ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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イヴの魅力的大爆発な17巻です。
それではよろしくお願いします。


炎の一刻半編第1話

どうしてこうなった。

誰が糸を引いた。

誰が…裏で仕組んだ?

マリアの悲鳴が、頭の中でリフレインする。

あまりに多くの事が起きすぎて、訳が分からなくなっていると

 

「ッ!」

 

グレン先生が、弾かれたように走り出した。

 

「「先生!」」

 

俺とシスティは慌ててそれを追いかけ、道中ルミア達と合流し、何とか先生に追いつく。

 

「先生!落ち着けって、グレン先生!!」

 

俺は強引に肩を掴んで止めさせる。

 

「あの人達は、空を飛んで行ったんですよ!走っても意味ないですって!」

 

「ん、グレン。少し落ち着くべき」

 

システィとリィエルも加わって、やっと冷静さを取り戻した先生。

 

「…悪ぃ。どうかしてた」

 

「まったく、生徒の方がしっかりしてるじゃない。失望させないでよね、先生?」

 

「うるせぇな!気が動転してたんだよ!」

 

こんな時でも、相変わらずの2人に呆れる俺。

 

「2人とも…」

 

「フフ、先生!私達もいますから」

 

「ん、グレン達の仲間なら、私も守る」

 

「お前ら…」

 

やっと落ち着いて話が出来る、そう思った時

 

「…ん?何だあれ?」

 

俺は空中に変な光の線が見つける。

それはどんどん編まれていき、1枚の布のようなものを作り出す。

空をスクリーンにして、描き出された光景は…

 

 

 

死んだと思っていたジャティスが、マリアを利用し変な儀式をして、気持ち悪い怪物を生み出した。

そして

 

「ついに辿り着いたぞ!【第三団:天位(ヘブンス·オーダー)】の【大導師(ヘブン)】にして、古代の魔王【ティトゥス=クルォー】!!!そしてその副官、教皇庁最高指導者、ヒューネラル=ハウザーにして、【第三団:天位(ヘブンス·オーダー)】の【神殿の首領(マジスタ·テンプル)】!!!」

 

「ああ、そうさ。君の言う通りだとも。僕の名はフェロード=ベリフ」

 

「【パウエル=フューネ】と申します」

 

帝国最大の闇を解き明かした。

 

 

 

「フェロード=ベリフ…!!アイツが!!天の知恵研究会のトップだと!!!?」

 

なら俺の家族は…アイツらに皆殺しにされたって事かよ…!

 

「アイル君…」

 

ルミアが不安そうに俺の手を握ってくれる。

 

「…大丈夫。大丈夫だから」

 

そう、目的を間違えるな、今はマリアの事が優先だ。

そう落ち着かせていると

 

「構えなさい!」

 

イヴ先生の鋭い声が、響き渡る。

弾かれたように構えると、そこにはさっき出てきていた、黒い怪物が出てきていた。

 

「あの野郎…!ロクでも無い事しかしながらねぇ…!」

 

「キモいんだよ!」

 

俺と先生が、それぞれ鉛玉と糸玉を放つも、それは効果は無く

 

「『剣の乙女よ・空に刃振るいて・大地に踊れ』!」

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

システィの【ブレード・ダンサー】とリィエルの大剣が切り裂く。

しかしシスティの方は、動きを止められず、リィエルの方は、何故か消滅させられた。

 

「なんなのよ、コイツらは!」

 

「というか、リィエルはなんで倒せるんだ?」

 

俺は不思議に思い、リィエルに尋ねるが、案の定本人も分かっていなかった。

 

「私の剣先、黄金の光が見えるから」

 

「は?黄金の光?」

 

何言ってんの?コイツ。

頭にハテナを浮かべていると、イヴ先生から声をかけられる。

 

「その子が常識の埒外にいるのは、昔からよ。考察は後にしなさい。それよりも貴方達、炎よ。炎熱系なら、消滅させられるから」

 

そう言えば、あの時。

あの男、リィエルの事を【黄昏の剣士】って…

まあ、言う通りにして、考察は後にしよう。

 

「『吠えよ炎獅子』!」

 

とりあえず、目につく奴らを片っ端から消し炭に変えてるが…明らかに追いつかない。

 

「アイル君。これって、裏学院のアレと…」

 

「ああ、似てるな。それに恐らく下から溢れ出てるんだろ」

 

周りに響き渡る怒声と悲鳴。

他の場所でも確認されているのだろうが、そこまで手は回らない。

俺達は目の前だけで精一杯だった。

だから…

 

「グレン!後ろよ!」

 

グレン先生に迫る怪物に対応出来なかった。

 

「しまっ!?」

 

「先生!?」

 

「クソ!あそこじゃ!」

 

消し飛ばせるが、そうしたらグレン先生ごと…!

