システィーナがすごく成長しますよね。
それではよろしくお願いします。
「クソ…!」
1ポイント取られたか。
まあ、最終までに取り返せば…!
ん?システィの奴、様子が…まさか!?
「おい、システィ」
周りが励ます中、俺はただ淡々と睨む。
「ッ!?」
「おい、アイル!落ち着けよ!」
「そうですわよ!こういう事も!」
コレットとフランシーヌが間に入るが、俺はそれを無視して、じっと睨む。
別に怒ってる訳では無いんだが…。
しかし…はぁ、しっかり効いてんじゃねぇか。
「…まあいい。切り替えてくぞ」
そう言って切り上げたが、現実はそうは行かなかった。
俺達は、まずは1ポイント取り返す、そう意気込んで果敢に攻めたが、中々そうはいかなかった。
理由は簡単。
システィの絶不調だ。
しかも、サクヤとやり合う時は特に、精細さに欠けていた。
理由は分かる。
それは…【呪言】だ。
【呪言】とは、絶大なリスクと引き換えに、言葉だけで相手の行動を制限する。
ベガの言霊は、これを元とする、ほぼ
アイツ自身との相性もあり、かなり強力なものが使えるのだ。
おそらく、あっちの細目君の魔術だろう。
彼の実力的に、効力は大した事ないな。
彼が言った言葉を、自分の気持ちの代弁のように聞こえるようにする、といったところか?
そんな技、精神的にタフな奴…ルミアやジャイルのような奴には効かないだろう。
しかし、アイツはまだ弱いところがある。
そこを突かれたのだ。
『汝望まば、他者の望みを炉にくべよ』
アイツは、それを貫く為の覚悟を持っていない。
本来なら、手を貸してやるべきなんだろうが…
「どうにか出来なきゃ、その程度って事か」
たとえここで敗北しても、俺は手を貸さない。
「急成長のツケが来たわね」
「ツケ?」
イヴの言葉に、ルミアが不思議そうに首を傾げる。
その疑問に答えたのは、グレンだった。
「『汝望まば、他者の望みを炉にくべよ』。魔術師としての生き方を表した言葉だ」
「魔術師ってのはね、傲慢で我儘なの。自分の望みの為に、他者を蹴り落とせるか…そこが良くも悪くも、魔術師の本質よ。本来力と共にゆっくりと培っていく覚悟なんだけど…あの子の場合、優れた師、優れた環境、優れた戦闘経験、優れたライバル…あらゆるものが、良すぎたのよ」
そんなイヴの言葉に、ルミアは不思議に思う。
「でも、師匠や戦闘経験だったら、アイル君だって…」
「そこがキモなんだよ。アイツらは」
ルミアの話を切ったのは、グレンだった。
「アルタイルと白猫はちょうど
「一方のシスティーナは、先に実力が成長したのよ。彼女は、強敵には果敢に立ち向かえる覚悟と勇気を得られたけど、魔術師の陰惨な現実を受け入れるには…まだ未熟、甘いわ」
「システィ…」
グレンとイヴの言葉に、ルミアは思わず祈ってしまう。
そんな中、グレンが不意に立ち上がる。
「何する気?」
「こういう時、手を貸してやるのが、教師ってもんだろ?」
(私は…何やってるの…!?)
第12セット前半、何とか抑えて無失点にしたが、こんな事してる暇は無い。
分かってるのに、つい頭を抱えて、蹲ってしまう。
やらなきゃいけないのに…!
「システィーナ、話があります」
顔を上げると、リゼ先輩が厳しい顔で私を見ている。
「今の貴女はハッキリ言って、足手まといです。このままでは、祖国に合わせる顔がありません。私達は帝国の代表。そして貴女はメイン・ウィザード、私達の代表です。故に…決断しなくてはなりません。このまま貴女が指揮官を務めるか、それとも他の誰かに託すか」
そうだ…私はメイン・ウィザード。
皆を勝ちに導く義務がある。
指揮能力なら、アイルより…リゼ先輩…かな。
私は少し離れたところで成り行きを見ているアイルを見る。
…干渉する気は無い、って事かな。
「…リゼ先輩、すみませんが…」
後はリゼ先輩に託そうとしたその時、突然極太の閃光が、青空を切り裂いた。
「今のは…【イクスティンクション・レイ】…」
という事は…グレン先生…?
