ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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システィーナ…本当に強くてかっこいい子になりましたよね…。
彼女も立派な主人公ですよ!
それではよろしくお願いします。


覚醒編第4話

目の前に立つこの男と会うのは、3回目。

東洋には、3度目の正直という言葉があるらしいけど、こんな3回目は嫌だ。

1度目の出会いは、テロ事件の時。

私に、魔術の恐怖を刻み込んだ。

2度目の出会いは、最悪の3日間の時。

私のトラウマを、見事に抉ってきた。

そして3回目が今。

この男…【ジン=ガニス】と出会うのは。

叫ぶと思った。

みっともなく泣いて、叫んで、喚くと思った。

きっとまた無様を晒すんだろうな…ってあれ?

 

「…?」

 

ここで初めて、自分が冷静にものを考えてる事に気付いた。

まだ早打ちは勝てない。

正面切っての撃ち合いは、圧倒的不利。

この石柱を利用出来ないかな?

まず私が打つべき手は?

…私どうしたんだろう。

怖いのに、恐怖してるのに、思考がフル回転している。

今もほら、アイツが何か言ってるけど、それは聞こえない。

それでも、アイツの何気ない動きにも敏感に反応している。

こういう時…アイルは何て言ってたっけ?

前に聞いた時は確か…

 

『格上とやり合う時?まあ、まずは彼我の戦力差の把握だな。だからまずは様子見。…って相手も思うだろうな、普通。だからまずは…』

 

「『雷帝の閃槍よ』」

 

「お?」

 

『相手の意表を突け!相手のペースに乗るな!自分のペースに合わさせろ!っかな?』

 

【ライトニング・ピアス】は弾かれたけど、まあ、意表はつけたかな?

 

「へぇ…やるじゃん白猫ちゃん。じゃあ…『ズドドドドドン』!」

 

これがアイツの得意技。

【ライトニング・ピアス】の詠唱を、『ズドン』まで切り詰めて、しかもそれの速射。

最速10連撃の内、今のは5連撃。

 

「『疾』!」

 

私はそのまま【疾風脚(シュトロム)】で石柱まで逃げて、アイツの死角になるところで、上に登る。

当然アイツもお得意の【疾風脚(シュトロム)】で、追いかけて来る。

ほら、やっぱり私を舐め腐ってくるから…隙だらけなのよ。

しかし、相手は歴戦の外道魔術師。

とっさの直感で、私の攻撃は躱される。

だから私は…口を歪めて、指を曲げる。

意味は単純明快。

()()()()()()()()…だ。

 

「この…くそ猫がァァァァァ!!」

 

ほら、やっぱり単純。

私は直ぐに【疾風脚(シュトロム)】で翔け出し、同時に仕込みもする。

 

「『雷帝の閃槍よ』」

 

迎撃に【ライトニング・ピアス】を放ち、誘導する。

案の定そっちに避けて、私が仕掛けた【エア・ブロック】にぶつかる。

 

「なぁ…!?まさか…最初から…!?」

 

堕ちていくアイツに笑いかけながら、直ぐに背を向けて、翔け出す。

 

「この…メスガキ…!」

 

「『雷帝の閃槍よ』!」

 

「『ズドドドドド』!」

 

私達は、壮絶な空中戦(ドッグファイト)を始めた。

 

 

 

「…お前は…」

 

俺は目の前に立つ男を睨みつける。

3度目の正直とは言うが…勘弁して欲しい。

1度目の出会いは、テロ事件の時。

あの時は、初めて実戦を知った。

2度目の出会いは、最悪の3日間の時。

再戦したあの時は、最後まではもたなかった。

そして3回目が今。

コイツ…レイク=フォーエンハイムと出会うのは。

どうやら、封印式を全部解呪してきたらしい。

…バカなやつ。

呆れたが、同情は無い。

邪魔するのなら…蹴散らすだけ。

 

「ルミア、頼む」

 

「うん、任せて」

 

