それではよろしくお願いします。
どうしてこうなった。
誰が糸を引いた。
誰が…裏で仕組んだ?
マリアの悲鳴が、頭の中でリフレインする。
あまりに多くの事が起きすぎて、訳が分からなくなっていると
「ッ!」
グレン先生が、弾かれたように走り出した。
「「先生!」」
俺とシスティは慌ててそれを追いかけ、道中ルミア達と合流し、何とか先生に追いつく。
「先生!落ち着けって、グレン先生!!」
俺は強引に肩を掴んで止めさせる。
「あの人達は、空を飛んで行ったんですよ!走っても意味ないですって!」
「ん、グレン。少し落ち着くべき」
システィとリィエルも加わって、やっと冷静さを取り戻した先生。
「…悪ぃ。どうかしてた」
「まったく、生徒の方がしっかりしてるじゃない。失望させないでよね、先生?」
「うるせぇな!気が動転してたんだよ!」
こんな時でも、相変わらずの2人に呆れる俺。
「2人とも…」
「フフ、先生!私達もいますから」
「ん、グレン達の仲間なら、私も守る」
「お前ら…」
やっと落ち着いて話が出来る、そう思った時
「…ん?何だあれ?」
俺は空中に変な光の線が見つける。
それはどんどん編まれていき、1枚の布のようなものを作り出す。
空をスクリーンにして、描き出された光景は…
死んだと思っていたジャティスが、マリアを利用し変な儀式をして、気持ち悪い怪物を生み出した。
そして
「ついに辿り着いたぞ!【
「ああ、そうさ。君の言う通りだとも。僕の名はフェロード=ベリフ」
「【パウエル=フューネ】と申します」
帝国最大の闇を解き明かした。
「フェロード=ベリフ…!!アイツが!!天の知恵研究会のトップだと!!!?」
なら俺の家族は…アイツらに皆殺しにされたって事かよ…!
「アイル君…」
ルミアが不安そうに俺の手を握ってくれる。
「…大丈夫。大丈夫だから」
そう、目的を間違えるな、今はマリアの事が優先だ。
そう落ち着かせていると
「構えなさい!」
イヴ先生の鋭い声が、響き渡る。
弾かれたように構えると、そこにはさっき出てきていた、黒い怪物が出てきていた。
「あの野郎…!ロクでも無い事しかしながらねぇ…!」
「キモいんだよ!」
俺と先生が、それぞれ鉛玉と糸玉を放つも、それは効果は無く
「『剣の乙女よ・空に刃振るいて・大地に踊れ』!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
システィの【ブレード・ダンサー】とリィエルの大剣が切り裂く。
しかしシスティの方は、動きを止められず、リィエルの方は、何故か消滅させられた。
「なんなのよ、コイツらは!」
「というか、リィエルはなんで倒せるんだ?」
俺は不思議に思い、リィエルに尋ねるが、案の定本人も分かっていなかった。
「私の剣先、黄金の光が見えるから」
「は?黄金の光?」
何言ってんの?コイツ。
頭にハテナを浮かべていると、イヴ先生から声をかけられる。
「その子が常識の埒外にいるのは、昔からよ。考察は後にしなさい。それよりも貴方達、炎よ。炎熱系なら、消滅させられるから」
そう言えば、あの時。
あの男、リィエルの事を【黄昏の剣士】って…
まあ、言う通りにして、考察は後にしよう。
「『吠えよ炎獅子』!」
とりあえず、目につく奴らを片っ端から消し炭に変えてるが…明らかに追いつかない。
「アイル君。これって、裏学院のアレと…」
「ああ、似てるな。それに恐らく下から溢れ出てるんだろ」
周りに響き渡る怒声と悲鳴。
他の場所でも確認されているのだろうが、そこまで手は回らない。
俺達は目の前だけで精一杯だった。
だから…
「グレン!後ろよ!」
グレン先生に迫る怪物に対応出来なかった。
「しまっ!?」
「先生!?」
「クソ!あそこじゃ!」
消し飛ばせるが、そうしたらグレン先生ごと…!
