ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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21巻!読みましたか!?読みましたよ!
最高です!
次がもう楽しみで待ち遠しいです!
あのラストは衝撃だったなぁ…。
それではよろしくお願いします。


フィジテ防衛戦編第3話

「これで…10人目!」

 

「グワァァァァァ!?」

 

アルタイルとルミアは、フィジテ中を駆け回り次々と外道魔術師達を撃破していく。

 

「アイル君!怪我は!?」

 

「大丈夫だ。それよりアイツ…フェロードの奴は、まだ仕掛け来ないのか…」

 

「みたいだね…来ないにこした事は無いけど…」

 

禁忌教典(アカシックレコード)】に固執していたフェロードが現れない事が、アルタイルとルミアにとっては不気味だった。

しかしそれでも戦争は止まらない。

 

 

外から押し寄せる、10万の死者の軍勢【最後の鍵兵団(ウルティムス·クラーウィス)】。

転移して街に侵入してきた、【天の知恵研究会】の外道魔術師達。

そしてそれを迎撃する、帝国軍と有志の学徒兵。

それらの戦いは全て、3つの要点で守られている。

リィエル=レイフォードVSエリエーテ=ヘイブン。

アルベルト=フレイザーVSパウエル=フューネ。

イヴ=ディストーレVSエレノア=シャーロット。

イヴの采配により、一方的な蹂躙から、ギリギリの均衡状態に持ち込むことには成功した。

しかし少しずつ、確実に、流れは傾き出していたのだった。

 

 

「な、なんで…急に…剣先の…わたしの光が…弱くなった…?」

 

「何をそんなに不思議がるんだい?言ったじゃないか。『要らない』って」

 

リィエルの頼みの綱だった剣戟の極地、【孤独の黄昏(トワイライト·ソリチュード)】が弱まりだし。

 

 

(早く…早くエレノアを、斃さないといけないのに…!何か…何か突破口を…!?)

 

「ふふふ…流石、お強いですわイヴ様。ですが…その【第七園】は見るからに大魔術。後どれだけ持つのでしょうか?」

 

何時までも紐解けないエレノアの秘密に、イヴの心が絶望に染まりだし。

 

 

「ハァ…!ハァ…!なんだ…今のは…!?」

 

「おや?私を『覗いて』、まだ正気を保ちますか。そう、私は闇。千の貌を持ち、深淵の底に棲みつく者。その1つ。【無垢なる闇】…そのものなのですから」

 

アルベルトは己の切り札である、固有魔術(オリジナル)選理眼(リアライザー)】で、パウエルの正体に触れかけ、冷静さを欠け出した。

アルタイル達の活躍も虚しく。

戦いの趨勢は、【天の知恵研究会】に傾き出していたのだった。

 

 

 

 

「『雷帝の閃槍よ·踊れ』!」

 

「【私の鍵】!堕ちて!」

 

俺の【ライトニング·ピアス】の同時起動(シンクロノス·ブート)と、ルミアの【銀の鍵】が、外道魔術師達を葬る。

どれだけ戦ったのか、何人殺したのか、後どれだけ続くのか。

 

「「ハァ…ハァ…ハァ…」」

 

俺もルミアも精神的疲労と肉体的疲労が、積み重なっていく。

先が見えない防衛戦。

1番キツイのは、敵の強さより、自分自身の気持ちとの戦いだ。

 

「…アイル君…どうしよう?」

 

ルミアもキリがない戦いに、疲れが見えだしている。

俺は通信用のお守りを取り出す。

 

⦅イヴ先生。聞こえる?⦆

 

しかし返事はなく、ただ爆発音とイヴ先生の気迫に満ちた声が聞こえるだけだ。

イヴ先生は手が離せないか…。

だったら。

 

「俺達は少し休もう。その間に【マリオネット】を使って、情報収集だ。行け」

 

俺は複数の【マリオネット】を放ち、すぐにフィジテ中の監視をやらせる。

その間に休もうとしたのだが、すぐに一体から反応が来る。

 

「早いな…これは!?」

 

視覚を共有した俺が見たのは、血塗れになり倒れ伏すリィエルだった。

 

 

 

 

「…」

 

エリエーテは、血塗れになり倒れ伏すリィエルを、冷たい目で見下ろす。

 

「う…うぅ…あ、あぁ…」

 