ルミアが【王者の法(アルス·マグナ)】を発動。

俺とグレン先生のマナが、一気に跳ね上がった。

 

「『我が手に星の天秤よ』!」

 

「ガアァァァァァァア!!」

 

俺とレイクが、正面切ってぶつかり合う。

俺の斥力と、龍鱗がぶつかる。

その隙を、先生が【クイーンキラー】で、撃ち抜く。

愛銃【ペネトレイター】とは、比べ物にならないその大頭弾が頭に当たり、大きく仰け反らせる。

その隙に俺は糸に斥力を乗せて、思いっきり叩きつける。

 

「フッ!」

 

「ガアァァァァァァ!!」

 

吹っ飛ぶレイクに対して

 

「行け!」

 

【クイーンキラー】の弾が追撃する。

この銃の効果は大きく分けて2つ。

・撃ち出した弾丸の弾道を、射手が自由に、操作出来る

・射手の魔力を元に弾丸を生成、1分後に再使用可能にする。

この2つだ。

かなり便利な代物だが、何故かグレン先生にしか使えない。

俺達は前衛、後衛に分かれて戦っている。

 

「『■■■』」

 

そしてレイクが発動する竜言語魔術(ドラゴイッシュ)

 

「【私の鍵】!」

 

ルミアの空間能力が、一気に消し去る。

この隙に一気に踏み込む。

 

「おぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「ガァァァァァァ!!!」

 

俺とレイクの右拳がぶつかり、空間をねじ曲げる程の力を生み出す。

俺達の死闘は、まだ始まったばかりだ。

 

 

 

(速さにも種類があり、速さに勝る捷さがある)

 

システィーナが思い出すのは、サハラのアディルだ。

彼は、華麗な体術でシスティーナを翻弄した。

 

(ありがとう、アディル。貴方のお陰で、私は強くなれた)

 

そんなシスティーナを見たジンは愕然とする。

 

(ふざけんな!何だよあの、三次元機動!あんな動き、あのセラ=シルヴァースしか…!)

 

自身を軽くあしらって翻弄した女と、システィーナを重ねて、余計苛立たせる。

 

(何にイラついてるのかしら…?)

 

まだ舐め腐っているジンに、システィーナが仕掛ける。

ちょうど一直線になったタイミングで、右にフェイントを入れてから、【疾風脚(シュトロム)】を止める。

その瞬間、ジンがシスティーナの頭上を通り過ぎて行くのを確認して、直ぐに再点火。

追いついてから

 

「『唸れ暴風の戦鎚』!」

 

一気に撃ち上げる。

 

「ガハァ…!?…ふざけるなぁァァァァ!!!」

 

ジンが抜け出して視線を下げた先には、システィーナの【シュレッド・テンペスト】。

広域殲滅魔術のこれに左右の逃げ場は無い。

天井近くまで撃ち上げたから、上にも逃げられない。

 

「…Jesus…!」

 

「チェックメイトよ」

 

そのままジンは、ズタズタに引き裂かれるしか無かった。

 

 

 

 

「【果てへと手向ける彼岸の槍(アリアドネ·リコリス)】」

 

「ガアァ…ァァァ…」

 

「…チェックメイトだ、レイク」

 

俺は槍でレイクの魂を貫いた。

これでもう終わり…もう、終わりだ。

 

「哀れな奴だ…その先には何も無い。それを分かっていた筈なのにな…」

 

そしてレイクは、光の粒子となって消えた。

 

「アイル君…!」

 

ルミアが直ぐに法医呪文(ヒーラー·スペル)で、癒してくれる。

 

「…アイツ、どうして…」

 

「意味が欲しかったんじゃねぇか?」

 

俺の呟きに答えたのは、グレン先生だった。

 

「意味…ですか?」

 

「ただ破滅を呼ぶだけの力に、意味を見いだせず、自分自身にも意味を見いだせない。…ある意味、俺とコイツは似てるのかもな。ありもしない理想を追い求めて…。もしあの時の俺に、こんな力がチラつかせられたら…」

