ーレンsideー
レンはアイリと共にヘリコプターで『ホテル・アグスタ』へと向かっていた。
〈東都〉の早乙女学園近くから、〈北都〉の『ホテル・アグスタ』へはかなりの距離があるので、ヘリで向かっていたのだ。
「・・・・・・・・・・・・」
レンは眼下に流れる街の灯りを見下ろすと、すぐに視線を夜空へと向けながら、子供の頃の記憶を追想していた。
* * *
それは、アメリカの別邸にいた頃。
歌手だった母・『円城寺蓮華』が亡くなってから、実父はまるで何かに取り憑かれたかのように、母のライブ映像に写真からポスター、CDに至るまで、全てを捨てていった。
【アイツの物は死んだ時! 全部捨てたと思ってた!!】
まるで母の存在を消そうとするかのように。
子供のレンは、それを物悲しそうに見ながら、父に問うた。
【・・・・パパは・・・・なんで・・・・ママのことキライなの・・・・?】
【っ!】
【・・・・・・・・】
その時の父の顔は、凄まじい憤怒に染まっていた。
父が出ていくと、レンは隠し持っていた母の歌が録音されたコンパクトカセットを邸宅から離れた公園で、一人ーーーー否、その頃には見習いメイドとして一緒にいたアイリと共に、カセットプレイヤーで母の声を聴いていた。
【《ーーーーええ・・・・今日こんなメロディーを思いついちゃった。お腹の赤ちゃんに捧げま〜す。健康で、思いやりある子になってね》】
【っ!】
【・・・・】
【《♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜♪〜》】
【ぅっ、ぅぅぅ・・・・!!】
【・・・・】
母のメロディーを聴いて、涙が溢れたレンを、アイリは優しく抱きしめた。
* * *
「・・・・・・・・」
「ーーーー夕陽が舞う教室で・・・・」
「っ」
「ーーーー星よりも煌めいたその瞳に・・・・Knock out」
「アイリ・・・・」
「素敵ですね。この歌詞を見た時、『あの時』のレン様のお母様のメロディーが、私の中で浮かんできました」
「・・・・・・・・」
レンはアイリの言葉に耳を傾ける。
「誰かを好きになって、想いを解き放つと、全てが輝きイキイキと動き出す。ーーーー出しゃばりなのは重々承知ですが、詠ませていただきました」
「・・・・・・・・」
「思いやりのある子になって欲しいという、お母様の願いを、レン様は叶えていると思います。ーーーー辞めないで下さいレン様。学園もライディーンも。本当の想いを、ちゃんと伝えて下さい! 言葉にしなければ、伝わらない想いがあると思います!」
「・・・・フッ、ありがたいね。アイリにソコまで言われるなんて・・・・ぁっ」
レンの手に、アイリが歌詞が書かれたページを添えた。
「最後の歌詞、書いて下さい。完成されない歌なんて、歌が可哀想です」
「・・・・・・・・」
レンはそのページを一瞥すると、ヘリはホテル・アグスタへと到着した。
ー音也sideー
「き、緊張する・・・・!」
「お、俺ら、完全にお門違いだろ・・・・!」
「一十木。来栖。そんなに緊張しなくても良い」
「そうですよ! ほら、ララちゃんなんていつも通りです!」
「音也! ここのご飯美味しいよ♪」
「す、スゴイねララちゃん、こんな空気の中でもいつも通りなんて・・・・」
「流石、一応『デビルーク星』のお姫様ね・・・・」
ホテル・アグスタのオークションにて、『ゾディアック・オーブ』が出展されると情報を聞いた音也達。
学園長達が事前に用意していたタキシードとドレスに身を包んでオークション会場を見ていたが、テレビで見た事ある有名人ばかりの空間に、音也と翔は気後れしてしまっていた。真斗は平然とし、那月も妙に落ち着いていた。ララは流石は王女なのか平然とし、春奈と唯は緊張していた。時折、ララと春奈と唯が男性に口説かれそうになるが、音也達がガードしている。
と、ソコで、〈時空管理局〉の魔導師、高町なのはとフェイト・T・ハラオウン、八神はやての『管理局三大美女』がドレス姿で現れた。
