まあ、三嶋くろねさんも画集で似たような事言ってました。
それではよろしくお願いします。
四頭馬仕立ての豪華な馬車が数台、ミラーノの街道を進む。
それ中の1つは、アリシア七世用の王室馬車であり、その中には、アリシア七世と二人の男。
「え〜と…陛下?俺達のような男が、こんないい馬車に乗っていいんですか?」
「いいんですよ」
と言っても乗ってるのは、俺とグレン先生だ。
フォーゼル先生との相乗りが決定した瞬間のイヴ先生の顔は、何と言うか…夢に出そうだった。
「あの…陛下…」
恐る恐る俺は口を開く。
「はい、どうしました?」
「さっきは…出過ぎた真似をして、すみませんでした」
「担任として、俺からも謝罪を。うちの生徒が大変失礼しました」
そう言って俺達は頭を下げる。
うっ…、グレン先生にまで謝らせるのは…かなり心苦しい。
しかしそんな謝罪を
「フフ、顔をあげてください2人共」
陛下は優しく受け止めてくれた。
「むしろ、こちらから感謝を。ありがとうございます、アルタイル。貴方にしたら、とても勇気がいる行いだったでしょう。貴方の言葉で、私も勇気を貰いました」
「い、いや!俺はただ…こう、プッツンしたっていうか…何ていうか…」
ただ感情のままに叫んだだけだったので、後から胃が痛くなっただけ。
後、頭と頬も。
「私の方こそ謝罪を。貴方の言葉を、まるで利用したように、場をまとめてしまったので…」
そう言って頭を下げようとする陛下を、慌てて止める。
「だから頭を下げないで…!」
しかし、止める前に顔を上げ、俺を厳しい目で見る陛下。
「ですが、少し無謀がすぎます。あのような場で、あのような発言。不敬罪に問われても、否定出来なかったのですよ?そうなれば、エルミアナを始め、悲しむお友達も沢山いるでしょう。…今後はもう少し考えて行動するように。いいですね?」
「…はい」
同じ事をグレン先生達に怒られた。
陛下からのお叱りは、まるで母のような暖かさがあった。
陛下は優しく笑い、俺の頭を撫でる。
「よろしい。…ふぅ。しかし、本当に…大変な事になりましたね…」
その横顔は、先程までの凛とした女王ではなく、ただ1人の女性だった。
「ごめんなさい、2人共。各国首脳陣の前で、あれ程の大口叩いておきながら…。どうしても、悪い想像しか出来ないのです。良き未来が思い描けないのです。私は女王。国を、民を、世界を守る義務があります。ですが…同時に、娘達と共に世界の果てに逃げ出したい…。そう思っている自分がいます」
「「陛下…」」
本当に…この大馬鹿者が…!!
何も分かってないクソガキが、出しゃばった結果、陛下の退路を塞いだだけじゃねぇか…!!
あまりの自分の無知蒙昧さに、唇をかみ締め、拳に爪が食い込む。
「このような事…家臣でない貴方達にしか…話せないのです…」
何か言いたい…でも、何を言えば?
本当に何も知らないこんな大馬鹿者に、一体何が言える?
なんの意味がある?
また、無意味に陛下を追い詰めるだけじゃないのか?
「陛下」
そんな俺が葛藤する中、グレン先生が口を開く。
「軍時代、こんなどうしようもない俺の事を、覚えて下さり、良くして下さりました。今は一教師の俺ですが…必ず、俺なりのやり方で、陛下のお役に立ってみせます。ですので…」
先生はその先の言葉を、詰まらせた。
何時になく、畏まった口調に違和感を感じずにはいられなかったが、茶化す気にはならない。
俺も何か言わないと…!
