変身ヒロインは悪の組織に捕まりたい   作:牧村九天

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第4話 「ワイヤーアクション、香港アクションへの挑戦」

モーゲン帝国海底基地の司令室に新しい幹部の姿があった。軍服姿の麗人である。

 

「ベルベット、遅ればせながら着任しました」

 

「久しぶりですねベルベット」と笑顔で迎えるイレーネ。

 

ベルベットはイレーネの副官なのだ。イレーネが地球の前に制圧した星の後始末を終え地球に着任したのだ。

 

一方の狒々山の山中。

今ここではラック・ラックとレディYによる戦闘が繰り広げられていた。

 

クラブモーゲンとの戦いで自分が慢心していたことを思い知った望が幸子に頼んで模擬戦を頼んだのだ。

 

そもそも捕まりたいなら特訓などしなければよいのだが、彼女の中には敗北ヒロインは負ける瞬間まで強くなければならないという理念があった。

 

「たあぁぁぁ」と杖を振り下ろすレディYの攻撃を剣で受け止めるラック・ラック。

 

(幸子の奴、強くなってる……)

 

攻撃のキレも威力も知り合ったころとは雲泥の差。今の幸子ならローズモーゲン程度なら簡単に倒せてしまうだろう。

 

「でい!」と突き技を出すラック・ラックだが、レディYはそれを回避するとラック・ラックの首に杖を突きつける。

 

「参った……負けだ。付き合ってくれてありがとうな幸子」

 

「良いですよ。私も勉強になりましたし」

 

「アンタも強くなったね。アタシもそろそろ引退かな」

 

「望さんがいないと私なんて戦えませんよ」

 

「嬉しいこと言ってくれる。アタシにも光線技とかあればなぁ」

 

「考えれば良いんじゃないんですか?」

 

「どういう事?」

 

「私たちの力は心の力。自分の心の中で形に出来れば使えるようにはなるはずですよ」

 

「なるほどね。考えたことも無かった」

 

「研修で習わなかったんですか?」

 

「アタシは組合員じゃないし。とりあえず試しにやって見るか」

 

望はイメージする自分の理想とする戦闘法、つまり香港風のワイヤーアクション。ラチェットを使った欧米風よりも香港風の手引きワイヤーの動き。

 

 

(レディYの奴がアタシの方を指さしながら唖然としてる……)とラック・ラックが振り向くと、そこにあったのはクレーン、ハーネスに滑車にワイヤーにロープにその他諸々。

 

「ワイヤーアクションの機材を実体化させちゃった……」とラック・ラックが言うとレディYがズッコケてしまう。

 

「早く消してください! そもそもあの人たちは何なんですか!?」

 

怒鳴るレディYの指さす先には何人もの人間がいた。無論、術で作られたまやかしだが。

 

「多分、ワイヤーリガーだと思う。ワイヤーアクションの時にワイヤーを操作するプロ。試しにワイヤーやってみよ」と機材を装着させてもらうラック・ラックにレディYは「駄目ですよ!」と怒鳴るがそうしているうちにラック・ラックはワイヤーリガーたちの「セーノ!」という掛け声と共に宙を舞う。

 

その姿は完全にアクションスター。その様は正に空中浮遊。

ワイヤーリガーたちの手腕によりラック・ラックの体が宙を舞いながら動く。

そして、着地して終了。

 

「快感……」満足そうな顔のラック・ラックだったが。

 

「やりすぎです!」

 

「うぎゃぁぁぁぁ!」

 

当然のごとくレディYから制裁を受ける羽目になる。

 

結局この日の成果としては幸子のレベル上げとワイヤー技術の取得ぐらいしか出来なかったが充実した一日になったと言えよう。

 

「でも今日はありがとう幸子。今度の日曜日にでもご飯おごるよ。弟たちも連れてきな」

 

「本当ですか!楽しみにしてますね!!」

次の日曜に約束を取り付けた幸子は満足そうに自宅へ戻って行った。

 

