ホロライブラバーズ トロフィー『数多の業を振るう者』獲得実況プレイ   作:疾走

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んー今回は繋ぎやし3000文字位でパパーと終わらせよっ。なんて思ってたのに何で7000文字超えてるんですか?


Round2………→Second form

 誰もが意志を持っている。

 誰もが負けれぬ理由を持っている。

 

 例えば、狐の少女は友の幸せを願い。

 例えば、狼の少女は誰かの為にあろうと思い。

 例えば、■人へと至る少年は大切なものを守る為に。

 

 例えば、狐の青年は()()()()()()()が故に。

 

 避けれぬ闘争に身を焦がしながら彼らは足を踏み入れる。

 その先に全て無に帰す黄昏がいることも知らずに、未だ上がってすらいない領域(ステージ)に突入しようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 剣戟と拳打の余波が四方を切り刻み打ち壊す。

 金属音と飛び散る火花は激しさを増し、衝突するごとに空間を歪めていた。

 渾身の一撃、それを避けられる前提で織り込み次の一手に繋げる。

 それで足りないのなら二つ三つと先を読む。極限の集中、火花が一粒ずつ鮮明に見えるほどに高速回転した戦闘用思考回路の予測精度を秒単位で向上させていく。

 

()()()──距離が空いたら、不味い!!)

 

 漠然とした直感、されど無視できないほどに思考回路が危機を伝えてくる。『八式』の本来の剣域よりも、さらに内へ。至近距離戦闘(インファイト)は奏人自身も不利だがそれ以上の不利を桜士郎に押し付ける。

 長柄武器である薙刀を満足に振るわせずに、桜士郎が距離を取ろうとすれば即座に前に詰める。魔法構築に割いていたリソースも攻撃に注ぎ込み、全神経で挑んでいた。

 

「チッ!」

 

 張り付く奏人を引き離す為、炎線を振るう。

 横からの高速の炎撃。それを焔を纏ったミオの拳打が撃ち落とす。

 

 

()()()()

 

 距離を詰めインファイトを挑む前衛(奏人)

 炎線や炎球を防ぎ分水嶺に成り得るカウンターや回避機動を撃ち落とす後衛(ミオ)

 極まった集中の中での連携精度は爆発的に上昇していき、連理の領域に近づいていた。

 それでも。

 

(ッ、意味分かんねぇ!? 何でこの距離で全部防いでくんだよ!?)

 

 幾度『八式』を振るおうが薙刀に叩き落される。

 僅かな身体捌きによる位置調整。視覚情報を撹乱させ攻撃の勢いを削ぎ落としていく。

 そして僅かな()()()()()()

 長柄である薙刀はそれだけの動作で躍動し連撃全てを弾いていた。

 

(最適解の動きで防いできて、何よりその場の対応がずば抜けてる!)

 

 袈裟斬りを弾かれるもその衝撃に逆らわず全身に循環させる。

 循環させた力を腕に込め、踏み込み、刺突を繰り出す。

 身体に捻りを加え、力を増大させた抉るような刺突。

 

「フッ──」

 

 当然のように薙刀に撃ち落とされる。

 叩き落された機械の刃────その衝撃を上乗せして一回転する。

 一瞬のみ開かれた掌で柄がシームレスに順手から逆手に切り替わる。

 

(この距離なら順手よりも、逆手の方がやりやすい!)

 

 振りかぶる必要は無い。

 相手に押し付けるように繰り出された一閃を──刀身に絡みついついた炎線が速度を落とさせ薙刀が弾き上げた。

 

 順手から逆手への切り替え、この攻防の中で初めて見せた技に即座に対応し防いでくる。

 莫大な戦闘経験から培われた最適解をノータイムで見つけ、実行する抜群の対応力。

 ちゃちな小技では崩せない戦闘技巧に、奏人は舌打ちしつつも感嘆を隠せなかった。

 

 左右両方からの炎線による刺突。

 感知した瞬間に屈む奏人。屈んだタイミングで足払いをするが当然のように躱される。

 空中に躍り出たミオは独楽のように回転して左右の炎線を払い落とす。

 そのまま回転の軸を変化。回転の勢いを乗せた蹴撃を斬首装置(ギロチン)のように放つ。

 

 弧を描くように回転した薙刀が蹴撃を絡め取るような軌道を描き、受け流す。

 そして、()()()()()()()

 

 ギアを一段階引き上げたのか、対応を許さぬ速度で奏人達と自らを隔てるように炎線を並べ──次の瞬間爆破する。

 

