ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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お久しぶりです。
ロクアカ終わってしまいましたね…。
最高の作品でした!
僕も完結できるように頑張ります!
よろしくお願いします。


最終決戦編第3話

翌日、俺は少し早めに起きて、手早く用意を整えた。

 

「…そういえば、なんで今までしてこなかったんだ?」

 

そう呟きながら、俺は【アリアドネ】で編んだ真紅のコートを身に纏う。

これには元の強度に加えて、ルミアの力で強化した付与が何重にも施されている。

 

「…そっか。今までは巻き付けてたからか」

 

制服にも付与はされているが、ほとんど布切れ同然だし、それに少し動きにくい。

大体の戦いで破れてダメになってたし、制服代もバカにならないから、これの方がいいか。

 

「さてと…行きますか」

 

いつも通りに部屋を出て、ダイニングに行く。

 

「おはよう。ベガ、爺さん、婆さん」

 

「おはようございます、兄様」

 

「おはよう。アルタイル」

 

「おはよう」

 

いつも通り婆さんの朝ごはんを食べて、歯を磨き、いつも通りに出る用意をする。

 

「…行ってきます」

 

「…行ってらっしゃいませ、兄様」

 

「気をつけてね」

 

ここまでいつも通りだ。

そう意識的に振舞ってきたのだが…

 

「アルタイル」

 

爺さんに呼び止められて、いつも通りが止まる。

 

「何?爺さん」

 

爺さんは俺に近づくと、俺の肩に手を置いて薄く笑った。

 

「わしはお前たちのような孫をもてて、誇りに思う」

 

爺さん…!?

突然の言葉に、俺は言葉を無くす。

 

「帰ってこい。我が孫よ」

 

「…ああ。帰ってくるさ」

 

絶対に。

俺はそう返して、今度こそ家を出た。

俺はわざと振り返らなかった。

だって…見納めじゃないんだから。

 

 

 

「ん〜…?どう思う?アイル」

 

「さあ?こんなもんじゃねぇ?」

 

「ちょっと!そんな適当な…」

 

「初めてやることなのに、適当も真面目もあるかよ。そこはお前の風の見せ所だろ」

 

俺とシスティは、天空城までの道筋を考えていた。

もっと正確に言うならば、システィの風を使って、一気に天空城まで行ってしまおうという、ショートカットのための発射台作りだ。

システィの風は次元と星間を超えて、どこまでも届く風。

なのだが、細かい座標指定は不安らしく、そこを俺が補うことに。

そんなこんなで調整していると、突然大歓声が沸きあがる。

 

「うおっ!?なんだ!?」

 

「…あ!先生!」

 

嬉しそうに駆け寄るシスティを見て、先生が到着したことに気付いた。

やれやれ…全く困った白猫ちゃんだぜ。

 

「か〜…お前らすげぇな、これ」

 

見ただけで頭が痛くなるような、複雑怪奇な魔法陣を見て、先生が呆れたような声を出す。

まあ作った俺が言うのもなんだけど、目がチカチカするし、頭も痛くなる。

 

「霊脈からマナを直接流して、そのマナで運用してるから、こっちの消耗はなし」

 

「いやそれも凄いんだが…マジで出来るとは。余裕で第七階梯(セプデンテ)クラスじゃねぇか」

 

そうなのか?

実感無いから分かんないけど。

 

〖そうね。これに関しては誇っていいわ。あの大導師すら、叡智の門を潜らないと行けなかった場所に、それを通らずに行けるのだもの。大したものだわ〗

 

ナムルスからのお墨付きも得たので、恐らく本当に凄いとこなのだろう。

…知らんけど。

 

「さて…このクソ忙しいなか、わざわざすまねぇな、お前ら」

 

振り返るその視線の先には、イヴ先生と右目に包帯を巻いたアルベルトさんがいた。

何でも固有魔術を封印しておくために、必要なのだとか。

 

