黒の剣士と白い悪魔 リメイク   作:雪染遊真

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中ボス戦とLA

 

 

 

 翌日12月24日土曜日、午後3時。

 キリトが操縦するゴンドラに乗っていると

 キリトが感嘆を込めた声で言った

 

「いやあ……よくもまぁ、あんなに

 造ったもんだなぁ……」

 

「ハッハッ、おかげで昨日の<熊森>は大騒ぎだったぞ

 オレたちは、斧持ちが2人いるから素材集めも

 あっという間だったがな。と言っても

 ノーマル素材オンリーじゃ自慢にもならないが」

 

 声の主は頭をつるつるにそり上げ、短いあごひげを

 蓄えた巨漢だ。昨日は夜中まで操船の練習を

 していたらしく、櫂さばきはなかなか堂に

 入っている

 

「じゃあ、爺さんのとこには

 並ばないで済んだのか?」

 

「おう、攻略本が配布されてからは1番乗りだったぜ

 ほんの5分差で2番手になったDKBの連中には

 嫌な顔されたけどな。あのデータを

 集めてくれたのはお前たちなんだろう?

 礼を言わないとな、おつかれさん」

 

「い、いや、まあ」

 

 おそらくクエストの続きを黙ってることに気後れを

 感じてるのかモゴモゴ答えるキリトにあたかも全て

 お見通しのような顔でニヤリと笑う

 

 彼の名前はエギル。大多数のプレイヤーが

 <DKB>ドラゴンナイツ・ブリケードか

 <ALS>アインクラッド解放隊に所属している

 最前線組にあって、中立的ポジションを

 貫いている5人パーティのリーダーだ。

 

「ピークォッド号って、あんまり縁起のいい

 名前とは思えないけど」

 

 ミトが船首に記されている船名を確認して言うと

 エギルが大笑いし、パーティの一員である

 両手ハンマー使いが「だから言ったんだよ」

 とボヤく。

 

 キリトがわかっていなさそうな顔をしたのに

 気付いたアスナが解説を始める

 

「ピークォッド号っていうのは「白鯨」で

 エアハブ船長が乗っていた船の名前だよ。

 最後には、モビー・ディックに

 沈没させられちゃうの」

 

「な、なるほど……なんでまた、そんな名前を?」

 

 キリトがエギルを見てそう尋ねると

 巨漢はニヤリと笑った

 

「逆に考えれば、デカい白クジラと戦うまでは

 沈まねぇってこったろ?少なくとも、あそこで

 戦うのはクジラじゃなくてカメらしいな」

 

 そう言ってエギルは左手で前方を指し示す

 

「カメねぇ……守備力はありそうだけど動きが

 のろそうだな………まぁ勝てるでしょ」

 

 俺は呑気にそんな事を呟くとミトが頭上で答える

 

「そうね……油断は禁物だけど適正レベルより上だし

 ……まぁ水中に落ちなければ行けるわよ」

 

「いや、フラグ……」

 

「……なぁ」

 

「ん?何だ?アラタ?」

 

 俺とミトの会話にそれまでピークォッド号の逆側に

 佇んでいた船ジェノック号からそれまで黙っていた

 アラタが会話に入って来た。なんだろうか?

 

「いや、周りが平然とし過ぎて何か黙ってたんだけど

 ……何で膝枕してんだよ!お前らは!」

 

「……それはそうね」

 

 アラタのツッコミに今回臨時でピークォッド号に

 乗っていたレイディが賛成の意を示し

 ほかのメンバーも頷く

 

「え?別に良くない?待ち時間だし」

 

「そうね、普通じゃないかしら?……

 ユーマ、これいる?」

 

「何それ?」

 

「街で売ってたサンドウィッチみたいなものよ

 貴方が好きそうだなって思って………いる?」

 

「いる……あんむ」

 

 ミトがサンドウィッチを口元に

 持って来てくれたのでかぶり付く

 ……中々行けるな

 

「いや、緊張感!!」

 

「アラタ君、これ平常運転だから

 毎回突っ込んでたら疲れちゃうよ?」

 

「これ、平常、運転なのか……?」

 

「……前に比べてユーマがミトに甘えんのに

 人目気にしなくなってるが……まぁ誤差だろ」

 

 ヴァインの絶句の表情に後ろにいたカゲ先輩が

 頭をかきながらそう呟く……そうかな?

