ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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さあ、魔術競技祭開催です。
2組の快進撃をご覧下さい。
よろしくお願いします。


魔術競技祭編2話

賭けが成立してから1週間がたった今日、遂に魔術競技祭が始まった。

 

「女王陛下の御成りー!」

 

その瞬間、みんなが拍手喝采を送る。

そんなみんなに優しく笑いながら手を振るう陛下。

相変わらずこの国は女王の人気が凄いな。

爺さんも婆さんもそう言ってたし。

 

「これより、魔術競技祭を開催します。皆さんの活躍を期待しています」

 

女王陛下のお言葉に会場が沸き立つ。

そんな陛下を複雑そうな気持ちで見ているルミア。

俺はなんて言葉をかけていいかわからず、頭をグシャグシャに掻き回す。

 

「わわっ!?アイル君!?」

 

「辛気くせぇ顔すんなよ!せっかくの祭りだぜ!色々と置いといて、楽しもうぜ!」

 

「…うん!楽しもう!」

 

ルミアに少し笑顔が戻る。

色んな思いが渦巻く中、今回の魔術競技祭が開催された。

 

「そして差し掛かった最終コーナー!2組のカイ君からバトンを受け取った2のロット君がそのまま3位でフィニッシュー!なんと【飛行競争】はなんとあの2組が3位でゴール!この展開を誰が予想したのかー!?」

 

「うっそ〜ん…」

 

「おい、ダメ教師。何言ってんすか」

 

自分のクラスが活躍してるのにその反応はあかんやろ。

 

「やりましたね!先生!」

 

「これも先生の作戦なの?」

 

ルミアとシスティーナが興奮したがら先生に詰め寄る。

 

「お、おう…今回の【飛行競争】は長丁場になるからな。俺が2人の消費魔力量をちょっと計算して、そのペースを維持するよう徹底させたのさ」

 

「す、すげぇ…俺たちこれなら…!」

 

「ああ、勝てる!勝てるぞ!」

 

先生の話を聞いてさらに沸き立つ2組。

そしてさらに胃が痛くなるグレン先生。

 

「ちっ…マグレで上位に入ったからっていい気になりやがって」

 

「マグレじゃねえ!これは先生の実力だ!」

 

「そうだ!お前らは所詮、先生の掌の上で踊ってるに過ぎないんだよ!」

 

「な、なんだと!?おのれ二組…次からはお前らを率先して狙ってやる!」

 

「へっ!返り討ちにしてやるぜ!俺達とグレン先生でな!」

 

あらら、胃痛が加速してくねグレン先生。

脂汗すっげぇなおい。

 

「せ、先生…大丈夫ですか…?」

 

「ルミア、今はそっとしていてやれ」

 

やれやれ…これじゃあ、1食だけじゃ厳しかったか?

まあ、今日の昼飯当番は俺じゃないしな。

…今日くらい、素直に頑張れよシスティーナ。

 

「2組のセシル君!【魔術狙撃】4位以内確定だ!」

 

「やった!先生の言う通りだった…!」

 

「2組のウィンディ選手!【暗号解読】圧勝だー!」

 

「先生のアドバイス通りでしたわ…!」

 

この後もうちの快進撃は続き、午前中は残り【精神防御】と新種目の【ハイド&ファイア】の2つ。

その段階でうちは3位になっていた。

でも、1位は1組で、地力の差が少しずつ出始めていた。

 

「先生、この調子だと…」

 

「分かってる。今はまだ勢いでどうにかなってるがそろそろ順位をあげておきたい。ルミア、アルタイル。お前たちが要だ」

 

そう言って俺達の肩を叩くグレン先生。

 

「まずはルミア、お前の【精神防御】だ。さっきはああ言ったがこれは危険な競技だ。無理はせず、しんどかったらギブするんだぞ?」

 

「大丈夫です先生。勝ってきます!」

 

そう言って真っ直ぐに会場へ向かうルミア。

その背中に不安を感じた俺は先生に声をかけた。

 

「先生、念の為タオルを」

 

「そうだな、投げる用意はしておくか」

 

俺達の不安を他所に遂に始まる【精神防御】。

担当するのは精神魔術の権威、ツェスト男爵だ。

こいつがまたとんでもない変態野郎だった。

 

「…吊るす」

 

「どこをだ!?なにをだ!?やめろ!落ち着け!」

 

「落ち着いてアイル!お願いだから落ち着いて!」

 

