ホロライブラバーズ トロフィー『数多の業を振るう者』獲得実況プレイ 作:疾走
淡く風が吹き、髪を揺らす。
茜に染まっていく光を受けフブキの白髪が美しく輝いて見えた。
だけれどもその姿は今までに無いほど弱々しくも、見えた。
「隣……いいぞ……」
掠れそうになる声を絞り出す。
フブキはこくんと首を頷いて隣に座る。
二人の距離は拳二つ分程。
近いようで、遠い。
奏人もフブキもそう思った。
いつもはもっと座る距離は近い。この遠さは自分の心を表しているようだった。
「…………」
「…………」
そこに会話は無く、沈黙が空間を踊っていた。
隣に座る幼馴染みは数秒に一度の感覚でチラチラとこちらの様子を伺ってくる。
実家のドロドロとした問題に関わらせたら、そりゃ気になるかと奏人は黙考した。
けれども、そこを離れようとは思わなかった。
「…………」
「…………」
何か、話さなければいけないと思った。
自分の傷を刳り返す事になると思った。
自分にはその資格すらも無いと思った。
だけど。
変化とは痛みが伴うものだ。
「俺は……」
何を言いたいのかも分からないで、何度も言い倦ねて。
それでも言葉で伝えようとした。
「俺は……お前らみたいにはなれないかもな」
最初に出てきたのは弱音だった。
助け続けて貰ってきた幼馴染み張本人に言ったことで堰を切ったように言葉が溢れてくる。
「自分が何をしたいのかも分からないで生きている。
隣りにいるフブキの顔を見ることができず、そこで一旦言葉を切る。
スゥ、と深く息を吸った。
「どうしようもなく、悔しかった。一々、他人の言葉で心を揺らされて崩れそうになる自分が恥ずかしくて、情けなくて……悔しくて」
それでも体の震えは止まらない。
「今日、やっと理解したよ。俺は一人じゃ何もできない奴だ。今までも、フブキにずっと助けられて。他にも多くの人に励ましてもらったり教えてもらったりして、ようやく、前を向けている気がしてきた」
あの日々が、自分を支えてくれていたのだ。何でもないようで、何よりも大切な、日常が。
「俺は、貰ってばかりだ。してもらってばっかりで、何もしてやれない。こんなんなら、俺は居ないほうが───」
良いのかもしれない。
そんな言葉を続けようとして。
「───ですか」
「……え?」
「何もしてもらってない訳、無いじゃないですか……!」
隣りにいるフブキの顔を見た。
瞳に涙を浮かばせ、どうしようもない激情を湛えた顔。
「貴方が私を只の『白上フブキ』として接してくれた。私となんでもない普通の話をしてくれた。なんでもない事で笑い合えた。だから私は、今の私でいられるんです。ずっと、奏人君に助けてもらってたんです……!」
衝撃だった。
だってそれは、自分がしてもらったことだったから。自分が、人を助けられていたということだから。
「私だけじゃない、ミオだって、いろはちゃんだって、ラプちゃんだって、シオンちゃんだって奏人君とのなんでもない日常に助けられてるんですよ。だから、何もしてあげられてないなんて、言わないでください……!」
涙が頬を伝っていた。
声は掠れ、今にも嗚咽に変わりそうだった。
ふと、彼女達との学園での日々が、よぎった。
くだらないことで笑って、ふざけあって、───皆が笑っていた。
やっと、気がついた。皆そうだったのだと。
あの日常を楽しみ、助けられていたのだと。
「我儘なのは分かるけど、逃げてほしいんです……! 奏人君にもミオにも。こんな、死んじゃうかもしれないことに巻き込ませたくなかったんです……!」
声は嗚咽へと変わっていた。それでも、声にならない声でフブキは言っていた。
───逃げてほしい、死なないでほしい。
フブキは、白上家次期当主は冷酷でなければならない。小を切り捨て大に就く、それを成さねばならない。それでも、それを願ってしまうのは、彼女が過ごした日々があったからだろう。
「……すみません。こんな意味が無い我儘を言っちゃって」
フブキの激情を受けて、奏人は少し息を吐いた。
「……怖い、よな。身近な人が死ぬかもしれないのって」