その様子を見ているものがいた。モーゲン帝国のドローンだ。

 

「やはりあそこがラック・ラックの隠れ家ですか……」とドローンから送られてくる映像をモニターで確認するイレーネ。

 

「直ちに攻撃を仕掛けましょう」と進言するベルベット。彼女が攻撃命令を出そうとするがイレーネは「お待ち!」と制止する。

 

「私の目的はラック・ラックを正面から屈服させることです。疲労した相手では駄目です」とあくまでも戦うのは自分の実力を示してからだと反論。

 

「しかし、イレーネ様、これ以上の地球侵略の遅れは致命的です。我々の敵はラック・ラックとレディYだけでは無いのですよ」と答えるベルベット。

 

ラック・ラックとレディYはローカルヒーローのようなものであり、世界各地にこのようなヒーローやヒロインがいる。

 

ちなみに、ラック・ラックとレディYがいる地域には後、ヒロインが1人とヒーローが1人いるが、戦闘による負傷の為、行動不能となっている。

 

「だからこそ、私はこの指輪を作ったのです。次こそは私に敗北は無い」というイレーネの両方の中指には同じデザインの指輪が嵌められていた。

 

「しかし、アーマーのシステムがまだ完成していないではありませんか……」

 

「そうですね……もう少しデータが必要かもしれません」

 

「ならば……私がラック・ラックと戦ってきます。それで奴のデータを集めます。無論、私が奴を屈服させてもよろしいのでしょう?」と不敵に笑うベルベット。

 

「よろしい……許可します。ですが、危なくなったらすぐ逃げるんですよ」

 

日曜日のお昼時。望は幸子と2人の弟、幸典と直樹を連れてある飲食店を訪れていた。

その名は石村フードハウス。望が子供のころから知る町の飲食店である。

 

ドアを開けると丁度そこには店主の石村次郎がいた。

 

「いらっしゃい望ちゃん、一緒にいるのはお友達かい?」

 

「まあね、依田幸子と弟の幸則くんと直樹くん」

 

3人を順に紹介する。幸則は恥ずかしさからなのか顔を下に向けていたが、直樹は笑顔を浮かべて手を振っていた。

 

そんな姿を見て安心したのか微笑みかけると席へと案内された。

 

「メニューになくても大抵のものは作れるぞあの人」とは望が言う言葉である。実際その言葉は嘘ではなく。客に出す料理は全て手作り。特に人気なのがカレーライス、カツ丼などの洋食系であるが、ラーメンも根強いファンが多く、望の行きつけでもある。

 

注文して5分も経たないうちに4人の前には湯気立つ熱々の皿が置かれた。

 

「ごゆっくりどうぞ」と笑う青年にどうやら幸子は見惚れているらしい。

 

「幸子……見惚れてるとこ悪いが、あの人、仁さんはホモだぞ」

 

という言葉を聞いた瞬間、我に返った幸子は真っ赤になっている。

 

そして「お、美味しいですね!!このハンバーグ!」と無理やり話題を変えるように食事に集中し始める。

それからしばらく談笑しながら食事を楽しんでいる最中、店内に設置されているテレビから流れてくるニュースに気を取られる望と幸子。

 

落海 承子(おちうみ しょうこ)と言う高校生が失踪したことを伝えるニュースだ。望と幸子が気を取られたのは落海 承子という名前だ。

 

彼女たちの記憶の中にある日本でも五本の指に入るエリートヒロインであるライトニングプリンセスの変身者と同じ名前だったからだ。

 

「承子さんは先月15日、防犯カメラに姿を撮影されて以降、行方が分からなくなっています。警察によると承子さんは事件に巻き込まれた疑いがあり……」というアナウンサーの声を聞きながら望と幸子は無言のまま食べ続ける。

 

雰囲気を変えようと「そう言えば幸子たちの両親ってどうしてるの?」と望が問う。

 