グレン先生とシスティーナが必死に俺を止める、というハプニングを起こしながらも競技が進む。

正直余裕かと思っていたが、5組のジャイル=ウルファート、パンパねぇんだあいつ。

意外に思われるがウルファートとは仲がいい。

実は去年1度だけ、理由は忘れたがマジ喧嘩したのだ。

多分喧嘩を売った買ったではなく、強そうだからだったと思う。

それ以来、たまにつるんでるのだ。

その時、現生徒会長のリゼ=フィルマー先輩に、しこたま怒られた。

今ではその時の事をエサにたまにこき使われている。

そんな関係ない事を考えてると、気づいたらルミアとウルファートの一騎打ちになっていた。

 

「おおー。あいつ相変わらずタフだな」

 

「知ってたのか?ジャイルとかいう奴の事」

 

「アイルは意外にジャイルとは仲良いですよ」

 

「見た目ほど悪い奴ではないからな」

 

そんな話をしてると、男爵が【マインド・ブレイク】を使うと宣言した。

【マインド・ブレイク】は対象の思考を破壊し、喪心状態にしてしまう、最も危険で高度な魔術の1つだ。

そんな魔術を30回も耐え抜く2人。

しかし31回目を耐えた時、ルミアが耐えたものの、膝を着いてしまう。

それを見た俺達は

 

「先生!」

 

「分かってる!棄権だ!2組はここで棄権する!」

 

先生がルミアの身を案じ、棄権を宣言する。

 

「先生!アイル君!私はまだ!」

 

やっぱりこういうと思った。

 

「ルミア、言ったろ?これは祭りなんだぜ?楽しまねぇと損だろ?」

 

「アイル君でも!?」

 

「それにお前に何かあったら俺は祭りを楽しめないぜ?もちろん、お前もな。だから…な?」

 

そう言いながらルミアの頭にタオルをかけ、優しく汗を拭いてやる。

 

「…分かった…///」

 

何故か耳を赤くしながら頷くルミア。

俺は不思議に思いながらもウルファートに声をかける。

 

「ウルファートは流石だな。お前は相変わらずというか、なんと言うか…?ウルファート?」

 

反応がないウルファートの様子を見てみると

 

「…え?あれ?立ったまま気絶してる!?」

 

俺の言葉に実況が確認し、ツェスト男爵に勝敗を尋ねる。

その結果

 

「ルミア君の勝ちだろうねぇ。棄権したとはいえ、直前の【マインド・ブレイク】はクリアした訳だし」

 

という訳で、一転、ルミアの優勝が決まった。

その結果、俺達は2位に浮上した。

 

「ルミア!やったな!」

 

「アイル君!やったよ!」

 

俺達はハイタッチした後、ルミアが興奮のあまり抱きついてくる。

ビックリしながらも何とか受け止める。

 

「アイル君!私…っ!///」

 

状況に気づいたのか慌てて離れるルミア。

 

「おーい!早く戻るぞ!」

 

「「あ!待って先生!?」」

 

慌てて俺達は先生をおう。

その間にこっそりと

 

「今のは忘れて…!///」

 

「ごめん、無理」

 

「アイル君〜!///」

 

そうして戻ると、

 

「「「「「「アイル貴様〜!」」」」」」

 

「「「「「ルミアはこっち!」」」」」」

 

男女それぞれに連行されました。

なんでさ。

 

 

オハナシが終わった俺はそのまま会場に向かった。

 

「アルタイル。ルミアが作ったこの流れ、切るなよ」

 

先生がプレッシャーをかけてくる。

もちろん、分かってるって。

 

「当然、やるからには勝つ」

 

この競技は最後の1人にしか点が入らない。

それ故に決闘戦に次ぐ高得点なのだ。

勝てば1位浮上、負ければ優勝に大きく遠のく。

いや〜我ながら、ヒリヒリするな〜。

 

「アイル、無茶するんじゃないわよ」

 

「OK。頑張るさ」

 

「アイル君…勝ってきて!」

 

「ルミア!?」

 

システィーナが驚きの声を上げる。

俺も驚いたけど。

だってそうだろ、あのルミアが心配ではなく、勝ってこいって言ったんだから。

その言葉を聞き、俺は無意識に笑みを浮かべていた。

 

「OK。任せろ!」

 

そう言いながら俺は何時もの赤い手袋を装着しながら会場に向かった。

 

