久しぶりの投稿です
時間がかかった分
今回はいつもの2.5倍ぐらい
分量があります
よろしくお願いします
明くる12月25日、および26日は城主
ヨフィリス子爵に依頼された<瑠璃の秘鍵>
クエストに奔走しているうちに、あっというまに
過ぎ去ってしまった
それはそうと、その2日間であくびを連発していて
眠そうな俺とミトを見てキズメルは仕方ないな
という表情になっていた………これってもしかして
何があったかバレてる?……流石にバレて無いよな
そんなこんなで城主にクエスト達成を報告し
山程報酬を貰い部屋を出ると、廊下の窓から
見える空は見事な夕焼け色に染まっていた
夕暮れの光を浴びながら、キリトが伸びをする
「………うぅ〜ん……どうにかこうにか、予定どおり
第2の秘鍵は回収できたな。城主様が椅子の後ろの
小部屋にしまってたけど、第1の秘鍵も
あそこにあるのかな……」
「多分そうなんじゃない?……なぁキズメル?」
キリトの独り言のような疑問に俺が答え
久々にドレスから騎士の鎧へと
着替えたキズメルに聞く
「そのとおりだ。つまり、森エルフたちに
城の5階まで攻め上がれたら、秘鍵を
奪われたしまう可能性が高いということだな。
ヨフィリス閣下はレイピアの名手なれど
ご病身の閣下に御自ら戦って頂くわけには
いかないからな……」
「大丈夫よキズメル、5階どころか
桟橋にも上げないから」
自信満々にアスナが宣言する。3層以来の
キズメルとの共闘が、楽しかったのかな?
テンションがやたら高い
「敵の船が10隻来ようと20隻来ようと
片っ端から撃沈して沈没させるわ」
アスナと同じようにミトも
自信満々と言った様子で腕を組んでいる
「はは、頼もしいな」
笑いながらアスナとミトの背中をぽんと叩くと
キズメルは再びキリトに眼を向けた
「キリト、アスナ、ユーマ、ミト。だった2日で
封印の迷宮から瑠璃の秘鍵を改修できたのは
お前たち自身の力はもちろん、お前たちの船の
性能に依るところも大きい。
そして、私が何より嬉しいのはあの美しい船に
妹の名前を付けてくれたことだ……」
キズメルはいったんそこで言葉を切り
近くの窓へと歩み寄り窓の外に見える
ティルネル号を眺める
「………妹は、幼い頃から水遊びが好きだった
9層にある都では、よく私と一緒に遊覧用の
小舟に乗ったものさ。ティルネル号を観ていると
忘れていた思い出が蘇ってくるよ………」
昔を懐かしむようなキズメルにアスナが寄り添う
キズメルの妹……ティルネルの事をポツリと呟いた
それを聞いたキリトが少し考え込みそう口を開く
「あのさ、キズメル……ひとつ、お願いがあるんだ」
「私にできることならば」
「ええと……俺たちの<幻書の書>は、船みたいに
大きなものは収納できないから次の5層に
行く時にこの4層のどこかに
置いていかなきゃならないんだ」
秘鍵クエストの間に4人で話し合ったことを
キリトがきりだしてくれたので俺が続ける
「だからさ、キズメル、俺たちが5層に上がる前に
ティルネル号を、キズメルに預けていきたいんだ
このヨフェル城の桟橋に泊めておいてくれる
だけでいいからさ………」
実際にそんな事ができるのかどうかを昨日、4人で
話し合い決めた。あくまでキズメルが、気持ちの
うえでティルネル号を預かって、時々船を眺めて
亡き妹のことを思い出してくれればそれで良いのだ
固唾を呑んでキズメルの答えを待っていると
もう一度窓へと向き直り、しばらくしてから
しばらく間が空いてから、NPCとはとても思えない
情感を含んだ声が響いた
「…………もちろん……もちろんだとも。お前たちの
