いつもながらグレンは、こういう変なあだ名のセンスが面白いですよね(笑)
それではよろしくお願いします。
【タウムの天文神殿】探索から5日目。
ついに
その部屋を象徴する、天象装置は既に稼働済み。
その機械のそばに、男が立っていた。
今すぐにでも襲いかかりたいその気持ちを抑えて、静かに身構える。
「フェロード=ベリフ…!」
「やあ、【愚者】のグレン=レーダス。そして【継人】のアルタイル=エステレラ」
身構えてる俺達を穏やかに笑いながら、見つめるフェロード。
俺達は周囲を見渡し、アルフォネア教授がいない事を確認する。
「セリカはどこへやった?」
「まさか、僕が来た時にはいなかったよ。そもそも残られた方が厄介だ。それに癪だけど、これが歴史の正しい流れだ」
意味のわからねぇ事を…!
「フェロードさん…どうして…!?」
突然ルミアが口を開く。
その様子は、何かに戸惑っている様子だった。
「ルミア、これと話なんて無駄だ」
「違うの、アイル君。そうじゃなくて…」
「フェロード=ベリフ。スペルにするなら、【Felord Belif】かしらね?普通に考えるなら」
突然後ろから声がする。
振り返るとそこには、システィがいた。
「白猫!?」
「…ったく、心配かけさせやがって…!」
「システィ!?無事だったんだね!?」
再会を喜ぶ俺達だったが、当の本人は俺達をスルーして、フェロードと向き合う。
「この名前、
「…」
「…は?」
いきなり何言ってるんだ?
笑いながら、続きを促すフェロード。
呆ける俺達を無視して、システィが続ける。
「私思い出したの。お爺様が亡くなったあの日、私お爺様の顔を見てないのよ。普通、故人との最後のお別れがあるはずなのに。だから、お父様の日記を見て調べたわ。すると、まさに峠だってその日に、行方不明になっていたのよ」
ここで一度区切って、核心を突く。
「貴方は何者なの…?どうして、若い頃のお爺様に瓜二つなの!?貴方は、本当にお爺様なの!?」
「…その質問の答えは、YESであり、NOでもある」
フェロードが、何処か要領を得ない感じで答える。
「僕はレドルフであって、そうでは無い。【継魂法】とは、そういうものなのさ」
「【継魂法】…?」
先生の呟きに、フェロードが笑う。
「君達の事だ。僕が古代の魔王、ティトゥス=クルォーであることは、知ってるだろ?昔、ある戦いで肉体を失ってね。脆弱な人の器に収まらなくてはならなかったんだ。ところがある目的の為に、長生きしなくちゃいけなかったんだけど、君達に質問だ。1番障害となるのは、何だと思う?」
「…肉体ですか?老いたらどうしようも…」
まず、ルミアが答える。
「ハズレ。真の魔術を使役する僕は、肉体は自由に操れる」
「じゃあ、魂?」
次はシスティだ。
「それもハズレ。霊魂は【摂理の輪】を永遠に円環している。霊魂そのものは不滅さ」
なら、最後の1つだけだな。俺が答える。
「…精神だな。いくら肉体や魂がマトモでも、精神がイカれてたら、意味が無い」
「正解だ」
なるほどな、そういう事か。
「…この外道が。それを克服するのが【継魂法】って事か」
先生があまりの外道ぶりに、吐き捨てるように言う。
「さっきも言ったの通り、魂は不滅だ。だからここに自分の意思を刻み込む。その後、他人に継承させ、その新鮮な精神に僕の魂を上書きする。こうすれば、僕の意思を継ぐ新たな僕が誕生だ」
「故に、爺さんであってそうでは無いって事か」
ここまでタネが明かされ、システィが信じられないと、言わんばかりに叫ぶ。
「嘘…嘘よ!あんな人格者だったお爺様が…!」
「いや、事実だよ。彼は心から僕を受け入れてくれた。そもそもこの【継魂法】は、双方の合意が無いと出来ないんだ」
「嘘よ!!お爺様を誑かしたに…」
「いや、多分ソイツの言う事は事実だ」
システィのヒステリックを、先生が止める。
「アイツの意思がどれだけ強いかは知らんが、意思だけで人を思い通りにさせるのは、不可能だ。お前の爺さんは、メルガリアンだったな」
「…あ」
「きっと死の間際、メルガリウスに関する秘密を触れられる…そう思っちまったら、いくら人格者でも飛びつくかもしれない」
不意にシスティの脳裏を過ぎる、祖父の言葉。
確かに…否定出来ない。
「ハハ…君は本当に優秀だね、グレン。【愚者】と呼ぶのは惜しくなるよ。そう、人の意思は強い。だからとある条件を加えたんだ。それは…真にメルガリウスの天空城の謎に迫ろうとする者。その点、君の祖父は、最高の適格者だったよ」
システィが、ついに怒りを露わにする。
「許さない…!お爺様の夢に漬け込んだのね!」
「怒らないで、我が孫娘」
「うるさい!貴方なんかお爺様じゃない!!その口で、お爺様の夢を語るな!!!」
「…システィ。落ち着け」
俺は強くシスティの肩を握って、今にも突っ込みそうなシスティを止める。
「…何故そこまで?」
ルミアが呆然と尋ねる。
「全てはあの天空城に至る為。そして【
ッ!?今のは…ロラン=エルトリアの最後の言葉!?