 

「って言うかミトも恥ずかしがらないんだ……」

 

「慣れましたし、それに………やりたくて

 やっているので」

 

「へぇ………それは良かった」

 

 カゲ先輩の後にフィリアがミトに聞くとミトが

 幸せそうな表情でそう呟くとフィリアがニヤニヤと

 良かった、という表情が半々くらいの表情になった

 

「……まぁとりあえずはいいだろ

 リラックスすんのは悪くはないしな

 ……リラックスし過ぎな気もするが」

 

 ハチがそんな一言置きを残したタイミングで

 前方からじゃーんじゃーんと打ち鳴らされた

 銅鑼の音が鳴った

 

「時間だ!それではこれより、第4層フィールドボス

 <バイセプス・アーケロン>の攻略を開始する!

 船を使っての大規模水上戦闘は全員が

 未経験だろうが恐れる必要はないぞ!雑魚戦で

 経験したとおりモンスターの攻撃によるダメージは

 そのほとんどを船が吸収してくれるんだからな!」

 

 そりゃお前らの船はいかにも耐久値

 高そうだけど……

 

「事前の会議で説明したとおり、<アーケロン>の

 攻撃パターンは単純だ!二つの頭の向きにさえ

 注意していれば、突進攻撃を喰らうことはない!

 回避のタイミングはこの船の銅鑼で指示するから

 聞き逃さないでくれよ!」

 

 まぁその情報調べてきたのうちの

 ノーチラスたちなんだけどな……今回俺たち

 モノクロ・プログレッサーとエギルたちアニキ軍団

 に与えられた役割は全くダメージの通らない

 側面からの攻撃役だった

 

 俺たちに活躍させるのが嫌なんだろうなぁ……

 ラストアタックはうちのギルドがよく

 かっさらってってるし

 

「それでは、移動を開始する!ボスが出たら

 打ち合わせどおりのフォーメーションで包囲!

 ………ドラゴンナイツ艦隊、前進!!」

 

 リンドがそう叫ぶと負けじと左の船隊を率いる

 キバオウも雄叫びを上げる

 

「よっしゃあ、ワシらもいくでぇ!解放隊

 全艦発進〜〜ん!!」

 

 アイアイサー、とALSのメンバーが答えそれに続く

 

「んじゃ、キリト掛け声よろしく」

 

「………えと、じゃあ……行くぞ!

 プログレッサー!」

 

 キリトが慣れていない感じで鼓舞するように叫ぶと

 今回はMKP組に入っているエギルが答える

 

「おう!オレたちも、連中に負けてねぇとこ

 見せつけてやろうぜ!」

 

 エギルの言葉に他の4人も「おう!」と叫ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 4層フィールドボス、<バイセプス・アーケロン>は

 その名の通りの姿の大型水棲モンスターで

 攻撃パターンは二つの頭での噛みつきと

 左右のヒレでの水面叩きと突進攻撃だ

 

 1番めんどくさいのが突進攻撃が直撃したら

 おそらく船は一発で転覆するだろう。

 ちなみにリンドたちの報告で転覆した船は30秒で

 自動的に復元するらしい。

 

 ジャーンジャーンとリヴァイアサン号の銅鑼が

 打ち鳴らされ、同時にリンドの叫び声がした

 

「回避ーーーッ!」

 

 リンドの声を聞きアーケロンの正面に

 陣取っていた4隻のゴンドラが、急いで左右に

 分かれる。直後、アーケロンが20メートルの

 巨体を使い突進をする

 

 HPを見ると半分近くまでは減少していた。

 このまま進めばあと20分弱ぐらいで倒せるだろう

 

「ねぇ、βの時は、ここにはどんなボスがいたの?」

 

「ああ……亀は亀だけど、ゾウガメみたいな

 やつだったよ。やたら硬いけど動きがのろくて

 あんまり苦労した記憶はないな……」

 

「ふむ……なら、正式サービスで4層が浸水したのは

 予定通りのアプデなのかもな」

 

「それはそうね、主街区の建物も、最初から玄関が

 2階の高さにあったし……って、危ないわね……」

 

 真横をALSの6人乗りゴンドラが猛スピードで

 通過しこの場で最小クラスのティルネル号が

 大きく揺れる……追い越しざまに

 余分な一言を加える

 

「さすがのビーターさんも今日はLA取れねーな!」

 

 船が遠ざかる間に船首に立っていたアスナが憤慨

 している顔をしていたのが見えた

 ……ので俺も一言加える

 

「……頭の成長止まってる奴いるな何でか

 理由説明してあげた方が良いか?」

 

 俺の言葉にアスナは少し吹き出し

 ミトは少し呆れた感じの苦笑いで俺の問いに答える

 

「確かに、フォーメーション決めたのあっちだしね」

 

「まぁまぁ、ずっとサイドにいれば船は

 ノーダメージで済むんだからさ」

 

 キリトがなだめるようにそう言いつつ船を

 再びアーケロンの左側面に滑り込ませる

 ……ま、まだ続きそうだし気楽に行きますか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく戦闘を続けもう少しでゲージが