すると少しの間を置き、「お母さんは妊娠中で、お父さんは仕事で家を離れてます」と答えた。それを聞いて何となく事情を悟った望はそれ以上何も聞かなかった。

 

そこに石村がやってきて4人に飲み物を振舞う。

 

「新メニュー候補のジュースなんだが、飲んでみてくれんか?」と尋ねてくる。

 

「遠慮無く頂きます」と4人は恐る恐るとコップを口に運ぶ。

 

「うまいっ!」

 

「これ美味しい!」

 

「おいしいです!」と大好評の様子だった。

 

「口に合ったようで嬉しいよ。また、いつでも食べに来てくれ」

 

「ありがとうございます!」

 

その後、会計を済ませた際に、代金を受け取るのを拒否する店主に対し、何とか料金を支払うことに成功した。

 

幸子たちも喜んでいたことだし満足そうな顔でその場を去った一行であった。

 

幸子たちと別れて駅前のマンションに戻った望は先ほど見た高校生の失踪事件についてパソコンで調べていた。

 

ニュース記事に掲載されている高校生の顔写真を自分の記憶にある落海承子すなわちライトニングプリンセスと同じ容姿をしていた。

 

「あの高慢ちきがやられたってなら相手は滅茶苦茶強いぞ。もしそいつと遭遇したらアタシは確実に負ける……」

 

承子のことを望は好いてはいなかったが実力は認めており、自分より上の存在として敬意は払っていた。

 

そんなライトニングプリンセスを倒せる相手がいるのなら、自分は絶対に勝てない相手だ。

 

「そんな奴と遭遇したらどうなるんだろうね? 捕まえて基地に連れてってくれるなら良いんだけど"お前のような弱者は死あるのみ"とか言われたら嫌だし」と呟く望。

 

 

「まあ、その場合でも最後まで抵抗はするよ……願いが叶わなくとも正義の味方の端くれだし最後の最後まで戦い抜く覚悟はあるからね」

 

一方の幸子たち3人。直樹は「望お姉ちゃんって良い人だね」と笑顔で良い幸則も肯定するように頷く。

 

「うん……とっても強くて良い人。でも、誰か止める人がいないと駄目な所がある人だと思う……」

 

そう言う幸子の脳裏に浮かぶのは先日のワイヤーアクション騒動だった。

 

 

 

翌日の夕方。望は幸子とともに町の広場に来ていた。

 

そこで佇む女性を見かけた望はその人物を知っているようで、親し気に話しかけるが……

 

「オオバさん!」と望が言うや否やその女性の表情が鬼の様になり、望にアイアンクローを喰らわせる。

 

「人をオバさん呼ばわりするのはその口か!?」

 

「いふぁいいふぁあい! ごめんなさい許して」と必死の懇願。

 

「それで私に何の用だい?望ちゃん」

 

「久しぶりに見かけたから話しかけただけだよ……」と痛みに悶える声を出しながら答える望。

 

「望さん……この人は?」と恐る恐る尋ねる幸子。

 

「この人は大場るいさん……石村のおっちゃんの弟子で隣町で飯屋をやってる」

 

「大場るい……さん……シャドウレオパルド?」と呟く幸子。

 

シャドウレオパルドとは10年前に宇宙からの侵略者スノーブラッド帝国を倒した4人組のヒロインチーム、スピリットナイツの1人である。

 

「昔の事よ……あんたも変身ヒロインなのね?」

 

「はい、依田幸子と申しますレディYです」と丁寧に頭を下げる。

 

その姿に「なかなか見どころのある小娘じゃないかい」と言いつつ頭を撫でまわす。

 

「あわあわ……」と慌てる幸子の姿に笑う望。

 

「まあ、とっくに引退した私が言えることは一つ。憎しみに囚われたら負けるよ」と告げるるい。

 

「私たちは最後の最後で大切な仲間を死なせた……」と語るるいなの眼には薄らと涙があったように幸子と望の目には映った。

 