「グレン。すまないな。本来なら俺とイヴも手を貸すべきなのだが」

 

「そうね…」

 

申し訳なさそうにする2人。

 

「仕方ないですよ。2人ともかなり消耗してましたし」

 

「あなたもでしょあなたも。というかリィエルもだけど、アルタイルも大概ね」

 

消耗ぐらいではリィエルとアルベルトさんが、ほぼ同じくらい…というか心臓が一時的に止まっていたらしい。

そう思うとリィエル凄いな。

 

「あなたもでしょうが!あれだけ血を流してたのに、なんでそんなピンシャンしてるのよ!」

 

そこはあれです、根性です。

そう思いながら、俺はイヴ先生を見る。

 

「…こっちは任せたよ、イヴ姉さん」

 

「…絶対に帰ってくるのよ」

 

「そっちこそ、死なないでよ」

 

お互い強く抱擁して、励まし合う。

俺から離れたイヴ先生は、ルミアを見て笑いかけた。

 

「ルミア。アルタイルを頼むわよ。すぐに無茶するから」

 

「はい!」

 

2人以外にもクリストフやバーナードさん。

エルザにエレン、そして女王陛下までもが。

 

「アルタイル。エルミアナを頼みます」

 

「はい」

 

「ふふ。絶対に生きて帰ってきてくださいね?孫の顔も早く見たいですし」

 

「…じ、女王陛下!?///」

 

「…お、お母さん!?///」

 

こんな大事な時にまでこの人は…!

結局ギリギリまで締まらない俺たち。

まあ、この方がらしいか。

 

「さてと…行くか。お前ら」

 

「…よし。システィ、準備OK?」

 

「ええ。…『我に続け·颶風の民よ·我は風を束ね統べる女王なり』!風天神秘【CLOAK OF WIND】!」

 

システィを中心に、爆発的な風が巻き起こる。

俺は方陣を起動させ、その風を制御する。

よし…行くぞ!

 

「「『導け·誘え·約束の彼の地へ·希望を乗せて·絶望を払いて·我が輝ける風よ·偉大なる風よ·比類なき風よ·優しき風よ·三千世界の彼方まで·吹き抜けよ·駆け抜けよ·そして我らが未来を紡げ·未来へ届け』!!!」」

 

そして俺たちは、どこまでも駆け抜ける風となって、メルガリウスの天空城へと飛んだのだった。

 

 

 

「まあ、なんだかんだで…結局はこのメンツか」

 

物理法則を無視した光の風の中、グレンがふと、そんなことをボヤいた。

そう言われたアルタイルは、改めて周りを見渡して笑う。

 

「確かに。ま、一番納まり良いしね」

 

「先生が赴任してから、リィエルが来て…ずっとこの5人でしたね」

 

笑うアルタイルの前で、システィーナが振り返り思いを馳せるように呟く。

そんなシスティーナは、ちらりとアルタイルたちを見て、ニヤニヤ笑う。

 

「ま、全部が全部、そのままって訳じゃなさそうだけど」

 

「システィ!もう…!」

 

恥ずかしそうにむくれるルミアだが、それでもアルタイルの隣に寄り添うのは変わらない。

 

「でもなんだが感慨深いよね」

 

「ん。私もそう思う」

 

「意味わかってるのか…?」

 

リィエルの言葉に首を傾げるアルタイルだが、すぐに現れたナムルスを見て苦笑いを浮かべる。

 

〖ちょっと私もいるんだけど?〗

 

「そういやお前とも、長ぇ仲になったな」

 

〖何よ雑に扱って…ふん〗

 

素直じゃないナムルスの反応に、アルタイルとルミアが苦笑いを浮かべる。

 

「素直じゃないな」

 

「だね」

 

〖聞こえてるわよ、あなたたち〗

 

ムスッとしたナムルスの視線に、2人はわざとらしく視線を逸らし口笛を吹く。

 

「それにしても、紆余曲折あったけど、結局最後はシンプルになったわね。ジャティスを倒して、世界を救って大団円!感動のエンディングってやつ!」

 

「もう、システィ。気が早いよ?まだ勝てるかどうか分からないのに…」

 

「勝つのよ!いくらジャティスが桁違いに強くても、私たちが力を合わせれば勝てるわよ!ねぇ、先生!」

 

「あぁ…そうだな…」

 

(…先生?)

