変身ヒロインは悪の組織に捕まりたい   作:牧村九天

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第5話「死の恐怖(前編)」

完成した孤島基地の司令室。玉座に腰掛けたイレーネの横にはベルベットの姿があった。

 

「基地は完成しました……ついに本格的な攻撃に移りますよベルベット」

 

「御意……」と頭を下げるベルベットだが、その時、基地に緊急通信を告げるアラームが響いた。

 

その通信の主はモーゲン帝国の皇帝である。それを知ったイレーネとベルベットはモニターの前に跪き通信を開く。

 

『イレーネ……久しいな……』

 

この声の主こそはモーゲン帝国第25代皇帝ザダル・バ・モーゲンである。

 

「はい。お久しぶりでございます陛下……」

 

『お前にある程度の裁量が認められているのはこれまでの功績あってのもの……それは分かっているな?』

 

ザダルの言葉を「勿論ですわ」と言うがその表情には焦りが見えた。

 

『だがお前は地球に派遣されて以降、全くと言っていいほど功績を挙げていない……地球の制圧はおろか町一つも制圧できていないとはどう言うことか? お前が成し遂げたことは基地を一つ作っただけではないか!』と怒りを露わにする皇帝。

 

「返す言葉もありません……」と頭を下げるイレーネ。

 

「恐れながら陛下……」とベルベットが声を出す。

 

「制圧が進まぬ理由として……この星には変身ヒーローやヒロインと呼ばれる怪人に匹敵する戦闘力を持つ変身能力を持った人間が異様なほどに存在しています」

 

それを聞いた皇帝が『それがどうした?』と答えると、今度はイレーネが答える。

 

「下手に怪人を送っても撃退されます……私は奴らの能力を分析し兵器を作りました……

 私自らが出撃し、現在侵攻している地域にいる変身ヒロインを始末します。

 私を処分するのはその結果を待ってからにして頂けませんか?」

 

皇帝はその申し出に『ふむ……では任せたぞイレーネ。期待して待っているぞ……人手が足らんと言うなら応援を送ろうか? ローゼンブラッドが是非変身ヒロインを嬲ってみたいと言っていたがな……』

 

ローゼンブラッドは皇帝直属の拷問士であり帝国最高の腕があると呼ばれる女だ。冷酷非情な性格で穏健派なイレーネとはソリが全く合わない人物だ。

 

「冗談だ……今のところな……お前がこれ以上失敗すれば……分かるな?」と言う皇帝の言葉を最後にモニターの通信が切られた。

 

立ち上がったイレーネはベルベットの目を見据えながら「ラック・ラック討伐作戦を開始しますよ」と言うのであった。

 

「ラック・ラックを倒したとして奴が従うでしょうか……」と問うベルベット。

 

ラック・ラックは敵に捕まって破滅する願望はあるが、悪に従う趣向はなさそうに見える。

 

「その時は私と貴女の腕の見せ所ですよ」と答えるイレーネ。

 

「洗脳するという手もありますが……あの妙に確立された自我を操るのは至難の業かと……あの連中に頼んでみますか?」

 

「空上支配会ですね……」

 

ベルベットの提案を受けてイレーネがつぶやく。空上支配会とは太平洋にある離島・空上島を拠点とする弱小組織で、戦力的にはモーゲン帝国の敵では無い存在。

しかし、彼らは卓越した精神操作技術を持つ。他組織の下請けとして洗脳業務をこなすことで生き延びている組織だ。

 

「あの人たちの技術を目を見張るものはあります……とても地球の技術とは思えない……最終手段として候補には入れておきましょう」

 

そう言うイレーネだが、彼女は洗脳のような非人道的行為を嫌っているため、やりたくはないと思っているが、

事実上の最後通告が来ている状態ではなりふり構っていられない。何としても次の戦いでラック・ラックを倒すしかない。

 

イレーネは覚悟を決め・司令室から出て行く。

 

そして1人になった部屋でベルベットは、「イレーネ様の勝利のために私がやらなければ……」と呟いていた。

 

