彼女も立派な主人公ですよ!
それではよろしくお願いします。
目の前に立つこの男と会うのは、3回目。
東洋には、3度目の正直という言葉があるらしいけど、こんな3回目は嫌だ。
1度目の出会いは、テロ事件の時。
私に、魔術の恐怖を刻み込んだ。
2度目の出会いは、最悪の3日間の時。
私のトラウマを、見事に抉ってきた。
そして3回目が今。
この男…【ジン=ガニス】と出会うのは。
叫ぶと思った。
みっともなく泣いて、叫んで、喚くと思った。
きっとまた無様を晒すんだろうな…ってあれ?
「…?」
ここで初めて、自分が冷静にものを考えてる事に気付いた。
まだ早打ちは勝てない。
正面切っての撃ち合いは、圧倒的不利。
この石柱を利用出来ないかな?
まず私が打つべき手は?
…私どうしたんだろう。
怖いのに、恐怖してるのに、思考がフル回転している。
今もほら、アイツが何か言ってるけど、それは聞こえない。
それでも、アイツの何気ない動きにも敏感に反応している。
こういう時…アイルは何て言ってたっけ?
前に聞いた時は確か…
『格上とやり合う時?まあ、まずは彼我の戦力差の把握だな。だからまずは様子見。…って相手も思うだろうな、普通。だからまずは…』
「『雷帝の閃槍よ』」
「お?」
『相手の意表を突け!相手のペースに乗るな!自分のペースに合わさせろ!っかな?』
【ライトニング・ピアス】は弾かれたけど、まあ、意表はつけたかな?
「へぇ…やるじゃん白猫ちゃん。じゃあ…『ズドドドドドン』!」
これがアイツの得意技。
【ライトニング・ピアス】の詠唱を、『ズドン』まで切り詰めて、しかもそれの速射。
最速10連撃の内、今のは5連撃。
「『疾』!」
私はそのまま【
当然アイツもお得意の【
ほら、やっぱり私を舐め腐ってくるから…隙だらけなのよ。
しかし、相手は歴戦の外道魔術師。
とっさの直感で、私の攻撃は躱される。
だから私は…口を歪めて、指を曲げる。
意味は単純明快。
…
「この…くそ猫がァァァァァ!!」
ほら、やっぱり単純。
私は直ぐに【
「『雷帝の閃槍よ』」
迎撃に【ライトニング・ピアス】を放ち、誘導する。
案の定そっちに避けて、私が仕掛けた【エア・ブロック】にぶつかる。
「なぁ…!?まさか…最初から…!?」
堕ちていくアイツに笑いかけながら、直ぐに背を向けて、翔け出す。
「この…メスガキ…!」
「『雷帝の閃槍よ』!」
「『ズドドドドド』!」
私達は、壮絶な
「…お前は…」
俺は目の前に立つ男を睨みつける。
3度目の正直とは言うが…勘弁して欲しい。
1度目の出会いは、テロ事件の時。
あの時は、初めて実戦を知った。
2度目の出会いは、最悪の3日間の時。
再戦したあの時は、最後まではもたなかった。
そして3回目が今。
コイツ…レイク=フォーエンハイムと出会うのは。
どうやら、封印式を全部解呪してきたらしい。
…バカなやつ。
呆れたが、同情は無い。
邪魔するのなら…蹴散らすだけ。
「ルミア、頼む」
「うん、任せて」
ルミアが【
俺とグレン先生のマナが、一気に跳ね上がった。
「『我が手に星の天秤よ』!」
「ガアァァァァァァア!!」
俺とレイクが、正面切ってぶつかり合う。
俺の斥力と、龍鱗がぶつかる。
その隙を、先生が【クイーンキラー】で、撃ち抜く。
愛銃【ペネトレイター】とは、比べ物にならないその大頭弾が頭に当たり、大きく仰け反らせる。
その隙に俺は糸に斥力を乗せて、思いっきり叩きつける。
「フッ!」
「ガアァァァァァァ!!」
吹っ飛ぶレイクに対して
「行け!」
【クイーンキラー】の弾が追撃する。
この銃の効果は大きく分けて2つ。
・撃ち出した弾丸の弾道を、射手が自由に、操作出来る
・射手の魔力を元に弾丸を生成、1分後に再使用可能にする。
この2つだ。
かなり便利な代物だが、何故かグレン先生にしか使えない。
俺達は前衛、後衛に分かれて戦っている。
「『■■■』」
そしてレイクが発動する
「【私の鍵】!」
ルミアの空間能力が、一気に消し去る。
この隙に一気に踏み込む。
「おぉぉぉぉぉぉ!!!」
「ガァァァァァァ!!!」
俺とレイクの右拳がぶつかり、空間をねじ曲げる程の力を生み出す。
俺達の死闘は、まだ始まったばかりだ。
(速さにも種類があり、速さに勝る捷さがある)
システィーナが思い出すのは、サハラのアディルだ。
彼は、華麗な体術でシスティーナを翻弄した。
(ありがとう、アディル。貴方のお陰で、私は強くなれた)
そんなシスティーナを見たジンは愕然とする。
(ふざけんな!何だよあの、三次元機動!あんな動き、あのセラ=シルヴァースしか…!)