「あれって、〈時空管理局〉の魔導師の・・・・」
「彼女達がいるという事は、何か起きそうだな」
音也と真斗はコッソリと話す。
「ーーーーあら? 那月くん達?」
「ーーーーん、おぉっ、お前達!」
「えっ? ミ、ミーナさん!? 坂本さん!?」
そんな一同に話しかけてきたのは、〈南都〉にいる筈のミーナと美緒の二人だった。ミーナはワイン色のワンピースドレスを着用し、坂本は黄色と雛菊の柄をした丈の短い着物を着ていた。
「わぁ! ミーナ綺麗! 美緒カワイイ!」
「ホント! ミーナさん、大人の女の人って感じで素敵ですよ! 美緒さんも、お人形さんのようでとってもカワイイです!」
「うふふ、ありがとう♪」
「あ、あまりこういう格好は馴れてないのだが・・・・/////」
ミーナは笑みを浮かべ、美緒は照れ臭そうに頬をかいた。
「でも、〈南都〉のウィッチーズのお二人がなんで〈北都〉に?」
「・・・・まぁ、掻い摘んで説明するとね。上層部から、このオークションには、他からの偉い人達が来るから」
「・・・・ストライクウィッチーズの隊長と副隊長として、顔を売ってこい、とお達しが来たのでな。私とミーナが来たのだ」
唯の問いかけに、二人は少々辟易とした顔になるのを見て、気が乗らないのが見え見えであった。
と、さらにそこでーーーー。
「ま、真斗さん・・・・!?」
「? セシリア?」
ソコに現れたのは、〈西都〉にいるセシリア・オルコットが青いドレスを着て、後ろにメイドを控えさせていた。
「セシリア。何故〈北都〉に?」
「わ、わたくしは、本日出展されるオークションの品の一つを提供しましたので・・・・」
「なるほど。それで、ソチラの女性は?」
「ええ。わたくしのメイドの『チェルシー』ですわ」
セシリアが紹介すると、『チェルシー』と呼ばれたメイドを会釈する。
「お初にお目にかかります。『チェルシー・ブランケット』と申します。あなたが、聖川真斗様でございますね?」
「はい。はじめまして、聖川真斗です」
チェルシーはジッと真斗を見てから、ニヤリと笑みを浮かべ、セシリアに耳打ちした。
「やりましたねお嬢様。聖川財閥の跡取り息子にして、美男子で性格も実直で真面目と評判の聖川真斗様とは。お嬢様は、男性嫌いの所がありましたから心配だったんですよ?」
「ち、チェルシー!!/////」
顔を赤くしたセシリアがチェルシーの背中をポカポカと叩く。叩かれたチェルシーはオホホと朗らかに笑っている。そして、初めて会う翔と那月とも挨拶を終えると。
「「オ、オルコット(さん)・・・・?」」
「え?ーーーーっ! ヴ、ヴィルケ中佐!? 坂本少佐!?」
セシリアの様子に目を丸くしたミーナと美緒。二人の存在に気づいたセシリアが目をひん向いて驚く。
「何だ。セシリアはヴィルケ中佐と坂本少佐と知り合いだったのか?」
「え、ええ。〈西都〉と〈南都〉は近いので、良く合同で狙撃の訓練のような物がありますの。ソコで、リネット・ビショップさんとわたくしで成績の上位争いをしているのですのよ。ちなみに、先日ではわたくしが勝ちましたわ!」
「そうか。今さらだが、おめでとうセシリア」
「(ポッ)い、いえ////」
真斗に賞賛され、頬を赤くするセシリアを見て、ミーナと美緒はほぉほぉと何やら察した顔となった。
「そう言えば、この間のクラス代表戦は惜しかったな。鈴と引き分けになったそうじゃないか」
「そうなのですわ! 鈴さんったら猪のように突っ込んできて距離を詰めて来て接近戦ばかり挑んできて、最後はわたくしのミサイルと鈴の『衝撃砲』がぶつかって暴発し、それを至近距離で受けてしまったわたくし達はエネルギー切れで両者引き分けになってしまいましたのよ!」
「だが、皆凄いと賞賛してくれたのだろう? シャル達に聞いたが、クラスメートの皆とも打ち解けあっているそうじゃないか」
「ええまあ、そうなのですけど」
勝敗に納得がいかず小さく頬を膨らませるセシリアを微笑ましそうに見る真斗。