初戦では、四肢を切り落とされ、肉だるまにされたリィエルだった。

それ故に、リィエルは無数のイメージトレーニングを行い、対エリエーテに特化した剣技を身につけて再戦に臨んだ。

しかしそれをもってしても、【孤独の黄昏(トワイライト·ソリチュード)】を失ったリィエルでは、同じく【孤独の黄昏(トワイライト·ソリチュード)】を持つエリエーテに勝てる道理は無く。

四肢を切り落とされる事はなくても、身体中を切り刻まれ、大量出血に喘いでいた。

 

「どうして…どうしてそんなに弱いんだ!リィエル!君は、【剣天】に至った剣士だ!本当の君はもっと強い!強くないといけないんだ!」

 

苛立ち任せに地団駄するエリエーテは、まさに怒り狂っていた。

天に咆哮する姿は、まさに怒りの慟哭だった。

 

「…君は本当に()()なものを、沢山抱えてるんだね。気づいてないとでも思った?」

 

そう言いながらエリエーテは、ある方向を向く。

 

「僕の剣戟が向こうに行った時、君は躍起になって叩き落としてたよね?…つまり、()()なものはあの場所にあるんだね?」

 

ゾワリッ。

 

リィエルはほとんど見えていない目で、エリエーテの壊れた奈落のような笑みを感じる。

 

「君の弱さは、やはり【剣】として()()なものを抱え過ぎなんだよ。だから…君の代わりに削ぎ落としてきてあげるね」

 

「…ッ!」

 

そう言われたリィエルは、死に体になっている体を強引に動かして、エリエーテの足首を掴む。

 

「ゆる…さな…い。そ、それ…だけは…絶対…に…」

 

そんな様子を、変わらず壊れた笑みで見るエリエーテは、迷いなく蹴り飛ばす。

 

ガッ!

 

「かっは…!?」

 

「だからそれが()()なんだって。なんで分かんないかな?」

 

血反吐吐くリィエルを、エリエーテは襟首を掴み上げ、そのまま担ぎ上げる。

 

「う…くぅ…」

 

「手足は切らないであげるね。だってまだ戦いたいし。それじゃあ行こっか!完成した君がどうなるのか、今から楽しみだ!」

 

まるで、ピクニックにでも行くかのような軽やかさで、駆け出しそのまま跳躍する。

そして…

 

「よっと」

 

シュタッ!

 

軽やかにフィジテ城壁に着地する。

そこは学徒兵を中心とする区画であり、カッシュやウィンディ達など、2年時2組生が多く配属されている場所だった。

 

「…つ、【剣の姫】…エリエーテ…」

 

「り、リィエル…!?」

 

突如現れた、敵主力の1人とボロ雑巾に成り果てた友達。

それらを見て誰もが呆然とする中、1番に怒りに満ちた声を放ったのは、カッシュだった。

 

「テメェ…リィエルちゃんに…なにしやがったぁぁぁぁぁ!!!」

 

その声を皮切りに、全員の怒りもピークに達し、全員がエリエーテに対して詠唱を始めようとした。

しかし…

 

「あ、()()()()()

 

たった一言。

そのたった一言が、空気の抜けていくボールの様に、彼らの怒りも萎んでしまう。

その圧倒的威圧感の前では、彼らなど塵芥も同然、文字通り十把一絡げなのだ。

 

「ああ、その反応で分かったよ。君達がリィエルの()()なものだね。全く…君達がいるから、リィエルが鈍のままなんだよ。本当に度し難い。凡人風情が、天才の道の邪魔をするなよ」

 

「何を…言って…?」

 

辛うじて震える声を放ったカッシュの言葉は、ここにいる者達の、気持ちの代弁だった。

誰もがエリエーテの言葉の真意を、理解出来ないでいた。

 

「ああ、理解しなくていいよ。それと唐突で悪いんだけど…リィエルの為に、死んで?」

 

そう言って、エリエーテは鯉口を切る。

死。

そのたった一言が、全員の脳裏に強烈に刻まれる。

誰もが動けない中、放たれる【孤独の黄昏(トワイライト·ソリチュード)】。

彼女の剣戟と共に放たれる、黄金色の黄昏が全てを飲み込む。

…その直前、相対するように、白銀の月光がそれを阻む。

 

ギィィィィィン!

