主人公の戦いだけではもたないので、それぞれの戦いも見ていただければと、思います。
まあ、原作をざっくりとまとめてるだけなんですが。
それではよろしくお願いします。
(…やっぱりおかしいわね)
突破口の無い絶望に、心が押し潰れそうになりながらも、イヴは冷静に思考を続けていた。
そのおかげか、派手に魔術を使ってはいたものの、まだまだ余力を残していたのだ。
謎の無限復活再生術に、謎の無限死者召喚術。
魔術とは、
あまりに埒外だった為、見落としそうになっていたが、イヴはついにその
(…
イヴは炎を振るいながら、とある呪文をこっそりと詠唱しだした。
「あはははは!アハハハハハハハハ!!!」
「ハァ!」
無限に湧き出る死者の
そのまま死者を焼き付くし、エレノアをも焼き払う。
しかし
「ヒャハハハ…!アハハハハハハハ!」
すぐに再生して、再び死者の群れを呼び出す。
「チィ!」
負けじとイヴも炎を操る。
一見して彼女達の戦いは互角だ。
しかし、やはり不利なのはイヴ。
当たり前の話だが、彼女は優秀な魔術師ではあるが、無限の魔力容量を持っている訳では無いのだから。
「はぁ…はぁ…はぁ…!」
「あらあら?どうなさいましたか、イヴ様?随分と息が荒くなってますわよ?」
珠のような汗をかきながら、ついにイヴの呼吸が荒くなり出す。
それでも…イヴは冷静だった。
「『真紅の炎帝よ』!」
(少しづつ見えてきたわ…エレノアの魔術の正体…)
気迫で炎を起こしつつも、イヴは思考を止めない。
(死霊術は基本、自身が契約した死体に仮初の生命を吹き込み、召喚·使役する術。だから、女以外の共通点がないか調べた。…彼女達の【ジーン·コード】を)
【ジーン·コード】…つまり肉体の情報は、魂紋同様、
だから同じ結果が出ることは
(
それが示すのは、エレノアが操る死者=エレノア自身であるということ。
そしてエレノアは、何らかの方法で死んだ自分を呼び出している、という事になる。
それが発覚すれば、今度は別の問題が出てくる。
(この短時間にどうやって、自分の死体を作っているのか…ということ。クローンを作れば可能だが、それにはバカみたいなコストと時間がかかる)
無限に復活するエレノアと、無限に召喚されるエレノア。
新たに発覚した新
(そういえば…あれはたしか、250年以上前の論文だったかしら)
それはリィエルが【エーテル乖離症】で倒れた時。
イヴはイヴで、エーテル法医学の論文や資料を読み漁っていた時、たまたま見つけたものだ。
内容は『既死体験による、死の超越』。
簡単に言うならば、『術者自身が一度体験した死を踏み倒す』という、頓珍漢な内容だった。
(魔術的理論としては、差程難しい話では無いわ。例えば刺されて死ぬとすると、その事実が世界に記録され、肉体は崩壊し、魂は【摂理の輪】に帰還する。いわいるこれが、人の
当然、この理論は見向きもされなかった。
イヴ自身、この理論を一笑し、記憶の片隅に追いやったくらいだ。
(でも何か引っかかる。…そういえば、この理論の提唱者の名前はたしか…リヴァル。リヴァル=
シャーロットというハウスネームは、べつに珍しくない。
このアルザーノ帝国ならば、よくある名前だ。
現に軍の仲間や学院の生徒にも、多数存在する。
(エレノアのフルネームは…エレノア=
ゴォォ!!