大切な船は、私が責任を持って預かろう
だが、一つ約束してくれ」
「なんだ?」
「またいつかこの城に来て、ティルネル号に
私を乗せてほしい」
こんどは、俺たち4人が声を揃えて「もちろん!」
と叫ぶ番だった
「キリト君!左から来るよ!」
アスナの鋭い声に、キリトは櫂を思い切り左に倒す
「ぬおおおっ……!」
キリトが唸り声をあげながら限界まで
倒した櫂を力一杯漕ぐとティルネル号は
危ういところで敵船の突撃をかわし
敵船の左側へと抜け出した
ティルネル号は小型なため、小回りが利くので
後ろの取り合いに持ち込めばこちらが有利だ
「みんな、突っ込むぞ!」
「了解!」
勢いそのままに森エルフ船の船尾にティルネル号の
船首に取り付けられている<炎獣の衝角>が当たり
周りの水を蒸発させ小さな爆発を起こし敵船の
後ろ半分が壊れ半壊する
「よし、2隻目!」
「左後方に敵船、後ろ向きだからチャンスだぞ」
キリトの快哉に被せるように
索敵していた俺が声をあげる
「ら、ラジャー!」
12月27日、火曜日にフォールンの将軍ノルツァー
が口にした<5日後>という刻限を違えることなく
フォレストエルフの兵士を乗せた船団が
ヨフェル城に正午丁度に出現した
その3時間前にはダークエルフの斥候兵から情報が
届いていたので、こちらも余裕を持って迎撃の準備
をできたのだが、予想していた大体10隻という数を
軽く超え16隻に達していたのでひやりとした
ヨフェル城に配備されている、ダークエルフ船の
実に2倍、つまり、仮に両陣営の船が同じ
戦闘能力を持つとしても、ティルネル号だけで
8隻も沈める必要がある。
<アルギロの薄布>を利用した奇襲をし、1隻
その後2隻目を沈めた、その間に黒エルフ側が
1隻沈没してしまったが森エルフ側の船を
2隻沈めてくれたので残り12隻………のはずだ
「キズメル、生き残っている船を数えてくれ!」
キリトが櫂を漕ぎながら叫ぶとキズメルは
2秒で答えが返ってきた
「味方が6隻、敵は12隻だ!」
「………追加でまたやられたのか……」
敵の数は計算通りだったが、味方が
もう一隻沈没したらしい。戦いの前にキズメルが
恐れていたとおり黒エルフ兵士の練度や士気も
敵の軍に劣っている
「カレス・オーの勇敢なる兵士たちよ!」
緑の地に金色の盾と旗を掲げる旗艦の真ん中に
立っている敵軍の司令官らしき大柄な騎士が
大声で叫んだ
「卑劣なダークエルフどもを、湖の藻屑と
変えてやれ!奴らは、人族と手を組んで
我らの城を攻め落とすための船を
造っていたのだ!幸いその企みは破れ
船は我らのものとなった!
この機を逃してはならぬ!!」
………ん?今あいつダークエルフが人族と手を
組んだって言ったか?それだと俺たち人族が
作った船をフォレストエルフが奪ったって事に
なるけど……そんな事実無いしな、船作ったの
フォールンだろうしそれが依頼されたの
フォレストエルフから
……って予想してたんだけどな
「キリト君、気付かれたよ!」
アスナの声で意識を戻して目の前の戦場を
見るとキリトが森エルフの動きを先読みして
敵船の右後部に衝角が当たり水蒸気爆発を起こし
敵船を破壊する
「3隻目………!」
壊れた船には目もくれず、次の敵戦を探す
明らかに劣勢だな………ダークエルフ側がかなり
押されてるのが見える
「まずいな……」
キズメルも俺と同じ感想を抱いたのかそう呟くと
中央に陣取っていたら指揮官が
こちらに向けて怒鳴る
「そこの小舟!ぐずぐずして無いで
敵の別働隊を止めろ!」
「了解了解……ちょっとは落ち着いてよ司令官さん?
