら。
「アルタイルはんは、なんて言っとんたんや?」
細目の少年【シグレ=ススキナ】は、サクヤにそう問いかける。
「…手は抜かないけど、加減はすると。私がどう思ってようが、殺したくは無いから。だそうですよ」
その答えを聞いて、シグレは頭に手を当てる。
「カ〜!それは何とも我儘な事やな〜!」
(やっぱりや。アルタイルはんには全く効かん)
シグレは内心、その精神的タフさに呆れていた。
あそこまで言われたら、気にするのは当たり前。
しかし、アルタイルは気にはしていたが、叩き潰す前提で、話を進めていた。
(まあええ。このわいが、一世一代の大番狂わせを演出したるわ!)
様々な思惑が交錯する中、ついにアルザーノ帝国VS日輪の国の試合が始まった。
次のステージは、深い樹林だ。
「さて、改めてルール確認だ。今回は【ライン攻防戦】。古い歴史を汲む方式だ」
・西と東に別れて、それぞれ陣取る。
・防衛ラインを超えれば、1ポイント。
・次のセットは攻守入れ替えて、同じ事をする。
・都合12セット行い、ポイントが高い方の勝ち。
・攻守関係無く、魔術、武器、素手問わず直接攻撃はあり。
・倒れても回復タイム内に、復活すれば続行可。
・復活出来ない場合、サブ・ウィザードは脱落。メイン・ウィザードは、その時点で試合終了。
「ざっと、こんなもんか。さてと、どうするよリーダー?」
システィはしばらく考え込み、尋ねてくる。
「アイル、レヴィン。ラインに断絶結界張れる?」
「んー…。出来なくはない。だが、オススメしないな」
「ええ、そうですね。ここは非常に魔力が分散しやすくなってるようですね。精々、軽い足止め程度。悪手かと」
俺達は揃ってその作戦は否定する。
「下手に穴熊決めるより、前に出た方がいい。常に攻めるつもりで。相手の陣地でやりあった方がいい」
俺は代替案を提案する。
下がりすぎて守ると、案外余裕が無くなる。
それよりも、しっかりとマージンをとり、プレッシャーを与えていった方が、相手もやりにくい。
「…そうね。中央、右翼、左翼の3エリアに分けて、【三人一組:一戦術単位】で行きましょう。リーダーはそれぞれ、レヴィン、リゼ先輩、アイル」
「ま、妥当ですね」
「拝命しましたわ」
「了解」
「メンバーは、ハインケルとマリアは中央、フランシーヌとコレットは右翼、ジャイル君とジニーは左翼よ。私は、全体指揮と最終防衛ラインを担当するわ」
作戦会議は終了し、しっかり頷きあってから、システィが宣言する。
「…よし、行くわよ。皆、絶対に勝とう!」
「『水霊爆紗』!」
「『雷火清浄』!」
「『急急如律令』!」
「ほう、それは我々で言う【
「『雷精の紫電よ』!『行け』!『もういっちょう』!」
「『紅蓮の獅子よ・憤怒のままに・吼え狂え』!」
レヴィン率いる中央隊は、抜群の安定感をみせ
「『太乙神数・奇門遁甲・六壬神課』!」
「爆砕符!」
「出でよ、我が下僕!」
「させませんわ!」
「おぉぉぉぉぉ!」
「後輩達の手前、ここは通しませんわ」
リゼ率いる右翼隊は、戦の上手さで翻弄し
〖ガアァァァァァァァァァ!!!〗
「鬼と打ち合う…だと…!?人間か、アイツ!?」
「ええい!鬼式をもっと呼べ!数で圧殺だ!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ま、お互いテキトーにやりましょう?」
「ほらよ、かっ飛ばせ、ジャイル」
アルタイル率いる左翼隊は、力で圧倒する。
各戦場で帝国優勢で進めるそんな中、ついに日輪の国、サクヤが仕掛ける。
「ッ!?これは…俺のマリオネットみたいなものか!」
俺は直ぐに、相手が打ってきた手を見抜いた。
これは、自身と寸分違わない実力を持った分身。
⦅全員、前線を下げつつ後退!!!こんな大掛かりな術、アイルのマリオネット以外、長くは持たない!防御と回避に専念、分身体は抜かさせてもよし!そっちは私が対応する!⦆
システィの一喝が響く。
…いい判断だ。
⦅了解。ちなみに、左に本体はいないぞ。ここを抜くには、リスクがデカすぎる⦆
⦅分かってる。私もそこは最初から外してたから。本体は…そこよ!⦆
そういって少ししてから、右翼の方から、戦闘音が聞こえる。
…あっちにいたのか、サクヤ。
「ジャイル!ジニー!深追いしない範囲で蹴散らすぞ!」
「りょ〜かい〜」
「うおりゃァァァ!!」
そのまま俺達は抑えつつ、右翼後方では、システィと、サクヤの一騎打ちが始まる。
時間いっぱい何とか防ぎ切り、無事初戦は無失点で抑えた。
「お疲れ、システィ。よく抑えたな」
「ありがとう。流石に強いわよサクヤさん。世界は広いなぁ…。さて、次は私達の番よ!基本はさっきと似たような感じ。でも、中央と右翼間でギャップを作って。そこを私が一気に駆け抜けるわ!」
システィの作戦を聞いて、俺達は頷く。
「よし!行こう!」
こうして俺達の攻勢が始まった。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ふっ!!」
ジャイルと、女子生徒が衝突する。
さっきまでとは、別の生徒だ。
それはともかく、さっきからジャイルの動きが読まれてる。
恐らくあの頭の上の変なやつだろうな。
あれが所謂【式占】とやらか。
「チッ…。やりにきぃな…」
「そういうものよ。あの女が異常なのよ」
恐らく、右翼側と入れ替わったのだろう。
となると…少しマズイか?