その迷いが、命取りになってしまい…。
しかしそれが現実になる前に、炎が怪物だけを焼き払った。
あんな芸当イヴ先生にしか出来ない。
だけど…先生も間に合ってない。
だったら…?
「かかりなさい!最優先は市民の救助!終了後、各隊随時【根】の掃討!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」
そこにいたのは、特務分室の制服を着た、赤色の髪をした女性だった。
20歳過ぎくらいだろうか。
その紫の瞳をした優しげなその女性は
「イヴ先生に…似てる?」
そう、よく似ていた。
まるで…姉妹のように。
「り、リディア姉さん…!?」
本当に姉なんだ。
その人は俺達に近づき、そして、声をかけるイヴ先生を無視して俺達に話しかける。
「貴方、元特務分室の執行官NO.0【愚者】のグレン=レーダスさんですね。ご協力ありがとうございます」
…は?なんだ今の?
無視なんて次元じゃない。
まるで…見えてないような感じだった。
気持ち悪い。
そういう嫌悪感が、身体中を蝕む。
「私は今回の随行帝国軍の司令官にして、特務分室の執行官NO.1【魔術師】の【リディア=イグナイト】です。ここからは、私達にお任せ下さい」
こうして俺達は、無事帝国軍に保護された。
一抹の不穏な感じと共に…。
一夜明け、各国の首相達が緊急の会議をする中、グレン先生は召喚されており、俺とイヴ先生は、その付き添いだ。
先生の報告が終わり、次に室長さんが報告をしている中
「イヴ先生…大丈夫?」
「…」
俺は隣にいるイヴ先生の事が、気になって仕方なかった。
嫌だって…滅茶苦茶顔色悪いし。
「おい、イヴ。無理すんなよ?後の報告は俺達がやるから」
そんなイヴ先生に、グレン先生も心配なのか、声をかける。
普段なら憎まれ口が飛び出して、そのまま口喧嘩が始まるのだが
「…大丈夫よ。私は大丈夫…大丈夫…だから…」
本当にらしくない。
あ、延々と演説してたフォーゲル先生が、摘み出された。
ほとんど聞いてなかったな、あの人の話。
「…さて、最後ですが、避けては通れない話をします。いいですね、ファイス=カーディス司教枢機卿?」
各国の首相の目が、枢機卿を射抜く。
「貴方の生家、カーディス家とは一体?マリア=ルーテル…いや、ミリアム=カーディスとの関係性は?」
枢機卿はしばらく手を組み、目を閉じていたが、やがて決心がついたのか、真実を語り出した。
「…あの子は、私の実の娘です。私の家カーディス家は、古代文明において、邪神召喚の儀を執り行った神官の末裔。そして、【無垢なる闇の巫女】を輩出する血統の生き残りです。聖エルサレム教会教皇庁は、いざという時の為の、軍事戦略的切り札…所謂【信仰兵器】にする為に、匿っていたのです。最も今となってはその血も薄れ、何代目かに1人産まれるかですが…しかし、
その言葉に首相の1人がなにかに気づいたのか、声を張り上げる。
「じゃあ、まさか200年前の魔導大戦もか!?」
「…ええ。その通りです。ですが、召喚の儀の方法は、取り込まれた時には失伝しているのに、何故行われたのか…。そこは当家最大の謎だったのですが…」
とんだ笑い草だ。
偽物の神である唯一概念神を崇めさせ、その内側では、本物の神である外宇宙の邪神を匿ってたのか。
同時にロラン=エルトリアが、火炙りの刑にされた理由も、焚書にした理由も分かった。
自分達がひた隠しにしてきた事実を、晒されたら堪ったものじゃないからな。
「そしてついに恐れてきた事態が、起こりました。我が娘、ミリアムにその証が出てしまったのです。故に私は、あの子をアルザーノ帝国に、亡命させました。その際力を貸してくれたのが、ヒューネラル教皇猊下だったのですが…」
その人も天の知恵研究会だった…。
結局、掌の上で転がされていたって事か。
そんな告解を告げた彼に浴びせられたのは、罵詈雑言の嵐だった。
…脳天気な連中だ…!