その迷いが、命取りになってしまい…。

しかしそれが現実になる前に、炎が怪物だけを焼き払った。

あんな芸当イヴ先生にしか出来ない。

だけど…先生も間に合ってない。

だったら…?

 

「かかりなさい!最優先は市民の救助!終了後、各隊随時【根】の掃討!」

 

「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」」」」

 

そこにいたのは、特務分室の制服を着た、赤色の髪をした女性だった。

20歳過ぎくらいだろうか。

その紫の瞳をした優しげなその女性は

 

「イヴ先生に…似てる?」

 

そう、よく似ていた。

まるで…姉妹のように。

 

「り、リディア姉さん…!?」

 

本当に姉なんだ。

その人は俺達に近づき、そして、声をかけるイヴ先生を無視して俺達に話しかける。

 

「貴方、元特務分室の執行官NO.0【愚者】のグレン=レーダスさんですね。ご協力ありがとうございます」

 

…は?なんだ今の?

無視なんて次元じゃない。

まるで…見えてないような感じだった。

気持ち悪い。

そういう嫌悪感が、身体中を蝕む。

 

「私は今回の随行帝国軍の司令官にして、特務分室の執行官NO.1【魔術師】の【リディア=イグナイト】です。ここからは、私達にお任せ下さい」

 

こうして俺達は、無事帝国軍に保護された。

一抹の不穏な感じと共に…。

 

 

一夜明け、各国の首相達が緊急の会議をする中、グレン先生は召喚されており、俺とイヴ先生は、その付き添いだ。

先生の報告が終わり、次に室長さんが報告をしている中

 

「イヴ先生…大丈夫?」

 

「…」

 

俺は隣にいるイヴ先生の事が、気になって仕方なかった。

嫌だって…滅茶苦茶顔色悪いし。

 

「おい、イヴ。無理すんなよ?後の報告は俺達がやるから」

 

そんなイヴ先生に、グレン先生も心配なのか、声をかける。

普段なら憎まれ口が飛び出して、そのまま口喧嘩が始まるのだが

 

「…大丈夫よ。私は大丈夫…大丈夫…だから…」

 

本当にらしくない。

あ、延々と演説してたフォーゲル先生が、摘み出された。

ほとんど聞いてなかったな、あの人の話。

 

「…さて、最後ですが、避けては通れない話をします。いいですね、ファイス=カーディス司教枢機卿?」

 

各国の首相の目が、枢機卿を射抜く。

 

「貴方の生家、カーディス家とは一体?マリア=ルーテル…いや、ミリアム=カーディスとの関係性は?」

 

枢機卿はしばらく手を組み、目を閉じていたが、やがて決心がついたのか、真実を語り出した。

 

「…あの子は、私の実の娘です。私の家カーディス家は、古代文明において、邪神召喚の儀を執り行った神官の末裔。そして、【無垢なる闇の巫女】を輩出する血統の生き残りです。聖エルサレム教会教皇庁は、いざという時の為の、軍事戦略的切り札…所謂【信仰兵器】にする為に、匿っていたのです。最も今となってはその血も薄れ、何代目かに1人産まれるかですが…しかし、()()()()()()()()()()()

 

その言葉に首相の1人がなにかに気づいたのか、声を張り上げる。

 

「じゃあ、まさか200年前の魔導大戦もか!?」

 

「…ええ。その通りです。ですが、召喚の儀の方法は、取り込まれた時には失伝しているのに、何故行われたのか…。そこは当家最大の謎だったのですが…」

 

とんだ笑い草だ。

偽物の神である唯一概念神を崇めさせ、その内側では、本物の神である外宇宙の邪神を匿ってたのか。

同時にロラン=エルトリアが、火炙りの刑にされた理由も、焚書にした理由も分かった。

自分達がひた隠しにしてきた事実を、晒されたら堪ったものじゃないからな。

 

「そしてついに恐れてきた事態が、起こりました。我が娘、ミリアムにその証が出てしまったのです。故に私は、あの子をアルザーノ帝国に、亡命させました。その際力を貸してくれたのが、ヒューネラル教皇猊下だったのですが…」

 

その人も天の知恵研究会だった…。

結局、掌の上で転がされていたって事か。

そんな告解を告げた彼に浴びせられたのは、罵詈雑言の嵐だった。

…脳天気な連中だ…!