そう思い、考えをまとめているその時、突然凄い揺れが、ここら一帯を襲った。
「きゃ!?」
「陛下!?」
俺は慌てて陛下を支える。
こうして間近で見ると、本当にルミアは似てるんだな。
「アルタイル!陛下を頼む!」
そう言って先生は外を確認する。
俺も小窓から外を確認すると
「な、何だよ…これ…!?」
一帯は見るも無惨に焼け焦げている。
間違えない…陛下への攻撃だ。
このタイミングで、陛下を狙う狼藉。
「グレン!構えなさい!陛下を守るのよ!」
外からイヴ先生の声が聞こえる。俺は顔だけ出して、状況を確認する。
「イヴ先生!敵は!?」
どこのバカ共かと思っていると
「「…は?」」
俺とグレン先生は、唖然とするしか無かった。
何故なら下手人は…
「敵は…アルザーノ帝国軍よ!!!」
そう言った瞬間、
「「「「「「「オォォォォォォォォ!!!」」」」」」」
そんな声を上げながら、一斉突撃してきた将兵達。
間違えない…これは、クーデターだ。
「俺達は一体…何をしてるんだァァァァ!!!?」
先生が、叫びながら、銃を
瞬く間に、かつての仲間達が死んでゆく。
その少し離れた場所で、
「はぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺は糸を振るい、数名の首を跳ね飛ばす。
そのまま糸の弾で撃ち抜き、剣で切り、槍で穿ち、殴り飛ばす。
「『氷狼の爪牙よ』!」
「『白銀の氷狼よ・吹雪纏いて・疾駆け抜けよ』!」
俺達の【アイス・ブリザード】が起こす氷礫が、一気に敵を吹き飛ばす。
「先生!気をしっかり!」
「しっかりしなさい、グレン!」
イヴ先生が近寄って、俺達の背中を守る。
「分かってる!分かってるが…!こんな事あってたまるかぁぁぁぁ!!」
…何でこんな時に!!
世界が手を取り合わなくてはいけないこの時に、その音頭を取った俺達がクーデターとか、洒落にならない。
チラリと陛下の顔色を伺う。
さっき陛下の気持ちを聞いたばかりだからか、余計辛くなる。
さっきから何度も止めるように言ってるが、聞く耳持たない。
「グレン殿、イヴ殿」
このどんづまりの中、現王室親衛隊総隊長の人が、話しかけてくる。
「我々が、手薄の南を一点突破します。そうすればもしくは…!」
「待って!貴方、死ぬつもり!?ここで貴方が死んだら、部隊は…女王陛下はどうするのよ!?」
イヴ先生が慌てて止める。
そうだ、こんな中突撃するなんて自殺行為だ。
それをこの人がやるなんて…!
しかし、隊長さんは、清々しく笑いながら
「イヴ殿、指揮権は貴女に。グレン殿…そして、アルタイル君。2人に陛下の護衛を」
「なっ!?」
護衛…俺が!?
俺みたいな奴が…!?
「ま、待ってくれ!なんで俺が!?」
「貴方だからですよ。私…ずっと貴方に憧れていたのですよ。元執行官NO.0【愚者】のグレンさん。そして…半年前の件で、アルタイル君。君にも同様の尊敬を抱いているのです」
尊敬…?俺に?
「貴方が打ち立てる武勇伝…そして、君の必死の活躍に、いつも心躍らせていました。貴方達は希望であり、憧れだったのです。英雄殿」
あまりの言葉に、俺達が揃って絶句していると
「誇りある王室親衛隊よ!今こそ我らの大恩報いる時!陛下を守らんとする勇者は、この私に続けぇぇぇぇぇぇ!!!」
「「「「「「「オォォォォォォォォ!!!」」」」」」」
「「「「「「「女王陛下ばんざぁぁぁぁあい!!!」」」」」」」
待て…ダメだ…!
やめろ…やめろ!
でも…止められない。
誰がやらないと…!
「先生…今のうちに出来るだけの強化をします。陛下の側に」
「アルタイル…何する気だ?」
「決まってるでしょう?…皆殺しだ」
決死の脱出戦が始まった。
イヴ先生の類まれなる指揮能力の中俺は
「オォォォォォォォォ!!!」
目に映る敵を片っ端から皆殺しにしていた。
加減もクソもない、容赦もクソもない。
とにかく…全部殺す。
ドス黒い殺意を燃やしながら、その熱で体を動かしながら。
糸で、魔術で、素手で、武器で…あらゆる手段で殺し続ける。
しかし、いくら殺そうが、いくら上手く立ち回ろうが、元の戦力差を覆す事は出来ず
「万事休すか…ド畜生…!」
遂に追い詰められてしまった。
こっちは約150に対し、あっちは約4000。
圧倒的すぎるその差に、俺も体力とマナの限界が来る。
「ゲホ…ゲホ…!」
「アルタイル!無理をしては…!」
そう言って陛下が、
ボロボロの体には、焼け石に水だが有難い。
その時、敵の将が姿を見せる。
その正体は
「父上…姉さん…!」
数日前にすれ違ったり髭面、アゼル=ル=イグナイト卿と、リディア=イグナイトだった。
フラフラと数歩歩み寄って、イヴ先生が慟哭する。
「どうして…どうして帝国を裏切ったのですか!?」
「黙れ。貴様はいつまでそう志が低いのだ。まだ分からないか、この趨勢が」
しかし、そんな言葉もイグナイト卿は、即座に一蹴する。
「とうとう、恐れた自体が起こったのだ。世界に未曾有の危機が訪れる。この艱難辛苦に満ちた世界には、己が手を汚してでも、前に進む決断が出来る、真の指導者が必要なのだ。そして…我らイグナイト家こそ、その立場に相応しい」
何を…言ってるんだ?
