それではよろしくお願いします。
「そんな…有り得ない…」
呆然と呟くフェロードは、俺達との戦いの真っ最中だと言うのに、それを忘れてフィジテを見ている。
「有り得ない…!エレノアがやられた…!?僕が数千年も築いてきた計画が、全部崩れたのか…!?」
呆然と膝をつくフェロードに、俺はなんの躊躇いもなく、殴りかかる。
〖マスター!?〗
「ッ!?くっ!」
「オラァ!」
咄嗟にガードはされたものの、その上から思いっきり吹っ飛ばす。
「何ボサっとしてやがる…俺達も、終わらせるぞ」
「…ククク…終わらせる…?」
吹っ飛ばされたフェロードが、嫌味ったらしい笑顔で、俺達を見る。
「随分と強がってるじゃないか…。君はもうとっくに、限界を超えるだろう?その体で何を…」
「うるせぇよ、黙って見てろ」
俺は足元に方陣を張る。
それは…【マナ
「ルミア、準備はいいな?」
「うん。何時でも」
ルミアと確認して、俺は戦いながら、次元跳躍でずっと仕込み続けてきた、奥の手を切る。
「『我は神を斬獲せし者』」
どこかで、俺の仕込みの1つが起動する。
「それは…まさか…!?」
「『我は始原の祖と終を知る者』」
また1つ、起動する。
「『素は摂理の円環へと帰還せよ・五素成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離すべし・いざ森羅の万象は須くここに散滅せよ』」
詠唱を進める度に、仕込みが起動する。
「させるか…!」
〖やめなさいよ!!〗
「させません!絶対に!!」
フェロード達の妨害を、ルミアが守ってくれる。
そしてついに。
「『遥かなる虚無の果てに』」
そうして都合7つの仕込み…【
「黒魔改【イクスティンクション·レイ】!!!」
「『■■■』!!!」
アルフォネア教授の魔術にして、グレン先生の切り札、【イクスティンクション·レイ】。
威力だけなら、本家と変わらないと自負がある。
俺の奥の手と、フェロードの
「アイル君!!!」
〖マスター!!!〗
お互いのパートナーも、【
「「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」」
俺もフェロードも、命を削る勢いで、この一撃に全てを込めるかのように維持する。
ピキッ…ピキピキ…!
「〖なっ!?〗」
「「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」」
そして、俺とルミアが力を振り絞って魔力を注ぎ込んだ時、遂にフェロードの結界を破壊した。
「〖ギャアァァァァァァァァァァァァア!!!〗」
(こんなところで…死ぬ訳には…!!)
【イクスティンクション·レイ】に晒されながら、フェロードは何とか生き残ろうと、色んな案を考える。
そして…1番簡単な案を見つける。
(お前を乗っ取ってやる…アルタイル=エステレラ!)
そう思うが早いか、フェロードは【イクスティンクション·レイ】に晒されている肉体をさっさと捨て、魂の状態でアルタイルに接近する。
このままでは直ぐに、【摂理の輪】に取り込まれてしまう為、可能な限り早くしなくてはならない。
だからだろう…あまりにも早計だったと言わざるを得ないのは。
(…何?)
【イクスティンクション·レイ】を放ちながら、槍を構えているアルタイルがいた。
そしてアルタイルは
「『抉り刺し・突き穿て・必滅の槍』」
(…
フェロードは自身の考えに、疑問が浮かぶ。
(何故
そう、今のフェロードは魂だ。
その魂状態のフェロードと、
それなのに目が合う…即ち。
(こちらに気づいている…だと…!?)
慌てて逃げようとする、フェロードの耳に
「行くぞ。この一撃、手向けと受け取れ」
(やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!!)