その中に女王陛下が入ってない事が、どれだけ誇らしいとか。

そして…遂に我慢の限界が来た。

 

「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

会議場中に響き渡る俺の怒声。

皆が唖然とする中、俺はズカズカと中央に立ち、周りを睨みつける。

 

「今は責任の擦り付け合いをしてる場合か!こんな事してる暇は、一分一秒もねぇんだよ!さっき室長さんが言ってただろうが!残り1ヶ月しか無いんだろ!?ここにいるのは、各国のトップ達なんだろ!?自国の民を守るために…!民の住まう、この世界を守る為に!手を取り合い、知恵を貸し合い、物資を分け与える!!そういう話し合いをする為の会議じゃねぇのかよ!!そんな当たり前の事を、こんなぽっと出のクソガキに、言いたい放題言われてんじゃねぇよ!!!」

 

静まり返る会議場の中心で、内心頭を抱える。

いや、何してんの俺〜!

いや、ムカついたけどさ!

こんな事していい時じゃないだろ俺!

胃が!胃が潰れる〜!

 

「彼の言う通りです」

 

そんな空気を切り裂いたのは、女王陛下だった。

 

「彼の言葉は、まさに我々の民が思っている、気持ちの代弁に他なりません。そもそもこのレザリア王国が崩壊すれば、大量の難民が溢れ出します。最早、どの国も他人事では無いのです。世界の危機を前に、今は足並みを揃え、共に立ち向かわねばならないのです!皆さん!どうか力を貸してください!共に輝かしい未来の為に、戦いましょう!私達全員で、世界を救うのです!」

 

…やっぱり、違うなこの人は。

俺みたいに吠えるだけで、何も出来ないガキじゃない。

真の指導者、真のカリスマ、真の王。

この人こそ…俺達の王だ。

その証拠に、各国の首相達が、拍手を送り、陛下を支持している。

ふと陛下がこっちを見た。

その視線は俺…ではなく、後ろに行っている。

振り向くと

 

「ヒッ…!!」

 

グレン先生とイヴ先生が鬼の形相を浮かべている。

ええ、明らかに怒っていますとも。

思わず女王陛下に、助けを求めるように視線を送ると、ニッコリ笑ってるだけだ。

…ああ…俺には救ってくれる神はいないらしい。

恐る恐る2人の元に戻ると

 

「「アルタイル」」

 

「…仲が大変よろしいようで」

 

俺に待ち受けていたのは、グリグリと頬つねりだった。

 

 

 

「…忌々しい」

 

イグナイト卿は、今の会議場のこっそり抜け出し、舌打ちを打ちながら、早足で歩く。

 

(あの娘…アリシア七世を過小評価していた。あれはまさに覇王の器だったか。それにしても…)

 

あの場を見事に纏めあげた、アリシア七世のカリスマに驚愕しながらも、思い出すのはイヴとグレンに説教されていた、アルタイルだ。

 

(あの小僧…。恐らくアリシア七世の差し金…では無いな。ただの子供の我儘、何も知らない青臭さだろう)

 

しかし、アリシア七世はそれを利用して、この場を纏めあげた。

アルタイルは、ただ思った事をハッキリ言っただけ。

だからこそ、心を動かされたのだろう。

 

(しかし、どうする…!?)

 

あらゆる状況を考察し、そして…

 

「いや…今だからこそ…好機か…!」

 

そうと決めれば話は早い。

 

「イリヤ」

 

「はーい!貴方の従順な下僕、イリヤ=イルージュですよー!」

 

そこ現れたのは、かつてマレスでアルタイル達に倒されたはずのイリヤだった。

その姿は…イヴが燃やした女の姿。

 

「動くぞ」

 

この一言で全てが決した。

紅蓮の野望が、動き出した。




改めて見直していたら、最初のプロフィールで、ストーリーと齟齬があったので、訂正しました。
後、アルタイルの誕生日が明記してなかったので、ここで書いておきます。
7月7日です。
名前的にも。
ベガも同じ日です。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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