司令官が慌てたらダメでしょ」
アスナがイラっとしたのか何か言いそうだったのを
先回りし俺が先に答える……まぁ気持ちは
わかるけど……戦いの準備中に「お前たちなど
あてにしていない」とか言ってたのに
この有様だもんなぁまぁこの場は従うしか無いけど
「くそっ、やるしかないか……!」
キリトは櫂を猛然と動かして敵の別働隊3隻を狙う
一瞬迷ったような動きをした瞬間に
キズメルがこちらを振り向く
「構わんキリト、真ん中の船に突っ込め!」
「り、了解!」
キリトが答え、敵船中央へと突進し、衝角が
船尾を突き破る。その瞬間左右にいた2隻が
ティルネル号を挟み込んだ
キズメルのHPバーの下に表示された
ティルネル号の耐久値ゲージが5%ほど削れ
その後じりじりと減少を続ける
「ミト」
「ええ」
ティルネル号のHPゲージが削れるのを見据えた
瞬間にミトとほぼ同時に右側の敵船に飛び乗る
「薄汚い……」
「邪魔」
森エルフが何か言いかけたが顔にドロップキックを
当てたので途中で遮ってしまった……ま、良いか
そのまま湖に蹴り落とし、次の標的へと切り替える
もう1人を船外に落としたミトとの
アイコンタクトの後、着地し、近くにいた
剣兵の膝裏にローキックを当て、膝をつかせた瞬間
逆側からミトが回し蹴りを当て船外へと蹴り飛ばす
「……あと7人」
「朝飯前ね」
その後<フォレストエルブン・ロウワー>も湖に
落とし、櫂も壊してからティルネル号へ戻ると
逆側は3人で片付けたようでほぼ同タイミングで
あちらも戻って来た
「こっちも全員湖に叩き落として、櫂も壊したよ」
周囲の水面を見回すと落水した兵士が北へと泳ぎ
去っていく。これでダークエルフ側が6隻
フォレストエルフ側が8隻かなり数が均衡してきた
「よし………また衝角戦が始まる前に
敵の旗艦を沈めるぞ!」
キリトが抑えた声で叫びティルネル号を右に
回頭させた。
「みんな、またアレで行こう」
キリトがそう言ったので、俺は船尾に
収納してあった<アルギロの薄布>を取り出し広げた
布を5人でティルネル号に被せて、奇襲を狙う
「……ゆっくり近づくぞ……」
キリトが囁きながらそっと櫂を動かし
敵船へと近づく。布を剥がして突進するポイント
まであと少しとなったタイミングで
フォレストエルフの指揮官が剣を抜いた
「やばっ……!」
「気付かれちゃった……!?」
キリトとアスナの声に俺は短剣の柄へ手をかける
しかし指揮官の剣が向けられたのは
こちらでは無かった
「いまだ!1号船、2号船、突撃開始!
