ロクでなし魔術講師と糸使いの少年   作:ネコ耳パーカー

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よろしくお願いします。


最終決戦編第5話

俺たちの目の前に現れたのは…

 

「【魔煌刃将】…アール=カーン…!?」

 

【タウムの天文神殿】の果てに死闘を繰り広げた魔人の登場に、俺たちは身構える。

 

〖…この半年で見違えるほど、位階を上げたな。我が好敵手、アルタイルよ。それに貴様は…なるほど。夜天の乙女の加護を受けているのか〗

 

「話が長ぇよ。悪いけど俺たちは忙しいんだ。ヤルの?ヤラないの?」

 

そんな俺の鋭い言葉にアール=カーンは黙り込むと、ふとなにかに気付いたのか、先生をじっと見つめる。

 

〖…なるほど。まこと奇妙なる、時の因果があったようだ。よもや数千年前の(セリカ)の弟子が、貴様だったとはな〗

 

「理解が早くて助かるわ。マジで説明が面倒だからな」

 

システィ曰く、メルガリウスの魔法使いに出てくる、正義の魔法使いが教授で、アセロ=イエロを倒した弟子が先生、ということらしい。

俺たちの間に、緊迫した空気が流れる。

やがて…ポツリと、アール=カーンが呟き出した。

 

〖我は…我が仕えるに相応しい主を探している。そのために夜天の乙女と契約し、十三の命と人のカタチを得た〗

 

そう、こいつはある者が人のカタチを得た存在。

そしてそれを、俺たちは既に目の当たりにしている。

それは…【神を斬獲せし者】。

あの偃月刀だ。

 

〖我の存在理由は、元よりただ一つだった。ある目的のため、ある者によって生み出された。それ故に我はその目的を果たすため、我を振るう者を探している〗

 

「何だその物言いは?まるで自分はなにかの道具だ、と言ってるような物言いだな」

 

〖曲がりにも、我を振るうに値する力を持つと判断出来たのは3人。高須九郎、(セリカ)。そして…ジャティス=ロウファン〗

 

「なっ…!?ジャティス!?」

 

先生の驚きの声が漏れる。

アール=カーン曰く、力と意志があるかが、こいつなりの判断基準らしい。

だがここでもう一つ疑問が出てくる。

 

「力っていうのは分かる。だが意思っていうのはなんだよ?自分勝手に世界を滅ぼそうとしている、あのクソ外道野郎のどこに、お前が相応しいって言うんだよ!?」

 

〖それは我を創出した者によって、こう定義されている。己が正義を持って、理不尽に抗う意思。…即ち、【正義の魔法使い】たらんとする意思だ〗

 

な、何!?

ちょっと待て、それはおかしいぞ!?

 

「な、なんでお前から【正義の魔法使い】なんて言葉が出てくる!?それはロラン=エルトリアが作った、作中造語だろうが!なんでお前が、その言葉を知ってるんだよ!?」

 

「そ、そもそも納得いかないわ!なんでジャティスみたいな狂人が、【正義の魔法使い】に相応しいとかなるわけ!?あなたおかしいわよ!」

 

先生とシスティが責め立てるが、当のアール=カーンは無視。

 

〖故に我は、我の存在理由に従い、ジャティス=ロウファンを主とする。それがこの次元樹での運命選択。そう考えていた…先程までは〗

 

「…先程までは?」

 

〖イレギュラーが起きたのだ。4人目…そう、貴様だ。グレン=レーダス。(セリカ)の継承者よ〗

 

「…はぁ、俺?」

 

突然の指名に、先生が唖然とした顔をする。

 

〖アルタイル=エステレラ。貴様も可能性はあったが、既に夜天の乙女と契約し、大きな力を得ている。故に貴様にはこれ以上は身を滅ぼすだけになろう〗

 

俺もかよ…。

つまり、ルミアがいるから俺には他は必要ないと。

だが何やらアール=カーン自身も、かなり困惑しているのか、ブツブツと何か呟いている。

 

〖…やはり見極めるべきだろう。ジャティス=ロウファンか。あるいはグレン=レーダスか。…ついてこい。我が本体の下へ案内しよう〗

 

 

 

石畳の道に、台形を基本とした建築物。

ドーム屋根の尖塔、石柱が並ぶ神殿。

要所に立ち並ぶ石柱碑、浮遊する謎の六面体。

いかにも手付かずの古代都市に、システィーナが興奮する。

 

「これが天空城…!しかも間違いなく手付かずですよね!伝説の魔王遺産とか、ゴロゴロ転がってるんじゃ…ジュルリ!」

 

(ヨダレ垂らすな、ヨダレ)

 

興奮したシスティーナの様子に、アルタイルは呆れのため息をつく。

 

「おいおい白猫…俺たちは遺跡発掘に来た訳じゃねーぞ」

 

「わ、分かってますよ!」

 

「ならここ拭け、ここを」

 

アルタイルが呆れ気味に、自分の口元を指さす。

そんなことを話しながら、アール=カーンと事実確認も進めて行く。

メルガリウスの天空城は、【門の神】と呼ばれる外宇宙の神性と交信するための、大規模な魔術研究所。

人の集合的無意識…夢の深層域に存在する、非実在性領域【幻夢界(ドリームランド)】。

 

「つまり学院の地下にある地下ダンジョン…【嘆きの塔】は、本来行けないはずの領域に、肉体ごと到達するための道。…こういうことだな?」

 

〖そうだ。結局、高須九郎は【禁忌教典(アカシックレコード)】を得るために、【聖杯の儀式】を利用し【門の神】と交信する道を選んだのだが…当然それだけが策では無い。それが…これだ〗

