変身ヒロインは悪の組織に捕まりたい   作:牧村九天

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第4.5話「周治望暗殺計画」

ベルベットとの戦いを終え、幸子と別れた望はるいとともに隣町へと繋がる道を歩いていた。

 

「望……あんたはまだ敵に捕まって滅茶苦茶にされたいとか思ってるの?」

 

呆れ顔のるいに望は答えられなかった。

敵に捕まって滅茶苦茶にされたいというのは彼女の夢であり変身ヒロインを続ける理由でもある。

 

だが、同時に彼女は自分が敵の手にかかったとき、それがどういう結果をもたらすのかを知っていた。

 

だからこそ迂闊に敵を挑発するような行動が出来なかった。

 

「私はスノーブラッド帝国と戦っていた時に誘拐されて人体実験された人の遺体を数え切れないほど見てきた。適当な改造をされて人間としての意識を保ったまま化け物にされた人たちもね……あんたが敵に捕まってそうなったら……悲しむ人がいるってわかってるの?」

 

答えることが出来ない望。望は両親との仲ははっきり言って悪い。

友人らしい友人もいない。心を許して接することができるのは幸子だけともいえる。

 

「あんたは少し自分を過信しているわ。確かにあんたは強い……だけど無敵じゃない。いつかあんたが限界を迎える時が来るかもしれない。その時に大切なものを守れないなんて嫌でしょ?」

 

「はい……」と小さく返事をする望。

 

「もし、あんたが捕まって怪人に改造されて幸子ちゃんと戦ったとしよう。そしてあんたを倒した幸子ちゃんが相手があんただと知ったら一生癒えない傷を心に負うんだよ?」

 

「わかりました……」とさらに小さくなる望。

 

 

「私は最後の戦いでモーファーを破壊されて役に立たなかった……そして大切な仲間を死なせた。もちろん、私が変身できていたからといってその結果が覆るなんて思ってないよ」

 

「えっ?」と驚く望。

 

「でもね……最後まで戦えなかった事への後悔はあるんだ。私だって自分の命は惜しいさ。死ぬのは怖い。死にたくない。だから最後まで戦うことを諦めたわけじゃない。きっと勝てるって信じていたよ。でも、現実は残酷だった。私達の努力は実らなかった。だからせめて次の世代にはそんな思いをして欲しくないんだよ……」

 

るいは立ち止まり空を見上げる。そこには雲一つ無い青空が広がっていた。

 

幸子やるいのような人を見るとその思いは強くなる。だからと言って考えを改めたりすれば自分の今までの人生を否定することになるのではないかとも思うのだ。

 

「まあ、あんたの人生だ。あんたが敵に捕まってどうなろうとそれはあんたの選択の結果だ。でも……怪人に改造されたあんたが現れたなら、私はもう一度シャドウレオパルドに変身して相打ちになってでも倒すよ……」

 

そう言い残し、るいは再び歩き出す。

望はその後姿を黙って見つめることしかできなかった。

 

 

そんな様子を見たるいは「まったくもう!」と言って手を引っ張り歩き出す。

 

「ちょっと先輩! いきなり引っ張らないでください!」と抗議する望を無視してるいは言う。

 

「私はあんたの先輩だからね! 困っている後輩がいたら助けるのは当たり前でしょ? まあ、たまには先輩らしいところを見せないとね!」と笑う。

 

(この人はいつもそうだ。私が落ち込んでいる時は明るく接してくれる)

 

「ありがとうございます」とお礼を言う望に対してるいは笑顔を見せるのであった。

 

「暇があったらあたしの店にも来な。とっておきの料理を用意してやる」と笑うるい。

 

「はい!」と元気よく返事をする望。

 

 

その夜遅く、狒々山の屋敷の中にある望の寝室。

 

「ああ……糸をそんな……これ以上吸わないで……やめて……死んじゃう……」

 

いつものように怪人に拷問される夢を見ている望。

それを見降ろしている人物がいた。ベルベットである。

 

「何なんだこいつは……本物の変態だな……」

 

呆れながらもサーベルを抜いて望の心臓に狙いを定める。

 

「イレーネ様には申し訳ないが……お前にはここで死んでもらう」

 

その瞬間、何者かがベルベットを後ろから投げ飛ばした。

 

「何者!?」

 

そこに立っていたのは赤いフードに身を隠した占い師。

 

「お前は……」とサーベルを構えるベルベット。

 