フェロードの悲鳴は、アルタイルには聞こえていない。
理由は簡単…実際には、アルタイルにはフェロードの事は
要するに…ただの
「『抉り刺し・突き穿て・必滅の槍』」
(そこにいるんだろ、フェロード)
アルタイルは虚空を睨みつける。
ただの勘だ、彼には全く見えていない。
だが、確信がある。
この一撃で…
「行くぞ。この一撃、手向けと受け取れ」
そしてアルタイルは、遂にその一撃を解放する。
「【
アルタイルが虚空に放った一撃は、たしかにフェロードの魂を貫いたのだった。
【イクスティンクション·レイ】が切れた先にいたのは、ボロボロになり、光の粒子となって消えかけているレ=ファリアだった。
〖…マスターも、貴方の槍に貫かれてしまったわ。…私達の負けよ〗
そう言って、震える手でルミアに【銀の鍵】を差し出す。
〖…受け取りなさい。これからの戦いで…きっと…必要になるわ…〗
「…ありがとうございます」
そう言ってルミアは【銀の鍵】を受け取る。
そのまま鍵は銀色の光の粒子となって、ルミアの中に消えていく。
〖私の力を…貴女に…預けたわ…。あの人の夢を…壊したんだもん…!ちゃんと…世界…救いなさい…よ…!〗
そう言い残して、レ=ファリアも、消滅していったのだった。
疲労でぐったりしていると、通信が入る。
⦅アルタイル!聞こえる!?アルタイル!⦆
⦅…イヴ姉さん⦆
⦅ッ!?無事なのね!?フェロードは!?⦆
⦅撃破したよ。アイツはもう、魂ごと消した⦆
⦅ッ!?…本当に…?本当に…斃したの!?⦆
⦅こんな嘘つかないよ…さあ、閣下。勝利宣言を⦆
そう言いながら、俺達は距離をゼロにして、イヴ先生の前に立つ。
「「…ただいま」」
その様子を見たイヴ先生が、勝利宣言をしようとした、その瞬間。
パチパチパチパチ…。
どこからとなく、拍手が聞こえた。
それは倒れていない建物の屋根の上。
「いや〜、素晴らしい!これは読めなかった!グレンが来てから終わると思っていたんだが、まさか君が終わらせるとはねぇ…アルタイル」
その声は、もう聞かないと思っていた。
その顔は、もう見ないと思っていた。
しかし、再び見ることになっても、何故か不思議だとは思わなかった。
だから俺は…心の底から、怒声を張り上げた。
「何の用だ…ジャティスゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
そこに居たのは…死んだと思っていた
「いや〜ねぇ、僕が読んだいたのは、リィエル、アルベルト、イヴがそれぞれの敵を撃破して、ここに僕ではなく、ファロード=ベリフがいると読んだんだ。だが実際はどうだい?」
そう言って、ジャティスは俺とルミアを見下ろす。
「君達が死ぬとは読んでいなかったが、まさかフェロード達を撃破するとは、もっと読めなかったよ!!!アハハハハハハハ!!!…とはいえ、だ」
突然高笑いをやめたと思えば、真面目な顔で、俺達を睨むジャティス。
「【
そう言って指を鳴らすと、突然空間が揺れだし、何かが地面から生えてきた。
それは…肉の棒としか表現の仕様がない、不気味極まりない何かだ。
都合17本、その姿に俺達とイヴ先生には、見覚えがあった。
「あれは…!?」
「そう、【邪神兵】…その根さ。本当はフェロードの奴が、マリア=ルーテルの復活を早めさせて呼んだものなんだけど、利用させてもらうよ」
「クソ…ッ!?ガハッ…!?」
「アイル君…!?グッ!?」
俺とルミアが直ぐに対応しようとしたが、体が動かず膝をついてしまう。
「アルタイル!ルミア!…アルタイル、貴方…!?」
「やめておきなよ、2人共。フェロード達との戦闘で、マナはとっくに尽きてるだろ?それに…アルタイルに至っては血を流しすぎだよ。早く止血しないと…死ぬよ?」
クソ…どうする…!?
俺は慌てて魔晶石を取り出しながら、周りを見る。
みんなボロボロで、とてもじゃないが、対抗する体力も魔力もない感じだ…!
誰もが絶望にもがき苦しむその時。
キラッ!
