事務所を出た飛鳥と芹はタクシーに乗り、目的の場所へと向かう。
其処は所謂飲み屋街、朝早い時刻の為殆どの店は閉まっている。
人気の無い道を歩く2人は会話も無く1つの店の前にたどり着く。
地下に造られた簡素な造りの店、カマバーアンジュこそが2人の目的地だった。
「お邪魔します。」
「邪魔するぜ?」
クローズと書かれた掛札を無視し店内に入れば其処にはアンティークな造りのバーがあった。
そのカウンターにいる身長2メートル以上の筋骨隆々のモヒカン頭が此方に顔を向ける。
「邪魔するならお帰り下さ~い」
オカマ口調での返答に2人は
「「お邪魔しました~」」
とお決まりの返答と同時に回れ右して階段方向に向かう。
「待って待って~、ノリが良いのは分かったから帰らないで~。」
やけに良い匂いのする太い腕に2人纏めて抱き止められ店内へと引き摺られて行く。
そのままカウンター席に座らされた2人に安堵の表情を浮かべて、店長の田中は店の鍵を内側から閉めた。
「2人とも来てくれてありがと!」
ウインクを飛ばしながら早速とばかりに2人の前に資料を出す。
「これが今回の依頼か?」
田中がコクッと首を縦にふる。
其処には数枚の紙に依頼人の顔写真と依頼内容、報酬等が記載されていた。
「依頼人の名前は大神紫苑、都内の有名アパレル企業の若き社長、依頼の内容は数週間前に亡くなった姉の敵討ちの代行…報酬は前金百万円、成功報酬百万円か。」
「敵討ちの相手は久遠正美、都内在住のフリーター、数週間前仲間と共謀し依頼人の姉を拉致、性的暴行を加えた後に遺体を海に捨てた…酷い…」
同じ女性として犯人に明確な怒りを示す芹の横で飛鳥が田中に疑問を投げ掛ける。
「相当優秀な情報屋を雇ったみたいだな依頼人は、だがこれだけの証拠が有れば無能な警察連中でも逮捕位出来るだろうに?」
するとその質問が来ると分かっていたとばかりに田中はため息をつく。
「犯人の血縁の部分読んで見なさい、ため息が出るから。」
「何だよ?」
其処には詳しい犯人の血縁関係者の名前と職業が載っていた。
「「あぁ~納得…」」
其処には犯人の父親の職業の欄に警察庁の幹部を示すデータが載っていた。
つまる所、いくら証拠を並べても上からの圧力によって全て揉み消されてしまうのだ。
それだけ今の司法機関等は腐敗が進んでいた。
仮に裁判に持ち込めたとしても金によって無罪にされて終わるのが関の山だった。
そして依頼人はそのせいで裏稼業に頼るしかなかったのだろう。
「依頼人からの依頼としては犯人とそれに加担した連中全員、そして証拠を消したその父親の抹殺よ、姉の苦しみより何倍も苦しめて殺してくれって泣きながら話していたわよ。」
伏せた瞳を上げながら田中は飛鳥達の方を見る。
「受けてくれるかしら?」
「「任せて!/任せておけ!」」
2人はカウンター席を立つと店の外へと向かった。
その背中には怒気が漂っていた。
「犯人の方は私がやるけど良いよね?」
「じゃあ俺は父親の方だな、ヘマすんなよ!」
「そっちこそ!」
互いに拳を突き合わせて笑みを浮かべる、その笑みの下に獰猛な怒りを隠して。
一旦準備の為に帰路についた2人を見送りながら田中はカウンターの上の書類に火をつけて燃やす。
「自業自得とは言え御愁傷様ね、あの2人は滅多に怒らない分怒った時はどんなマフィアよりも恐ろしいのよ、特に芹ちゃんは今回マジギレっぽかったし本当の意味で逆鱗に触れたわね~くわばらくわばら」
今回から簡単な次回予告付けようかな?
汝その邪龍を起こすことなかれ
それは今より闇が深い時代、それは闇の暗黙の掟だった。
嘗ては邪龍、そう呼ばれた女はある日を境に組織から姿を消した。
僅かばかりの日だまりの中で女は安寧を得た。
しかし今、愚者はその逆鱗に触れた、ならば辿る末路は1つだけ。
汝ら刮目して見よ、今再びの絶望を
次回、雷鳴の邪龍