 

次の木曜日。学校帰りの望はある人物と出会った。

 

赤く染めたポニーテールが特徴的な彼女は榛田 美紀(はるた みき)。変身ヒロイン、グランドセイバーに変身する少女だ。

 

弟の榛田 美紀(はるた けんいち)ことグランドディフェンダーとともにこの町で戦っていた存在である。

 

彼女は今、戦闘による負傷で療養中で、外出許可を得たものの、未だに傷は言えておらず松葉杖をついていた。

 

「久しぶりだな望……」

 

美紀は望にとって戦い方を教えてくれた師匠のような人物だ。

 

「久しぶり……怪我はどうなの?」

 

「私は今年中には復帰できるけど、弟はダメだ。もう歩けない」

 

美紀と弟の健一はトーフ―教という組織を追って空上島に向かった際の戦闘で負傷。美紀は軽傷だったが、健一は脚に深い傷を負い、歩くことが出来なくなってしまった。

 

そして単独で戦い続けた美紀も戦闘で負傷し活動を休止したのだ。

 

「弟の力を誰かに託すにもグランドディフェンダーとグランドセイバーは2人で1人。私が背中を任せられるような奴なんているのかな?」

 

そう力なく言う美紀だが、望はあることを思い出す。

 

「もともと一つの力なんだよなあんたと弟の力ってのは? だったらもう一度一つに出来ないの?」

 

「簡単に言うなよ。あの力を制御する自信は私には無い……

 でも、弟が戦えない以上、そうするしかないのかもな……」

 

そして望の方を見て

 

「空上島には親戚がいるんだよな?」

 

「うん……あのあたりの大地主だよ……殆どは島を出て、島に住んでるのはアタシと同い年の女の子だけだけど」

 

「だったら気を付けろ……あの島には私たちが知らない奴らがいる。他の組織の影に隠れて暗躍してる奴らが……弟と私が遭遇したのもそうだった。明らかにトーフ―教の奴じゃない」

 

その時の事を思い出した美紀は体を震えさせていた。

 

「そいつらの事、もっと詳しく聞かせて」

 

美紀の話はこうだった。トーフ―教の怪人と戦っている最中、変身ヒロインの外見をした少女に襲われ、弟は負傷し、退却せざる負えなかった。

 

「久美の奴にそれとなく島の様子を聞いてみるか……」

 

美紀と別れた望は狒々山の屋敷に向かいながらそう考えていた。久美とは空上島に住む望の親戚である。

 

 

望が狒々山の屋敷の部屋に入るとそこには椅子に腰かけたイレーネがいた。

 

 

「おかえりなさい、遅かったですね」

 

「なんでアンタがここに?」

 

「ベルベットから聞いたはずですよ。貴女の正体も家の場所も割れていると……ここも例外ではありせません」

 

「お茶でも出そうか?」

 

「結構です。手っ取り早く本題に入ると、貴女と決着を付けに来ました」

 

イレーネの言葉に驚きの表情を浮かべる望。

 

「私が勝ったら貴女は我が組織の所有物となります。貴女が勝ったら私の命を絶って構いません……どうです?」

 

「良いだろう。ただし、戦うのは今じゃない。今度の日曜の昼に近くの無人島で一対一でやるってのはどうだ?」

 

そう言い出す望を不審な眼差しで見つめるイレーネだったが「いいでしょう。楽しみにしてます」と答えた。

 

こうして、日曜日に約束を取り付けてこの日は別れた。望もイレーネも日曜日の決闘に備えて準備を始める。

日曜日の決戦に向けて…… 決戦当日。午前11時00分。無人の島で望とイレーネが向き合っていた。

 

「求めよ! 女神の加護を!」

 

次の瞬間、彼女の周りに光の柱が出現して全身にまとわりつくように装甲が形成される。最後にヘルメットが形成され、ラック・ラックが完成した。

 