「──ッ!? 待機解除(ディスペル)──【グラキエース・シールド】!」

 

 目の前で爆破する直前の炎線を視認した奏人は前方に魔導回路を展開、氷壁を設置する。

 一瞬にして氷壁はひび割れ、粉砕するがその暇で二人は後方に飛び退いていた。

 

 冷や汗が、背筋を伝う。

 

 炎線を構成していた魔力を無秩序に解放。

 高火力、直撃していれば戦闘継続は不可能だっただろう。

 そして、何より、()()()()()()()

 

「──オ、ラッ!」

 

 状況を理解した頃には身体は投擲体制に移行していた。

 全身を連結させ『八式』を満力で投げ飛ばす。

 

 距離が離れて、薙刀を満足に振るえるようになった桜士郎からすれば豪速だろうが高速だろうが関係なかった。

 一閃、銀光を閃かせながら振るわれた一撃で『八式』は後方に弾き飛ばされた。

 

 

「……炎華、創域」

 

 

 直後、周囲に炎線が貼り巡った。

 奏人たちを取り囲むように、領域が形成された。

 それの意図を探ろうとするが先程とは比にならぬ速度で振るわれる薙刀を召喚し直した『八式』で叩き落とそうして──慌てて行動を変更、受け止める。

 

(あ、まず──)

 

 変化は、端から見ると分からず、されど激的だった。

 先程とは違い長柄本来の距離で振るわれるそれの速度、威力も凄まじい。だが、それ以上に辺りに張り巡らされた炎線領域が二人の動きを蝕んでいた。

 

 

(身動きが、取れねぇ!?)

 

 炎線領域。

 本来は攻防一体であるその妖術を領域として行使。

 相手の動きに合わせ領域を形成し行動パターンを極端に封じ、減らし、制限することで不条理な程の有利を押し付ける錆下桜士郎の、戦闘理論(ヤイバ)

 

 普段のような機動を行えば、直ぐに絡め取られるだろう。

 ここにきて、一気に流れが悪くなった。

 もとよりインファイトを押し付けてやっとニュートラルに持ち込めていた相手、それが万全の状態で薙刀を振るい、こっちの動きを制限してくる。

 

(絶、対に手甲買お……!)

 

 たまらず召喚した短剣も数度の剣戟で折れてしまった。

 満足に振れなくなった『八式』では攻撃を捌ききれずに徐々に損傷が増えていく。

 茹だる脳を必死に動かしながら切れかける集中を保たせる。

 こんな時、手甲があれば腕で受ける事ができるがそんな都合よく持っていない。

 

 ミオと共にお互いの動きを補完し合いながら炎華の檻の中で斬撃の嵐を捌き続ける。

 収束された刹那を分解し耐えて耐えて──時間を稼ぐ。

 

(大神の最大出力なら崩せるか!? …………いや無理だ。ぶち抜くなら一瞬で崩さないと駄目だ)

 

 拮抗が起きれば周りの炎線が攻撃の起点を潰してくる。

 必要なのは抵抗を許さぬ純然な火力。だが、足りない。

 肩を切り裂かれる。空間を踊る血雫が増えてきた。

 

(もし領域を抜けれたとしてもまた構築されたら意味が無い。怯ませるための一手がいる)

 

 拡張し続けていた思考能力が壁を突破する。

 思考を並列へと進化、単純な思考リソースが倍以上に増えた。

 振り上げられた刃を横から叩き軌道を強引に曲げる。

 

(この炎線領域の最終的な帰結は絡め取ってからの斬撃。────ッ!)

 

 途端、だった。

 思考の大海から手繰り寄せた情報を混ぜ、組み合わせ、構築する。

 暗闇の奥に、光が見えた。

 

 覚悟を、決める。

 

 詳細を念話でミオに伝え行動を開始する。

 激的な変化は無く、じわりじわりと毒をしみこませていく。

 限られた空間で最小限の動きで斬撃を叩き落としながら、少しづつ位置を調整していく。

 

「……ぐッ、オ……!」

 

 苦悶の声が漏れ出た。

 苦痛を堪えるように眉間に皺を寄せ必死に歯を食いしばる。

 ここにきて魔法の構築を再開。魔導回路を展開しながら演算を繰り返す。

 限界レベルまで酷使していた脳を、さらに酷使。ボヤける視界を振り払い並列動作を執行する。

 