突然光が現れて。
その光が柱となって…根を呑み込んだのだった。
「「あれは…!?【イクスティンクション·レイ】!」」
「まさか…!?」
「イヒヒヒヒヒ…来たね…来たね!!」
俺達が、イヴ先生が、ジャティスが。
ある人物の登場を予感した。
「何が何だかよく分かんねぇし、色々言いたい事があるがな…。とりあえず、追いついたぞ!」
「やっと…やっと着いた…!私達の故郷!」
「何か、状況が変わってるな…」
〖とりあえずは…やったのね、アルタイル…!〗
誰もが待ち望んだ、その男。
誰もが信じていた、その男。
その名は…
「「「「「「「「「「「「「
その姿を見て、アルタイルとルミアは、力を振り絞り、グレン達を援護する。
「ルミア!!!」
「アイル君!!!」
「届け…【アリアドネ】!!!」
「届いて…【
アルタイルの【アリアドネ】と、ルミアの【
「…先生!これは!」
「アイツらだな!白猫!やるぞ!」
「はい!『我に続け·颶風の民よ·我は風を束ね統べる女王なり』!!!」
「『時の最果てへ去りし我·慟哭と喧騒の摩天楼·時に至る大河は第九の黒炎地獄へ至り·その魂を喰らう黒馬は己の死を告げる·我·六天三界の革命者たらんと名乗りを上げる者ゆえに』!!!」
「風天神秘【CLOAK OF WIND】!!!!!!」
「時天神秘【OVER CHRONO ACCEL】!!!!!!」
その瞬間、システィーナが起こす風が、大地の底まで届かんと言わんばかりに広がり。
グレンが起こした神秘によって、空間に巨大な時計のような魔法陣が構築される。
「しゃらくせぇ!とりあえず、近い奴から時計回りに片付けるぞ!」
「はい!」
まず2人は、1番近くの敵に目をつけた。
ここで、グレンの時天神秘【OVER CHRONO ACCEL】の説明をしよう。
簡単に言うならば、アルタイルの空天神秘の時間版だ。
つまり、行動を起こすのに必要な時間が0になる。
今ならば、詠唱にかかる時間を0にし、着弾までの時間を0にする。
「ぶっ飛べ有象無象!黒魔改【イクスティンクション·レイ】!」
発動と同時に着弾した神殺しの一撃に、根は跡形もなく消滅した。
「風よ!」
システィーナの風は、既に別次元のものへとなっていた。
あらゆる場所に到達するシスティーナの風は、根など相手にもならない。
その風を以て、粉々して消滅させる。
「…なんか、すげぇ苦労して強くなったのに…上には上がいるって見せられると…あれだな…」
「あ、アハハ…アイル君…」
何故か少し哀愁漂う空気を出す、アルタイルとルミア。
アルタイルとルミアは、魔力タンクである魔晶石を砕いて、魔力を回復させる。
「…よし!行けるか!?」
「うん!大丈夫!」
「ちょっと!貴方達は休み…」
「「ごめんなさい!」」
ガチャン!
イヴに止められる前に、2人は鍵の力で空に飛ぶ。
「フッ!」
アルタイルが鋭く腕を振ると、その軌跡に沿うように、遥か遠くにある根が切り落とされる。
「堕ちて!」
ルミアが鍵を回し、根を空間の果てに追放する。
「しまった!お前ら、やべぇ!」
突然グレンが何事か慌て出す。
全員が慌てて確認すると
「俺、魔術触媒が尽きそうだ!あと頼むわ!」
「「しまんないなぁ!」」
「アハハ…なんか…懐かしい…」
グレンのあまりにも抜けた発言に、アルタイルとシスティーナが同時にツッコミを入れる。
その様子をルミアは懐かしそうに、見つめる。
「しゃーねぇな…ちょいと、お師匠様の知恵を借りようかね」
そう言ってグレンが取り出したのは、赤魔晶石。
それから情報を読み取り
「…なるほど、これは使える」
そう言って取り出しのは
おなじみ、【イクスティンクション·レイ】の触媒だ。
「『我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知る者・素は摂理の円環へと帰還せよ・五素成りし物は五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離すべし・いざ森羅の万象は須く
(【イクスティンクション·レイ】とは、少し違う…?)
そう詠唱して、グレンは【イクスティンクション·レイ】を空に向けて放つ。
その直後、幾つもの光が降り注ぎ、根を文字通り根こそぎ消し飛ばした。
「黒魔改弐【イクスティンクション·メテオレイ】…さすがお師匠様だぜ」
灰は灰に…塵は塵に…。
「さてと…これで片付いたな…。アルタイル、フェロードとレ=ファリアは?」
「俺とルミアで倒しました。アルフォネア教授は?」
「…因果を繋ぐために、過去に残った」
「…そうですか。じゃあ、後は頼みました。俺…そろそろヤバいかも…」
そう言って俺は、座り込み、脇腹を抑える。
先生は何も言わず、ただ前だけを見て、ジャティスと向き合う。
「…なんで生きてるかとか、色々気になるが…とにかくだ。ケリつけるぞ。ジャティス」
「さぁ…始めようか!グレン!!」
ここに、混迷と混沌を極めた。
真の最終幕が上がる。
それでは失礼します。
ありがとうございました。