「女神の加護を受ける鋼鉄の騎士……ラック・ラック!」と剣を構えながらポーズを決めると彼女の背後で爆発が起きる。

 

「あら、貴女も名乗りポーズぐらいするんですね」

 

「たまにはやっとかんと忘れるんでな!」とイレーネに切りかかる。それを紙一重で回避され、お返しとばかりイレーネが蹴りを入れるとラック・ラックは後方に吹っ飛ぶ。

 

吹き飛ばされて地面を転がったラック・ラックは立ち上がりながら、「今度こそ!!」と拳を振り上げて飛び掛かるが、スピードではイレーネの方が上であり、彼女の攻撃は空振りするばかりだ。

 

(くっそ……そうだ! あのワイヤーアクションを思い出せ。ああやって宙を舞うような動きを……)

 

するとラック・ラックの体が宙を舞い、イレーネに迫るスピードで動く。

 

「うぉりゃぁああっ!!!」

 

「ほほう……」

 

ラック・ラックの攻撃を回避しながら「中々面白いことを考えるじゃありませんか!」と感心するイレーネだったが、すぐに表情を引き締めて反撃に転じた。

 

横殴りの一撃を食らいまた大きく横に吹き飛んだラック・ラックはすぐに立ち上がると、まだ構えを取り直す。

そんな彼女を眺めながら「やはり戦士としては優秀ですね。ですけどね……」と微笑んだ後、鞭を構えものすごいスピードで振り回し始めた。

 

「鞭の結界とでもしておきましょうか?」

 

下手に近づけば鞭の餌食になってしまう。ラック・ラックは迂闊に近づくこともできず、隙をうかがうしかなかった。

 

そして、ついに彼女が鞭を構える動作を見せると同時に

 

「ここだ!!」

 

彼女はイレーネに飛び掛かった。それを紙一重で回避し後ろに下がったイレーネ。

 

「すばしっこくなりましたね……ですが、私も前の私では無いんですよ?」と言いながら両腕をクロスさせながら天に掲げる。

 

両方の中指にある指輪が怪しく光った直後、両腕を振り下ろし、「外部アーマー起動!」と叫ぶとイレーネがラック・ラックに似たアーマー姿に変身する。全身を銀色の金属で作られた重装鎧だ。

 

「その姿は一体何なんだ!?」

 

「貴女と決着をつける為に開発した強化アーマーですよ」と言うとラック・ラックに殴り掛かるイレーネ。

 

(ちいっ、前より速くなってやがる……それにパワーまで上ってるだと?)

 

防戦一方のラック・ラックだが何とか攻撃を捌き続ける。何とか剣で切り込むがイレーネの装甲は傷一つつかない。

 

「この前のロボットと同じ素材だなコレ……」

 

「ご名答……貴女たちが破壊したタンクモーゲンをリサイクルしました」

 

(あの装甲はレディYの奴のビームじゃないと太刀打ちできねぇ。いや待て……イメージを固めろ。あの装甲を破壊できるような武器でも技でも……)

 

「どうしたんですか? 来ないんだったらこっちから行きますよ!」

 

イレーネの右手首からビームネットが放たれラック・ラックを捕獲する。

 

「止めろ! 出せコラ!」と叫ぶラック・ラックだが、内心では捕獲ネットを受けたことに喜びを感じていた。

 

もがくラック・ラックの首根っこを掴んで自分と向かい合わせた。その表情は笑みで歪んでいた。

 

「捕まってしまいましたね……念願が叶うんですよ喜びなさい……」

 

「だったらアタシを完璧に屈服させてみろよ……」

 

その瞬間、イレーネはネットを放り投げ地面に叩きつける。さらにネットが発光して電撃が放たれた。

 

電撃を浴び続けたラック・ラックは意識を失いかけるが、何とか持ち堪える。

 

「これで……勝ったと思うなよ」

 

そう言いながら剣でネットを破壊したラック・ラック。

さらにビームネットのエネルギーを剣が吸収して切れ味を数倍に上げたのだ!これにはさすがのイレーネも驚く。

 