あの男は…本気でそう思ってるのか?
だとしたら…勘違いも甚だしい。
「ッ!?姉さん…!姉さんは今、自分が何をしているのか、理解なさってるのですか!!!?」
「イヴ!落ち着け!」
今にも飛び出しそうなイヴ先生を、グレン先生が止める。
「イグナイト家は、帝国の魔導武門の屋台骨!力持つ者の義務を背負う者!尊き魔導の灯火で暗き闇を払い、世の人々を行く先を明るく照らし導く者…!それが【
そんなイヴ先生の叫ぶような問いかけに
「ええと…貴女は、誰でしょうか?私の妹はアイエス、ただ1人なのですが?」
「…え?」
こっちはこっちで、なにを言ってる?
もうコイツら、訳分からん。
脳みそ腐ってるんじゃ…。
「イグナイト卿。私では…ダメでしたか?」
今度は陛下が、厳かに尋ねる。
「結論を言えば、その通りだ。貴女が辛うじて国を回してこれたのは、仮初の平和があったからだ。故に、貴女程度の女でも、王が務まった」
『貴女程度の女でも』…だと?
「さて…最後の号令をかける前に、最後のチャンスをやろう。イヴ、そして…そこの小僧」
「ッ!?」
「…は?俺か?」
突然のご指名に、思わず間抜けた声が出る。
「先の指揮…とったのはお前だな?あの状況でここまで粘ったのは見事だ。褒めてやろう。そして小僧、これ程我が手駒を削ったのは、お前だな。大した強さだ、認めよう。…お前達、我が膝下に下る許可をやる、こい」
「は?嫌だ」
即答しちゃった。
いや、だって…ねぇ?
「…ふん、まあ良い。イヴ、お前はどうする?それとも…私に逆らうのか?イヴ」
(何を言ってるの…?この父は?この男は?)
このまま父上の望む世界の先にあるのは…ただの戦争だ。
自分を先生と、教官と呼んで慕ってくれる生徒達の殆どが徴兵され、戻ってこないだろう。
なのに…どうして…!?
(体が…言う事を聞かないの…!?)
昔からそうだ。
何故か父の言う事には、逆らえない。
まるで…呪いのように。
「命令だ。イヴ、戻ってこい」
「あ、ぁぁぁ…」
自分の心が折れた音が聞こえた。
もうダメだ…。
そう諦めた瞬間、不意に誰かに手を掴まれる。
振り向くとそこには
「ダメ…行かないで」
「アル…タイル…?」
アルタイルが、泣きそうな目で私を見ていた。
「行っちゃダメ。戻ってきて。…帰ろう?爺さんがいて、婆さんがいて、ベガがいる。あの暖かい家に…一緒に帰ろう?イヴ姉さん」
「あ…」
初めて、アルタイルが私を、姉さんって呼んだ。
それが何故か…すごく嬉しくて、足が止まる。
そこに
「あんな奴の所に行くなよ、イヴ」
グレンが、私達ごと手繰り寄せ、後ろに隠す。
グレンの背中と、アルタイルの手。
2つの暖かさが、私の恐怖を吹き飛ばし、私の震えを止めてくれた。
「おい、反逆野郎」
グレンは銃を突きつけて
「クソくらえだ、この野郎。俺達の仲間に手ぇ出してんじゃねぇよ。どうしてもって言うなら、俺達を倒してからにしやがれ」
「誰かと思えば…グレン=レーダスか。数日ぶりだな。それに小僧…それが姉だと?」
「へぇ、統合参謀本部長様にまで覚えてもらえてるとは、光栄だな」
「あ?別にお前には関係ねぇだろ」
俺とグレン先生は、凄みながら、睨みつける。
「しかし酷な事をする。イヴは自身の意思で、その泥船から降りようとしているのにな」
「あぁ!?自分の意思だァ!?ふざけんな!こんな泣きながら震えてる、コイツの何処に自分の意思があるってんだよ!!」
「その目、変えた方がいいんじゃない?いい法医師知ってるから紹介しようか?いや、やっぱやめた。その人が腐る。お前には勿体ない」
怒る先生と、バカにする俺。
そんな俺達に突然高笑いするイグナイト卿。
「ハハハハハハ!随分と入り込んでるな!お前達!イヴよ、どうやって誑し込んだんだ?さぞいい具合だったのだろうな!」
怒りのあまり、言葉を失った。
あまりにも下品、あまりにも下劣。
「黙れ!!それ以上口を開いたら!!」
グレン先生の怒りの声すら、嘲笑いながらまだ続ける。
「そうだろう!何故ならお前は、イヴの采配で、最愛の女を失ったのだからなぁ!」
その言葉に今度は、グレン先生が怒りに言葉を失う。
怒りのあまり、暴走しそうになる先生を止めようとした時、
「…待て?お前、
突然、先生が素に戻った。
なにか引っかかったらしい。
「報告書上では、イヴの判断は強引だが、合理的だったものだったはず…なのにどうして、知っている?」
確かに…そうだ。
だから、グレン先生は仲間内でも、バカにされてきたんだ。
なのに何故、その事を知っている?