(この人は復讐のために戦ったんじゃない大切な人の仇を取るために戦うのではなく……ただ、正義感の強い人なんだろう)

 

その瞬間、公園のモニュメントが真っ二つに切断され、人々が悲鳴を上げながら逃げ惑いだす。

 

「見つけた……ラック・ラック」とサーベルを構えたベルベットが姿を現す。

 

「誰だお前?」

 

「私はベルベット。イレーネ様の副官。さあ、早く変身するんだ」

 

「私はあそこにいる子供たちを連れて行く。後は頼んだからね」とるいは走り出す。

 

望と幸子は即座に変身し、ラック・ラックとレディYへと変わる。さっそく切りかかるラック・ラックだが、ベルベットはその攻撃を己のサーベルで捌く。

 

(何なんだコイツは? 強い……けど何か違和感が有る……)

 

ラック・ラックを援護しようと飛びかかるレディYにベルベットは「お前の相手は別に用意してある。現れよアラクネモーゲン」と叫ぶと蜘蛛型の女怪人が地面の下から現れレディYを引きずり込んでしまう。

 

「アラクネモーゲン!?」と驚くラック・ラック。

 

「お前の小説のアイディアを拝借させてもらった……」

 

「アタシのタブレットを盗んだのはお前らだったのか! しかもアタシの秘密まで」

 

「ふふっ……イレーネ様はお前の秘密を知って驚きだが、お前の望みを叶えてやらんと手ぐすね引いてお待ちかねよ……素直に降伏して捕まったらどうかな?」と余裕の笑みを見せるベルベット。

 

「ふざけんな! 実力でアタシを倒してからにするんだな」と剣を構える。

 

「いいだろう……勝負は一騎打ちに限る」とこちらもサーベルを構える。

 

一方、アラクネモーゲンによって亜空間に拉致されたレディYは糸で拘束されていた。

 

「おとなしくしていれば酷い事はしないわ。殺すなって言われてるんでね」と退屈そうに言うアラクネモーゲン。

 

「私としては暴れてもらった方が楽しいけどね」と残酷な笑みを見せる。

 

「悪の組織に従えるものですか!」と叫んで糸を引きちぎろうと力を込める。

 

「無駄よ。その糸は特別製でねぇ……抵抗したからお仕置きが必要よね?」とレディYに後ろから抱き着いて首筋に口を近づける。

 

「クモはね。消化液を獲物に注入して溶かした内臓や筋肉を吸い取って食べるのよ……体験する?」と舌を這わす。

 

「ひぃ~止めてください!」と恐怖で体を震わせながらも拒絶の意思を示す。

 

「それとも生命エネルギーだけを吸うこともできるけど……」と耳元で囁く。それを聞いたレディYの顔が青ざめる。

 

「大丈夫よ。殺したりしないわ。でもお仕置きはするわよ……」

 

レディYの体に糸が纏わりつき操り人形のように全身を操られてしまう。

 

「嫌だぁぁ、こんな格好は嫌です~」と嘆くレディYは胸を強調するようなポーズを強制させられていた。

 

「チビだけど出るところは出てるのね。次は……四つん這いになって投げキッスのポーズよ」

 

「やめてぇ~」

 

糸が動き出しレディYの意志を無視してセクシーポーズをとらされてしまう。そして屈辱的な投げキッスをさせられるレディYであった。

 

一方、るいはこどもたちの安全を確保した後に広場に戻ると先ほどいた場所に望も幸子の姿もなかった……。

 

「まさかあの2人が負けたのかい? だとしたらまずいよ……」

 

だが、彼女の目には見えていた。亜空間の扉である歪みが。

 

「あの中に誰かいるね……」

 

そう呟くるいは鞄の中からあるものを取り出した。スピリットナイツの変身アイテムであるナイトモーファーだ。

 