誰もが…そう、ニヤリと笑ったアイル以外の誰もが、唖然とする中
「システィーナァァァァァァ!!!」
音響増幅魔術で、すごく大きくした声で、全力で叫ぶ先生。
「構うなぁぁぁぁぁぁ!!!お前の好きなようにやれぇぇぇぇぇぇ!!!他人の事なんて関係ねぇぇぇぇぇぇ!!!お前がどんな選択をしようが!!!誰が何を言おうが!!!誰に恨まれようが!!!俺は!!!俺だけは!!!お前の味方だからなぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!俺は、お前の教師だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「せ、先生…!」
先生とは、もう長い付き合い。
だから、何が言いたいか、手に取るように分かる。
意地張って進んでも、甘ったれて退いてもいい。
どんな選択をしても…誰に何を言わても、先生だけは。
味方でいてくれる、認めてくれる。
「私は…」
ふと思い出した、私の魔術師たらんとする、原初の心。
それはもう懐かしい、幼い頃。
祖父と共に見上げた、抜けるような青空に浮かぶ、半透明の城。
それを望む祖父の眼差しが、あまりにも切なくて。
空に浮かぶ幻影の城が、あまりにも眩しく、綺麗だったから。
それらが、私の魂を捕らえたのだ。
その時、祖父の夢は、私の夢になったのだ。
『だったら、私がやる。いつかお爺様以上の魔術師になって…【メルガリウスの天空城】の謎を、解いてみせる』
「…負けられない…!」
途端に、魂が燃えそうなくらい、熱くなった気がした。
私には…何よりも譲れないものがあったんだ…!
「サクヤさんみたいな大層な理由はない。人からしたら子供っぽい理由や夢だけど…私には譲れないの!負けられないの!だから…お願いします!最後までやらせてください!」
私は頭を下げながら、皆にお願いする。
「…やっと本調子に戻ったみたいね、システィーナ」
リゼ先輩が優しく肩に手を置いてくれた。
顔をあげれば、皆が真っ直ぐに見つめつくれている。
「…ありがとう」
お礼を言って、私はアイルに真っ直ぐ近寄り
「アイル。…私にキツイの頂戴」
頬を指さしながら差し出す。
あ、流石にそんな事言われるとは、思って無かったみたい。
アイルがすごく驚いた顔した後、ニヤリと笑った。
「ッ!?そうかよ…歯ァ食いしばれ!!!」
そう言って、本当に全力で殴ってくるアイル。
「痛っっ!…本当に全力で殴るなんて」
「うるせぇ。お前がそうしろって言ったんだろ」
そのまま、背を向けるアイル。
その背中を呆然と見つめる。
…やっぱ強いな、アイルは。
その真っ直ぐとした有り様に、勇気付けられる。
「システィーナ!」
その時、リゼ先輩が、背中を思いっきり叩いてくる。
「システィーナ先輩!」
次はマリアが。
「「システィーナ!」」
次はフランシーヌとコレットが。
「システィーナさん」
「システィーナ」
次はジニーとハインケルが。
「システィーナ」
「チッ…システィーナ」
次はレヴィンとジャイル君が。
皆が…私を支えてくれる。
その痛い背中が、痛い頬が…皆の信頼の証。
皆がいてくれる証。
「おら、時間だぜ。ぼさっとしてんじゃねえぞ、システィ」
「うん!皆、行くよ!!!」
「「「「「「「「「応!!!」」」」」」」」」
泣いても笑っても、これが最後。
ここで…私が私である証を見せる。
「な、なんやて嘘やろ!!?」
シグレは、各戦場の映像を見て、愕然とする。
何故なら、今にも消えそうだった帝国側の勢いが、試合すぐの勢いを取り戻し、しかも
「はぁぁぁぁぁぁ!!!」
すっかり弱っていたはずのシスティーナが、息を吹き返したからだ。
「有り得へん!!あんな妙ちくりんな応援でか!!!?」
(いや、落ち着け!まだあれは効いとるんや!)
