ロクアカ終わってしまいましたね…。
最高の作品でした!
僕も完結できるように頑張ります!
よろしくお願いします。
翌日、俺は少し早めに起きて、手早く用意を整えた。
「…そういえば、なんで今までしてこなかったんだ?」
そう呟きながら、俺は【アリアドネ】で編んだ真紅のコートを身に纏う。
これには元の強度に加えて、ルミアの力で強化した付与が何重にも施されている。
「…そっか。今までは巻き付けてたからか」
制服にも付与はされているが、ほとんど布切れ同然だし、それに少し動きにくい。
大体の戦いで破れてダメになってたし、制服代もバカにならないから、これの方がいいか。
「さてと…行きますか」
いつも通りに部屋を出て、ダイニングに行く。
「おはよう。ベガ、爺さん、婆さん」
「おはようございます、兄様」
「おはよう。アルタイル」
「おはよう」
いつも通り婆さんの朝ごはんを食べて、歯を磨き、いつも通りに出る用意をする。
「…行ってきます」
「…行ってらっしゃいませ、兄様」
「気をつけてね」
ここまでいつも通りだ。
そう意識的に振舞ってきたのだが…
「アルタイル」
爺さんに呼び止められて、いつも通りが止まる。
「何?爺さん」
爺さんは俺に近づくと、俺の肩に手を置いて薄く笑った。
「わしはお前たちのような孫をもてて、誇りに思う」
爺さん…!?
突然の言葉に、俺は言葉を無くす。
「帰ってこい。我が孫よ」
「…ああ。帰ってくるさ」
絶対に。
俺はそう返して、今度こそ家を出た。
俺はわざと振り返らなかった。
だって…見納めじゃないんだから。
「ん〜…?どう思う?アイル」
「さあ?こんなもんじゃねぇ?」
「ちょっと!そんな適当な…」
「初めてやることなのに、適当も真面目もあるかよ。そこはお前の風の見せ所だろ」
俺とシスティは、天空城までの道筋を考えていた。
もっと正確に言うならば、システィの風を使って、一気に天空城まで行ってしまおうという、ショートカットのための発射台作りだ。
システィの風は次元と星間を超えて、どこまでも届く風。
なのだが、細かい座標指定は不安らしく、そこを俺が補うことに。
そんなこんなで調整していると、突然大歓声が沸きあがる。
「うおっ!?なんだ!?」
「…あ!先生!」
嬉しそうに駆け寄るシスティを見て、先生が到着したことに気付いた。
やれやれ…全く困った白猫ちゃんだぜ。
「か〜…お前らすげぇな、これ」
見ただけで頭が痛くなるような、複雑怪奇な魔法陣を見て、先生が呆れたような声を出す。
まあ作った俺が言うのもなんだけど、目がチカチカするし、頭も痛くなる。
「霊脈からマナを直接流して、そのマナで運用してるから、こっちの消耗はなし」
「いやそれも凄いんだが…マジで出来るとは。余裕で
そうなのか?
実感無いから分かんないけど。
〖そうね。これに関しては誇っていいわ。あの大導師すら、叡智の門を潜らないと行けなかった場所に、それを通らずに行けるのだもの。大したものだわ〗
ナムルスからのお墨付きも得たので、恐らく本当に凄いとこなのだろう。
…知らんけど。
「さて…このクソ忙しいなか、わざわざすまねぇな、お前ら」
振り返るその視線の先には、イヴ先生と右目に包帯を巻いたアルベルトさんがいた。
何でも固有魔術を封印しておくために、必要なのだとか。
「グレン。すまないな。本来なら俺とイヴも手を貸すべきなのだが」
「そうね…」
申し訳なさそうにする2人。
「仕方ないですよ。2人ともかなり消耗してましたし」
「あなたもでしょあなたも。というかリィエルもだけど、アルタイルも大概ね」
消耗ぐらいではリィエルとアルベルトさんが、ほぼ同じくらい…というか心臓が一時的に止まっていたらしい。
そう思うとリィエル凄いな。
「あなたもでしょうが!あれだけ血を流してたのに、なんでそんなピンシャンしてるのよ!」
そこはあれです、根性です。
そう思いながら、俺はイヴ先生を見る。
「…こっちは任せたよ、イヴ姉さん」
「…絶対に帰ってくるのよ」
「そっちこそ、死なないでよ」
お互い強く抱擁して、励まし合う。
俺から離れたイヴ先生は、ルミアを見て笑いかけた。
「ルミア。アルタイルを頼むわよ。すぐに無茶するから」
「はい!」
2人以外にもクリストフやバーナードさん。
エルザにエレン、そして女王陛下までもが。
「アルタイル。エルミアナを頼みます」
「はい」
「ふふ。絶対に生きて帰ってきてくださいね?孫の顔も早く見たいですし」
「…じ、女王陛下!?///」
「…お、お母さん!?///」
こんな大事な時にまでこの人は…!
結局ギリギリまで締まらない俺たち。
まあ、この方がらしいか。
「さてと…行くか。お前ら」
「…よし。システィ、準備OK?」
「ええ。…『我に続け·颶風の民よ·我は風を束ね統べる女王なり』!風天神秘【CLOAK OF WIND】!」
システィを中心に、爆発的な風が巻き起こる。
俺は方陣を起動させ、その風を制御する。
よし…行くぞ!