 徐々に、自分たちが押し込まれていっているのが分かる。

 このままいけば炎線に引っ掛かり敗北するだろう。

 まだだ、まだ耐えろ。斬られた腹が燃えたように熱いが無視して剣を振る。

 

 耐えて、耐えて、耐えて────条件が、揃った。

 

「大神!! 頼む!」

 

 斬撃を受け流し、叫ぶ。

 数瞬で全身を焔が包み込んだ。

 熱への耐性は一般程度しか無いからか自身すら焼いているが許容範囲。

 

 襲い来る斬撃を弾かず刀身で受け止め、踏ん張らずに、()()()()()()

 待ち構えている炎線に自ら飛び込む、愚行。

 

「機構、発動! ──魔壊斬(リジェクト)!」

 

 魔壊機構を起動しながら全身を回転させる。

 遠心力を乗せた斬撃。莫大な威力が込められたそれは炎線を斬り壊していく。

 一本、二本、三本──そこで斬撃が止まった。炎華の檻を壊すには足らず層を薄くさせるのが精一杯であった。

 炎線に体が絡め取られた。

 桜士郎の行動は、迅速だった。

 斬り結んでいたミオに炎線を変化させた炎狐をぶつけ、抜ける。

 炎線の一部を刀身に巻き付け斬撃の強化機構を形成。

 莫大な熱を発する灼熱の刃に、動きを封じられた奏人が取れる行動は直撃地点に『八式』を置くことだけだった。

 

 最初に衝撃が全身を駆け巡り破砕していく。

 遅れて体が物理学に則り後ろに吹き飛ばされた。

 熾

「────ガッ、ッ!!?」

 

 続いて、凄まじい速度で体が炎華の檻を突き破る。

 炎線はその熱量で対象を焼き切る。奏人の体が真っ二つに別れていないのは事前に層を薄くしていたこと、そしてミオの焔による装甲のお陰だった。

 それでも全身が焼き斬り刻まれる。数秒、視界がブラックアウトする。

 吹き飛ばされ地面を転がり、倒れ伏していることが遅れて分かった。

 

「奏人君、大丈夫!?」

「大……丈、夫……」

 

 炎撃を掻い潜り、ミオが側に辿り着く。

 震える四肢に力を入れ立ち上がる。

 ろくに動かない頭を必死に回し周囲の情報から構築した作戦を修正する。

 

(まだ、まだだ耐えろ……! 焦るな踏ん張れ、まだ体は動く……!)

 

 鬼札は、まだ使えない。もっと桜士郎が近づかなければ、使ったところで意味がない。

 だが、先に炎華領域を形成されたら、策もろとも潰される。

 周囲からの攻撃を警戒しながら進む桜士郎を睨み極度の緊張からか全身から汗が流れる。

 

 炎華創域はまだ使わない。もっと星川奏人達に近づかなければ逃げられる可能性がある。

 向こうは何かを狙っているようだが領域を再発動すれば関係無い。

 睨みながら魔力を高める奏人を真っ向から睨み返し、近づく。

 

 

「【グラキエース・ショット】!!」

 

 先に仕掛けたのは、奏人。

 魔導回路を地面を伝って()()に展開。

 事前に構築していて、さらにこの戦いの中で洗練されていったその展開速度は最速だった。

 

 天井から無数の氷の砲弾が降り注ぐ。

 即座に刀身に巻き付けていた炎線を頭上に展開、砲弾を防ぐ。

 その時には既に懐に奏人が単身で迫っていた。

 

(……? 大神ミオを置いて一人での突撃? それは蛮勇だ、星川奏人!)

 

 振るわれた刃は素人目にもわかるほどに勢いを落としていた。

 顔に苦悶を滲ませながら、意味をなさない叫びを上げながら、がむしゃらに剣を振るう。

 大振りの一撃は僅かに軸を移動させるだけで回避できた。

 半回転させ遠心力を乗せながら反撃(カウンター)を放つ。

 完全回避は間に合わず脚を切り裂かれる。

 

 もはや、体は限界だった。

 回避機動はキレを失い、小技で防御を瓦解させようとすることもできない程に消耗を見せていた。

 それでも、感情の熱を燃料に駆動を止めない。

 その目の気炎は尽きず猛っていた。

 炎華領域だけは使わせないと、張り付く。

 

 決壊は、呆気ないほど一瞬でやってきた。

 斬撃を受け止めた時の衝撃に耐えきれず脚から力が消えた。

 糸が切れたようにカクンッ、と膝をつく。

 

「……終わり、か。良くやった、本当に良くやったよ。俺にここまで使わせた、……お前は伸びただろうな」

 

 尻目に見てたミオは悲痛の表情を浮かべつつも動かなかった。彼女も、とっくに限界を迎えていただろう。

 

 そう、桜士郎は考えて。

 薙刀を振り下ろす為、一歩、踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ああ、そうだよ。

 体は痛ぇし目眩は止まらない。

 血もかなり流れた、貧血になんのか? 