 赤くなるところまで行くと若干

 上の空だったキリトを我に返させるように

 アスナが声を上げる

 

「キリト君!ゲージ、もうすぐ赤くなるよ!」

 

 だいたいレッドゾーン突入と同時に攻撃パターンが

 変わる事が多いのでそれを危惧してかキリトが船を

 念の為に船を下がらせる。

 

 が、2大ギルドのゴンドラの4隻は亀の全面に

 貼り付いたまま、更に勢い増しの攻撃を続ける

 ……そんなLA欲しいのかよ……という感想を

 抱いていると

 

「……おいっ、全員離れろ!」

 

 というエギルの叫び声が、亀の甲羅越しに聞こえた

 俺たちの側面組は十分距離を取っていたので

 ギリギリ亀の全体が見えた。2本の首と前ビレ

 後ろビレ、そして尻尾を、甲羅の周囲にぴったり

 巻き付けるようにしていた

 

「やばい、回転するぞ!!」

 

 というキリトの叫び声が響くが両ギルドとも

 退避せずにそのまま押し切るつもりらしいが

 このモーションの間は防御力が上がるのか

 HPゲージが消えそうで消えない

 

「キリト君、このままじゃリンドさんたちが!」

 

 アスナの鋭い声にキリトは頷き、俺たちに

「屈め!!」と言い櫂をおもいっきり漕ぎ

 ティルネル号がデカ亀に突進するタイミングで

 

「……知ったことか!俺だって、このポジションを

 譲る気はないからな!」

 

 というキリトの叫ぶ……ポジション?と頭に

 クエスチョンマーク浮かべたタイミングで

 回転し始める寸前のアーケロンの横っ腹に

 ティルネル号の衝角が突き刺さり、一瞬静寂し

 全体が青い光に包まれ爆散した

 

 俺たち3人の奇妙な目つきに気付いたのかキリトが

 誤魔化すような声を上げる

 

「……わ、悪い。いきなり突進しちゃったけど

 亀がヤバい攻撃しそうだつたから……」

 

「それはいいんだけど……このポジション、って

 何のこと?」

 

 キリトが若干苦しい誤魔化しながら、仏頂面

 だったり膨れっ面だったりしかめっ面だったりする

 ドラゴンナイツと解放隊の間を突っ切っていく

 

 その後サムズアップしてくるエギルたちに手を振り

 カゲ先輩達と一緒に湖を脱出し次の村である

 ウスコという村へと進む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 道中アルゴが水面を歩いていたりしていた

 イベントがあったがそれ以外は何も無く次の村へと

 進み村の橋にある船着場にゴンドラを止め村の

 真ん中ぐらいにある唯一のレストランへと向かい

 飲み物と軽食を頼むと、一緒の席に座ったアラタが

 なかなかに露出度が高い格好をした

 NPCウェイトレスに目を奪われていた

 

「………アラタ」

 

 珍しいアルゴのジト目がアラタに刺さる

 

「い、いや男ならしょうがないだろ!

 な?ユーマ!」

 

「……ん?………どうだろ?ミトがあの格好したら

 見惚れるとは思うけど」

 

「………ユーマは私にああいう格好をして欲しいの?」

 

 ミトが頬を赤らめながら俺に言う

 

「そういうわけじゃ無いけど………」

 

 俺とミトが微妙な空気が流れそれを見た

 2人がため息を吐く

 

「……オレッちたちへの当てつけか?

 ミーちゃん、ユー坊?」

 

「そ、そういうわけじゃあ……」

 

 ミトの解答にアラタが呆れた様子で口を開く

 

「良いよな、今日はクリスマスだし、今日はこの後

 ずっとイチャイチャすんだろ?

 お前たちは、良いよな……俺も彼女欲しいぜ……」

 

「…………ならオレッちと過ごすか?」

 

「え?良いのか?アルゴも予定あるんじゃあ……」

 

「1人寂しくクリスマス過ごすぐらいなら

 オレッちがいてやるよ」

 

「まじで!?サンキュー、アルゴ!」

 

 アラタが嬉しそうにアルゴの手を握るとアルゴは

 若干頬を赤らめ、満更でもなさそうな表情になる

 

「………なぁミト、多分アルゴって……」

 

「ええ、下層で情報集めしてる時にアラタに

 助けてもらったみたいよ?それで……だと思うわ

 ユナとシリカから聞いた」

 

「へぇ……………つーかアラタも気付けよ」

 

 2人のやり取りを眺めながら頼んだ軽食を待つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   To be continued……

 

 

 

 





 何とか大晦日に投稿出来た雪染遊真です
 3巻も半分を切ったので来年も頑張ります!
 良いお年を!
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