「ーーーーしかし、前に会った時と違って、随分トゲが無くなったな。オルコットは」
その二人の様子を見て、美緒が思わずそう呟いたのを聞き、ララが問いかける。
「そうなの美緒?」
「ああ。以前は高飛車なお嬢様っといった感じで、ペリーヌとも顔を合わせると、無言で睨み合っていた程だ。同じお嬢様として、妙な対抗心が生まれたのかもな」
等と、ウィッチにISパイロットと楽しく歓談していた音也達だが、会場に新たな、ニュースで見た事がある三十代前半の若い三人の美女が現れ、ソチラに目を向けた。
美しい黒く長い髪に切れ長い目をし、ドレスの上でも分かる程のグラマラスな肢体をした美女。
亜麻色の髪をアップした和服が良く似合うはんなりとおっとりとした雰囲気の美女。
緑色の髪をポニーテールにし、抜群のスタイルをドレスに包んだ美女だった。
三人の美女に男達が視線を向けるが、すぐにハッとなって顔を背ける。三人の美女は男達の視線なんて意に返さず、否、寧ろ男の存在等眼中に無いと言わんばかりだったが、なのは達機動六課の魔導師三人を見つけると、にこやかに話しかけていた。
話しかけられた魔導師達は、弱冠顔を引つられせていたが。
「あの人達って・・・・?」
「ドレスの女性は私達〈南都〉の首相『神無月千景‹カンナヅキ チカゲ›』に、和服の女性は〈西都〉の首相『藤姫静奈‹フジヒメ シズナ›』、ポニーテールの女性は〈北都〉の首相『長坂美尋‹ナガサカ ミヒロ›』ね。三人とも、三十代前半の若い人達だけど、優秀な人達よ。あくまで、“能力だけは”、ね」
「こんなオークションに、三人の首相がやって来たのか?」
ミーナは何故かトゲのある言い方をし、坂本は怪訝そうに眉根を寄せた。
「何か、管理局の三人、顔を引つらせてないか?」
「あの三人の女性首相、『女尊男卑主義者』で『同性愛者』と言う噂がありますの。しかも、男性は徹底的に排除しようとしている動きがあるそうですわ。あくまで噂ですが・・・・」
「こっわ!」
「と言う事は、あの管理局の三人は、あの首相達の恋人かなにかなんですか?」
「いえ、そんな噂は聞いた事無いわね」
と、翔が魔導師達に言い寄る首相達の事をセシリアが解説すると顔を青ざめ、那月の問いにミーナが首を傾げていると。
「あっ、音也。レンとアイリだよ」
ララがそう言って小さく指差すと、タキシード姿のレンと後ろに執事用の燕尾服を着たアイリが、ショートヘアの金髪に勝ち気そうな雰囲気をしたドレスを着た女性と、長い紫色の髪をした、同じくドレス姿の女性と話している姿があった。
「あの人達って・・・・」
「・・・・大企業の『バニングス社』のご令嬢『アリサ・バニングス』。『月村重工』のご令嬢『月村すずか』だな。確か、〈時空管理局〉の機動六課のスポンサーをしていて、『神宮寺財閥』の代表をしている神宮寺の兄と、アリサ・バニングスの婚約が進められているって噂を聞いていたが」
と、真斗がそう説明すると、首相達が離れ、何処か辟易しているような魔導師達を見て、アリサ・バニングスと月村すずかはにこやかにレン達と離れると、レンも会釈してアイリを連れて離れた。
その際、アリサ・バニングスと月村すずかが、アイリを訝しげに見ていたが、すぐに魔導師達に近づくと労うように話をしていた。
そして、レンとアイリが音也達に近づく。
「ーーーーやぁ」
「こんばんわ皆様」
それだけ言うと、レンとアイリは他の招待客に挨拶に向かった。
「那月くん。今の子は?」
「神宮寺財閥の御曹司である神宮寺レンくんです。僕達と同じ早乙女学園に通っているんです」
「尤も、課題を何度もサボっていたから、退学の危機なんだけどな」
「そうなんですの」
「セシリアは、初対面から神宮寺には結構辛口な対応ではあったな」
「わたくしはどうも、あの方のような軽薄そうな殿方は好きになれませんの」
元々、真斗に会うまで男性に壁を作っていたセシリアにとって、レンのようなチャラい感じの男は特に警戒していたのだ。まぁ、チェルシーは熱っぽい視線を送っていたが。