 

「…え?」

 

その有り得ざる光景に、1番に驚いたのは、エリエーテ本人だった。

 

「バカな…!?僕の【孤独の黄昏(トワイライト·ソリチュード)】が相殺された!?これ以外の方法で、相殺されたのか!?」

 

そもそも【孤独の黄昏(トワイライト·ソリチュード)】とは、己自身を一振の剣として、斬るという概念に特化させ、あらゆる【可能性】を切り開く業だ。

無限にある人の可能性を、剣として斬る事に特化·昇華させたもの…それが【孤独の黄昏(トワイライト·ソリチュード)】。

可能性さえあれば、それを切り開く。

故に、斬れないものは無い。

そんなあらゆるものを切り裂く光が、対消滅した。

同等のもの以外に、対応する術はない。

エリエーテがその正体に行き着く前に。

 

コツン。

 

革靴が床を叩く音が響く。

エリエーテは、慌てて振り向くも。

 

カチャン。

 

それより早く、鍵を閉めるような音が響き、何かが消える。

…否、そこに転がっていた筈の、リィエルすら消えている。

 

「…ッ!?ハァァァァァ!」

 

振り返っていたエリエーテの背筋に走る、冷たい予感。

彼女は背後に、【孤独の黄昏(トワイライト·ソリチュード)】を発動する。

斬る為では無く、己を守る為に。

再び衝突し、対消滅する黄昏と月光。

その向こうにいたのは

 

「…ここまで良く頑張ったね、リィエル」

 

「後は、俺達に任せろ」

 

金髪を緑のリボンで結んだ少女と、黒髪に銀色の刺繍が施された、真紅の手袋をつけた少年。

 

「「「「「「「「「「「アイル!!!ルミア!!!」」」」」」」」」」」

 

アルタイル=エステレラと、ルミア=ティンジェルだった。

 

 

 

 

 

慌てて駆けつけた俺達が見たのは、砦の上でボロ雑巾と化していた、リィエルだった。

そしてそうした本人であるエリエーテが、皆に剣を抜こうとしていた。

 

「させるかよ…!」

 

俺は空間断裂でその一撃を相殺して、同時にリィエルを救出する。

 

「皆、ここを離れろ。ルミア、リィエルを頼む」

 

「…分かった。無理はしないでね」

 

「な!?ま、待てよ!俺達も…」

 

「足手まといだ引っ込んでろ。後…ここはもう持たない」

 

俺の言葉に答えるように。

 

「うわぁぁぁぁぁ!?突破されたぁぁぁ!!」

 

「し、死者達が雪崩込んで来るぞー!!」

 

ついに、防衛線が突破されてしまう。

それは1ヶ所だけでは無く、あっちこっちで、戦線が崩壊しだした。

 

「早く行け!食い殺されるか、切り殺されるかだぞ!」

 

「…全員撤退!急いでください!」

 

リゼ先輩の言葉で、やっと動き出す皆。

そんな皆を、エリエーテはぼんやりと見ながら

 

「逃がさないよ」

 

剣を振りかぶる。

俺はそれに合わせて

 

「やらせねぇよ」

 

糸を振るい、空間ごとエリエーテを切り裂こうとする。

しかしその糸は

 

「ッ!?ハァァ!」

 

エリエーテの一撃とぶつかり、相殺される。

何かは見えないが、何かが俺の光と衝突してるのは分かる。

 

「…そういう事か。流石の僕も納得いったよ」

 

エリエーテの冷たい視線が、俺を射抜く。

 

「僕の【孤独の黄昏(トワイライト·ソリチュード)】は、あらゆるものを切り開く。なのに君の銀の光は切れなかった。…その理由は、君の光は物質を、空間ごと切り裂いているんだね」

 

「…」

 

「僕の光が君の光を切り開こうとして、君の光が僕の光を切り裂こうとする。同じ性質を持つもの同士がぶつかった結果、お互いを切ろうとして、対消滅してしまった。…そんな所かな?」

 

「…ま、概ねな。思ったより賢いのな。バカそうなのに」

 

「ば、バカは余計だろ!?もう!」

 

お互い軽口を叩きながらも、その隙を見逃さないように、睨み合う。

 

「まあ、話し合いはもういいでしよ」

 

「そうだな。ここからは…」

 

「「殺し合おう」」

 

エリエーテの真銀(ミスリル)の剣と、俺の【アリアドネ】が衝突する。

お互い一撃必殺を持っているもの同士、勝負はより早く一撃与えた方が勝つ。

 

「アハハハハ!」

 

「オォォォォ!」

 

怪物同士の戦いは、始まった。




それと僕、やっと多機能フォームなるものを、使えるようになりました。
使い方が分からず困っていましたが、やっと分かりました。
それに伴い、投稿した分を一部編集しました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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