ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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小話10で知ってしまった事が、ここに繋がります。
そして…実験とは…?
それではよろしくお願いします。


覚醒編第3話

「…よし、これで準備OK」

 

俺は防寒用意と探索用意をしっかりと整え、玄関に向かう。

 

「…兄様」

 

振り返ると、ベガがいる。

その顔は、不安に満ちている。

 

「…行ってしまうのですね」

 

「まあな、あの人放っておけないし」

 

「…私、怖いです」

 

「…ベガ、1つお願いがある」

 

そう言って俺が渡したのは、ある仕掛けを施してあるお守りだ。

 

「もし、これで俺が話しかけた時、お前はこれであの術式を唱えるんだ。きっと使う、そんな気がする」

 

「…ッ!…分かりました!私も一緒に!」

 

「ああ、戦うぞ!一緒に!」

 

そう言って俺はベガの頭を撫でる。

そのまま立ち上がり、ドアを開けると

 

「アルタイル」

 

今度は爺さんと婆さんに呼び止められる。

 

「アルタイル、冷えるからこれ。持っていきなさい。お友達の分もあるわ」

 

水筒を4つ。

中にはコーヒーが入ってる。

 

「必ず帰ってこい。お前達が帰ってくる場所は、ワシらが守る」

 

「…ありがとう。行ってくる!」

 

そう言って俺は店を出る。

俺達は…グレン 先生と共に、【タウムの天文神殿】に向かう。

 

 

今の【タウムの天文神殿】は、危険度S級。

つまり最高危険度。

そんな中に、グレン先生1人では直ぐに死ぬ。

という訳で

 

「先生!寒い!早く行きましょう!」

 

「おはようございます!先生!」

 

「先生!」

 

「お前達!?何でここに!?」

 

リィエルを除く俺達3人は、先生について行く事になった。

もちろん、これはイヴ先生を含め、女王陛下すら許可を出した事だ。

グレン先生も、渋々同行を許可。

しかし、話はここからが本番だった。

 

「グレン、お前に話がある」

 

アルベルトさんが取り出したのは、魔晶石。

 

「【封印の地】には、帝国建国以来、あらゆる情報を蓄積する、【年代石】と呼ばれる魔導記録媒体があるという噂…知っているだろう?」

 

【封印の地】とは、国家を揺るがしかねない極秘情報から、禁忌の領域に踏み込んだ魔導書、魔導具、外道魔術師から魔獣…要するに、あらゆるヤバいものを詰め込むゴミ溜めだ。

 

「これはその【年代石】である事を調べたものだ。…ルミア=ティンジェル。お前にも関係する内容だ。辛い事実だが、よく聞け」

 

…王室に関係する秘密?

そんなもの…。

そう前置きして、アルベルトさんが見せたのは

 

「これって…王家の家系図?」

 

「そうだ。今代までの王家の家系図だ」

 

1番下には、エルミアナ…つまりルミアがいる。

その上には、陛下の名前。

その上、さらに上と…どんどん続いていく。

途中、レザリアの王様が、アルザーノ王家の家系の分家筋である事を知ったが…。

 

「…で?まさかレザリア王家の事を言いたい訳じゃねぇんだろ?」

 

「無論だ。この年代石には、魂紋も登録されている。()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「はあ?何言って…」

 

先生の言葉が止まる。

それは俺達もだ。

魂紋とは、魂の形だ。

故にそれは千差万別。

1人1人違うのが当たり前だ。

なのに…

 

「嘘…だろ…?」

 

初代建国王タイタスを始め、次々に下へ下へと光り出す。

当然飛ぶ代もあったが、それのほとんどの配偶者…つまり、歴代女王陛下の旦那の名前が光り出す。

唯一救いだったのが、アリシア七世の旦那…つまり、ルミアの父親が光らなかった事だ。

あまりにも悍ましいその線に、吐き気が抑えられない。

ルミアはきっと俺以上だろう。

 

「…ッ!?」

 

「ルミア!気をしっかり!」

 

システィが慌ててルミアの背中を摩る。

 

「肉体は違うが、魂は同じ。…つまりこれは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。如何なる外法で成しているかは分からないが…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだ」

 

もう、何も言えない。

言葉が見つからない。

 

「そしてもう2つ、分かった事がある。1つ目は、この魂紋と一致する人物がヒットした」

 

猛烈に嫌な汗が流れる。

まさか…

 

「…魔王、()()()()()=()()()()()か」

 

グレン先生の言葉に、アルベルトさんが黙って頷く。

 

「そうだ。この国…ひいてはレザリア王国。この2つは、魔王のある思惑の元、生み出された国という事だ」

 

それよりもだ…!