5号船、6号船、道を開けろ!!」
直後、白兵戦をしていた森エルフ船6隻の
真ん中の2隻が左右に分かれる。向こうには
無防備なダークエルフ側の船が2隻
「まずいわね……!」
ミトが叫びながらアルギロの薄布を引き剥がし
船尾へと詰め込む
「待ちなさーい!」
というアスナの怒り声が横から聞こえ
キリトは猛然と櫂を漕ぐティルネル号のスピードが
上がり突進するが、先手を取られた森エルフ船とは
20メートル以上の距離がある
「これは間に合わないな……」
キズメルの冷静なコメントの後、黒エルフ旗艦の
中央を森エルフ旗艦の無骨な衝角が貫いた
2隻の船はたちまち浸水し、沈没していく
「おっ、おのれぇぇぇ……ッ!」
黒エルフの司令官が叫び声をあげながら湖水に
呑まれる。作戦通り黒エルフ側の船を2隻破壊した
森エルフの指揮官は再び剣を掲げる
「1号船、2号船、前進!両船の兵士は上陸容易!」
「あー………これはまずいな……」
俺がそう呟いているとキリトは櫂を漕ぎ続ける
「くそっ、こっちもあの穴に突っ込むぞ!」
キリトの声に呼応するように旗艦を通す為に
一時退避していた森エルフ船が穴を埋めるべく
移動を開始する
「ぬおおおっ!」
キリトが雄叫びをあげながら櫂を漕ぎ続け
わずかに残っていた隙間にティルネル号の舳先を
割り込ませる
ティルネル号がガリッと嫌な音が響いたが
俺たちが集めた高級素材とロモロ老人が組んだ
ティルネル号は大きい10人乗り船2隻を左右に
押し戻し道を切り開く
「抜けたわ!」
「頑張りなさい、キリト!」
「頑張れ、キリト!」
女性陣3人の声に答えたのか再加速した
ティルネル号……だが数十秒後あと少しまで
追いすがったところで2隻の敵船が
桟橋へと接舷した
うおおお…っ、と声を上げ指揮官を含む20人の
兵士が桟橋に飛び移る。対して城門を守る
黒エルフ兵は6人これでは少しとたたずに破られる
「キズメル、神官たちは助けてくれないのか!?
まじないが使えるんじゃないのか?」
俺がキズメルに聞くとキズメルは
小さくかぶりを振る
「残念ながら、城に駐留している神官どもは
戦闘の経験などいちどもない管吏に過ぎない
今頃は、地下の隠し部屋にこもってぶるぶる震えて
いるだろうさ」
「……使えないな」
俺が小さく呟いていると、キリトが
別の質問をぶつける
「城主様と子供たちは!?神官たちと一緒に
地下に隠れてるのか!?」
「……それは解らん……何せ、ヨフェル城の門が
破られたことは古来、1度も無いからな
子爵閣下がどのような判断をなさるのかは
私にも見当が付かない」
「そ、そうか……」
20人もの敵兵が桟橋に到達したが戦いが
終わっていないところを見るとまだこの状況を
ひっくり返す方法がまだあるはずだ
「……みんな!」
俺が思考していると、キリトが叫ぶ
「森エルフたちの前に割り込むぞ!」
「解った!」「了解!」
「お前に任せる!」「……OK……」
俺たちは返事をしながら桟橋の横を走り抜け
的兵たちを追い抜き、城門近くまで
ティルネル号を前進させて急ブレーキし
桟橋に飛び移る。迫って来る兵士を凝視して
カラー・カーソルを引き出す
これまでで1番濃い赤色のカーソルで表示され
<フォレストエルブン・ライトウォリアー>と
そこそこ強そうだ、味方の番兵は
<ダークエルブン・ゲートキーパー>という名前だ
ライトウォリアーとどっちが上かはわからないが
数の劣位は変わらない、どう考えても数の物量で
押し切られる………だったらそれを打開出来る個
を持ってる奴がいれば良い!一瞬ミトを見てから
キリト達へ声をかける
「キリト!アスナ!キズメル!
……少しここを任せる!」
「ユーマ、お前もしかして……」
「多分お前の想像通りだよ……じゃあ任せる!