「このまま式神で…!」
おっとそれはマズイな。
「させませんよ」
「『吠えろ炎獅子』」
ジニーのクナイと、俺の【ブレイズ・バースト】が炸裂。
何とか均衡を保っている。
しかし右翼側では
「くぅぅぅ!?」
「リゼの姐さん!ウォォォォォ!!」
「マルアハ!行って!」
左翼側にいたチームの鬼の式神に苦戦していた。
全体より少しずつ、差がつき始めてしまっていた。
「よし!このまま…!」
「そうは行かないわよ!」
しかし、その差こそが帝国側の狙い。
その生じたギャップ差を狙って、システィーナが一気に突破する。
「しまった!今すぐ…!」
「行かませんわよ?」
すぐに後を追う日輪の国の生徒を、フランシーヌのマルアハが、足止めする。
「せっかくですもの、もっと一緒に踊りましょう?」
そう言ってリゼは優雅にレイピアを突きつけるのだった。
しかし、突貫したシスティーナの動きをサクヤが察知。
何重にも張られた結界に阻まれたシスティーナは、ギリギリで間に合わず、得点失敗。
次のターンでは、日輪の国側が、式神を用いた物量戦に出た。
システィーナやレヴィン達が、広域魔術で抑えている為、場が混沌と化す。
その間にサクヤが空間転移で一気に近づいたが、高台を占拠したアルタイルの1000メトラ級の魔術狙撃によって、足を撃たれたサクヤは身動きが取れず、得点失敗。
次のターンでは、帝国側が、中央突破の電撃作戦を敢行。
システィーナを筆頭に、ジャイル、リゼ、フランシーヌ、コレットら突破力に優れたメンバーで、一気に攻め入った。
しかし、サクヤによる空間操作の術が発動。
同じところを何周もさせられてたが、それを傍から見ていて気付いたアルタイルが、その隙を突いて一気にラインに接近。
【次元跳躍】で、システィーナを呼び出し、一気に攻め入ったが、咄嗟に発動された防御用の大鬼の式神、【虎熊】と【星熊】に阻まれ、得点失敗。
そのまま、一進一退の攻防が続く中、ついに第7セット前半、日輪の国の攻撃の時、試合が動いた。
魔術の打ち合いをする最中、突然サクヤが胸を抑え、膝を着く。
「カハッ…!ヒュー…ヒュー…!」
「
その様子にシスティーナの手も止まってしまう。
(何してるの!私は魔術師…!こっちだって!)
システィーナが心を鬼にして、魔術を発動しようとした瞬間
(ねぇ…それでいいの?)
「え?」
再び手を止めてしまうシスティーナ。
(本当にいいの?サクヤさんを倒す大義や覚悟が、私にはなるの?何不自由なく過ごしてきた私が、家族を守る為に、病気を押して、ずっと苦労してきたサクヤさんを…倒していいの?それって本当に正しい事なの?)
「わ、私は…」
そしてその隙をついて
「が、『
【
帝国で言うところの【
死霊達がシスティーナの動きを拘束する。
「それでは…このセットは、頂きます」
そう言ってふらつきながらも、ラインを超えるサクヤ。
ついに、日輪の国が1ポイント獲得し、試合が大きく動き出した。
日輪の国の呪文難しい!
滅茶苦茶長いし複雑!
それでは失礼します。
ありがとうございました。