彼女のモーファーは10年前の決戦で破損しており、変身できるかもわからない代物。

しかし、後輩の危機を黙って見過ごすことの出来る人間ではないのだ。

 

「自分の心にある戦士を呼び起こせ!」と叫びモーファーに手のひらから出て来た黒豹をあしらったキーを刺して回す。

 

黒い光ともにるいの体が黒豹をあしらったコスチュームに包まれていく。最後に黒豹のマスクが展開し顔半分を覆うことで変身が完了する。

 

「影より悪を狩る狩人。シャドウレオパルド!」

 

亜空間内ではレディYは糸による辱めに耐え続けていた。アラクネモーゲンはその様子に興奮を抑えられない。

 

「いいわ! もっと悶えなさい」と糸を強く引くアラクネモーゲン。

 

痛みにより「うっ!」と悲鳴を上げ涙目になるレディY。

 

その瞬間、亜空間を切り裂いてシャドウレオパルドが飛び込んでくる。その勢いを利用して彼女を縛る糸を全て切り落とすと蹴り飛ばし距離をあける。

 

「大丈夫かい? 後輩」と笑顔を向ける。

 

「るいさん?」と息を整えるレディY。それに対して力強く答えるシャドウレオパルド。

 

「もちろんだよ」

 

「アンタも人形にしやるわ。歳考えなさいよおばさん」

 

おばさんという言葉はるいことシャドウレオパルドにとっては最大のNGワードであり、彼女の怒りは一気に頂点に達する。

 

「よくも私の事をババア呼ばわりしてくれたな! こうなれば実力行使よ! もう許さんわ!」と激昂する。

 

("憎しみに囚われたら負けるよ"って言ってた気が)と唖然とするレディY。

 

「そもそも誰がババアよ、私はまだ27だ!」と叫ぶシャドウレオパルド。

 

「うるさいわね! 年寄りには関係ない話よ」と言いながら糸を放つアラクネモーゲンだがその全てを軽々と回避される。

 

シャドウレオパルドは何度もアラクネモーゲンの体を殴っては蹴りを繰り返して確実にダメージを与えていく。さらに力任せに投げ飛ばし、現実世界へとたたき出すことに成功する。

 

それを追ってレディYとシャドウレオパルドも亜空間から脱出すると、そこはラック・ラックとベルベットが戦いを繰り広げる無人ビルの駐車場だった。

 

「アラクネモーゲンの亜空間を力任せに破ったというのか!?」

 

「るいさん!?」

 

「望、こんなとこにいたのかい。あんたのお友達がそこの蜘蛛女に玩具にされて弄ばれてたってのに……」

 

「何だとレディYに何をしやがった!?」

 

 

「アンタが一番よく知ってるでしょラック・ラック?」

 

「幸子を操り人形にしやがったな!?」と殴りかかろうとするがベルベットの攻撃が遮る。

 

「お前の相手は私だ。アラクネモーゲン! お前は残りの2人を始末しなさい」

 

「行くよ! 幸子ちゃん」

 

「はい!」

 

シャドウレオパルドとレディYが一斉にアラクネモーゲンに攻撃を仕掛ける。シャドウレオパルドが殴り、次はレディYのビームが降り注ぐ。

しかし、シャドウレオパルドの変身が解除されてしまった。

 

「駄目か……もうパワーが無い」

 

破損したスピリットモーファーではもう戦えないのだ。それを見たアラクネモーゲンが糸でるいを絡めとろうと迫るがレディYの杖が彼女の動きを阻む。

 

「邪魔するんじゃないよ。お前もまた人形にしてやる!」と怒るアラクネモーゲンだったが、レディYはビームのエネルギーを杖に集めて叩き込んだ。エネルギーが体内で爆発したことでアラクネモーゲンはそのまま消滅する。

 

その頃、ラック・ラックはベルベットとの死闘を続けていたが決定的なダメージを与えることができずに疲弊していた。

 

ベルベットも汗を流しており明らかにダメージを蓄積しているように見えた。

 