と、ソコで、オークションが開始されるのを聞いて、お互いに所定の席へと向かうのであった。
が、途中で那月と翔が、料理を山のように盛り付けた皿を両手に持って、会場から出ようとする。
「あれ。翔、那月。どこ行くの?」
「ルナティーク号でお留守番してるヤミ達に、せめて料理でも持っていってやろうと思ってな」
そう。この〈北都〉のホテル・アグスタに来れたのは、ヤミのルナティーク号に乗せて貰ったからである。しかし、招待状のないヤミ達は入れないので、外で警戒をしているのだ。
「僕と翔ちゃんは、少し失礼しますね」
「分かった。ありがとう二人とも」
音也がそう言うと、翔と那月は会場から出ていった。
ールーシュsideー
そして、神無聖月となったルーシュ・デ・モンも、ホテル・アグスタのオークション会場に来ており、指定席に座りながら目当ての品が来るのを待っていた。
と、ソコで、自分の耳に、影にいるミノタウロスから小さな声が聴こえた。
『ルーシュ様。外の方で何やら妙な事が起こっていますが?』
「(くだらん。そんな事よりも、ゾディアックオーブの回収を最優先にしろ)」
『はっ!』
そう言うと、ミノタウロスは影に沈み、ルーシュの影から離れると、壁を登り影が徐々に大きくなっていく。
そして、大きな宝石を持った女神像が出展された。
『ーーーー『水瓶座のゾディアックオーブ』か』
ミノタウロスが顔だけを出すと、目から黒い稲妻を発射し、来場者達に浴びせていった。
ーヤミsideー
と、ミノタウロスが動き出す数分前。
ホテル・アグスタの上空にて。招待状を持っていなかった為、ルナティーク号で留守番していたナナとモモ、ヤミと美柑が、翔と那月が持ってきたパーティーの料理を食べていると。
「ーーーーん? あれは?」
ヤミが、ルナティーク号のレーダーが、ホテル・アグスタに近づく円柱状のロボットと、音也達と同い年の魔導師(大半が女子)と交戦している姿に目をやった。
「わぁ! ヤミちゃん達と同じ位、ちっちゃくて可愛い子達が戦ってますよ!」
「魔導師には十歳にも満たない子供もいるって聞いたが、あの子達か?」
「マジかよ? 管理局のロードーキジュンホーってどうなってんだ?」
「まぁ、ウィッチーズでもルッキーニちゃんがいるけどね」
那月が子供の魔導師(エリオとキャロ)を見て目を光らせ、翔が子供が戦っている事に眉根を寄せると、ナナとモモがそう話す。
と、ソコで、オレンジ髪のツインテールの女の子の魔導師(ティアナ・ランスター)が、青い髪に短髪の女の子の魔導師(スバル・ナカジマ)ごと円柱状のロボットを撃ち抜こうとして、赤い髪を三つ編みにした小柄でゴスロリの格好をした女の子の魔導師(ヴィータ)に怒られていた。
「ーーーーふむ。どうやら青髪を囮にしたオレンジ髪が攻撃をしましたが、ミスショットをして青髪に当たりそうになったのを赤髪が守った、といった所ですね」
「前にヤミちゃんとの模擬戦で、翔ちゃんと音也くん達も同じ戦法をやりましたね! ヤミちゃんにギリギリ避けられてしましたが」
「だが、ミスショットするって事は、練習不足だったって事だな」
そのまま高みの見物をしていたヤミ達だった。
ーエキドナsideー
そして、機動六課の新人魔導師達がガジェットと交戦していると、ホテル・アグスタの屋上に隠れていたエキドナが、ソコにいた金髪のショートヘアに緑色の衣を纏った魔導師(シャマル)を見ていた。
「あれって、〈時空管理局〉の魔導師って奴らね。ーーーーふん。あんな『お遊び』がデキるからって、世界の守護者気取ってデカい顔しちゃってさぁ! 激ムカァッ! ライディーン達の前に、虐めてやるぅ!」
超魔から言わせれば、管理局の魔法なんて『お遊び』も同然。それでこの世界の守護者を気取る魔導師達に腹を立てたエキドナが取っ手のようなアイテムを取り出しと、屋上の床に赤い穴が開き、その上に管理局ともウィッチのとも異なる魔法陣が展開された。
「時の彼方に封じられし魔よ。エキドナ様が召喚する! 出ておいで『超魔・キマイラ』!!」
