クロストリガー   作:スカーレット・ウィング

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10話

多くの人を収容できるほど大きい部屋には異質な光景が広がっている。

血を流し倒れる人が数十人、彼らを倒したと見られる男が一人刃を持って立っている。

 

「兄さん、何してるんだよ…。それに、」

男の弟と思われる人物が声をかけた。その後ろには部下と思われるものが数人いる。

 

「使い終わった玩具は片づけるでしょう?」

男が答える。

 

「お前は誰だ。お前は兄さんじゃない。」

「いえいえ、私はあなたの兄ですよ。それにどのみち革命を起こすのですから変わりませんよ。」

「その中には俺たちの支持者がいたんだぞ。」

「ええ、そうでしょう。ですが、私にとってはもういらないものですから。」

 

そういって男は立ち去ろうとする。

 

「ひとつ聞かせてくれ。」

「なんでしょう?」

「お前は俺をどう思っている。」

「私は・・・」

 

男は語りだした。

 

「なら、良い。辻褄は合わせておく。」

「助かります。こちらですることは少ないに越したことはありませんから。」

 

――――――

 

 

「なんだ?今のは。」

 

不機嫌そうに起きたのは部屋の主、九斬である。

(それにしても妙な夢だったな。)

先ほど見た夢について考える。

(あの場面はあの時のはず、それにあいつがいたってことは…)

 

「まぁいいや。どうせ会うのは相当あとになるだろうし。それに視察もあるしな。」

 

 

――――――

 

「今日君たちを案内する九斬だ。よろしく。」

「うむ。私は二穂。こっちが従者の華賀利と依沙里、友人の雪枝と楓だ。」

「今日は施設内の見学ということでいいのかな。」

「うむ。それにいくつか聞きたいこともあるが、これはあとで聞くぞ。」

「お手柔らかに。」

 

 

 

「ここが部隊室のフロアだ。1部隊に1部屋割り振られている。私物を持ち込んでほぼ家のようにしているものもいる。」

「部屋というのは全員同じなのでしょうか。」

雪枝が尋ねる。

「あまり他の部隊の部屋に入ったことはないが同じはずだ。順位が上だからといって無理がそう通るわけじゃない。」

「つまり、部隊を組んだばかりの新人と長年部隊を組んできたベテランは同じ扱いというわけか。それでは不満はでないのか。」

「まだ若い組織だから関係ないし上位のほうは気にしない派が多いから今のところは問題ないよ。」

 

施設の解説をしながら質問に答えていると。

「だれだね。このA級1位の太刀川隊の部屋の前にいるのは。って九斬さん!」

 

「尊ではないか!お前、ボーダーに入ったのか。」

「げっ。二穂さん。来るなら言ってくださいよ。」

「む?何か見られて困るようなことでもあるのか?」

「ななななな、何もないですよ。ね、九斬さん。」

「そうだな。見られて困るようなこともない。」

「ほほほほほ、ほら、九斬さんもこう言っていることですし。僕も新人を育てないといけないので。それでは。」

 

そう言って逃げるように立ち去ろうとする唯我。

「ちょっと待て尊。なぁ、尊はボーダーではどうなのだ。」

「どう、とは。」

「ボーダーでは個人の腕を磨くための施設があると聞いている。戦績はどうなだ?」

「それは。」

唯我が言いよどむ。

「へっぽこっす。」

 

!!!

「出水先輩!なんで言っちゃうんですか!もう少しでごまかせそうだったのに。」

「そういうなよ。どうせバレてんだろ。俺は出水公平。こいつのチームメイトだ。」

「私はオペレーターの国近柚木だよ~。よろしくね~。」

 

「で、実際はどうなのだ?このものの言う通りなのか?」

二穂が唯我に詰め寄る。

「九斬さんもなにか言ってください。ほら、フォローを。」

「雑魚だな。」

唯我はなだれ落ちる。

「間違いなくA級最弱だしB級含めても上位にはこない。」

 

「やはり尊は尊で安心したぞ。」

「二穂さん。当たりが厳しくないですか。」

「いつも私から逃げ回っているお前が突然戦えると言ったら驚いてしまった。」

 

みんなで笑いあった。

 

 

施設の見回りを終えて会議室に戻る最中

 