その中に女王陛下が入ってない事が、どれだけ誇らしいとか。
そして…遂に我慢の限界が来た。
「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
会議場中に響き渡る俺の怒声。
皆が唖然とする中、俺はズカズカと中央に立ち、周りを睨みつける。
「今は責任の擦り付け合いをしてる場合か!こんな事してる暇は、一分一秒もねぇんだよ!さっき室長さんが言ってただろうが!残り1ヶ月しか無いんだろ!?ここにいるのは、各国のトップ達なんだろ!?自国の民を守るために…!民の住まう、この世界を守る為に!手を取り合い、知恵を貸し合い、物資を分け与える!!そういう話し合いをする為の会議じゃねぇのかよ!!そんな当たり前の事を、こんなぽっと出のクソガキに、言いたい放題言われてんじゃねぇよ!!!」
静まり返る会議場の中心で、内心頭を抱える。
いや、何してんの俺〜!
いや、ムカついたけどさ!
こんな事していい時じゃないだろ俺!
胃が!胃が潰れる〜!
「彼の言う通りです」
そんな空気を切り裂いたのは、女王陛下だった。
「彼の言葉は、まさに我々の民が思っている、気持ちの代弁に他なりません。そもそもこのレザリア王国が崩壊すれば、大量の難民が溢れ出します。最早、どの国も他人事では無いのです。世界の危機を前に、今は足並みを揃え、共に立ち向かわねばならないのです!皆さん!どうか力を貸してください!共に輝かしい未来の為に、戦いましょう!私達全員で、世界を救うのです!」
…やっぱり、違うなこの人は。
俺みたいに吠えるだけで、何も出来ないガキじゃない。
真の指導者、真のカリスマ、真の王。
この人こそ…俺達の王だ。
その証拠に、各国の首相達が、拍手を送り、陛下を支持している。
ふと陛下がこっちを見た。
その視線は俺…ではなく、後ろに行っている。
振り向くと
「ヒッ…!!」
グレン先生とイヴ先生が鬼の形相を浮かべている。
ええ、明らかに怒っていますとも。
思わず女王陛下に、助けを求めるように視線を送ると、ニッコリ笑ってるだけだ。
…ああ…俺には救ってくれる神はいないらしい。
恐る恐る2人の元に戻ると
「「アルタイル」」
「…仲が大変よろしいようで」
俺に待ち受けていたのは、グリグリと頬つねりだった。
「…忌々しい」
イグナイト卿は、今の会議場のこっそり抜け出し、舌打ちを打ちながら、早足で歩く。
(あの娘…アリシア七世を過小評価していた。あれはまさに覇王の器だったか。それにしても…)
あの場を見事に纏めあげた、アリシア七世のカリスマに驚愕しながらも、思い出すのはイヴとグレンに説教されていた、アルタイルだ。
(あの小僧…。恐らくアリシア七世の差し金…では無いな。ただの子供の我儘、何も知らない青臭さだろう)
しかし、アリシア七世はそれを利用して、この場を纏めあげた。
アルタイルは、ただ思った事をハッキリ言っただけ。
だからこそ、心を動かされたのだろう。
(しかし、どうする…!?)
あらゆる状況を考察し、そして…
「いや…今だからこそ…好機か…!」
そうと決めれば話は早い。
「イリヤ」
「はーい!貴方の従順な下僕、イリヤ=イルージュですよー!」
そこ現れたのは、かつてマレスでアルタイル達に倒されたはずのイリヤだった。
その姿は…イヴが燃やした女の姿。
「動くぞ」
この一言で全てが決した。
紅蓮の野望が、動き出した。
改めて見直していたら、最初のプロフィールで、ストーリーと齟齬があったので、訂正しました。
後、アルタイルの誕生日が明記してなかったので、ここで書いておきます。
7月7日です。
名前的にも。
ベガも同じ日です。
それでは失礼します。
ありがとうございました。