すると、魔法陣の中から黒い稲妻が迸り、中から巨大な暗い影が現れる。
「っ!」
屋上にいた魔導師がそれに気づいて振り向くと、ソコには、赤い鬣をした鋭い犬歯が伸びたライオンの頭部に鬼のような角が伸び、肩から腕にも角が伸び、下半身は山羊のようでありし、尻尾は蛇で、腰には蝙蝠の翼が生えた、ホテル・アグスタの半分はある“巨大な超魔”、『超魔キマイラ』であった。
「キャァァァァァッ!!」
『ガァァァァァァァ!!』
女魔導師が悲鳴を上げるが、キマイラも雄叫びを上げた。
ー翔sideー
キマイラが雄叫びを上げると同時に、ルナティーク号にけたたましいアラームが鳴り響いた。
「な、何だぁっ!?」
「っーーーー! 超魔です! しかも大型の!」
モモが周りを索敵すると、ホテル・アグスタのすぐ隣に、大型の超魔が雄叫びを上げている映像が、空中モニタに表示された。
「マジかよ!? あんなデカいのもいるの!?」
「お兄ちゃん! 真斗さん! 外に超魔が出たよ!」
ナナが目を見開し、美柑が音也達に連絡する。
が。
《何だって!? 会場の方も大変なのにっ!》
「音也! 何があったんだ!?」
《急に会場の招待客やスタッフ達が暴れ出したんだ! 俺と一十木、セシリア達はそれを押さえている!》
「なんですって!?」
会場のスタッフや客が暴れ出したと聞いて、翔と那月は驚く。そして、モモは顎に手を当て、外にいる魔導師達に向かう巨大超魔を見据える。
「音也さん。真斗さん。恐らく外に現れたのは陽動です。彼らの目的が『ゾディアックオーブ』ならば、会場にあるオーブを奪取する為に、外に超魔を出したんだと思います!」
《なるほど! だが、コチラも手一杯だ! 外の超魔はどうする!?》
「俺が行く! デカブツなんざ俺のスピードで撹乱してやらァ!」
「僕も、あんなに小さくて可愛い魔導師さん達を放っておけません!」
赤い魔導師とピンクの髪の魔導師(シグナム)と犬耳の男性魔導師(ザフィーラ)が巨大超魔と戦う姿を見た那月がそう言うと、ヤミはサッと那月から眼鏡を外した。
「ーーーーあぁんっ!」
と、ソコで砂月と変わった。
「げぇっ! 砂月! あ、あのなーーーー」
「ーーーー那月が悲しそうにしたのは・・・・あのデカブツか!」
砂月は翔達に構わず、巨大超魔を鋭く見据えると、ルナティーク号の出口に向かって走っていき。
「『超者・降臨』!」
ライディーンシーガルへと変身して外に飛び出した。
「お、おい! たくっ! 『超者・降臨』!!」
翔も追いかけて、ライディーンファルコンとなった。
ーエリオsideー
そしてその頃、エリオ達は眼の前に現れた巨大な怪物。
以前〈東都〉で遭遇した怪物や〈西都〉と〈南都〉で現れた怪物達と同じタイプの怪物だと、エリオは直感した。
「こ、この怪物は、まさかーーーーライディーンの!?」
「「「っ!」」」
エリオの言葉に、シグナムとヴィータとザフィーラが反応するように肩を揺らした。
「ほう、あれが高町とテスタロッサが遭遇した怪物か」
「上等じゃねえか。どんだけの物か!」
「見定めてやる!」
と言って、シグナム達が怪物、キマイラに向かって飛び出した。
「ハァッ!」
「オラァっ!」
「たぁっ!」
シグナムが剣を、ヴィータがハンマーを、ザフィーラが拳をキマイラに叩きつけた。
がーーーー。
『グルルル・・・・』
キマイラは微動だにせず、悠然と佇んでいた。
「「「っ!」」」
まさか無傷である事にシグナム達は驚いたが、すぐに切り替えて空中を飛びながら、キマイラを攻撃する。
しかし、キマイラはまるでダメージを喰らっている様子が無かった。
「くっ! カートリッジロード!」
「こっちもだ!」
シグナムとヴィータが、自分の武器、デバイスから薬莢を何発か射出させると、魔力が上昇し剣が連結刃に、ハンマーが大型になり、ハンマーの後方の噴射口から魔力が噴射する。
「『飛龍一閃』!」
「『ラケーテンハンマー』!」
ーーーードガン! ドガン!