シグレはすぐに、気を取り直し、今度こそ完全にへし折ろうとするも…
「うるさぁぁぁぁぁぁい!!!」
システィーナが、それを気合いで跳ねのける。
「私はシスティーナ=フィーベル!我が祖父、レナウド=フィーベルの背中を追う者!あの日見た空と、あの日の想い…!それが、私の魔術師の全て!!あの空と祖父に誓って…もう誰にも邪魔させないわ!!自分自身にさえも!!!」
そのシスティーナの強い魔術師としての覚悟が、シグレが仕掛けた【呪言】の呪縛を解き放つ。
「ゴフッ!!」
(あかん…【呪詛返し】や…!完全に破られた!!!)
これこそ【呪言】が持つリスク、【呪詛返し】だ。
今まで掛けてきた呪詛が、全部自分にフィードバックするのだ。
掛ければ掛けるほど強力になるそれは、シグレを殺しかねない程だったが。
不意に、楽になる。
振り向くと、サクヤが何かしら施した事を悟る。
「…何故システィーナさんが突然調子を崩したか…分かった気がします。ですが、話は後です。今は、最高の好敵手との決着をつけに行きます」
そう言ってサクヤは飛び出した。
シグレの引き留めようとする呻き声を無視して。
最後の1戦。
後が無い俺達がとった作戦は、真正面からの正面突破。
こんな愚策、本来成立などするはずも無いが
「『剣の乙女よ・空に刃振るいて・大地に踊れ』!」
本調子を取り戻したシスティと、士気が最高潮にまで達した俺達なら、話は別だ。
どんな小細工も、罠も、物量も、全て力と勢いで押し切る。
「システィーナ!ここは私達に任せてくださいい!アルタイル!後は頼みました!」
リゼ先輩が、ジャイルが、フランシーヌが、コレットが、ジニーが、マリアが、ハインケルが、レヴィンが。
皆が、俺とシスティに託した。
「任せろ!システィ、行くぞ!!『我が手に星の天秤を』!!」
「ありがとう!【
そのまま俺達は、一気に駆け抜け、ラインを視認出来るところで、ついにサクヤと衝突した。
「【虎熊】!【星熊】!」
サクヤが、ここの番人を呼び出す。
それと同時に、結界を何重ににも張る。
これらを抜かない限り、ラインは超えられない。
だったら…!
「システィ!!」
俺は大きく振りかぶる。
全重力を、拳に溜める。
「乗れ!!!」
俺は一気にそれを解放し、システィごと重力をぶつける。
その余波で鬼達は吹っ飛んでいき、結界を全部ぶち壊す。
やっと1対1にすることが出来た。
「『我に従え・風の民よ・我は風統べる姫なり』!!!」
「『
システィの【ストーム・グラスパー】と、サクヤの【
お互いの力が、否、勝利への渇望がせめぎ合う。
「負けられない…!弟妹達の…家族の皆の為に!!!」
「私にだって譲れないものがある!それに…!!!」
片や持病で、片やマナ欠乏症で、お互い血反吐吐きながら、ぶつかり合い…そして
「そんな姿を…先生に見ていて欲しいのよぉぉ!!!」
「…あ」
システィが魂の叫びと共に、サクヤを一気に吹き飛ばす。
「アァァァァァァァァァァ!!!」
そのまま残り10メトラを一気に駆け抜けて、容赦無く、日輪の国のラインを割った。
「『見えざる手よ』」
俺は【サイ・テレキネシス】で、宙を浮くサクヤをそっと支えてやり、ゆっくりと地面に下ろした。
その時は既に、サクヤは気を失っており、サドンデス突入後も、回復タイムに間に合わず、日輪の国は敗退。
俺達アルザーノ帝国は、逆転勝利を果たしたのだった。
精神だけが成長して、力が伴わないアルタイル。
実力だけが成長して、心が甘々なシスティーナ。
そんな2人が、やっと両方伴った魔術師になりました。
この2人、かなり強くなりました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。