「さあ!午前の部の最後は、今年からの新競技【ハイド&ファイア】!起伏に富んだ地形で魔術あり、武器ありのバトルロワイヤルです!最後に立っていた選手だけに得点が入る、まさに午前の部最大の目玉です!」

 

あの実況煽るのが上手いよな〜。

なんてぼんやり考えているとやたら視線を感じる。

視線の方を向くと、俺を除く各クラスの代表9人全員が俺を睨んでいた。

…まあ、なんて分かりやすい事。

 

「それではカウントダウンスタート!」

 

10秒前からカウントが始まる。

それぞれ、武器を構え、詠唱を始めれるようにしている。

俺もポケットから手を出し、糸を垂らす。

そしてカウントが0になった瞬間、

 

「『雷精の紫電よ!』」

 

「『大いなる風よ!』」

 

「『白き冬の嵐よ!』」

 

「『紅蓮の炎陣よ!』」

 

一斉に襲いかかってくる。

ほらやっぱり

 

「バカだろお前ら」

 

俺はすぐに糸を使い結界を張る。

全てを反射する結界をだ。

何が起こるかって?当然

 

「「「「な!?」」」」

 

自分たちが放った魔術が、全部跳ね返るだけの事。

ついでに威力を増幅させて。

そのまま半数が吹き飛び、残り半数がギリギリで回避する。

残りは7人、仕掛けるか。

 

「『三界の理・星の楔・律と理は我が手にあり』」

 

その間に俺はこの一週間の間に作った【固有魔術(オリジナル)】を展開した。

固有魔術(オリジナル)】とは、自身の【魂のあり方(パーソナリティ)】を元に、既存の汎用魔術を何らかの点で超えなくてはならない、キチガイの領域に足を突っ込まないと出来ないものだ。

グレン先生の【愚者の世界】がそれになる。

俺の固有魔術(オリジナル)【グラビティ・タクト】は【グラビティ・コントロール】の重くするやつと軽くするやつを両方を自在に使う魔術だ。

俺のパーソナリティは【万象の観測・干渉】。

俺は重力という自然現象を観測し、それに干渉しているのだ。

重力には引力と斥力がある。

俺はそれをすぐに切り替えられるように調整したのがこれである。

つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()

それが【グラビティ・タクト】だ。

 

「そら、耐えろよ」

 

俺は重力を横向きに放つ。

何が起きてるか分からないまま、吹き飛ばれる3人の選手。

残りは4人。

俺の背後から、剣を振り下ろそうとする選手の剣を斥力でへし折り、地面にめり込ませる。

 

「残念、まだまだだな」

 

そう言いながら外に吹き飛ばす。

残りは3人。

 

「『雷精の紫電よ!』」

 

「『大いなる風よ!』」

 

【ショック・ボルト】と【ゲイル・ブロウ】を、斥力で弾き飛ばす。

 

「そら、お返しだ!」

 

糸を適当な大きさに編み、紐状にして鞭の要領で吹き飛ばす。

あっという間に残り1人になったので最後に重力を一気に叩きつけて場外にたたき出す。

チェックメイト。

 

「し、終了ー!勝者は2組のアルタイル選手だー!まさに圧倒!圧倒的な勝利だー!そしてここで!なんと2組がトップに躍り出ます!」

 

その瞬間、会場が沸き立つ。

俺はそれらを一切無視しながら先生たちの元へ戻っていく。

 

「「「「「アイル!」」」」」

 

戻った瞬間、みんなに揉みくちゃにさせる。

 

「お前、いつの間にあんな固有魔術(オリジナル)を?」

 

「これですか?実は前々からやってたんですよ。この1週間で完成しただけです」

 

グレン先生曰く、まだ荒削りだが中々の完成度だとか。

そんな話をしてると

 

「アイル君!」

 

ルミアが走って駆け寄ってくる。

 

「ルミア。約束通り、勝ってきたぜ」

 

「うん!おめでとう!」

 

俺達はハイタッチする。

こうして午前の部は、俺達の優勢で幕を閉じたのだった。

 

 

午前の部が終わり、午後の部に入る前に昼休憩に入る。

俺は森に入り静かに1人で、妹のベガが作ってくれた、少し不器用なお弁当を食べようと、ベンチを探していた。

 

「ここでいいか…。いただきます!?」

 

突然、木の枝を折りながら何かがそばに落ちてきた。

ビックリした〜!