ここまで考えながらも、イヴはずっと炎を振るい続けている。
そしてついに、イヴはある覚悟を決めた。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
イヴが放った炎は、これまでとは違い、全てを破滅させる炎ではなく。
黒魔【フレイム·バインド】。
エレノアを拘束する為の炎だった。
「あらあら、何をするかと思えば。無駄でございますわ」
「でしょうね。どうせすぐに逃げ出すでしょう。でも…」
そう言いながらイヴは、左手に小さい炎を灯し、その炎越しにエレノアの目を覗き込む。
「それは…?」
「秘伝【火幻術】。炎の揺らめきで相手に幻覚を見せる幻術。今からこれを…
「…え?」
「私達の精神を同調させ、貴女の心の底を覗き込む。
「な…!?」
本来、精神魔術においてこの手は、禁じ手中の禁じ手だ。
大変危険極まりない、自殺行為だ。
一つ間違えれば他人の深層心理という奈落に落ち、二度と戻って来れなくなる。
それでも…これしかない、イヴはそう覚悟したのだ。
「ふ…フザケルナァァァァァァァァ!!!」
ここに来て、今まで余裕な雰囲気だったエレノアが、初めて動揺した。
「ヤメロォォォォォォォォォォォォ!!!」
今日1番の抵抗を見せ、大量の死者を呼び出す。
「ハァァァァァァァァ!!」
しかしイヴも負けじと、【火幻術】の片手間に炎を操り、焼き払う。
「…【火幻術】!!!」
ついにイヴの魔術が完成する。
2人の意識を白く染めあげ、イヴはエレノアの過去を覗き込む。
それは…まさに地獄の釜の底のような過去だった。
⦅『戻ってきて!イヴ姉様!!』⦆
「…は!」
イヴの意識は聞こえてきた声に、強制的に戻される。
強引に精神を引き戻すのは、相当危険な行為だが、しかしその声が無ければ、危うくイヴは戻って来れなかった。
⦅姉様!姉様!ご無事ですか!?⦆
⦅…ええ、ありがとうベガ。本当に助かったわ⦆
そう、イヴに声をかけたのはベガだ。
イヴは予め、ベガにいざとなったら戻すようにと、頼んであったのだ。
【アリアドネ】の通信機で届いたベガの【言霊】が、イヴの意識を強制的に引き戻させたのだ。
⦅いえ…お爺様が、今戻せと教えてくださったので。後、お爺様が怒ってます…すごく⦆
⦅…戻ったらしっかり怒られるわ。とにかく貴女も傍から離れない事。いいわね⦆
そういってイヴは通信を切る。
今までイヴが見てきた、外道魔術師の数々の所業で、ダントツに最悪な光景だった。
イヴですら、寒気と吐き気が抑えきれない。
しかしそれを、意地と気迫で抑え込み、毅然とエレノアを睨みつける。
不気味なまでの静寂の末
「…ミタナ?」
地獄の底から響くような、怨嗟にまみれた声が響いた。
「見たなミタナミタナマタナ!!ぁぁぁぁぁぁ!!!」
相当触れられたくない逆鱗だったのだろう。
しかし、そんな様子を見るイヴは、あっさりと言い放つ。
「見たけど。それが?」
「ッ!?」
イヴは喚き散らすエレノアを無視して、種明かしをする。
「おかげで、貴女の秘密がよくわかったわ。あの拷問部屋で受けた死を無効化する。それが貴女の不死身の正体ね。そして貴女の死霊術の正体も…」
「ええ!えぇ、そうですとも!!私はあの部屋で受けた死を無効化出来る!そして、この子達は平行世界で死んだ私自身ですわ!!!」
ここまで喚き散らしたからか、幾分冷静になったエレノアが、いやったらしい笑みを浮かべる。
しかしその目には、明らかな怒りや憎しみが乗っていた。
「同一人物故に、ノーリスクで使役·支配出来る。これが私の
「ふうん?」
そんな視線に晒されても、イヴは顔色ひとつ変えずに受け流す。
「唯一例外があるとするなら、グレン様の【イクスティンクション·レイ】。あれだけは、使用者が限られてるゆえ…しかし!それ以外は全て、網羅したと自負してますわ!お分かりですか、イヴ様!貴女では勝ち目は無いのですよ!!」
封印や拘束が効かないのも、この応用だろう。
死んでから再び復活する…そういう体だろう。
「…なるほど、たしかに無敵だわ」
イヴはあっけらかんと言い放った。
「ええ…理解してくださいましたか、イヴ様。貴女はタダでは殺しませんわ。私が経験した75,662通りの死を、経験させてあげますわ…!ヒャハハ!ヒャハハハハハハハハハハ!!!」
戦場に響く、エレノアの狂った嗤い声。
そんな誰もが恐怖するような笑い声を受けて
「いい加減にしろ、サイコ女」
イヴは毅然と言い放つ。
堂々と、凛としたその声は、エレノアの狂気を祓うよな声。
「…は?」
呆然とするエレノアに、イヴが吐き捨てる。
「なに被害者ぶってる訳?…お笑いだわ。見なさいよ、このフィジテの有様を。あの悍ましい【
そう声高々に宣言して、イヴはその左手に灼熱の炎を灯し、身構える。
「…気に入りませんわね…!その目!」
その様子を見たエレノアは、その姿があの憎き男達に被って見え、皮膚が剥がれ、血が吹き出すほど強く引っ掻く。
「…しかし、お忘れですか?私は貴女が思いつく限りの死は、全て超越しました。例外は先程述べました通り、【イクスティンクション·レイ】…
「…そういう風に、誘導したいんでしょ?貴女」
イヴのその指摘に。
「ッ!?」
よく見ないと分からない位の、動揺を見せるエレノア。
イヴは当然気づいており、そのまま話を続ける。
「たしかに、効く可能性は十分ある。だとしても、何故自分から弱点を晒したのか?…答えは簡単、グレンがいないから。この戦場で、【イクスティンクション·レイ】を受ける確率は、0%だから。だから、わざとそう言った。そうすることで、もう1つの弱点から注意を逸らしたかったから。違う?」
「…」
「他にもおかしい点があるわ。それは…貴女が実験を受けたのが、250年前。【
「ッ!?」
エレノアの顔に、ハッキリとした動揺が出てきた。
これはブラフではない、経験則としてイヴはそう判断した。
「それと、貴女の不死身の秘儀だけど…どうやら数も関係ありそうね。多分に予想の入ったカマかけだったけど、当たりっぽいわね」
「…だから、なんだと言うのです?私は75662回殺さないと死なない…」
ゴウッ!!