 

どこか神妙な顔つきで気の無い返事をするグレンに、アルタイルが不思議に思う。

だがシスティーナは気付かず、そのままイタズラげにグレンを覗き込む。

 

「それに気付いてますか?先生。この戦いに勝って世界を救ったら…先生って、正真正銘の【正義の魔法使い】ですよ!フフッ、先生ったら、夢叶っちゃいますね!」

 

「…まあ…そう…だな…」

 

冗談めかしたシスティーナの言葉に、グレンの返事は、歯切れが悪く曖昧だった。

流石に様子のおかしさに気付いた3人娘がグレンを覗き込むが、アルタイルはある予感が過った。

 

「まさか先生…【無垢なる闇】のこと気にしてる?」

 

黙り込むグレンを見て、アルタイルは思わずため息をつく。

隣でナムルスも同じように頭を抱える。

 

〖あのねぇ…【無垢なる闇】なんて、不慮の事故や天災と同じようなものなの。確かに【無垢なる闇】は世界を滅ぼすわ。でもね、それ以上に天寿を全うして死ぬ人の方が圧倒的に多いのよ。今大事になのは、ジャティスを倒すこと。それ以外は雑音(ノイズ)よ、私の主様〗

 

(確かにそうなんだ。そうなんだが…)

 

漠然としたモヤモヤが、グレンを蝕む。

それはあの時に似ていた。

帝国宮廷魔導師団だった頃、魂を削る思いで駆け抜けていた頃。

【正義の魔法使い】に憧れて…なりたくて。

だから足掻き続け、葛藤して。

なのに届かなくて、絶望して。

その時の飢餓感と焦りが、今再び過ぎっている。

 

「…だぁいじょうぶだって!」

 

そんな感情を押し殺し、グレンは悪ぶった笑みを浮かべる。

 

「俺はロクでなしだからよ!俺の手の届く範囲の奴らしか守らねぇっつーの!そもそもあいつはセラの仇だ!世界のために〜だとか、皆のために〜だとか、そんな高尚な目的のためじゃなくて、ただの私怨でジャティスのやつをブチのめしに行くだけだっつーの!こんなロクでなしの俺に世界の命運を託す羽目になって、皆、ご愁傷さまだぜ!ダッハッハッハッハ!!」

 

〖…ならいいけど〗

 

「…ったく、このバカ講師…」

 

(何言ってんだよ、バカ野郎。あんたはンなタマじゃねぇだろ)

 

なんとも言えない表情をする、ナムルスとアルタイル。

だがそれも、直ぐに切替える。

 

「そろそろだぞ。全員警戒」

 

「何がだ?」

 

「空間がしっちゃかめっちゃかなんだよ」

 

〖そうね。帰還限界線(ターニング·ライン)、とでも言いましょうか。ここから先はなんでもありよ〗

 

険しい顔で警戒を促す2人に、全員の顔が引き締まる。

元から世界の法則に絶大な負荷をかけてきたが、それを大導師が曲りなりにも制御してきたおかげで、問題が起こらなかった。

だがそれも、アルタイルたちがフェロードを倒し、さらにジャティスが無茶苦茶にしたせいで、全てが狂ってしまったのだ。

 

〖だから…気をつけて!〗

 

ナムルスがそう注意を促した瞬間、闇が蟠った。

致命的な何かを超えた、不吉な予感。

誰もが帰還限界線(ターニング·ライン)を明確に超えたと、自覚した。

その瞬間…風景がガラリと変わった。

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