自身を軽くあしらって翻弄した女と、システィーナを重ねて、余計苛立たせる。
(何にイラついてるのかしら…?)
まだ舐め腐っているジンに、システィーナが仕掛ける。
ちょうど一直線になったタイミングで、右にフェイントを入れてから、【
その瞬間、ジンがシスティーナの頭上を通り過ぎて行くのを確認して、直ぐに再点火。
追いついてから
「『唸れ暴風の戦鎚』!」
一気に撃ち上げる。
「ガハァ…!?…ふざけるなぁァァァァ!!!」
ジンが抜け出して視線を下げた先には、システィーナの【シュレッド・テンペスト】。
広域殲滅魔術のこれに左右の逃げ場は無い。
天井近くまで撃ち上げたから、上にも逃げられない。
「…Jesus…!」
「チェックメイトよ」
そのままジンは、ズタズタに引き裂かれるしか無かった。
「【
「ガアァ…ァァァ…」
「…チェックメイトだ、レイク」
俺は槍でレイクの魂を貫いた。
これでもう終わり…もう、終わりだ。
「哀れな奴だ…その先には何も無い。それを分かっていた筈なのにな…」
そしてレイクは、光の粒子となって消えた。
「アイル君…!」
ルミアが直ぐに
「…アイツ、どうして…」
「意味が欲しかったんじゃねぇか?」
俺の呟きに答えたのは、グレン先生だった。
「意味…ですか?」
「ただ破滅を呼ぶだけの力に、意味を見いだせず、自分自身にも意味を見いだせない。…ある意味、俺とコイツは似てるのかもな。ありもしない理想を追い求めて…。もしあの時の俺に、こんな力がチラつかせられたら…」
俺とルミアはそんな先生の話を止める。
「そんなたらればの話なんて、しても意味無いですよ」
「それに先生は、きっとこうはなりません。私達の尊敬する先生が、こんな結果選ぶ訳ありません!」
そんな俺達を見て、先生は笑いながら、俺達の頭を撫でる。
「…ありがとうな。さて、先に進ますか!」
俺達は先に進んだ。
システィが来ると信じて。
「ゼヒュー…ゼヒュー…!」
「はぁ…はぁ…はぁ…!」
勝敗は決した。
明らかにボロボロのアイツと、しっかり立っている私。
一応ある呪文を唱えて、備える。
「…ねぇ。一体なんのつもり?何を企んでるの?」
アイツは目の前で、唖然としている。
どうやら、何か企んでる訳では無いらしい。
「ヒッヒャハハ…ヒャハハハハハ!!ゲホッ…!何も…企んでねぇよ!お前が俺より…強ぇだけだぜ!ゴホ…!」
…これも嘘では無いようね。
「なら…」
私がトドメを刺そうと指を構えると
「ヒッ!?ま、待ってくれ!?頼む…殺さないでくれ!
そう命乞いをするアイツを見て。
何て無様、何て滑稽なんだろう…そう思った。
「たしかに、貴方の言葉は嘘じゃないようね。…でも
「なっ!?…ッ!?その目は…【マインド・リーディング】…!? 」
そう、私が備えた呪文は【マインド・リーディング】。
コイツの心の中を覗いていた。
いくら口では命乞いしてようが…コイツの心の中は、
「ま、待て!お前本当に分かってるのか!?人殺しだぞ!?お前みたいな未来あるガキが、本気で殺るってのか!?お前みたいな中途半端なガキが、そんな事したら、お前の心に必ず、暗い影が落ちる!…今までの人生には、戻れねぇんだぞ!?」
そうね…コイツの言う通りだわ。
でもね…
「それでも私は、
それに私は…サクヤさんを蹴り落としている。
このまま見逃せば、彼女に合わせる顔が無い。
だから…ここで確実に、殺す。
そしてジンは、この時やっと悟った。
自分の命運が尽きた事を。
目の前にいる少女が…
「ま、待ってくれぇぇぇぇぇぇ!!!?」
そんな無様な命乞いをするコイツに私は
「ごめんなさい。…そして、さようなら。ジン=ガニス」
【
その超高圧電流にジンの体が1度跳ねて…そして、死んだ。
「…ッ!」
思わず口元を抑えて、蹲る。
正直言って、気分が悪い。
何かとてつもない喪失感を感じる。
それでも…!
「先生やアイルは、これを乗り越えてきたんだ…!だったら…!」
私だって乗り越える。
言い訳はしない。
私が殺したこの事実と、一生戦うんだ。
だから
「先に進もう。皆が最深部で待ってる」
威風堂々たるその歩みには、子供特有の迷いや躊躇いは、最早微塵も無かった。
初期からいるキャラのジンを、ここで初めて出しといて、すぐさようならする僕。
アルタイルとレイクは、男同士の奇妙な友情があったのでしょう…、少し悲しげにお別れさせました。
次はついにアイツが出てきます…!
それでは失礼します。
ありがとうございました。