「ふん…何を言い出すかと思えば。
コイツはどこまで…!
イヴ先生を見ると、何も言わない。
おそらく真実なのだろう。
本当に…
「何処までも見下げ果てた奴だな、お前は。呆れて物も言えん。本当に下らない三下だよ、お前」
色んな感情が湧き上がり、最後にまとまった言葉は、これだった。
「…何?」
イグナイト卿が、こっちを睨む。
もう、何も思わない。
「前から思ってたんだけどさ、部下を使い潰して、成功を掴み取る作戦。…ハッ!最小労力、最大戦果が基本だろ。そんな下策中の下策でいいなら、
「なッ!?」
「下品で、下劣で、どうしようもない男。洗脳しないと、部下の1人も確保出来ない器の小ささ。こんな火事場泥棒みたいな真似しないと、クーデターの1つも起こせない肝の小ささ。お前の一挙手一投足、一言一句、その全てに、お前の程度が滲み出てるよ。みっともないにも程がある」
「〜ッ!?」
今度は、イグナイト卿が怒りのあまり、言葉が出ない。
「そんな小物のお前が、『王になる』?はあ?勘違いも甚だしい。寝言は寝て言えよ、三下が。お前の言う仮初の平和は、誰が守ってきたと思ってる。その平和を守る為に、身を粉にし、魂を削り、心血を注いできたのは、誰だと思ってる?」
俺は陛下をチラっと見た。
陛下のお気持ちを聞いて、その苦悩を垣間見て、俺は決めた。
国にでは無く、陛下に尽くすと。
「お前は王の器じゃない。
その言葉は、友軍の心に火をつけた。
消えかけていた火が、再び燃え上がる。
その熱が、ボロボロの体に、心に力を与える。
イグナイト卿は、怒りが一周まわって冷静になったのか、全軍に指示を出す。
「…ふん。何も理解していない青二才が。貴様こそ、寝言は寝てから言え。この現実をどうする気だ?」
そうして、リディアの合図で再び動き出す反乱軍だが、その時
「ふん。お前こそ、状況が理解出来てねぇよ。…なあ、システィ?」
「『我に従え・風の民よ・我は風統べる姫なり』!」
突然発生した大嵐が、イグナイト卿とリディア以外の反乱軍の全てを巻き込む。
その正体は
「先生!!準備出来ました!!」
「急いでください!!」
システィとルミアだ。
ルミアのアシストを受けたシスティの【ストーム・グラスパー】が、全てを飲み込む。
「ルミア!」
「アイル君!先生!」
俺は【次元跳躍】で、ルミアを呼び出し、ルミアの力を借りる。
「よし!行くぞ!!」
そう言って走り出す先生の背中に
「『我が手に星の天秤を』!」
【グラビティ・タクト】で、操作した重力で、一気に先生をイグナイト卿のところまで吹き飛ばす。
「させませッ!?」
「いやぁぁぁぁぁ!!」
リディアがそれを止めようした瞬間、リィエルが肉薄する。
「おぉぉぉぉぉぉぉ!!」
先生とリィエルが、力ずくで、【ストーム・グラスパー】の効果範囲まで吹き飛ばす。
その隙にリゼ先輩達が、何やら策があるのか、陛下達を逃がす。
もちろん包囲網が逃がさないようにするが、俺の【グラビティ・タクト】と、システィの【ストーム・グラスパー】が、それを許さない。
結果、俺達は何とかこの包囲網を突破し、何とか逃げ仰せたのだった。
アルタイルが言ってる事は、自分が読んで思った事です。
イグナイト卿は間違えなく、人の上に立ってはいけない人ですよね。
それでは失礼します。
ありがとうございました。