……ミト!」
「了解!」
キリトの肩を叩き城門へと走る
「そこを通してくれ!」
指輪を掲げて城の中へと入り前庭を突っ切る
「どうするつもり!?」
「ヨフィリス閣下だよ!あの場の指揮の高さに差が
あったのは、真の司令官がいなかったから、それに
おそらく、ヨフィリス閣下自体も強いはずだ」
「なるほどね、ヨフィリス閣下を、前線に出せば
押し返せるって訳ね」
「そう言うこと!」
そのまま駆け抜け正門を開け、誰も居ない
エントランスホールの奥の階段を駆け上がり最上階
へと走る。城の5階へと上り直角に曲がり
突き当たりの大扉へと到達した
「城主閣下、失礼します!」
途方もなく長く思える数秒を経て、声が響く
「入りなさい」
扉を開け執務室へと足を踏み入れ、デスクの前
まで移動すると、こちらが何か口にする前に
ヨフィリス閣下が口を開いた
「戦いは劣勢のようですね」
閣下に状況を完結に最速で伝える
「はい、こちらの船は旗艦を含む4隻が沈められ
桟橋に敵部隊の上陸を許しました」
「そうですか……では、敵がここまで上ってくるのも
時間の問題というわけですね」
「このままなら、あと15分でそうなるかと」
「ならば、私はこのまま敵を待ちましょう。
人族の剣士よ、これまでの助力に感謝します。
お前は、仲間とともに城から去りなさい」
俺は両拳を強く握りつぶし俺は口を開く
「ダークエルフ軍は最初からフォレストエルフ軍に
士気の高さで負けていました。その理由は
真の指揮官の貴方がいないからでしょう」
一瞬の間の後、暗闇のおくから伸びてきた右手の
指が、黒壇のデスクをコツコツと2度叩く
「……それは、最早言っても詮無きこと。若き人族の
お前には理解出来ないかもしれませんが、永遠に
戦い続けていれば、いつか必ず敗れる時が
来るのです。今日、このヨフェル城が陥ち、私が
剣に斃れるというのなら、それもまた聖大樹の導き
我らリュースラの民は、その運命を
ただ受け入れるだけです」
暗闇の奥から響いてきた声はおそらく
あらかじめ決められた台詞であること何だろうが
どこか諦めたような声色で言われた台詞に
熱されていた俺の怒りが沸点に達した
「……ふざけんなよ……」
「ユーマ……?」
ミトが俺を止めるより先に俺はデスクに乗り上げ
腕を伸ばしヨフィリスの胸ぐらを掴み引き寄せる
驚いた表情と髪の生え際から左眼を通って
おとがいまで伸びる傷が見えたが気にせずに続ける
「今まさにあんたの兵士たちは戦ってて
あいつらは主の声を待ってんだよ!!
あんたの病気の事はキズメルから聞いた!!
だけどそれは諦めて負けを認める理由には
ならないだろ!!このままこの暗闇で死を
待つぐらいなら、せめて外に出て
ひと言兵士たちに言葉を掛けろよ!!
それが、城主の在るべき姿だろ!!」
俺の圧に押されたのか驚いた表情のまま
しばらく固まっていたが真剣な表情になり
こちらと眼を合わせ口を開く
「……人族の若者よ。ひとつだけ
私の問いに答えなさい」
その言葉とともに頭の上に金色の?マークが浮かぶ
何かクエストが発生したという事だ
「お前は、なぜカレス・オーの民ではなく
リュースラの民に力を貸すのですか?」
あまりにシンプルな問いに少し固まったが
胸ぐらを掴んでいた手を放しすぐに口を開く
「最初は、確かな理由があったわけじゃない」
思ったままの言葉をそのまま口に出す
「だけどいまは違う、俺も、ミトも、キリトも、
アスナも、キズメルが好きなんだよ