 

俺とルミアはそんな先生の話を止める。

 

「そんなたらればの話なんて、しても意味無いですよ」

 

「それに先生は、きっとこうはなりません。私達の尊敬する先生が、こんな結果選ぶ訳ありません!」

 

そんな俺達を見て、先生は笑いながら、俺達の頭を撫でる。

 

「…ありがとうな。さて、先に進ますか!」

 

俺達は先に進んだ。

システィが来ると信じて。

 

 

 

 

「ゼヒュー…ゼヒュー…!」

 

「はぁ…はぁ…はぁ…!」

 

勝敗は決した。

明らかにボロボロのアイツと、しっかり立っている私。

一応ある呪文を唱えて、備える。

 

「…ねぇ。一体なんのつもり?何を企んでるの?」

 

アイツは目の前で、唖然としている。

どうやら、何か企んでる訳では無いらしい。

 

「ヒッヒャハハ…ヒャハハハハハ!!ゲホッ…!何も…企んでねぇよ!お前が俺より…強ぇだけだぜ!ゴホ…!」

 

…これも嘘では無いようね。

 

「なら…」

 

私がトドメを刺そうと指を構えると

 

「ヒッ!?ま、待ってくれ!?頼む…殺さないでくれ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()もうお前達にも近付かねぇ!だから頼むよぉ!!」

 

そう命乞いをするアイツを見て。

何て無様、何て滑稽なんだろう…そう思った。

 

「たしかに、貴方の言葉は嘘じゃないようね。…でも()()。貴方は邪悪だわ。このまま放っておいたら、私の大切な人達が、危ない目に遭う。だから…貴方は、ここで殺す」

 

「なっ!?…ッ!?その目は…【マインド・リーディング】…!? 」

 

そう、私が備えた呪文は【マインド・リーディング】。

コイツの心の中を覗いていた。

いくら口では命乞いしてようが…コイツの心の中は、()()()()()()()()()()()()

 

「ま、待て!お前本当に分かってるのか!?人殺しだぞ!?お前みたいな未来あるガキが、本気で殺るってのか!?お前みたいな中途半端なガキが、そんな事したら、お前の心に必ず、暗い影が落ちる!…今までの人生には、戻れねぇんだぞ!?」

 

そうね…コイツの言う通りだわ。

でもね…

 

「それでも私は、()()()よ。『汝望まば、他者の望みを炉にくべよ』…。自分の譲れないものの為に、あらゆる手を尽くす。たとえ他者を蹴り落としてでも。それが私達、()()()()()()

 

それに私は…サクヤさんを蹴り落としている。

このまま見逃せば、彼女に合わせる顔が無い。

だから…ここで確実に、殺す。

そしてジンは、この時やっと悟った。

自分の命運が尽きた事を。

目の前にいる少女が…()()()()()である事を。

 

「ま、待ってくれぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

そんな無様な命乞いをするコイツに私は

 

「ごめんなさい。…そして、さようなら。ジン=ガニス」

 

時間差詠唱(ディレイ·ブースト)】で発動した【ライトニング・ピアス】が、ジンの心臓を貫く。

その超高圧電流にジンの体が1度跳ねて…そして、死んだ。

 

「…ッ!」

 

思わず口元を抑えて、蹲る。

正直言って、気分が悪い。

何かとてつもない喪失感を感じる。

それでも…!

 

「先生やアイルは、これを乗り越えてきたんだ…!だったら…!」

 

私だって乗り越える。

言い訳はしない。

私が殺したこの事実と、一生戦うんだ。

だから

 

「先に進もう。皆が最深部で待ってる」

 

威風堂々たるその歩みには、子供特有の迷いや躊躇いは、最早微塵も無かった。




初期からいるキャラのジンを、ここで初めて出しといて、すぐさようならする僕。
アルタイルとレイクは、男同士の奇妙な友情があったのでしょう…、少し悲しげにお別れさせました。
次はついにアイツが出てきます…!
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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