 

「ま、待ってください!じゃあ、この国…いや、天の知恵研究会は…!」

 

「ええ、そうよ」

 

俺の悪い予感を肯定したのは、イヴ先生だ。

天の知恵研究会の【大導師(ヘヴン)】フェロード=ベリフは、魔王ティトゥス=クルォーと()()()()だ。

つまり…!

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ハッ!まったくお笑いだわ!私達が流してきた血は、全部茶番だったって事よ!こんな事…あってたまるか…!!」

 

その悔しげなイヴ先生の顔を俺達は、悲痛な面持ちで見るしか無かった。

 

「…それで、アルベルトさん。2つ目は?」

 

「ああ、この同じ魂紋を持っているものとの婚姻、及び次の子供の出産の際、ある一族が関わっていた。それが…」

 

アルベルトさんの鷹の目が、俺を射抜く。

 

「お前達だ。()()()()()()

 

「「「「ッ!?」」」」

 

皆が驚いて俺を見る中、俺はというと

 

「…何か…そんな気はしてたんですよねぇ…」

 

ああ、やっぱりか。

そんな妙な納得があった。

 

「…実は…俺の一族、相当古いらしくて、魔王が健在だった時から、ずっと続いてきてたんですよ。それで…多分だけど、ルミアの正体分かった気がします」

 

「「「「ッ!?」」」」

 

俺はいつも小さくして保存してある、日記を取り出す。

 

「俺達の一族は、昔から魔王を倒す為に、あれこれ研究してきました。そこ途中、魔王にバレそうになったらしいんです。それを隠す為に、わざと魔王に取り入って、何らかの儀式に加担してたらしいんです。そこは書いてなかったんだけど…」

 

「それがこれって事か…」

 

俺はそんなグレン先生の呟きに首を横に振る。

 

「多分これだけじゃない…。ちょうど、ロラン=エルトリアとその代の当主は、共同で古代の研究をしたらしくて、それで分かったのは、魔王がまだ生きている事と、空の天使【レ=ファリア】が甦る事らしい」

 

「空の天使【レ=ファリア】が…?」

 

システィが怪しげに口を開く。

もちろん信じるとは思って無いが…。

 

「最初の代の当主達は、皆【レ=ファリア】の事を調べてたらしい。何でも、最初は【天空の双子神】の両方と契約してたらしいんだけど、時の天使【ラ=ティリカ】が、裏切ったらしいんだ。そこで、まだ魔王に従っていた【レ=ファリア】を調べたらしいんだが…」

 

そう言って俺はルミアを見る。

 

「その研究の中に、3つのキーワードが多く使われていたんだ。それが、【王者の法(アルス·マグナ)】、【銀の鍵】、【空間に作用する力】」

 

「【王者の法(アルス·マグナ)】に…!」

 

「【銀の鍵】だと…!」

 

システィと先生が、ルミアを見る。

ルミア自身も、口に手を当て、驚いている。

 

「そう。両方ともルミアが持つ力。つまり…」

 

「私は…【レ=ファリア】の生まれ変わり…?」

 

「…もっと厳密に言うなら、そのものかも」

 

俺が告げた真実は、あまりにも重かった。

ルミアも愕然としながら、膝をつく。

俺はルミアの背中を摩りながら、謝る。

 

「…ごめん。何て伝えたらいいか、分からなくて…ずっと黙ってた…。本当にごめん…」

 

俺は不甲斐ない自分に涙を堪えながら、ルミアの背中を摩る。

 

「つまり…魔王は、【レ=ファリア】を復活させる為に、こんな事をしてるって事が言いたいのか?」

 

「…それ以外に思いつかない」

 

俺達は何も言えず、黙り込む。

目的が分かったところで、やることは1つ。

 