だからキズメルが愛してるダークエルフたちと
その国を、俺たちは守りたいから力を貸してる」
再び、長い沈黙が執務室の暗闇を満たした
後に…………本当にずっとずっと後に
なって知ったが、このソードアート・オンライン
という世界は、制御しているプログラムに
プレイヤーの感情や心理状態をもモニターする
機能が備えられているのだと。つまり、俺が
ヨフィリス子爵に対して、阿諛せんがための
嘘を口にしていたら、それはシステムに見抜かれ
明らかにアウトな行動をした俺は
ヨフィリス子爵に切り捨てられてた可能性が高い
そう聞かされたみんなは、それぞれの
リアクションをして、その中の1人が
「最初に感情を爆発させて本心を正直に答えて
良かったわね、貴方、ウソつくのは上手いけど
流石にシステムにはバレちゃうでしょうし」
と言い、ふふふと笑っていた
永遠ともとれる一瞬が過ぎ、黄金の
クエストフラグが音もなく消滅した、クリアの
効果音は鳴らなかったが、代わりに城主の
これまで聞いた中で最も力強い声が響いた
「その言葉を、真実と認めましょう。ならば私も
真実を以って答えねばなりませんね
………それに城主として大切な事を貴方に
思い出させて貰いましたしね」
「………それは良かったです」
今更遅いかもしれ無いが敬語に戻した
大丈夫だろうか……と考えていると
北側の壁のどこかがゴン、と鳴る
部屋を満たす暗闇を真昼の光が貫く
「若き剣士たちよ、お前たちが騎士キズメルから
聞いたという、私の病の話………それは嘘です」
「……………え?」
「…………なんとなくそう思ってました」
「ついてきなさい」
外壁に隠し扉がありその先には1階の玄関付近まで
壁から50センチほど張り出した窓庇が
階段状に続いていた、難なく飛び降りる
ヨフィリス子爵に続いて、飛び降りていく
少し遅れて地面に辿り着き、ヨフィリス子爵を
改めて見ていると、ダークエルフにしては
黒みの薄い頬を皮肉げに歪ませ、言った
「この傷は、悔い多き我が生涯でも最大の恥辱の
証です。子爵家を継ぐべき我が子らに
汚名までも引き継がせまいと、長いあいだ
暗闇に包み隠してきましたが………私は
恥を隠そうとするあまり、大切なことを忘れ
愚かさを積み重ねていたのかもしれません
……さぁ行きましょう。私の兵士たちと
お前の友人たちが戦っている場所へ」
城主は閉ざされた正門に近づき、右手を上げ
「開門!」とひと声叫ぶと巨大な扉が重々しく
開いた。桟橋を攻めているフォレストエルフ兵
は指揮官と副官を除いた18人が10人弱に
減っているが、守るダークエルフの槍兵も
6人から3人に半減している
「悪い、遅れた!」
「いや、大丈夫だ、だけど船の方が……」
その言葉に視線を主戦場に向けると4隻の
ゴンドラは健在なれど船上の兵士がもう
各船3、4人ほどしか残っていない
「ユーマ君たちの方はどうだったの!?」
アスナの問に答える前に後方で、湖を
吹き渡る雄風にも似た声が、朗々と響き渡った
「私は、リュースラの騎士にしてヨフェル城主
レーシュレン・ゼド・ヨフィリス!!」
途端、近くにいたキズメルが、鋭い呼気を
漏らしたが、振り向くことなく戦い続ける
しゃりいぃぃん!という鮮烈な刃鳴りは
ヨフィリスが腰のレイピアを抜剣した音だろう
「リュースラの兵士たちよ!私はいまこそ長きに
わたる不在を詫び、そしてそなたらに希う!
この戦いには、王国の未来が懸かっている!