 

「ほう、面白い仕組みですね」と余裕を崩さないイレーネにラック・ラックは切りかかり、ついにイレーネのアーマーに手傷を負わせることに成功した。

 

だが、手傷を負ったとはいえダメージは軽微な物でイレーネは反撃に出る。ラック・ラックに向かって鞭を放つと彼女は大きく吹っ飛んでいった。

 

地面に叩きつけられる直前、背中と脚部に装着されたスラスターを使い態勢を整えて着地する。

 

(剣にエネルギーを溜めれば奴の装甲に対抗できる……でも、そんなエネルギーをどっから調達する?イレーネの奴はその手の攻撃をもう出さないだろうし。こんな時、幸子の奴がいたらあいつのビームのエネルギーを使えるんだろうけど)

 

「レディYがいてくれたらと思ってますね? 」

 

ラック・ラックの顔つきを見て彼女が悩んでいることを悟ったイレーネは嘲笑いながらラック・ラックを挑発する。

 

「お仲間ならここにはいないですよ。諦めて降参すれば貴女の望みも叶う。私の望みも叶う。自分に正直になりなさい」

 

誘うように囁くイレーネ。自分の夢を叶えてくれるシチュエーションに揺れるラック・ラックだが、ここで降参しては美学に反する。

 

一方その頃、町の公園。弟たちと散歩に来ていた幸子。

すると上空で何かが爆発したかと思うと空の一部が光っていた。

 

「何があったのかしら?」と疑問を抱くが、弟たちには何の影響も無いのを確認して安堵していた。

 

「ねえ2人とも……お父さんに電話をして迎えに来てもらってもいいかしら?私、ちょっとトイレに行きたくなってしまって……」という幸子に対して二人は嫌がらずに言う事を聞く素振りを見せるが、その顔はどことなく暗いものだった。

 

弟の異変を感じ取る幸子だったが、それよりも早く家に連絡を入れてほしかった為か何も言及せずにその場を立ち去った。後にこの姉弟を襲う悲劇も知らず……。

 

しばらく歩いていると後ろから誰かがついてきているような気がした。振り返ると誰もいなかったが、気のせいにしては感覚は妙にハッキリとしていた。そして、再び前を向いて歩くと何者かがいることに気づくと足を止める。

 

そこにはベルベットが立っていた。

 

「見つけたぞレディY、お前を倒させてもらう」

 

そう言いながらサーベルを構えるベルベット。

回りに人がいない事を確認した幸子は「人々のために私は歩む」と叫ぶ。

 

まず幸子の胸に赤い宝石が現れ、次に髪の毛が銀色へと変わった。さらに服がファンタジーの神官を思わせる法衣のようなものへと変わっていく。

そして、右手には杖を持った姿になった。幸子がレディYとなった瞬間である。

 

「戦いたくはありませんが……」

 

そう言いながら杖を構える。戦闘が開始された。まず先制攻撃を仕掛けたのはベルベットだ。一気に距離を詰めてサーベルを振るう。それを杖ではじき返した。続けて振るわれる斬撃を受け止め鍔迫り合いに持ち込むが力で負けている。じりじりと押し返されていく。

 

 

(なんて強さ……)

 

ベルベットは確実に致命傷となる個所を狙って突きを出してくる。少しでも油断すれば心臓を貫かれかねない。

そんな恐怖と戦いながら必死で剣戟を回避するが、回避するのが限界であり攻撃に転ずることができない。

 

「お前に勝ち目は無い」

 

そう言ったベルベットのかかと落としがレディYの肩に直撃して彼女がふらつく。

 

「諦めろ……」

 

「私は諦めません……」

 

そう言うとレディYの腕の装飾品から光の刃が放たれ、ベルベットの左腕に直撃するが軍服が切り裂かれただけに留まった。

 

「狙いは悪くない……私の腕がサイボーグでなければ、そして腕がメガタイタニアム合金で出来ていなければ今頃、死んでいたよ」

 