(手段を択ばずに殺すことは出来る……こいつを屈服させる方法を考えなければ……)

 

そう言う意味ではベルベットのほうが不利だ。

 

(このままじゃまずいな。もっと早く動かないと……ワイヤーアクションのような素早く動く)

 

イメージを固めたラック・ラックは縦横無尽に飛び回ってベルベットを翻弄する。

 

(速いな……イレーネ様にも匹敵する。だが、攻撃が大ぶり過ぎるのよ)と冷静にラック・ラックの動きを見極める。

 

一方のラック・ラックはベルベットの隙を見つけては攻撃を仕掛けるがサーベルに阻まれてしまう。

 

「この程度でおしまいか?」と嘲笑うが、

「これでも喰らえ!」という言葉と共にラック・ラックの手から放たれた火炎放射に怯む。

 

「小賢しい真似をする……」と呟いた瞬間、ラック・ラックの姿が無いことに気付いた。

 

「どこへ行った!?」と周囲を探すベルベットだがラック・ラックは既に背後に移動していてベルベットの首に剣を突きつけていた。

 

「アタシの勝ちだな……」

 

「今回は負けのようだ……次こそはお前の最後だ」とテレポートで退却していく。

 

「逃げられたか……」

 

変身を解除した望と幸子は倒れていたるいを抱え起こす。

 

「大丈夫ですかオオバさん?」

 

「誰がおばさんだ!」と望の頭にゲンコツをお見舞いするるい。

 

「痛いじゃないですか! これだけ元気なら大丈夫そうですね」と泣きながら笑う望。

 

「そうだねえ……」とるいも笑いだす。

 

そんな様子を見ていた幸子は「やっぱり先輩強いです! 私なんかじゃとても敵わないくらいに!」と笑顔で答える。

 

「それは違うよ後輩。確かに私達は強くなったけど、本当に強くなったら誰かを守れるようにならないと意味がないんだよ。いいかい? 強さってのは自分を守る力だけを指すんじゃない。大切なものを守りたいと思う気持ちこそが本当の強さなんだ。だからあんたはもっと自信を持ちなさい。少なくとも私は後輩が頑張ってる姿を見て心が熱くなった。それだけで十分な理由になるんじゃないか?」

 

「はい!」と涙目になりながら大きく返事をする幸子。

 

モーゲン帝国海底基地。

 

「申し訳ありませんでした……」と頭を下げるベルベット

 

「問題はありませんよ。本来の目的であるデータ収集は十分すぎるほど出来ましたし」

 

「しかし、スピリットナイツの生き残りが現れたのは予想外でした。あれさえなければレディYは始末できたでしょうに」

 

「スノーブラッド帝国を壊滅寸前にまで追い込んだ奴らですからねぇ。簡単には倒せませんよ。ある意味ではモーゲン帝国の勢力拡大に貢献してくれた恩人ではありますが」

 

スノーブラッド帝国は10年前まで銀河の大半を支配していた帝国だったが、スピリットナイツにより支配者であった皇帝が倒されたことで急速に勢力が衰え、他勢力の侵略活動が活発化することを招いたのだ。モーゲン帝国もそうやって領土を拡大していた勢力の1つである。

 

「スノーブラッド帝国の残党は最近、新しい指導者のもとで活動を活発化させているようですが、もはや脅威では無いでしょう」

 

「次はどうしますかイレーネ様」

 

「次こそが最後の戦い。これ以上、私の勧誘を拒むのなら死んでもらいます。そして侵略の遅れを一気に取り戻すのです。アーマーの改良と地上基地が完成したら出撃しますよ」

 

「御意」と頭を下げるベルベットだが、その瞳には怪しい光が宿っていた。

 




ワイヤーアクション参考文献 - 坂本浩一「ハリウッド・アクション!―ジャッキー・チェンへの挑戦」

レディYを虐めるのもある意味では楽しい今日この頃のわたくしです。
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