女王陛下のために、友と家族のために
いまひとたび立ち上がり、私と共に戦ってくれ!」
瞬間、あらゆる剣戟や喚声が途絶えて湖が静寂に
包まれる。それを破ったのは、フロアの奥底から
湧き上がってくるような雄叫びだった
当然勇ましい効果音が聞こえ、反射的に視界左上
のHPバーの上に、幾つものアイコンが出現した
あらゆるバフの効果が乗ったのだが、このバフが
全ダークエルフ兵に付与されたのなら
ヨフィリス子爵の威光凄いな……そんな感想を
抱きながら俺はレイジスパイクを発動させ
強化されたノックバック効果で湖へと突き飛ばす
「恐れるな!城主ひとり増えたところで、我らの
優位は揺るがぬ!」
後方に控えていたフォレストエルフの叫び声が
聞こえ、大振りなロングソードを抜き、前方に
振り下ろす
目の前の敵兵6人が、横一直線に並びまったく
同じ動作で剣を上段に構える。
まずい。と思ったその時
「左右に避けなさい!」
という命令が聞こえたので俺とミト、キズメルは
左に桟橋の縁ぎりぎりまで退避すると、後方から
純白に輝く巨大な光の槍が凄まじいスピードで
飛翔してきた
前方にいた6人のソードスキルと接触した瞬間
眩い閃光と衝撃破の中で、6人全員が高々と
舞い上がった。敵兵たちは回転しながら吹っ飛び
湖に落下する。光が収まると、そこで体を限界まで
前傾させ、レイピアをまっすぐ突き出した姿勢で
立ち止まるのは、10メートル異常も離れた場所に
いたはずの城主ヨフィリスだ
「いまの……ソードスキルなの……!?」
反対側でアスナが絶句した表情になり
掠れ声でそう呟きキリトが小刻みに頷く
「行くぞ、アスナ!」
キリトの声に反応しアスナも飛び出す
2人は城主を追い越し、猛然とダッシュしてくる
指揮官と副官を迎え撃つ、おそらくこれが
このイベントバトル最後の戦いだろう
「んじゃ雑魚はさっさと片付けようか」
「ええ、早く終わらせましょう」
その後指揮官はキリト、副官はアスナが相手をし
俺とミトは残りのフォレストエルフたちの相手を、していた
指揮官との戦いでキリトのアニールブレードが
壊れてしまったらしい
「そろそろ寿命だったからな……むしろ
よくここまで頑張ってくれたよ」
泳ぎ去って行くフォレストエルフを見ていると
後ろから聞き覚えのある声が聞こえた
「見事な戦いだったぞ、キリト、アスナ
ユーマ、ミト」
振り返ると微笑みを浮かべているキズメルがいた
「……これで、よかったのかな……」
キリトが視線を落としてそう呟くと、キズメルが
キリトの肩を勢いよく叩いた
「もっと胸を張れ。フォレストエルフの襲撃が
あることを伝、劣勢だった戦いを立て直し
敵の指揮官を1対1の決闘で退けたのはお前だぞ
キリト。そしてなにより、城に保管されている
2つの秘鍵は無事に守られた。これ以上、何を
望むというのだ」
そのやりとりを見ていると、目の前に
クエストクリアを知らせるウインドウが出現し
第一部<昔日の船匠>から繋がる第二部<湖上の城塞>
が終了した。ウインドウを消していると、ミトに
肩を叩かれた
「一旦湖の外に出て、アルゴからの
メッセージを受け取りましょ?」
「あ、そっか………2人とも、俺らアルゴから
のメッセージ受け取って来るよ」
「あ、悪い、頼む」
ティルネル号に飛び乗り櫂を動かして
一旦湖の外に出ると、インスタント・メッセージ
が届く、俺は櫂を一旦置きミトの横から
メッセージを覗き込む………は?
「フロアボス攻略レイドが出発した………?
ウソでしょ………」
「あいつら……………」
俺とミトはお互い頭を抱える
もう一つ来ていたメッセージを開き見る
「とりあえず、プログレッサーは
カゲ先輩、フィリア、アラタ、ハチでボス戦は
行ったらしい、で、一応パーティは入れるように
開けてくれてるらしい」
「………とりあえずアスナたちのところに
戻って考えましょ?」
「そうだな」
もう一度櫂を動かしヨフェル城へもう一度入り
桟橋につきアンカーを下ろす
「おーい2人とも、凄いよ2つだって、2つ!」
呑気な声をあげてこちらを手招きしている
キリトとアスナ
「2つって言っても2人で2つじゃないぞ
1人で2つだぞ!」
「フタフタ言ってる場合じゃないよ、2人とも」
2人の手前で急ブレーキをかけて止まりながら
キリトの肩を掴む
「大変よ2人とも!しばらく前に
出発しちゃったって!」
「誰が?」
「決まってるだろ!フロアボス攻略レイドがだよ!」
「………………な、」
「………………え、」
なにいいいいい!?とえええええええ!?という
2人の絶叫に、キズメルとヨフィリス城主が
揃って瞬きする
「いや……でも、今朝の情報じゃ、ボス攻略が
始まるのは、どんなに早くても
明日の午後からだって……」
「そうなんだけど、今日の午前中に予想よりも早く
ボス部屋まで到着して、ボスの偵察機まで
できちゃったらしくて、こうなった、いったん
最寄りの村で補給と休憩だけして、午後1番で
ボス攻略を始めたろやないかい!
