ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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このフィジテ防衛戦編は、2話しかありません。
そして2話を以て、本編は一旦おやすみです。
なんか…追いついちゃいましたね…。
21巻が楽しみです!
それではよろしくお願いします。


フィジテ防衛戦編第1話

年が明け、夜が明ける。

上を見上げれば空は憎らしいほど晴天で、下を見下ろせば死肉の大海だ。

 

「…チッ。気持ち悪いな」

 

俺は学院の屋上からその光景を見つめ、イヴ先生の方に振り向く。

俺の視線には気付いているだろうが、こっちには見向きもしない。

 

「…いよいよね」

 

そう1つ呟いてから、強く宣言する。

 

「フィジテ最終防衛軍全部隊・全分隊に通達。戦術フェイズ1、状況開始」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

軍人さん達がドタバタとし出すのを見ながら、俺は昨日の話を思い出す。

 

 

 

 

「そもそも貴方達、何故フィジテで戦わないといけないと思う?」

 

「「え?」」

 

あまりにも突然な質問に2人揃ってポカーンとする。

いや、だって…

 

「それは、ここに陛下がいるから?」

 

「それは違うわ。だったらそもそも帝都じゃなくて、ミラーノを攻めればいいでしょう?」

 

「じゃあ、フィジテが2番目に栄えた街だからですか?」

 

「それも違うわ。もしそうだったら、今頃ここはとっくに落ちてるわ」

 

俺達はそれぞれ思い当たる可能性を言ってみたが、まるで分からない。

ここだから、意味のある事…?

 

「…メルガリウス?」

 

「…そうよ、正解。貴方達のこれまでの戦い、その全てに通じるメルガリウス。そこに全ての意味があったの。それは…聖杯の儀式」

 

「聖杯の儀式?」

 

「聖杯の儀式ってのは、童話【メルガリウスの魔法使い】の最終章に出てくる儀式の事だ。物語のオチとしては、正義の魔法使いに魔王が倒される事で、止められる訳だが。研究者の間では、その目的は【禁忌教典(アカシックレコード)】に至る為のものと言われてらしいが…」

 

俺はよく分かってないルミアに、出来るだけ分かりやすく説明する。

俺も最近かじった程度のにわか知識だけど。

 

「ざっくりそうね。敵の狙いはまさにそこよ。彼らはここで戦いを起こさせて、供物として血を流させること自体が目的なのよ。それが儀式の成功条件だから」

 

つまりそれは…

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…!?」

 

ルミアが震える声で呟く。

そう、戦わせる事が目的なら戦わなければいい。

でもそうしたら、ただひたすらに蹂躙されるだけ。

結果どう転がっても、アイツらの目的は…

 

「いえ、これがそうでも無いのよ」

 

「「え?」」

 

 

 

 

 

 

俺は次々と飛び交う戦況報告を聞き流しながら、状況を見守る。

 

「頃合いね。クリストフ、行ける?」

 

「はい、何時でも」

 

イヴ先生の傍らにいるクリストフが、頷く。

中庭を見下ろせば、敷設されている大型の儀式魔術方陣があり、既に【同時詠唱(シンクロ)】し始めている。

その様子を確認したイヴ先生は

 

「行くわ…女王陛下より帝国軍全権を受諾する帝国軍元帥にて、帝国最終防衛軍司令官、イヴ=ディストーレの名において、権能代行!起動承認!」

 

「了解!起動承認!」

 

「戦術儀式魔術、コードα!第一から第十方陣同時展開全解放!即時起動!」

 

「「「「「はっ!コードα!起動!」」」」」

 

イヴ先生の号令、クリストフの合図、儀式魔導兵の人達の復唱。

そして、一斉に起動する鍵呪文を唱えて

 

目標戦場全域(ターゲット·オールレンジ)!!撃て(フォイア)!!」

 

そして、方陣から一筋の光が飛び出し、その光は空に吸い込まれる。

やがて憎らしい程の青空に、雲がかぶさり、雨が降り出す。

そして…【最後の鍵兵団(ウルティムス·クラーウィス)】の動きが()()()()

 

 

 

その頃【最後の鍵兵団(ウルティムス·クラーウィス)】を操っていたエレノア=シャーロットと、パウエル=フゥーネは驚きで硬直していた。

 

「ほう…なんと、これは…」

 

「そんな…!?()()()()()()()!?聖儀【ピュリファイドレイン・サンクチュアリ】!?どうしてこの状況で、この術を…!?」

 

 

 

城壁で歓声が上がってるのを聞きながら、俺は思わず感嘆の声をあげる。

 

「おーおー。マジで止まった…!」

 

「当然よ。今仕掛けても意味無いもの。困るでしょう?()()()()()()()()()()()()()()()()…!」

 

 

 

 

「そうでも無いって…どういう意味ですか?」

 

「聖儀【ピュリファイドレイン・サンクチュアリ】。A級軍用魔術でありながら、一切の攻撃力を持たない、戦後処理魔術よ。その効果は、死した命や魂を浄化よ」

 

ああ、そういう事か。

 

「相手が古代の魔王だろうが何だろうが、ここの霊脈(レイライン)を利用するのが1番効率がいい。だからそれに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「そういう事よ。そして…」