ずっと、分からなかった。いや、分かろうとしなかった。あの日常を、誰もが笑っていたことを。誰もが大切にしてたかは分からない。けど、誰もが楽しんでいた。
「───俺もだよ。俺もフブキが死ぬかもしれないのが、怖いよ」
長い間一緒に居た幼馴染みが消えるかもしれない、その可能性に恐怖が湧き出てくる。
「俺さ、フブキがいて、ミオがいて、皆がいる、あの学園での生活が好きなんだ」
あの楽しくて、面白くて、何よりも温かい日々が。
一人でも欠けたら、どうなるだろうか。
あの日々が失くなるのは自分にとってどうなのか。
(それは……嫌、だな……)
笑ってしまうほどに、呆気なく答えは出た。
「このゴタゴタが終わったらさ、焼肉でも食べに行こうぜ。みんな呼んでさ、───だから、全員で帰らないとな」
白上フブキは幼馴染みで、恩人で、星川奏人にとっての大切な人だ。フブキが奏人やミオに危険から離れてほしかったように奏人もフブキにだけ背負わせたくは無かった。
「俺は我儘だからさ。大切な人が一人でもいなくなるのは嫌なんだ。ここで逃げてフブキが死んじゃうかもしれないのが嫌なんだ」
「……ふぇ……!?」
隣で耳をピンと立てて驚いているフブキに気づかないで奏人は再び話し出す。
「今、見つけたよ。いや、作った、か? 俺は大切なものを守るために、戦うよ。いなくなるのは寂しいからな」
「た、大切……寂しい……」
〘見つけなさい、自分のしたい事を〙
あの日、雨に打たれ無力感に押しつぶされかけた日。ちょこ先生に言われた事への回答が、やっと出せた。
「もう、迷わない。絶対に守ってみせる…………ん?」
「…………」
さっきから隣からのレスポンスが遅い……というか無い事にようやく気づいた。
横にいるフブキの目はぐるぐると回っていて焦点が合わない。耳と尻尾はブンブンと振り回されたりペタ……と垂れたりと忙しなかった。
頬は紅潮していたが……茜空に照らされて奏人は気づかなかった。
「え、ちょ……か、奏人君? そういうこと、他の人に安安と言っちゃ駄目ですよ? 勘違いされちゃいますよ?」
「? 言うわけ無いだろ、こんなこと言うのはフブキみたいな大事な奴だけに決まってるだろ」
「……ホントに、やめてください! ……うぅ〜」
ずっと悩んでた事が解消され奏人の心の中はフィーバー状態だった。悶えるような言葉をなんの躊躇いもなく自然に使えるほどに、フィーバーだった。正直普段から奏人の頭は大分フィーバーだが、今回はより一層キマってた。もし後日この件を掘り返されたら奏人は悶え死ぬだろう。
「……そろそろ落ち着いたか? いきなり蹲ってびっくりしたぞ」
「……ええい! 全部奏人君が悪いんですからね!? 焼肉は奏人君が全額負担してくださいよ!」
「おお、いいぞ。……だから絶対に生き残ろう」
〘 「では、一時間後にさっきの部屋で会いましょう。……頑張ってください」
「おう。フブキも、儀式頑張れよ」 〙
奏人は部屋で瞑想を始め、精神の調整を行った。
心の境界は切り替えた。思考は戦闘用に純化、高速化されてゆき全身を巡る【魔導回路】の流れを意識する。
問題は無い。魔法の使用に支障はないだろう。
『八式』や他の武器にも不備は無い───いや、一本だけ。確認をしてない武器があった。過去、誕生日に
それを取り出そうとして───辞めた。戦う理由ができたとはいえ未だ
「…………行くか」
準備は、終わりを迎えた。コンディションは万全に近く、今まで曇っていた視界は晴れ、体は軽い。魔導回路も違和感なく動いてくれる。最後に息を整えブリーフィングルームへ移動を開始した。
ミオは部屋で水晶玉の整備を終わらせていた。その鏡面には曇り一つなく、遍く未来を見透すだろう。
全身の魔導回路にも異常は無く妖術の行使は問題ないだろう。
準備は、整った。
「……もう行くかー」
まだ集合時間には余裕がある。だが、動かないと無駄な精神負荷が掛かってしまう。ミオは息を整え立ち上がった。
「絶対に、助けるんだ」
大神ミオの思考回路は常人に比べて、純化されている。
目的は単一化され、それを為す。それにこそ価値を見出す。