「「『導け·誘え·約束の彼の地へ·希望を乗せて·絶望を払いて·我が輝ける風よ·偉大なる風よ·比類なき風よ·優しき風よ·三千世界の彼方まで·吹き抜けよ·駆け抜けよ·そして我らが未来を紡げ·未来へ届け』!!!」」
そして俺たちは、どこまでも駆け抜ける風となって、メルガリウスの天空城へと飛んだのだった。
「まあ、なんだかんだで…結局はこのメンツか」
物理法則を無視した光の風の中、グレンがふと、そんなことをボヤいた。
そう言われたアルタイルは、改めて周りを見渡して笑う。
「確かに。ま、一番納まり良いしね」
「先生が赴任してから、リィエルが来て…ずっとこの5人でしたね」
笑うアルタイルの前で、システィーナが振り返り思いを馳せるように呟く。
そんなシスティーナは、ちらりとアルタイルたちを見て、ニヤニヤ笑う。
「ま、全部が全部、そのままって訳じゃなさそうだけど」
「システィ!もう…!」
恥ずかしそうにむくれるルミアだが、それでもアルタイルの隣に寄り添うのは変わらない。
「でもなんだが感慨深いよね」
「ん。私もそう思う」
「意味わかってるのか…?」
リィエルの言葉に首を傾げるアルタイルだが、すぐに現れたナムルスを見て苦笑いを浮かべる。
〖ちょっと私もいるんだけど?〗
「そういやお前とも、長ぇ仲になったな」
〖何よ雑に扱って…ふん〗
素直じゃないナムルスの反応に、アルタイルとルミアが苦笑いを浮かべる。
「素直じゃないな」
「だね」
〖聞こえてるわよ、あなたたち〗
ムスッとしたナムルスの視線に、2人はわざとらしく視線を逸らし口笛を吹く。
「それにしても、紆余曲折あったけど、結局最後はシンプルになったわね。ジャティスを倒して、世界を救って大団円!感動のエンディングってやつ!」
「もう、システィ。気が早いよ?まだ勝てるかどうか分からないのに…」
「勝つのよ!いくらジャティスが桁違いに強くても、私たちが力を合わせれば勝てるわよ!ねぇ、先生!」
「あぁ…そうだな…」
(…先生?)
どこか神妙な顔つきで気の無い返事をするグレンに、アルタイルが不思議に思う。
だがシスティーナは気付かず、そのままイタズラげにグレンを覗き込む。
「それに気付いてますか?先生。この戦いに勝って世界を救ったら…先生って、正真正銘の【正義の魔法使い】ですよ!フフッ、先生ったら、夢叶っちゃいますね!」
「…まあ…そう…だな…」
冗談めかしたシスティーナの言葉に、グレンの返事は、歯切れが悪く曖昧だった。
流石に様子のおかしさに気付いた3人娘がグレンを覗き込むが、アルタイルはある予感が過った。
「まさか先生…【無垢なる闇】のこと気にしてる?」
黙り込むグレンを見て、アルタイルは思わずため息をつく。
隣でナムルスも同じように頭を抱える。
〖あのねぇ…【無垢なる闇】なんて、不慮の事故や天災と同じようなものなの。確かに【無垢なる闇】は世界を滅ぼすわ。でもね、それ以上に天寿を全うして死ぬ人の方が圧倒的に多いのよ。今大事になのは、ジャティスを倒すこと。それ以外は
(確かにそうなんだ。そうなんだが…)
漠然としたモヤモヤが、グレンを蝕む。
それはあの時に似ていた。
帝国宮廷魔導師団だった頃、魂を削る思いで駆け抜けていた頃。
【正義の魔法使い】に憧れて…なりたくて。
だから足掻き続け、葛藤して。
なのに届かなくて、絶望して。
その時の飢餓感と焦りが、今再び過ぎっている。
「…だぁいじょうぶだって!」
そんな感情を押し殺し、グレンは悪ぶった笑みを浮かべる。
「俺はロクでなしだからよ!俺の手の届く範囲の奴らしか守らねぇっつーの!そもそもあいつはセラの仇だ!世界のために〜だとか、皆のために〜だとか、そんな高尚な目的のためじゃなくて、ただの私怨でジャティスのやつをブチのめしに行くだけだっつーの!こんなロクでなしの俺に世界の命運を託す羽目になって、皆、ご愁傷さまだぜ!ダッハッハッハッハ!!」
〖…ならいいけど〗
「…ったく、このバカ講師…」
(何言ってんだよ、バカ野郎。あんたはンなタマじゃねぇだろ)
なんとも言えない表情をする、ナムルスとアルタイル。
だがそれも、直ぐに切替える。
「そろそろだぞ。全員警戒」
「何がだ?」
「空間がしっちゃかめっちゃかなんだよ」
〖そうね。
険しい顔で警戒を促す2人に、全員の顔が引き締まる。
元から世界の法則に絶大な負荷をかけてきたが、それを大導師が曲りなりにも制御してきたおかげで、問題が起こらなかった。
だがそれも、アルタイルたちがフェロードを倒し、さらにジャティスが無茶苦茶にしたせいで、全てが狂ってしまったのだ。
〖だから…気をつけて!〗
ナムルスがそう注意を促した瞬間、闇が蟠った。
致命的な何かを超えた、不吉な予感。
誰もが
その瞬間…風景がガラリと変わった。