「とにかく今はセリカを連れ戻す!それだけだ!」

 

グレン先生が強く言い切って、空気を払拭する。

 

「…今私達にルミアを守る余裕は無い。貴方達のそばにいさせる事が、1番安全と判断したわ。グレン、アルタイル。頼むわよ」

 

俺達はしっかりと頷いて、馬車を出発させる。

出来るだけ早く、神殿に辿り着くために、最短距離を突っ走らせて。

 

 

何とか夕方には着いた俺達はそのまま強行軍。

神殿に乗り込んで、早速狂霊達と戦っていた。

 

「『魔弾…斉射』!」

 

「『幻想の剣よ』!」

 

「フッ!」

 

システィの【マジック・バレット】と、先生の銃弾が、狂霊の群れをズタズタにして、俺が一気に切り込んで、祓う。

かれこれ3回目だが…

 

「S級って聞いてたから身構えてたけど…大した事ないな」

 

「うん…どういう事だろう?」

 

俺とルミアが不思議そうにしていると、グレン先生が答えてくれる。

 

「確かに変だな。まるで何かに怯えるように見えるな。仕方なく襲ってきてる、みたいな感じだしな」

 

何かに怯えているか…。

嫌な予感がするなぁ…。

こうして俺達は順調に、先を進む。

1日目、2日目、3日目と、順調に進み、明日には、最奥に着く。

そんな時に事件が起きた。

 

「〜♪」

 

「白猫、あまり離れるなよ」

 

「ルミア、あれ取って」

 

「はい、アイル君♪」

 

俺達はここまでとした場所で、休憩を取っていた。

この寒さだ、温かいスープは身に染みるだろう。

出来るだけ温まりやすい具材を入れて、作っていた。

それはそうと

 

「…ルミア?なんか楽しげだな?」

 

「ふぇっ!?///えっと…その…一緒にお料理が楽しくて…///」

 

「そ、そうか…///」

 

な、なんという小っ恥ずかしい事を…!

 

「おおー熱いな〜!こりゃスープも要らねぇかな〜?」

 

「ッ!?///だったら先生のは無しでいいですね!」

 

「ま、待て!悪かった!俺が悪かったからぁ!!」

 

そんな風に騒いでいると、突然、神殿内の仕掛けが動き出す。

 

「ッ!?ルミア!?」

 

「白猫!こっちに来い!」

 

先生が慌ててシスティを呼ぶのと同時に、俺達の景色が変わる。

 

「ッ!?これは、転移罠!?」

 

「そんな!?罠の有無は確認したはずです!?」

 

「いや、あのタイミングはきっと…俺達以外に誰かいる」

 

調べると、システィとは結構離れていた。

合流すれば、半日はかかる。

それはあまりにもでかいロスだ。

 

「…先生、このまま進みましょう」

 

「なッ!?アルタイル!」

 

「俺達のいる場所と、システィのいる場所は、大天象儀室まで、約半日です。だったらお互い先に進んだ方が効率がいいです」

 

先生がウダウダと渋っているのに、イラつくと

 

「先生、私もアイル君に賛成です」

 

「ッ!?ルミアまで…!」

 

⦅私もです、先生⦆

 

「白猫もかよ!?」

 

そばにいたルミアと、通信機越しのシスティが、俺に賛同する。

 

「俺達は、先生の足を引っ張るために、ついてきたんじゃない」

 

「先生がアルフォネア教授と再会する為に…その力になる為に来たんです!」

 

⦅だから…私達を信じて下さい!!⦆

 

俺達をしばらく見つめた先生は、やがてため息をつくと

 

「分かった。お前達の判断を信じる。大天象室で会おう」

 

⦅はい!⦆

 

「無理しないでね、システィ」

 

「先生の事は、俺達に任せろ」

 

俺達は二手に分かれて、進む事になってしまったのだった。

そしてお互いの先で

 

「ヒャハハハハハ!!久しぶりだな!白猫ちゃん!!」

 

「久しぶりだな…お前達」

 

かつての因縁と三度、ケリを付ける事になった。




次回、初のアルタイル以外の戦闘描写があります。
理由?好きだから書きました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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