そんなペラペラと話すエレノアに、イヴの紅蓮の炎が叩きつけられる。
「バカね!無限とほぼ無限は全くの別物よ!貴女はただ、しぶといだけの人間よ!75662回?上等よ!殺しきってやろうじゃない!!!」
「ヒャハハ!ヒャハハハハハハハ!!!出来るのですか!?ここまで貴女はまだ112回…いえ、113回しか、私を殺してませんよ!」
「やってやる!姉さん…力を!【無間大煉獄真紅·七園】!!!」
イヴの支配下空間に無間の煉獄が生み出されて、遥か彼方、天の果てまで焼き尽くす大焦熱地獄が現れる。
「ギャアァァァァァァァァ!!!」
そんな地獄にエレノアの悲鳴が、アンサンブルするのだった。
「『
「ッ!?」
フェロードのほんのわずかの隙を突くように、アルタイルの【ライトニング·ピアス】が駆け抜ける。
光速で放たれるそれは、フェロードの頭を貫かんと駆け抜け
「『■■■』!…何!?」
そのままフェロードは考察を続ける。
(どういう事だ…!?
フェロードはアルタイルを、霊的視点で観察してある事に気づいた。
まず、
これは即ち、通常とは桁違いの威力で、魔術が放たれているということ。
そしてもうひとつは…彼の空天神秘【UNLIMITED
CROSS RANGE】が強くなりだしたこと。
(さっきまでは【アリアドネ】を介さないと、その効果が上乗せされなかったが、今ではそれ無しでも上乗せされている!?彼の体に定着しだしたのか!)
つまりアルタイルは、リアルタイムで成長しているということ。
この極限状況の中、さらに強くなっている。
そしてそれは、他でもないアルタイル自身が、1番如実に感じ取っていた。
(何だろう…。かなり研ぎ澄まされてる気がする。…何でも出来そうな気がする)
戦いながら、フェロードとレ=ファリアの戦いから、学習していく。
空間を自由に使う戦い方なんて、一生出来そうにないので、アルタイルはその一挙手一投足を、全て見て、学んでいく。
そして…盗み、自身のものへと昇華させていく。
「行くぞ…!」
アルタイルはそう呟くと、一気に駆け出す。
アルタイルの活路は近接格闘戦。
とにかく近づくしかない。
「来るな!『『『■■■』』』!」
本来セリカの絶技である、【
当然のように使われた、絶技によって放たれた
カチャリ。
「…は?」
そう、一個人を消し飛ばすには十分すぎるのだ。
それは…フェロードとて、例外ではない。
「なにぃ!?『■■■』!」
慌てて防御するフェロードは、この怪奇現象の正体を看破していた。
(ルミア…!彼女の鍵の力で、僕とアルタイルが入れ替わったのか!?)
そこでふと、あることに気づく。
自分とアルタイルが、入れ替わったという事は。
今、
「…レ=ファリア!」
慌てて確認するとそこでは
「消えろぉ!」
〖そっちこそ!〗
アルタイルとレ=ファリアが、激しい格闘戦をしていた。
アルタイルとレ=ファリアでは、そもそものパワーの出力が違う。
単純な力比べなら、まずレ=ファリアが勝つが、アルタイルには、それを補う戦いの上手さがある。
〖この…しつ…こい!〗
「丸見えなんだよ!」
ゴギィィィィィン!
激しい衝突音を響かせながら、【アリアドネ】と【銀の鍵】が、衝突する。
激しい鍔迫り合いの末、両者が弾かれる。
「チィィィ!」
〖つぅぅぅ!〗
「アルタイルゥゥゥ!!『■■■』!!」
自分の魔術を防ぎきったフェロードが、再び
「『七色煌めく光の華よ・その輝きを以て・ 我らに華の加護を与え・その道行を照らし護り給え』!」
しかしアルタイルは【アイギス·ブローディア】で、その魔術を防ぐ。
しかしその隙に、レ=ファリアが【銀の鍵】で空間を切り裂き、同位相高次元領域から無限エネルギーを放出する。
カチャリ。
しかし、そんなエネルギーの濁流を、ルミアの【銀の鍵】が吸収し、アルタイルを助け出す。
「ありがとう、ルミア!」
「アイル君の背中は、私が守るよ!」
ルミアの頼もしい言葉に、アルタイルは笑いながら、フィジテの方を見る。
視線の先には、蒼天を焦がすかのような炎が、上がっているのが見えた。
あんな大魔術を使えるのは、ただ1人。
(イヴ先生…貴女も戦ってるんだよね)
そう思うと、不思議と力が湧いてくる。
諦めてたまるかと、その拳を握りしめる。
「「はァァァァァァァ!!」」
〖「ヤァァァァァァァ!」〗
2組の気迫がぶつかり合い、幾度目かの空間を軋ませたのだった。
もうね、仕事を辞めたいですね…。
それでは失礼します。
ありがとうございました。