「アタシかい? アンタのご主人様の計画を応援してる者さ……

 ラック・ラックを闇堕ちさせる会の会長とでも名乗っておこうかしら」

 

そう言いながら手を前にかざすとベルベットの体に衝撃が走り、

気が付くと彼女はどこかの無人島の岩場に飛ばされていた。

 

「強制テレポート!?」と驚愕するベルベットの前に占い師が現れる。

 

 

「あの娘はせっかく良い夢を見てるのに起こしたら可哀そうじゃないか? ここなら邪魔が入らずに戦える」

 

そう言いながら占い師が手を天にかざす。

すると望のマンションに棚にあるはずの黒い石が彼女の手に現れ、黒い剣に変化する。

 

「暗黒の剣!?」

 

そう、この剣はモーゲン帝国の皇帝の持ち物であり、皇帝本人かその許可を得た者しか持つことが出来ない代物なのだ。

 

「何者なんですか……」と恐怖するベルベット。

 

「さあ、誰かな?」と剣を構える占い師。

 

「まあいい。正体は後でゆっくり調べさせていただきましょう」とサーベルを構えて戦闘態勢に入るベルベット。

 

「アタシを舐めない方が良いぞ……」と剣を一振りすると黒い光の刃がいくつもベルベットに向かって放たれる。

 

 

「くっ!」と回避しながら攻撃の機会を伺う。

 

「逃がさないよ」とさらに追撃する占い師だが、ベルベットは素早く移動し、何とか距離を取ることに成功した。

 

「やはり強いですね……」と冷や汗を流すベルベット。

 

暗黒の剣が本物なら彼女に勝ち目はない。

斬撃を受け止めようものならサーベルごと切り裂かれるような代物だ。

 

「アンタも中々強いよ……でも世の中には上には上がいるってことを知るんだね」

 

「私は負けませんよ」と構え直すベルベット。

 

「いい心意気だよ。そういう奴は嫌いじゃない」

 

「行きます!」

 

突っ込むベルベット。しかし、占い師は軽やかな動きでベルベットの攻撃をかわしていく。

 

(速い!)と焦りを覚えるベルベット。

 

「遅い」と言いながらカウンターを仕掛けてくる占い師だが、ベルベットはなんとか防御に成功する。しかしその一撃の重さの前にバランスを崩し、倒れてしまう。

 

次の瞬間にはベルベットには剣が突きつけられていた。

 

「別にアタシはアンタを殺る気は無い。

 馬鹿な考えを捨ててもらうだけさ……サンダー!」

 

そう叫ぶと暗闇の中から黒いフードで顔を隠した女性が現れる。

 

「お呼びですか?」

 

「この頭でっかちの頭の中を書き換えるのよ」

 

占い師が命じるとサンダーと呼ばれた女性は黒い水晶玉を取り出してベルベットの眼前に持っていく。

 

「この水晶は貴女の魂と繋がる……貴女は周治望を暗殺などしない……さあ、受け入れなさい」

 

それに抵抗するベルベットだが、次第に意識が遠のいて行く。

 

「貴女の意識はこの水晶玉の中にある……

 貴女は周治望を暗殺などしない……そしてこの夜の事は忘れなさい」

 

サンダーが念じ、ベルベットはその場に倒れ込む。

 

「よくやった……お前に成長は目を見張るものがある」とサンダーの頭を撫でる占い師。

 

「貴女様が与えて下さった力のおかげですよ」と高揚した声で答える。

 

「この女はどうしますか?」と倒れたままのベルベットに視線をやるサンダー。

 

「基地に帰る様に暗示をかけなさい……」

 

「了解しました」とベルベットの頭に手を置くと何か呪文の様な言葉を呟き始める。

 

「これで大丈夫です」

 

「そうかい……」と占い師は再び闇の中に消えていく。

 

「では私もこれにて失礼いたします」とサンダーも姿を消す。

 

その後ベルベットは目を覚ますと自分がなぜここにいるのか分からず困惑するが、すぐに気を取り直して立ち上がる。

 

「イレーネ様のもとに戻らねば」

 

一方その頃、望はベッドの上で寝返りを打っていた。

夢の中では触手に絡みつかれ、鞭で打たれ、生命エネルギーを吸収されの桃源郷状態。

 

「ああっ……もう駄目だぁ」

 

それを水晶玉越しに見ている占い師は「もうすぐお前の理想は現実となる……」と呟くのであった。

 




最終回までのプロットは出来てるんだけど、望さんが向かう道がこれでいいのか悩む。
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