 思考はまとまら無いし正直、もう寝てしまいたい。

 

 それでも、この痛みも苦しみも、全部が全部、この瞬間のため。

 

「……待機(ディス)解除(ペル)──【フルミニス・チェイン】」

 

 

 雷鎖が桜士郎を貫いた。

 

 

 

 吹き飛ばされた場所は炎狐との戦闘地点。即ち、雷鎖発動起点を設置していた場所。

 魔力を悟られないよう囮の魔法を構築。

 雷鎖の間に移動させる為に攻撃を喰らいながら誘導。

 

 体はボロボロ、それでもその結果、雷撃を受け桜士郎の動きが一瞬、完全に止まった。

 ミオが飛び出す。再度焔を吹き荒らしながら加速。肩と肘部分の焔を炸裂、アッパーカットが桜士郎を天高く打ち上げた。

 

「────ッ!!!」

 

 雄叫びは声にならず、それでも肉体を動かした。

 脚を地面に叩きつけ、跳躍。

 収束機構を、起動する。

 

機構、発動(スタート)。────収束開始(コンバージョン)

 

 残留魔力を刀身にかき集める。

 戦闘で行使された数多くの魔法、故に空間内の魔力濃度は高濃度であった。

 刀身が過負荷に軋む。何度も酷使し無茶をさせた武器。

 もう少し、あと少しだけ、耐えてくれ。

 

 打ち上げられた桜士郎に追いつく。

 剣を上段に構える余力も無い。

 

(逆袈裟で、終わらせる……!)

 

 極限状態で、集中は極まっていた。

 世界がスローモーションで動く。

 斎場全域を把握した。奇襲は無い。敵の行動も位置も状況も全てが計算通り。

 確実に刃が届くように全てを賭し、成功した。

 この刃は絶対に届く、届かせなければならない。

 

(届け、届け届け届けぇェェェェ────!!!!)

 

 莫大な魔力が込められた機械の剣が無防備な胴体に走る。

 気炎を迸らせ全身の力を捻り出して、奏人は勝利を確信した。

 

収束完了(コンプリート)────収束解(バース)────」

 

 刃が体に接触し、

 

 

 

 

 

"──なぜ──届くと思った"

 

 居た筈の場所を、空虚を、刃が滑っていく。

 炎線によるワイヤーアクションと似た用法での急機動。

 振り抜いた体勢の奏人は敵の懐で無防備。

 

(──あ、──)

 

 既に桜士郎は薙刀を振りかぶっている。

 どんなに速く切り返しても、間違いなく灼熱の刃の方が先に当たる。

 この状況を打破する魔法も、奇跡もない。

 

(──く、そ)

 

 読み違えた。

 最悪への予測が甘かった。

 奏人では、全てを予測することはできなかった。

 

(畜生、何で──)

 

 薙刀の軌道が読める。

 それでも、回避のしようがない。

 体と首が泣き別れるのが分かる。

 どうしょうもない。

 

(あと、少しの所で──)

 

 出し切った。

 全てを賭して、絞り出して、出し切った。もう一片の力も残っていない。

 それでも、届かない。

 もう、何も残っていない。

 

(俺、ここで、こんな所で──)

 

 赤火が視界を埋め尽くす。

 必勝の一手は躱され逆襲の一手に自分は敗北する。

 全てを諦め、真白に染まった脳裏に、

 

 白い、狐の少女が、映った。

 

 

 

 

(────何、諦めてんだ)

 

 

 腕に力が流れ込む。

 爆発的に熱量を上げた意志が思考を切り拓く。

 停滞した世界で、体がひどく熱かった。

 

(何を頼まれた。何を願った。何を求めた。──ふざけんな。俺が、一番諦めちゃ駄目だろうが────!!!)