二人の攻撃が炸裂し、爆煙が立ち込めキマイラの姿が消える。
「へっ! 楽勝だぜ!」
ヴィータがニヤリと笑みを浮かべ、シグナムもフッと余裕の笑みを浮かべる。
がしかし、爆煙が晴れるとソコにはーーーー。
『・・・・・・・・・・・・』
「「なっ!?」」
全くの無傷に佇むキマイラが立っており、シグナムとヴィータが目を見開いた。
『グルルル・・・・!』
そしてキマイラは、尻尾の蛇がしなって動かすと、シグナムとヴィータを尻尾で左右に叩き飛ばした。
「あああああっ!!」
「うぁあああっ!!」
ーーーードガァアアアアアアアアアアアアア!!
飛ばされた二人は地上に激突し、土煙を上げて森の木々を薙ぎ払いながら転がっていった。
「シグナム! ヴィータ! おのれぇ!!」
ザフィーラが憤怒に駆られ飛び出すが。
『フン!』
「ぬあああああっ!!」
キマイラに、ハエでもはたき落とすかのように飛ばされ、真下に落下し、巨大なクレーターを作って、ソコの中心で身体が土に埋もれて倒れ、気絶してしまっていた。
「あ、ああ・・・・!」
「「「・・・・・!!」」」
高ランク魔導師三人が、まるで虫けらのように叩きのめされてしまい、エリオは勿論、フォワード陣の仲間も、足どころか身体が震え、スバルとキャロに至っては腰が抜けてしまったかのように尻餅をついて動けなくなってしまっていた。
『グルルル・・・・!』
キマイラはギロリと自分達を見下ろすと、片足を上げて踏み潰そうと足を下ろす。
『・・・・・・・・』
「くっ!」
他の三人が、迫り来る死の恐怖に思考停止したように動かなくなる中、エリオは咄嗟に前に出て、全員を守るように障壁を張る。
あの巨体に、自分の障壁ごときなんて何の意味も為さないだろうが、ソレでもエリオは動いた。迫る衝撃に目を瞑るエリオ。
しかしーーーー。
ーーーーガキンっ!!
衝撃は来ず、その代わり自分の前に大きな影と衝撃音が響き目を開くと。
「ーーーー良い度胸だな。ガキ」
なんとーーーーライディーンが現れた。以前遭遇した赤いライディーンとは異なる黄色のライディーン。彼がキマイラの足を両手で以て空中で受け止めていた。
「ぁ・・・・」
エリオは小さく呟くと同時に。
「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
『グガァアアアアアアアアアアアアア!!』
更に現れたピンク色のライディーンが、キマイラを殴り飛ばした。シグナム達の攻撃を食らっても微動だにしなかったキマイラが顔どころか、上半身を大きくのけ反らせる。
「うぉらぁあああああああああ!!」
と、ソコで黄色のライディーンが受け止めていた足を持ち上げ、バランスを崩したキマイラが盛大に倒れる。
ピンクのライディーンと黄色のライディーンが、エリオ達の前に降り立つ。
「ここは俺達に任せて、お前達は下がっていろ」
「で、でも・・・・!」
「脅えている腰抜けは邪魔なんだよ」
『っ!』
ピンク色のライディーンの言葉にエリオが応えるが、黄色のライディーンの言葉に、ティアナ達が正気に戻り息を呑む。
「行くぜシーガル!」
「ふん」
『ガァアアアアアアアアアアアアア!!』
そう言って、二人のライディーンは、キマイラへと向かっていった。
ー音也sideー
一方、ホテル・アグスタのオークション会場では、招待客の大半な暴徒と化してしまい、スタッフと共に、音也と真斗、美緒とミーナが取り押さえようとしていた。ちなみに、〈北都〉。〈西都〉。〈南都〉の首相達は騒動が起こると、いの一番に避難していた。
「この! 落ち着いて!」
「はぁっ!」
「ふっ」
「たぁ!」
音也が押さえ、真斗達が当て身で気絶させる中、ララ達とセシリアは暴徒化していない招待客を避難させていた。
「ーーーーっ! 一十木! あそこだ!」
そんな中、真斗が指差す所を見ると、『超魔ミノタウロス』がいた。
『ーーーー見つけた。『ゾディアックオーブ』』
「なにっ!?」