「まだです!!」

 

ベルベットの言葉など聞かず、右腕を突き出しビームを発射。轟音と共に光線が放たれる。ベルベットはとっさに横に飛ぶことで避けたが左肩が焼かれる。それでも彼女は怯まずに突進してくる。

 

レディYの顔面めがけて渾身のストレートを繰り出す。間一髪杖を割り込ませることでガードできたがその一撃が重すぎて吹っ飛ばされてしまう。地面に転がった彼女をベルベットは追いかけ、剣を彼女の首筋に当てる。

 

「お前の負けだ……大人しく降伏しろ……」

 

「私は力のない人たちの為に戦うと決めた……何をされても屈したりしません!」

 

「現実を受け入れられないとは哀れな女だ……少し痛い目に遭いたいようだな」と言って力を籠めるとベルベットの手から電撃が放たれる。

 

レディYはそれを浴びてしまい悲鳴を上げ、動きを止めてしまう。ベルベットはさらに口を押さえつけて電撃を放つ。

 

「うぅー!!!!」

 

声にならない悲鳴を上げるレディYにベルベットはさらに電撃を浴びせる。

 

(強い…………でも、負けたくない!)

 

「いい加減に諦めろ……そんなに恐ろしい末路を辿りたいなら、すぐそこで震えているお前の弟たちを始末しても良いんだよ?」

 

「え……?」

 

それを聞いた時、背筋がゾッとするレディY。そう、直樹と幸典はまだこの公園にいたのだ。

 

「さあ、どうする? 弟を死なせるか降伏するかだ」

 

脅迫を受けてレディYの頭は真っ白になっていた。その時、「おい姉ちゃん!!何やってんだ!!」という少年の声を聞いて意識を取り戻すレディY。見ると2人の少年が走ってこちらに向かってきていた。そして2人はベルベットの頭に向けて石を投げつけた。

 

「姉ちゃんをいじめるな!」

 

「駄目……早く逃げて……」

 

「変身していても姉と分かるとはたいした姉弟愛だ」

 

2人が投げつけた小石を片手で払うとサーベルを振り上げるベルベット。

レディYは自分の事よりも弟たちの事が心配で仕方がなかった。このままだと殺されると思ったからだ。

 

「お前たちの行動は勇敢ではなく愚行だ……」

 

サーベルを構えたまま幸典と直樹のほうに歩いていく。その足取りを見て恐怖を感じた2人は固まってしまう。邪悪な笑みを浮かべるベルベットだが、レディYが叫ぶ。

 

「待って! 私はどうなっても構いません……弟たちだけは……」

 

そう言いながら土下座するレディY。銀色の髪は土埃に汚れ可愛らしい顔も泥で汚れる。

 

次の瞬間、レディYの背後に立ったベルベットは彼女の髪の毛を掴んで強引に立たせた。

 

手から離れた杖は光となって消えた。

 

 

「両手を後ろに回せ」と命令してくる。彼女はそれに従うしかなかった。後ろ手の状態で拘束され、ベルベットが作り出した光の柱に縛り付けられた。

 

「そこで大人しくしていろ」と言うとベルベットは直樹と幸典の前に立つ。

 

「姉ちゃんを離せ!」と叫ぶ直樹と涙を流しながら睨みつける幸典。

 

それを無視してベルベットが手をかざして何かを呟くと2人は倒れてしまう。

 

「約束が違う!」

 

「勘違いするな、今日の記憶を封印しただけだ。自分のたちのせいで姉と永遠に別れることになった記憶などない方が良いだろう?」

 

もがきながら叫ぶレディYにベルベットは言い放つ。

レディYは確かにその通りだと黙ってしまった。

 

 

「お前にはラック・ラックに対する人質となってもらう。もし逆らえば直ちに弟を殺しに行くからそう思うように……」

 

「………………」

 

無言のまま俯いているとベルベットは舌打ちをすると光の柱を消し、彼女を引きずるように歩き出した。

 

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