危うく弁当を落とすところだった…。

俺はそれを何か確認すると…。

 

「何してんだよ…グレン先生…」

 

「痛って〜…白猫のやつ、マジでぶっ飛ばしやがって…おう、アルタイルか。何してんだこんな所で?」

 

「いや、それ俺のセリフですから」

 

本当に何してんの?

何で空から落ちてきたの?

 

「いや〜、リンの特別講義でルミアの格好してたら、タイミング悪く白猫が来ちまって…。弁明する前に本人の登場でな…。キレた白猫に【ゲイル・ブロウ】でぶっ飛ばされたんだよ」

 

「はぁ…あの駄猫…」

 

何してんだよあいつ。

せっかく作ったものを台無しにしやがって…。

 

「先生〜!あれ?アイル君!何でこんなところに?」

 

「ルミアこそどうしたんだよ?」

 

そんなでかい包みを2つも持って何だ?

 

「あ、こっちは先生に。ある女生徒がとある男の人に作ったんですけど、喧嘩して渡しそびれてしまって…。捨てようとしてた所を貰ってきたんです」

 

そう言って包みを開けるルミア。

あれ?それはシスティーナと作ったサンドイッチじゃん。

実は前日にシスティーナは、俺に料理を教わりに来たのだ。

俺は弁当という事、素人という事、この2点からベーシックなサンドイッチを提案したのだ。

それすらも怪しい女子力に唖然としながらも、何とか完成させた品が、今包みに入って現れた。

…まあ、不幸中の幸いってやつか。

 

「ありがとうございます!大天使ルミア様!」

 

「キモ」

 

グレン先生は泣きながら、ルミアの手を握る。

思わず素の気持ちが出てしまい、本音をポロッと言ってしまう。

それに気にもとめず、サンドイッチをがっつくグレン先生を他所に、俺はもう1つの包みを指さす。

 

「ルミア、そっちは?」

 

「えっと…これは…///あれ?アイル君、それは?」

 

ルミアは俺の手にある弁当を指さす。

 

「妹が今日の為に、作ってくれたんだよ」

 

「そ、そうなんだ…」

 

そう言って暗い顔をしながら、そっと包みを隠すルミア。

その仕草に何となく察した俺は

 

「ルミア、それってお前が食べるの?」

 

「え?いや…食べないけど…」

 

「じゃあ、俺貰っていい?これだけじゃ足りなくて…」

 

ルミアの包みも貰うことにした。

ちなみに嘘はついていない。

ベガが作ってくれたのは嬉しいが、これだけじゃ少し足りないのは事実だ。

だから、ちょうど良かったのだ。

 

「!!いいよ!はいどうぞ!!」

 

途端にルミアの顔がパァァァっと明るくなる。

どうやら、読みは当たりらしい。

ルミアが開けてくれたお弁当は、中身はサンドイッチだった。

見た目は少し歪つだが、一生懸命作ったのがよく分かるものだった。

 

「「いただきます」」

 

俺達は手を合わせて早速ルミアのお弁当から手をつける。

うん、美味しい。

 

「うん、美味い」

 

「ほんと!?」

 

「ああ、本当だよ。美味しい」

 

ただ、少しマスタードが多い気がするから、若干辛い。

俺は大丈夫なので気にはしないが。

あと誤算だったのが、量が多かった事だ。

これは2人用だよな?

 

「アイル君!好きなだけ食べていいからね?」

 

はい?好きなだけ?

 

「え?ルミアは?」

 

「私はシスティと食べたから!」

 

「あ、ありがとう…」

 

腹を括るか…。

そう覚悟を決め、俺はこの弁当達と格闘を始めた。

 

「ふぅ〜…腹いっぱい…まじ入らん…」

 

「お前…よく入ったな…」

 

いや、あんな顔されてら残せんでしょ。

そんな腹ごなしをしている俺達に誰が近づいてきた。

 

「あなた、グレン=レーダスですよね?少しよろしいですか?」

 

ん?こんなところに誰だ?

しかも先生を知っている?

 

「はいはい、全然よろしくありませ〜ん。今飯食ったばっかりで滅茶苦茶忙し…ってえぇーーー!?女王陛下〜!?」

 

「「っ!?」」

 

本当じゃん!

女王陛下じゃん!

何でこんな所に!?




ありがとうございました。
たまには魔術でもすごいところを見せないと、ただの脳筋になりそうなアルタイルですね。
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