ミノタウロスが女神像に向かって歩き出す。音也と真斗は変身したかったが、まだ暴徒となっている人達を避難させなければならないので、動けなくなった。
と、ソコで、魔導師の三人がパーティードレスから戦闘服に変わり、各々の杖をミノタウロスに突きつけた。
「彼女達は、管理局の!」
「ここは彼女達に任せて、私達は避難を優先しましょう!」
美緒とミーナの言葉に従い、音也達は暴徒を気絶させ、避難させていった。
ーなのはsideー
「止まりなさい!」
なのはとフェイトとはやては、暴徒化しないで済み、親友のアリサとすずかを避難させると、以前〈東都〉で遭遇した怪物と同タイプを見つけ、すぐにセットアップをして、各々のデバイスを突き立てた。
「〈時空管理局〉の魔導師です! 大人しくしなさい!」
部隊長であるはやてがミノタウロスに静止するように呼びかけた。
しかし。
『・・・・・・・・』
ミノタウロスは、まるで意に返さず、進む足を止めなかった。
「ま、待ちなさい!」
「止まれ!」
なのはとフェイトがデバイスをミノタウロスの眼前に突き立てるが、ミノタウロスは鬱陶しそうに溜め息を吐いてから声を発する。
『ーーーー貴様らに用はない。目障りだから失せろ』
「なっ!」
「私達は、あなたの事を教えて欲しいんです!」
『何故我の事を貴様らに教えなければならないのだ?』
「わ、私達は会話ができるんですよ!? 話し合う事だって」
『くだらん』
「えっ?」
『話し合いと言うのは、“対等の立場の者同士で行われる”ものだ。ーーーー貴様ら『ゴミ』と我らが対等だと思っているのか? 思い上がるのも大概にするのだな』
その目に宿る冷徹な光が、自分達と分かり合おうとする気持ちが皆無だと理解してしまった。
『ーーーー鬱陶しい』
「「「あぁっ!!」」」
ミノタウロスが翼を羽ばたく風圧で吹き飛ばされた。
が、すぐに体勢を立て直し、なのはとフェイトは魔力弾を展開して、ミノタウロスに向けて発射した。
「『アクセルシューター』!」
「『フォトンランサー』!」
大量の魔力弾をミノタウロスに放つ。
だが。
『ふん』
「「えっ!?」」
魔力弾は全て当たった筈なのに、ミノタウロスはかすり傷一つ負っていなかった。二人が魔力弾を放つと同時に、はやては魔法陣を展開し、詠唱を始めていた。
「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち貫け。石化の槍、『ミストルティン』!」
魔法陣を中心に六本と、その中心から一本の最大七本の光の槍をミノタウロスに向けて放つ。
光の槍が全て当たると、当たった箇所が石化した。が、石化した箇所が剥がれ落ちた。
「っ!」
はやてが驚愕に目を見開くと、悠然と歩き出すミノタウロスに、はやてが立ち塞がろうとする。
『ーーーー邪魔だ』
「ーーーーくぁ!」
ミノタウロスが振り払うようにその剛腕を振るう。はやては障壁で防御しようとするが、まるで紙のようにあっさり砕かれ、剛腕をうけた右腕と脇腹右から骨の砕けるような音が響き、はやては壁に激突して気を失う。
「はやて! よくも! 『ソニックムーブ』!」
激昂したフェイトが加速して、ミノタウロスの周りを縦横無尽に飛び回るが。
『遅い』
「ーーーーかっは!」
ミノタウロスが剛腕は明後日の方向に振るうと、フェイトはその剛腕にぶつかり、血を吐き出すと、そのまま天井に叩きつけられ、気を失うと重力に従って落ちる。
「フェイトちゃん!」
なのはが抱きとめるが、フェイトは口の端から血を垂らし、気を失っていた。
『・・・・・・・・』
ミノタウロスはそんなフェイトの一瞥すらやらず、女神像へと向かう。
「・・・・許さない・・・・!」
なのははデバイスを変形させると、その矛先をミノタウロスへと向ける。
「頭、冷やそうか。ーーーー全力全開、『スターライトブレイカー』ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
膨大な魔力の奔流が、ミノタウロスの身体を呑み込み、オークション会場の一部を破壊した。