後半部分が逆だけど…。
救済って何だ?
「そしてあの城に帰還する為に必要だったのが…ルミア、君だったんだ」
「…ッ!?」
あまりにも薄ら寒い笑みに、1歩後ずさる。
そんなルミアに感極まったような笑みを浮かべる。
「本当に長かった…。あの時、君が滅ぼらされたから、何とか元通りにしようとしたんだけど、その方法は1つしか無かった。それは、女しか産まれない呪いをかけた一族と、代々延々と子を成し続ける事だったんだ」
「「「…ッ!!?」」」
「…その為の【継魂法】…その為の、俺達か…」
あまりの悍ましさに、声を絞り出すのがやっとだった。
「その通り。【マグダリアの受胎儀式】と言ってね。僕でも成功させるが難しくてね、だから君達エステレラ家に力を借りたんだ。だけどね…」
そこで言葉を切って、俺を蔑むように睨む。
「君達、ずっと前から、それこそ僕の手伝いをする前から、僕を裏切る気だったんだろ?全く…飼い犬に手を噛まれた気分だったよ。だから…自らの手で滅ぼしたんだ」
「…クソが」
ここまで言われて、これ以上怒りと殺意を抱く事が出来なかった。
もう、限界いっぱいまで溜まっているんだろう。
「R因子統合率は【
「ぅ…ぁ…ぁぁ…」
流石のルミアも、生理的嫌悪にはどうしようも無い。
「さてと…もう辞世の句はいいだろ?覚悟出来てるよな?」
「テメェみたいな変態マスターはここで倒す」
「それ以上、お爺様の声で、悍ましい事を言わないで!」
俺達はもう十分だと言うように、戦闘体勢を整える。
しかし、余裕の笑みでルミアを見てから
「今こそ、愛しい君の心の名をここに呼ぼう!さあ、遥か悠久の時を超えて、再び僕の元へ戻ってきてくれ、愛しい君よ!君の名は…【レ=ファリア】!!」
ドクン!
「…え?」
私の中から、不穏な魔力の波長を感じた。
気付けば私は、三度この自分の世界に来ていた。
鎖に繋がれたもう1人の私。
その私の鎖が、1つずつ壊れていく。
「…あ…あぁ…」
何かとてつもなく悪い予感がするのに、見てるだけしか出来ない。
「ダメ!やめて!出てこないで!」
しかし止められず、ついに全ての鎖が外れてしまう。
〖私はあなた。あなたは私〗
「ち、違う…」
〖本当はもう、知ってるんだよね〗
「し、知らないよ…!」
〖私達は愛しいあの人の為にあったの。全てを愛しいあの人の為に尽くす。それが…私達の存在理由〗
「違う!そんなの、絶対に違う!」
〖これを見て…ルミア…〗
「…あ」
その手に握られていたのは、アセロ=イエロの時に振るった【銀の鍵】。
〖さあ、手を取って…。これは、あなたの力なんだから…〗
もう1人の私が、強引に握られようとしたその時
(『俺は戦う!お前に勝つ為に…何より!!お前に勝てない、そう思ってる弱気の俺に、勝つ為に!!!
』)
ルナ=フレアーと戦っているアイル君を、思い出す。
そうだ、彼は逃げない。
どんな圧倒的強者を前にしても、戦った。
目の前の敵とではなく、弱くて強い己自身と。
だから…私も…!
私は、もう1人の自分を突き飛ばして、毅然と言い放つ。
「出て行って。私は貴女じゃない。私の心を侵さないで。私の好きな人は…彼だけなの!」
彼女は、しばらく惚けたまま黙っていたけど
〖そう…ならもういい〗
私の心が冷たく凍りついた気がした。
〖愛しいあの人を裏切るなら…貴女なんて…もういいよ!〗
そう叫んだ途端、私に大量の鎖が絡みつき、最初の彼女みたいに、雁字搦めにされてしまう。
〖アハハ!たしかに私とあなたは別みたいね!だったら、もうあなたなんて知らない!代わりにそこでずっと、そうしてたらいいわ!〗
【銀の鍵】の光が増していく。
「ダメ…!やめてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
全てが白熱していく瞬間
⦅告げる!⦆
私の愛しいあの人の声が聞こえた。
「ルミア…?」
突然頭を抱えて、呻きながら蹲るルミアを抱える。
「おや?どうやら、ルミアが想定以上の抵抗をしているようだね」
ルミアが何かと戦っている。
だったら…ここしかない!