故に彼女は迷わない。止まらない。
誰かの為にあろうとする少女は、移動を開始した。
同時刻、桜士郎は
「……となっている。行動への質問はあるか?」
「…………」
もうこの問いかけも七度目だ。質疑はとっくに出終わっていたがそれでも律儀に言うのは桜士郎の生来の気質が生真面目だからか。
「……無いな。ではこれにて確認は終了。各員、準備ができ次第定位置へ移動を開始しろ」
そこで一息つき、言霊に凄絶な殺気を込めて作戦開始を告げる。
「これより征伐作戦【白狐神征】を開始する。異分子を確実に、滅ぼすぞ」
「ふふん。どうですか? 白上のこの衣装! 何か綺麗ですよね〜」
ドヤッ! とした顔でこっちを見てくるフブキ。そんな彼女が現在身に纏っているのは儀式用の白装束だった。シンプルな衣装はフブキの美しさを全面に引き出していた。さらに白装束は薄めなのか身体のラインを隠していなかった。
何だか負けた気になるので絶対に言わないが奏人の心拍数は上がっている。
「ああ、似合ってる似合ってる。ほら、もう斎場に着いたぞ」
「あ、本当ですね。では白上は場所が違うのでここで一時お別れです。……奏人君、ミオ、無茶だけはしないでください」
真剣な表情で言ってくるフブキに安心させるように奏人もミオも笑みを浮かべた。
「ああ、分かってる。フブキも無茶はすんなよ」
「大丈夫だよフブキ。そんな心配しないで」
「……そうですね。では、また後で」
そう言ってフブキは従者と一緒に斎場の奥へと消えていった。
「えーと、霞さん。俺達の座る場所は───」
言葉を、切る。何気なく向けた視線の先に大敵───錆下桜士郎がいた。
男と男の視線が交差される。
一瞬だけ広がった沈黙を切り裂くように桜士郎が口を開く。
「おお、久しぶりだね。星川君。
「……快調ですよ錆下さん。
口調は丁寧に、その心は状況にそぐわない程に凪いでいた。
そして二人は旧知の仲のように握手をして───顔を寄せ合った。
「フブキに手ぇ出してみろ……殺すぞ」
「精々その矮小な身で守ってみせろ……雑魚が」
顔を戻し最大限の殺気を込めた笑みをぶつけ奏人は霞の先導で自らの位置に移動した。
「もう、奏人君! いきなり話したりして、ウチ心臓止まっちゃうかと思ったよ!」
「い、いや……向こうから話しかけてきたから……ごめんて」
「しっ、お二人共もう儀式が始まります。気を引き締めてください」
霞の声を引き金に始まりの前兆のように場に神威が満ちていく。
その神威を感じ取り誰もが黙って奥に現れたフブキを見詰めはじめた。
神【白蔵主】を祀る為に行われる一つ一つの動作に目が奪われる。
それに呼応するように上昇していく神威に誰もが呑まれる。
そして交信の始まりを告げるようにフブキの周囲を白い粒子が漂い始め───
「……! 始まったか!」
「奏人君! 行こう!」
少女を守る為に彼らは走り出す。
「お前ら、速やかに目標を始末するぞ」
少女を殺す為に彼らは走り出す。
故に始まるは殺し合い。
絶死の戦場が、幕を開けた。
そして、覚醒の時は、遠からず。
狐人先輩「じゃけん、夜(から行われる儀式で
はい、サブタイ回収です(白目)こんな雑な回収になるとは思わなかったんだ…
そしてホカ君が遂に迷いへの答えを見つけましたね。これでデバフは一気に消えました。
まあ、それだけで勝てるほど甘くないんですけどね。
次回からやっと戦闘が始まります。見てくれると嬉しいです。
ぶっちゃけ読者に厨ニな技名とか活動報告で求めたら書いてくれる
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書く
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書かない
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恥ずかしい♡
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おい、デュエルしろよ