 

 不思議な感覚だった。

 意識を置き去りに、体が動く。

 

「──ウォォォォォォォ!!!!」

 

 切り返し。その刃は空間を、流れゆく時すらも切り裂いた。

 首筋に迫っていた刃に有り得ない速度で引き戻された『八式』が衝突する。

 均衡は刹那で終わりを迎えた。

 頑強な薙刀の刃が、濡れ紙を破くように、()()()と斬り別れた。

 

 

「ガァぅ──アアァツッッッ!!!」

 

 血が滲む唸り声。

 決死の表情で収束機構を解放する。

 

収束解放(バースト)ォォォ!!!」

 

 振り下ろされた刃が桜士郎を叩き落とす。

 空気の壁を破りながら地面に衝突。

 地殻を抜くのではと思うほどの轟音と衝撃を辺りに撒き散らし、辺りに木粉が舞う。

 

 なんとか受け身を取り、今にも倒れそうな体を地面に突き刺した『八式』に預ける。

 

 

「────────ッハ」

 

 呼吸を、暫し忘れていた。

 

「ハッ、ハァ、ハァ、ガッ、ゴホッ」

 

 身体が酸素を求めてあえぐ。そんな自分の感覚を他人事のように奏人は感じた。

 刀身にもたれつつも立つのは限界だった。崩れ落ちかける身体を膝を立たせて支える。

 

「ッハ、フッ、フゥゥ」

 

 空気を身体に循環させて、呼吸を落ち着ける。

 限界を超えていた体力がついに尽きて、全感覚が遠のいていた。

 視界のボヤけは酷く色しか認識できない。脳は茹だり沸騰しているようだった。

 

「──人君! ──夫!?」

 

 声が、聞こえてきて。

 その声を引き金に意識を引き上げる。

 

「大、神……これ、どうなった……?」

「立ち上がらない、うん。倒した、勝ったよ!」

 

 即答だった。

 その力強い声を聞いて、笑いが溢れて。

 ようやく実感が湧いてくる。

 

「俺の……勝ちだ……!」

()()()

 

 

 全身に冷水がかかったような、そんな悪寒。

 心像がキュッと縮み上がり四肢が強張る。

 そんな、どうして。悪夢を見ているようだった。

 木粉を払いながら、錆下桜士郎が、立ち上がった。

 

「……認めよう。確かに俺は、あの時貴様たちに負けた。それは変えようがない事実だ」

 

 懐から、ナニカを取り出す。

 注射器のような、中に液体が入った物。

 危機信号が鳴り止まない。次に起こる行動を止めようと力を込めるが、体は錆びついたように動かない。

 

「だが、それでも、俺は終わる訳にはいかない」

 

 無造作に、針を胸に突き立てる。

 ドクン、と脈打つ音が響く。

 戦士としての感でも民衆としての恐怖心でもなく、生物としての本能が訴える。

 アレは、マズイ。

 

 桜士郎の体を炎線が繭のような形状に変わり包み込む。

 それは羽化前の蛹のようで。

 進化の前兆であった。

 

 

 

【ぬ?】

「? ……フゥゥ。どうしたんですか? 白蔵主様?」

 

 心像世界にて激闘を繰り広げていたフブキ達の動きが止まった。

 白蔵主が怪訝そうな表情で攻撃の手を止めたからだ。

 

【…………クッ、ハッハッハ!!!】

 

 瞬間、哄笑する。

 気が狂ってるようにしか見えない姿にフブキもクロもドン引きする。

 

【お、おい。どうしたんだよ、いきなり】

【クククッ。いや何、大うつけがおってな】

 

 続いて内容を告げる。

 

【わらわの()()()()()()()()()()()! 一部しか引き出せていないようじゃが持ってかれたのう…………ほれフブキ。急いだほうが良いぞ? あのおのこ(奏人)、このままだと死ぬぞ?】

 

 

 

 

 

 

繭が、花開く。

内から溢れ出す熱が木造の地面に着火する。

火の粉が辺りを漂う。

 

熱に耐えきれなかったのか裸体となった上半身はまるで熱に耐えきれなくなった骨のようにひび割れていた。

顔にも同じようなひび割れが見える。

そして、背には紅く燃え盛る炎の尻尾が九本。

 

右手に炎が集積し炎熱の薙刀を象る。

深紅を凝縮したような、鮮血色の刃はその熱で空間を歪ませている。

 

歪な、根幹からズレてるような、間違った、それでいて確実に上位領域に至った、そんな姿。

 

 

 

 全力を出し切って、戦いを終えて。

 全力の、その先を求められて、次の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 




八式「うぇ?残業ってマジすか?」

ぶっちゃけ読者に厨ニな技名とか活動報告で求めたら書いてくれる

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