なのは自身、これで勝ったと確信した。
が、次の瞬間。
『ーーーーぬるいシャワーだな』
「ーーーーえ?」
魔力砲の中から、またも無傷のミノタウロスが現れ、そのまま剛腕を振り上げ、呆然となるなのはに振り下ろした。
建物全体が揺れる程の轟音と共に、なのはは会場の床に小さなクレーターを作って、気を失っていた。
「なのは! フェイト!」
「はやてちゃん!」
会場に戻ってきたアリサとすずかが、親友三人を見て悲鳴を上げる。
そして、ミノタウロスは倒れたなのはを動かないと確認すると、またもや女神像へと向かい。女神像が持っていた宝石『水瓶座のゾディアックオーブ』を回収した。
『ーーーーオーブよ! 憎しみの心を、恐怖の心を今こそ受け止めよ!』
ミノタウロスがゾディアックオーブを掲げると、オーブから目映い光のが放たれた。
ー音也sideー
「な、なんだぁっ!?」
ソコで、漸く暴徒化した客の避難を終えた音也達も、その光を目にすると、突然建物全体が揺れ始め、天井の一部や壁の一部が崩れる。
『ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!』
そして目の前でゾディアックオーブを掲げて高笑いを上げるミノタウロスをキッと見つめる。
と、その時、管理局の魔導師達に近づこうとするアリサ・バニングスと月村すずかが視界に入り、さらに崩れた天井の一部が、彼女達と魔導師達に襲い来る。
「行こう! 真斗!」
「ああ!」
「「『超者・降臨』!!」」
ライディーンイーグルとライディーンホークとなった二人が瓦礫から、彼女達を守る。
「「っ!」」
アリサ・バニングスと月村すずかが突然の事に驚くが、イーグルとホークは魔導師三人とアリサとすずかをララ達の近くに運び、改めてミノタウロスに立ち向かう。
『ぬぅ! 貴様らは、ライディーン!』
「超魔! これ以上はさせない!」
「そのオーブは我らが回収する!」
イーグルソードとホークフレイルを構える。
『良いだろう。コチラも雑魚が相手では物足りなかった所だ。貴様らの首を貰う! スケルトン兵!』
ミノタウロスがスケルトン兵を召喚し、ライディーンとの戦闘を開始した。
ーレンsideー
「ーーーーレン様」
「行けって言うのかい? アイリ?」
オークション会場に戻ったアリサとすずかを連れ戻しに来たレンとアイリが、二人から少し離れた位置で戦いを見ていた。
そしてアイリが超魔と戦うライディーンを見て、レンが話しかけた。
「・・・・・・・・」
「俺は、神宮寺の広告塔として、早乙女学園に入学させられた。そして使命だとか運命とかで、ライディーン戦士となれと言われた。なぁアイリ。『俺の意思』って何処にあるんだい?」
真斗と同じく、ずっと決められた道を歩まされてきたレン。しかし真斗は自分の意思でライディーンとして戦う道を選んだ。
だがライディーンも、『運命』という何者かに定められた道でありレンの意思ではない。ソレがレンにライディーン戦士になる事を拒ませていた。
「・・・・・・・・私は」
しかし、アイリは静かに、優しくレンに話す。
「私は、例え何が起こっても、レン様のお側におります。これは拾われた身だからでもなく、拾われた恩義だからでもありません。『私の意思』で決めた事なのです。ですからーーーーレン様はレン様ご自身の意思に従って下さいませ」
「アイリ・・・・」
「先程も言いましたが、私は何があっても、レン様に付いて参ります」
「・・・・ーーーーふっ、参ったなぁ。愛しい子羊ちゃんよアイリにそこまで言われたら流石に、もう知らんぷりはできないね」
小さく会釈するアイリ。レンは再び、イーグルとホークを目をやり小さく笑みを浮かべ、『ゴッドフェザー』が宿る自分の腕を握り締めた。
次の回で、オリジナルライディーンになる回です!
この世界では、時空管理局は地球にあるので、アリサとすずかはなのは達六課のスポンサーとして、彼女達の力になっている設定です。