「お前に一つ聞きたいことがある。」

二穂が尋ねる。

「なんでしょう?」

「十五年ほど前、一人の少年が暴力団の事務所を襲撃した事件が起きた。」

「これはまた物騒な。」

「その少年は暴力団によると喜々としてバットを振っていたという。」

「血の気の多い人がいたものですね。」

「この者はお前ではないか?」

「正気か?」

「うむ。このような事件を起こした者が十五年もおとなしくしていることは少ないだろう。」

「だから素性の知れない俺だと。言いがかりじゃないのか。」

「だからこそだ。」

「あまり他人の過去をどうこういうのは良い趣味とは言えないよ。」

「しらを切るつもりか。まあいい。この話は終わりだ。」

 

「あと一つ。お前の名前を言ってみてくれ。」

「俺は九斬だが?」

「違う。そうではない。フルネーム、といったほうが良いか。これまであってきた者たちはフルネームで自己紹介をしていた。だが、お前は九斬としか名乗らなかった。それに皆お前のことを九斬と呼んでいる。これはなにか事情があるのか?」

 

二穂の指摘に出水と国近はしまった、という表情を見せる。

 

「ええ、その通り深い事情があります。が、これはボーダーの踏み込んだことなので現状部外者の君たちに言えることはない。」

「む、そうか。ならどうすれば教えてくれるのか。」

「そうだな…遠征計画は知っているか。」

「ああ、これまでにさらわれた者たちを奪還に行くらしいな。」

「そう。その部隊に選ばれたら教えてやれないこともない。結局は上の許可がいるがね。」

「本当だな。」

「それはこのあと交渉してくださいとしかいえない。」

 

 

会議室

 

「視察はどうだったかな?」

本部長の忍田が問う。

「うむ。良い設備があると思う。そして司令官。九斬の秘密を私に教えろ。」

「何故?」

「そこに重大な何かがあると踏んでいる。世間には言えないなにかが。」

 

「九斬はなんと?」

「遠征部隊になったら教えてやると言った。」

「いいだろう。君たちがボーダーに入り、遠征部隊になったのなら君の望み通り九斬の秘密について話そう。」

 

「了解した。次に本題だが。」

 

そう言って二穂はカバンから何かを取り出した。

 

「トリガーか。」

九斬がいち早く反応する。

 

「何故民間人の君たちが?」

「それは三門市で起きた大規模侵攻の数日後に緑の長い髪をした少女にもらったのだ。」

「みても?」

「構わんぞ。」

 

 

「他にはあるのか。」

「ああ、五人分ある。」

カバンからさらに四つ取り出した。

 

「解析してもいいのかい?」

「うむ。我々では解析できなかった。だからボーダーに解析を頼む。」

 

「こんなものはみたこともない。解析にはかなりの時間がかかることはわかってくれ。」

「それはこちらもわかっている。頼むぞ。」

 

「訓練室で起動実験からですね。」

「私も起動はしたが使うのははじめてだ。」

 

二穂たちはエンジニアたちと訓練室に向かった

 

 

 

 

 

 

「彼女たちから取り上げるのはやめたほうがいい。」

九斬がいった。

「向こうで俺もあったことがある。ほぼブラックトリガーだと思ったほうがいいと思う。向こうであれは実際に他人が使えなかったし死んだら使えなくなったから相当面倒なモノですよ。それこそそいつの怒りを買いかねない。」

 

  それこそ、共同出兵の理由にされかねない

 

不穏な言葉を残して訓練室に向かった。

 

 

 

会議室

 

「共同出兵とはどういうことだね。」

「ここから先は妄想にはなるが、そいつはなにかしらの目的があって行動しているはずです。逆にあれだけのトリガーを作れるとしたら囲い込みに動くはず。」

 

「そこまで言うということは知っているのか?」

「ああ、向こうであったことがある。ただ、少女ではなく女性だったが。」

 

「それに、下手なことをして怒りを買うよりは緊急時の備えにするべきということか。」

「勿論、ただの愉快犯の可能性もあるが向こうからしかけてくることは低いとみてる。だからボーダーに入れて管理下に置いた方が都合が良いと考えている。A級になったら解禁でってことにすれば特典でと思わせることもできるし。」

 

 

訓練室

 

「結果はどうだ。」

「どうしたもこうしたもあるか。これまで開発したトリガーを馬鹿にするような性能をしとる。とんでもない拾い物だわい。」

 

「装備は見えているもので全てか?」

「今のところはな。大剣に槍、弓、大砲、後の一つがよくわからんがグローブのように思える。しばらくは新作に使えそうじゃ。それに飛行装備まであるとは驚いた。」

 