って意見が出たみたいで」
「……誰がその意見を出したのかは
言わなくていいぞ」
キリトが考え込んでから口を開く
「レイドが出発した、正確な時間は解るか!?」
キリトの質問に、ミトが素早くウインドウを
確認して頷く
「今から55分前よ!」
「ならもう塔を上ってるな……………うーん
このフロアは連中に任せるしかないか……」
「そう……かもね……」
戦力を急ピッチで強化している2ギルドなら
ほぼ初見のフロアボスも犠牲者ゼロで
撃破してくれるはずだ
4人で頷きあっていると、キズメルが
話しかけてきた
「キリト、お前たちは<天柱の塔>の守護獣に
挑むのか?」
「あ……うん。でも俺たちじゃ無くて、他の連中が
もう塔を上り始めてるみたいで……」
そう答えると、騎士の顔がわずかに翳る
「そうか。お前たちが信頼する者たちなら、心配は
あるまいと思うが……確か
この層の守護獣は……」
そこで言葉を切ったキズメルに続いて、今度は
城主が口を開いた
「私たちは談笑でしか知りませんが、この4層の塔
に潜む守護獣は、何やら奇怪な力を
もってあると聞き及びます」
「奇怪な力……?」
ミトが首を傾げると、ヨフィリスが続ける
「この層の守護獣は、ヒッポカンプと呼ばれる
前半分が馬で後ろ半分が魚の怪物です。
どんなに乾いた土地にさえ泉を湧き出させ
そこを海に変えてしまうとか」
そこまで告げたヨフィリスは
とどめの一言を付け加える
「守護獣と闘う者は、水に浮くためのまじないが
必要かだと伝えられています」
「………!」
その言葉をそのまま解釈するなら
フロアボス部屋が水没するという事だ
下手するとレイドが全滅しかねない
「は、早くメッセージで知らせないと!」
そう叫び、ティルネル号に駆け寄ろうとする
アスナを、キリトが慌てて止める
「無理だ、迷宮区にいるプレイヤーには
メッセージは届かない!」
「なら、どうするの!?」
「俺たちが直接行くしかない。運が良ければ
攻略部隊の半分くらいは、往還階段から主街区まで
行くのに使った浮き輪の実をまだもってるはずだ
それで凌いでるうちに俺たちがボス部屋まで
行って扉を開けるんだ!」
アスナの反応は早かった。覚悟を決めた顔で頷くと
キズメルに向き直る
「ごめんねキズメル、わたしたち、行かなきゃ
また必ず戻ってくるから……!」
だがそれを聴いたキズメルは、何を馬鹿なことをと
いいたげに肩をすくめた
「こう言う時、人族は<水臭い>と言うのだろう?
私も行くさ、もちろん
「「「「えっ」」」」
オレたち4人は同時に驚きの声を漏らした
しかしその驚きは、その後、天地が
ひっくりかえるほどの驚愕へと昇格した
「では、私も行きましょう」
まったくなんでもないようにそう宣言した
ヨフェル城の主にしてダークエルフの子爵
ヨフィリス閣下の顔を凝視しながら
俺たち4人は絶叫した
「「「「ええええええーッ!?」」」」
To be continued……
戦闘シーンの描写が大変です
なるべく原作のをお手本に
執筆していますがなかなか難しく
時間がかかります