 

 

 

 

「そして、今戦争は起こせない。戦わせても意味が無いから。だから止まるしかない…。接敵必死のエリエーテも動かせない。そうよね?…クソ喰らえだわ!!」

 

そうほくそ笑んでから、次の号令を出した。

 

「二の矢!行くわよ!戦術儀式魔術!コードβ!起動準備開始!」

 

「「「「「はっ!」」」」」

 

イヴ先生が次の一手を打つ。

 

 

天を貫き、大地を震わす極太の稲妻が、死肉の海の一角に大炸裂。

雨に濡れた大地に電撃が走り、その一帯を丸焦げにする。

あまりにも想定外の状況に、思わず叫ぶエレノア。

 

「こ、この術は…戦術A級軍用魔術、黒魔儀【ストライク・ジャッジメント】!!?何なんですか、()()()()()()()()()()()()()()()!!!?」

 

 

 

 

「【ストライク・ジャッジメント】?()()()()()()()それ?」

 

()()()()()()()よ」

 

俺はあまりにも無い選択肢に、思わず唖然とするが、自信ありげに返された。

 

「アイル君?知ってるの?」

 

「ああ、【ストライク・ジャッジメント】ってのは、攻城魔術…つまり点制圧なんだ」

 

基本的にどのA級軍用魔術も、面制圧だ。

それぞれに欠点はあるものの、面制圧の対軍魔術なのに対して、【ストライク・ジャッジメント】は、点制圧の攻城魔術。

 

「つまり…今回みたいは大軍との戦いには、向かないって事?」

 

「そういう事」

 

「もちろん意味はあるわ。1つ目は、()()()()()()()()()、比較的に広範囲に攻撃が可能だわ。2つ目は、()()()。低コストで用意が出来るこの術はもってこいなのよ。そして…」

 

 

 

 

「3つ目が()()()()()()()。古代の魔王ですら、数百年と年月をかけて、数を集めてきた。しかしこのプランは、あくまで予備プラン。メインのシナリオでは無い」

 

「だったら、それほど数に余裕がある訳じゃない。ざっと計算した結果…1()0()()。それが貴方達の限界よね?…さて、天の知恵研究会。なに、余裕ぶってるのかしら?まだ分からない?()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

そう言ってイヴ先生が、次の一撃の用意の合図を送り、次に備えた。

 

 

 

そして、再び放たれる雷豪一閃。

一角を抉り飛ばされるのを、エレノアは歯噛みしながら睨む。

 

「このまま鴨撃ちはマズイ…!」

 

次弾装填までの時間、1発辺りの被害率…それらを計算すると、1()0()()

それだけ食らうと、儀式が失敗してしまう。

それまでに、この忌々しい雨が上がることも無いだろう。

 

「普通しますか…!?こんな博打みたいな作戦…!?」

 

焦るエレノアとは対照的に

 

「いや、大した将ですな、イヴ=イグナイト。…いや、ディストーレでしたかな?しかし惜しい。本来なら今頃その辣腕を【最後の鍵兵団(ウルティムス·クラーウィス)】で発揮していたはずなのに…ままなりませんな」

 

「ッ!?」

 

穏やかに笑うパウエル。

しかし、パウエルの言葉を聞いて、硬直するエレノア。

先のミラーノでのイグナイト卿の一件。

使い魔で監視していたエレノアは知っていた。

イヴを引き留めたのが、グレンとアルタイルである事を。

 

(またあの2人…!特にグレン=レーダス!)

 

この間、ある事情で帝都である仕事をしていたのだが、それを阻む者達がいた。

その者達が崩れかけた戦線を立て直したのも、彼らの名前が出てからだ。

そして結果、その目的を果たせず逃げられてしまったのだ。

 

「どうなさいますか、パウエル様?」

 

「簡単です。彼らの出番です」

 

その声に応じて、現れる老若男女。

天の知恵研究会の構成員、総勢200名。

1人1人が、一騎当千の外道魔術師だ。

 

「この為の仕込みは既にすんでいます。そして…私も動きます」

 

 

 

 

「【最後の鍵兵団(ウルティムス·クラーウィス)】、再進軍開始しました」

 

クリストフが報告して、俺も確認する。

このフィジテを囲うように展開する様子は、まあ定石ではある。

 

「…ねぇアルタイル?戦術と戦略の基本って何か知ってる?」

 

突然、どこか懐かしむような声で、俺に聞いてくる。

 

「…さあ?相手の手を読み切る事?」

 

俺の答えに、苦笑いしながらゆっくりと首を横に振る。

 

「違うわ。…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう言ってから、イヴ先生は特殊回線の通信用宝石を手に取り、全士官に伝える。

 

「全軍傾聴!ここからが真の勝負よ!我らが祖国の興亡、この一戦にあり!あえてもう一度言わせてもらうわ!貴方達、祖国の為に、女王陛下の為に死になさい!!その命…私に寄越しなさい!!!」

 

暴君みたいな物言いに、返ってきた返事は

 

⦅⦅⦅⦅⦅了解(イエス)!!!我らが閣下(ユア·エクセレンシティ)!!!⦆⦆⦆⦆⦆




イヴかっこいい!
以上!
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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