「じゃ、ちょっと性能テストついでに遊んで来るとしますか。」

「九斬、わかっとるな。」

「ええ、あくまで情報収集。さすがに武器もった素人相手につまらない真似はしませんよ。」

 

「じゃあ、お嬢さん方、俺と少し遊ばないかい?」

「九斬か。よし、私もこいつがどれほどのものなのか試してみたくなった。方法はどうするのだ?」

「そうだな。ここは一人づつやっていこう。さすがに制圧はしないから安心してくれ。」

 

そういって五人の装備の試運転を行った。

その結果、九斬は見事に一撃で粉砕された。序盤こそしっかりと受け、攻撃をさばいていたが力を込めて攻撃を繰り出した。この結果はボーダーを驚かせることとなった。同席していた東や迅、風間などもいたが全員ひきつった表情をしていた。

 

「これがブラックトリガーではないとは…いや使い手を選ぶという意味ではブラックトリガーといえるのか。」

本部長の忍田が呟いた。

 

相手をした九斬は弓場の射撃やアタッカーを除けばさばけるほどの防御力をもっており、その堅さはボーダーでもトップクラスに位置している。もちろん本気で相手をしていたわけではないと思うがその九斬の防御を一撃で砕いた五つのトリガーには恐怖を感じざるをえない。

 

いつかこのような力をもったものがやってくると考えると一抹の不安を上層部に残す実験結果になった。

 

 

 

 

 

 

 

「シューターばっかりやってるから腕が落ちたんじゃないのか?」

五人と戦ってまけた九斬を太刀川が煽る。

 

「そんなにやりたいならやろうじゃないか。」

「ほう。」

「ちょうど教授から課題を出せと言われていたのでね。」

「バトろうってことじゃないのかよ。」

「当たり前だろ。そんなんでテストはダイジョブか?みんなで風間ブート勉強会を開催しないといけないか?」

「待てって。テストにはまだ一週間以上ある。慌てるような時間じゃない。」

「そういって前日に泣きついてきたのはどいつだよ。」

 

「くだらんことをいってないで報告書を作れ。」

問答にみかねた風間が仲裁する。

 

「じゃ、そういうことで。」

九斬は部屋を後にする。

 

「本気でさっきのことを言っていたわけじゃないだろうな?」

「あたりまえだろ。相手に攻撃を誘導していただろ。ぶった切られたのは予想外だったみたいだが、それは俺も思う。あそこまでの火力はアイビスでもない限りボーダーじゃでない。」

「彼女たちにトリガーを渡した存在が何かはわからんが彼女たちの扱いに関しては慎重にいかなければならない。太刀川、むやみに戦闘するなよ。」

「わかってるって。そん時はちゃんと許可取ってやるから。」

 

 

ボーダートップのアタッカーはボーダーの顔。やすやすと負けるようなことがあれば今後に影響が出るほど重大な責任を負っている。

 

 

 

 

「報告書としてはこんなところですかね。」

幹部が集まる会議室で九斬は先日のトリガーの報告書を提出した。

「あれには相当なトリオンを消費します。現状場面を絞らないと使いものにはならないでしょう。玩具としてならまだしも彼女たちの力量も踏まえれば風刃と同じ扱いで良いと思います。」

「ではひとつ、あれは一体何なのだね?」

「全容まではわかりませんが、緑の髪をした女が世界中でトリガーを配っている。ってことですね。向こうで一回だけ会ったことがあります。知っているのは最初に起動した奴にしか使えないことと使えば使うほど進化していく学習型ってことですね。」

 

「会ったというのはいつだね?」

「たぶんあれでのし上がったので新兵の頃だから8年くらい前だと思います。」

 

「仕様についてはどうやって知ったのだね?」

「それは実験ですね。で何度も起動していくうちにトリオン消費が減っていることに気が付きました。」

 

「では最後に、なぜこちらに来るときにもってこなかった?」

「向こうではかなり名が知られていたのでそいつがここにきていることをバレたくなかったってことですね。下手に大軍を送り込まれたら対処できないと思っていましたので。」

 

「よかろう。では連絡事項だ。二日後、女性型ネイバーの尋問を行う。向こうは瀬田を条件にしてきた。隊長であるお前も同席しろ。」

「了解。」

 

 




お嬢様なら唯我との絡みは見逃せない

話の結合(一話と二話をつなげて一話とする)

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