※環が怪我してます。
彼、通形ミリオは自分の数倍の高さを持つ壁を睨みつけていた。
家から数分歩いた場所にある、高い壁や有刺鉄線で囲まれた四角い灰色の建物。
周りの子供達は気味悪がって近づかないか、興味を持っても登れないからと諦めるかだったが、彼の個性なら侵入が可能だ。
もちろん親や教師が入らない様にと指導はしていたものの、子供の興味には勝てなかった。
ミリオside
(泣き声、今日も聞こえるよね…)
壁の中から聞こえる押し殺した泣き声。
助け方なんて考えてはいなかったが、せめて無事かどうかを確認したいと考えた。
「よし!」
気合を入れて服を(個性は使わず)脱ぐ。
服を一まとまりに丸め、壁の上から投げ入れる。
(透過!)
ゆっくりと壁をすり抜け、中に入る。
子供的には近未来的な光景を期待していたりもあったが、実際は雑草が生い茂る中に外からも見える建物が建っているだけだった。
ちょっと残念。
でも、大切な事はそれではない。
あの子は何処だ?
今は泣き止んだのか、泣き言は聞こえてこない。
とりあえず服を着て建物の壁を伝って探して行くと、窓の様な物があった。
ただの四角い穴に鉄格子で蓋をしてある。
中を覗くと黒髪の少年がちょこんと座っていた。
「ねぇ!」
「…!?」
声をかけるとこっちがびっくりするぐらい素早い動きで座ったまま壁まで移動した。
…いや、そんな驚かなくてもいいんだけど。
部屋は狭くて、せいぜい2メートル程度しかないので話すのには問題ない。
とりあえず名前と年齢、通っている小学校を言って反応を見ても、返ってきたのは
「…あまじき、たまき」
という、なんとも簡潔で必要最低限の情報だけだった。
もっと話を聞きたいと思ったが、既に暗くなって来ていたので、その日は一旦家に帰った。
次の日、学校から帰ってきてすぐに遊ぶためのリュックを持ち家を出た。
前日と同じように侵入し、声をかける。
軽く驚いてはいるけれど、あれなら話してくれそうだ。
鉄格子をすり抜けようともしてみたが、たまきが
「危ないから来ないで」
と言うので辞めておいた。
昨日と同じように自分からは何も話してくれないので、昨日夜更かしして作って来た質問リストに書き込んでもらうことで相手の情報を知ることにした。
1.名前は?
天喰環
2.個性でなにができる?
3.何才?
7歳
4.好きな食べ物は?
蛸
5.好きな場所は?
部屋の中
6.何でここにいるの?
いつのまにかここに居た
…文章の中でさえ無口なのか。
でも、大体のことはわかった。
個性を書かないのは、教えたくないってことなのだろうか。
漢字が難しい名前には昨日聞いた名前で振り仮名を書いておく。
「ねぇ、環。」
環は無表情になったままこっちを見ている。
「ここでいつも泣いてるのって、環?」
環は突然目を逸らして、涙を流して謝り始めた。
しまった。触れてはいけないことだったんだろうか。
気まずくなってしまったので、夕方になったことを理由に逃げるように家に帰った。
次の日は、環が怒っていたらどうしようと思って会いに行けなかった。
そして土曜日、どうしても気になってもう一度あの場所に行った。
緊張して、一回壁に引っかかってしまった。
環の部屋に行くと
…血だらけの環が、倒れて泣いていた。
どうして?
なんで環が?
そんな疑問を浮かべている間に環が俺を見た。
俺に気づいた途端、慌てて
「誰にも、言わないでっ…言ったら、殺される」
と口止めして来た。
傷だらけの環を見て、その言葉が事実である事を察した。
何も、出来ない。
環が泣く理由も分からない今の俺じゃ、何も…それならせめて、
「環」
「俺は、環を守れるヒーローになる」
何の根拠もない言葉だった。
こんなことを言った後も俺は何も出来ず環に会いに来るだけ。少しずつ環の怪我も増えていく。
それでも段々と笑顔が増えていく環を見て嬉しくなった。
環は決まって帰る前、俺に誰にも言わないように注意してきた。
でも、そんなヒーローに憧れる子供達の幸せは長くは続かなかった。
ある日、環は俺に
「もう会えない」
と言った。
意外と冗談の多い環のことだから、いつもの冗談かい?と流そうとしたけれど環のいつになく真剣な顔でなんとなく分かった。
きっともう、少なくともしばらくは会えない。
でも。
「絶対、環を助ける!」
時間はかかるだろうけど。それでも環は
「待ってるよ」
って言ってくれた。
そのとき、環の背後から大人の話し声が聞こえて来る。
「ミリオ、早く帰った方が良い。ここはもうすぐ証拠隠滅のために爆破される。ミリオがおれを助けに来てくれるんだろう?それまで俺は生き残ってみせるよ。」
俺のことを疑おうともしない環の言葉に、俺は肯定して去ることしか出来ない。
こうして、俺たちは遠く離れてヒーローを目指すこととなった。
これが環の
意外と長くなってしまいました…
この時にヒーローネームとコスチュームの原型が考えられてます。
あとミリオはこの時点で9歳です。
ミリオが3年の時環が1年のイメージ。
あとお察しかも知れませんが私の推しは天喰君です。
これまでもこれからも贔屓していきます。
質問リストが夜更かしした割に短いのは小学生ならではの作業の遅さです。決して私が思いつかなかった訳ではありません。そう決して(以下略)