「ルミア!」
俺はルミアを抱えて少し後ろに下がってから、方陣を組む。
「何をする気かは知らないけど…させないよ!」
「先生!システィ!時間稼いで!お願い!」
「「分かった!」」
先生達にフェロードの足止めをお願いしつつ、ベガに渡した通信機を起動する。
「ベガ!行けるか!」
⦅兄様!はい、行けます!⦆
よし!ならやるぞ…ここが、正念場だ…!
「『告げる』!」
⦅汝が身は我が元に!⦆
「『我が命運は汝の鍵に』!」
「…まさか!させないよ!」
「『我に従え・風の民よ・我は風統べる姫なり』!」
「行け!【クイーンキラー】!」
先生達が抑えてくれている。
⦅追憶の縁より答えよ!⦆
「『汝外より来たりし空の器』!」
⦅されどその身は人の子なれば!⦆
「『その名をここに呼び示さん』!」
⦅汝の名は⦆
「『ルミア=ティンジェル』!」
⦅ルミア=ティンジェル!⦆
だから絶対に…成功させる!
⦅我と共にあれ!⦆
「『星辰の導きよ』!」
⦅なればこの命運!⦆
「『汝の鍵に預けよう』!戻ってこい!ルミア!!!」
⦅戻ってこい!ルミア!!!⦆
…ああ、そうだ。
戦うと決めたんだ、勝ち取るって決めたんだ。
だったら…こんな所で…!
「私…は…」
鎖を1本ずつ、自力で引き千切っていく。
〖嘘…どうして…!?どうして動けるの!?〗
「あ…あァァァァァァァァァァ!!!」
そして全ての鎖を引き千切る。
「私は!ルミア=ティンジェル!!!私の事は、私が決める!!!私の道は、私が決めるの!!!私は…彼と共に歩むの!!!だって…彼の事が、大好きだから!!!」
そうしていつも間にか手に握っていた、銀色のちっぽけな【私の鍵】を掲げて、
「私は私なの!!だから…出て行って!!!」
もう1人の私を外に追放したのだった。
「あァァァァァァァァァァ!!!」
人の声とは思えない声を発して、ルミアの胸元から、銀色の光が飛び出し、魔王の元へ飛んでいく。
そして、俺のそばには
「…アイル君!!!」
「ルミア!!!」
正気を取り戻したルミアが、俺に抱きつき、俺も抱き返していた。
「良かった…本当に…良かった…!」
「ありがとう…!本当にありがとう…!」
俺達はしばらく、お互いの存在を確かめるように、抱きしめあっていたが
「…やってくれたね、エステレラ家」
底冷えするような、フェロードの声に反射的に構える。
「長年、エステレラ家が何してきたか、考えてきたけど…まさか、【マグダリアの受胎儀式】で定着していた【レ=ファリア】を、引き離す術とはね。まあ、目的である彼女の魂は回収出来たしね。後は安定して力を発揮する為にも…ルミアの肉体は頂いていくよ」
しつこい奴だな。
「ふん、誰がルミアをやるかよ…!ルミア、行くぞ!」
「うん!行くよ!アイル君!」
俺とルミアがそれぞれ、【アリアドネ】と【銀の鍵】を掲げた瞬間、突然光りだし、2つが1つになった。
赤1色だった【アリアドネ】の赤がさらに深くなり、真紅になる。
そして、銀色の刺繍みたいなのが施され、その柄は、まるでルミアの鍵そのものだ。
「お前達…!?」
「それは…!?」
先生達が驚くが、俺達にも分からない。
そのはずなのに、何故かある名前が浮かぶ。
「「空天神秘【UNLIMITED CROSS RANGE】!!!」」
俺達はそう名付けた。
そして皮肉にもこの力は。
「驚いたな。…僕の空天神秘とは真逆じゃないか」
なにやら呟いていたが、俺達には聞こえなかった。
「こうなっては仕方ない。君達には、真理を見せよう」
「真理だと?」
「そうだよ。…さあ、その心で【
そう言って手袋を外して見せてきた紋様を見た瞬間、気付けば、さっきまでのは違う場所に来ていた。
実は最初から、ルミア奪還するシナリオは考えていたのですが…タイミングをすごく迷いました。
完全に奪われてからか…その直前か、この2択です。
今回奪われる前にしたのは、恐らく奪われてからでは、アルタイルでは間に合わないと踏んだから。
だからルミアの意思がまだある内に、取り返す事にしました。
ベガの【言祝ぎの巫女】としての力は、この為に使いました。
そして覚醒というタイトル…その意味は、この【アリアドネ】の覚醒、及び空転神秘の獲得にあります。
この名前、すごく悩みましたね…。
この力どう使うか…滅茶苦茶悩んでます!
それでは失礼します。
ありがとうございました。