 

そう言われてアルタイルたちが案内されたのは、霊廟だった。

中にあったのはバラバラのイメージを持つ、無数の石造だった。

 

「なんだこりゃ?」

 

「アイル君…これって…」

 

「ああ。旧神(エルダー·ゴッド)【神を斬獲せし者】だ」

 

グレンの戸惑いに、ルミアとアルタイルが呟く。

 

「なんだって…?【神を斬獲せし者】?」

 

〖正確には高須九郎が夢見たレプリカだ。そもそも、【神を斬獲せし者】とは、とある刀剣を手に、確固たる意思を持って【無垢なる闇】と戦った者たちのことだ。高須九郎はこの我を触媒に、【神を斬獲せし者】の夢を見ることで、かの神性を再現しようとしていたのだ。結果はお察しのとおりだがな〗

 

話を聞きながら、システィーナは周りキョロキョロする。

老若男女どころか、人じゃなさそうなものまで、様々な形が存在する中、ふとシスティーナがあるものに気付いた。

 

(…あれ?誰かに似てる?)

 

不思議に思い、近すぎたその距離を取ろうと動いた時、突然不吉な鐘の音が響いた。

 

ゴォォォォォン…ゴォォォォォン…

 

「な、何だこの音!?」

 

〖時が来たのだ。【聖杯の儀式】が始まり、地上の根の動きが爆発的に加速し、世界を食い尽くすだろう〗

 

「おいおい…ヤベェじゃねぇか!いい加減本題に入ってくれ!」

 

〖もう済んだ。あれが…我が本体だ〗

 

アール=カーンか指さすその先には、黒い偃月刀が突き刺さっていた。

刀身には、何かの文字が書かれている。

 

「なんだ、あの剣?」

 

〖【正しき刃(アール·カーン)】。最後の戦いに持っていくといい。運命の因果の果てに、貴様か、あるいはジャティス=ロウファンか。どちらかを導くだろう。あるべき形に、あるべき未来に〗

 

そう言い残して

 

〖夜天の乙女との契約は、ここに完遂された。…さらばだ〗

 

アール=カーンは消えていった。

つまりアール=カーンとは、この黒い偃月刀の付喪神みたいなものだった…ということだ。

 

「…これ、フェロードが前の世界で使ってた武器だ」

 

〖そうね。どこで手に入れたのか…そこまでは聞いてないわね〗

 

やけにあっさりと抜けたことに、グレンは驚きつつも、その理由をすぐに解明した。

 

「すげぇ…!この武器、びっくりするくらいなんもねぇ!チート級神秘とか、超絶魔術が込められてるとか、そういうのが一切ない!何が【正しき刃(アール·カーン)】だよ!完全に名前負けじゃねぇか!これ、ただの宇宙一頑丈なだけの武器だぜ!」

 

神鉄で出来たそれは、確かに頑丈なのだが、本当にそれだけの力しかない。

その事に思わず、アルタイルたちも苦笑いする。

 

「…グレン。多分こっち。勘だけど」

 

だがいつまでも鳴り止まない鐘の音を聞き、リィエルが硬い顔で睨むのを見て、彼らも再び歩き出す。

 

 

 

城の内部をどんどん進んでいく。

気付けば壁と天井はなくなり、回廊と廊下、そして螺旋階段だけになっていた。

 

「…ああ、そういう」

 

俺はある仕掛けに気付き、思わず呟いた。

それはその塔が生命の樹(セフィロト)を模して、作られているということだ。

王国(マルクト)の間…第一霊視世界。

基礎(イエソド)の間…第二霊視世界。

栄光(ホド)の間…第三霊視世界。

勝利(ネツァク)の間…第四霊視世界。

(ティファレト)の間…第五霊視世界。

慈悲(ケセド)の間…第六霊視世界。

峻厳(ゲブラー)の間…第七霊視世界。

理解(ビナー)の間…第八霊視世界。

知恵(コクマー)の間…第九霊視世界。

王冠(ケテル)の間…第十霊視世界。

これらの道を擬似的に通ることで、己の魂を昇華させ、流出界(アツィルト)…即ち天へと至る…そういうことなのだろう。

王冠の領域こそ、【王者の法(アルス·マグナ)】そのものであり、そこに隠された至高の霊視世界に知識がある。

そしてその間に人が決して越えられぬ深淵(アビス)があり、その深淵こそが【門の神】であり、知識(ダアト)こそが、【禁忌教典(アカシックレコード)】である。

 

「…なるほど。()()()()()()()か。こう考えると、洒落たネーミングセンスだな」

 

「ですね」

 

禁忌教典(アカシックレコード)】…つまり、天へと至る道を模索するものたちの集まり。

即ち、天の智慧研究会。

そしてついに俺たちは、その最奥…王冠(ケテル)の間に着く。

いつの間にか俺たちは、大いなる宇宙の中心にいた。

360度見渡す限りの、星々の大海。

そんな俺たちの視線の先には、1本の大樹が。

そしてこの木の幹には…

 

「…マリア」

 

上半身は生まれたままの姿、下半身と両腕が木の幹と同化したマリア=ルーテルが眠りについていた。

…ごめんな、遅くなって。

すぐに助けてやるからな。

 

「…待ってろよ。マリア」

 

「魔王の野郎がそうすることも、読んでたんだろ?なぁ」

 

俺とグレン先生の視線の先にいるのは

 

「…ようこそ」

 

木の根に優雅に腰をかけた、ジャティス=ロウファンだった。

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