第一層<はじまりの街>に降り立ったのが
かなり久しぶりだった。
何か不思議な感覚を覚えながら
街並みをぐるりと見渡す
………ストレアを背負いながら
今思えばデスゲームが始まった
あの日からかなりたったな……
最初は、早くクリアして現実に
戻らないとって考えてたけど
2層でミトに想いを伝えられてから
正直ミトと一緒にいられるなら
ここにずっと居ても良いかな……
なんて事を考える事もあった
だけどあっちでもミトに会って
一緒に過ごしたいし頑張ってクリア
目指さないとな……
そんなことを考え、感傷に浸っている
途中でストレアの事を思い出し
感傷を振り払うために頭を振り
意識を戻すとアスナも同じような事を
考えていたのか俺と同じ動きをした後に
俺と同じようにユイを背負っている
キリトによりユイの顔を覗き込んだ
「ユイちゃん、見覚えのある建物とか、ある?」
「ストレアもどう?」
「うー……」
「んー……」
ユイとストレアは難しい顔で周りを
眺めてから首を振った
「.わかんない……」
「ま、はじまりの街ってすごい広いからな……」
「んー」
俺がストレアの頭を撫でると気持ち良さそうに
して、もっとというような動きをするので
撫で続ける
「あちこち歩いてればそのうち何か思い出すかも
しれないさ。
とりあえず中央市場にいってみようぜ」
「そうだね」
「了解」
「りょうかい!!」
キリトの言葉に返事をするとストレアが俺のマネを
して返事をし、ニッコリと笑う……かわいいな
聞き込みの結果、東七区という所にある教会に
若いプレイヤーが暮らしているらしいので
そこに行ってみようという話になり
東七区がある南東を目指して十数分歩く
「マップの表示だとこの辺りが東七区なんだけど
目的の教会ってどこだ?」
「あ、あそこじゃない?」
ストレアを背負いながらマップを開き
教会を探しているとアスナが指差した方向を
見ると林の向こう側に一際高い建物が見つかった
「ち、ちょっと待って」
教会に向かって歩き出そうとした俺たちを
アスナが呼び止める
「ん?どうしたのよ」
「あ、ううん……その……もしあそこでユイちゃん
とストレアちゃんの保護者が見つかったら
2人を置いてくるんだよね……?」
アスナの発言に何故、始まりの街に来たのかを
思い出した……そんな事を考えていると
キリトがアスナを抱き締める
「別れたくないのは俺も一緒さ、
何て言うのかな……ユイがいることで、あの森の
家がほんとうの家になったみたいな……
そんな気がしたもんな……2人もそうだろ?」
「……そうね確かに私たちもそう思うわ……
ユーマもそうでしょ?」
「……そうだね……」
ミトと俺の返答を聞き安心したように頷く
「でも、会えなくなるわけじゃない
ユイとストレアが記憶を取り戻したら
きっとまた訪ねてきてくれるさ」
「ん……そうだね」
アスナは小さく頷くと、腕の中のユイに頬を
擦り寄せてから、歩き始めた
はじまりの街にはいくつか教会が存在していて
転移門広場の近くの教会はちょっとした
城館ぐらいの大きさはある
アスナが正面の大きな2枚扉の片方の扉を
押し開ける、内部は薄暗くて正面にある祭壇に
飾ってあるろうそくの炎だけが周りを照らしている
……ぱっと見誰もいないけど人の気配があるな
「あのー……どなたかいらっしゃいませんかー?」
アスナの声が残響して消えても誰も出てこない
「誰もいないのかな……?」
「いや、人の気配あるから絶対あるはず」
「ユーマの言う通りだ、右の部屋に3人
左に4人……2階にも何人かいる」
キリトが低めの声でそう言うと
ミトが少し呆れた様子になる
「……索敵スキルって壁の向こうも見えるのね……」
「熟練度980からだけどな、便利だから
お前たちも上げろよ」
「良くそこまで上げたわね………まぁ私は
950ぐらいだから頑張ってあげてみるわ」
言葉を交わしながらそっと教会内部に足を
踏み入れる。しんとした静寂が周囲を包むが
人が息を潜める気配を感じる
「すいません、人を探してるんですがー!」
今度は俺が大きめの声で呼びかけると右手側の
ドアが少し開き、そこから女性の声が聞こえてくる
「……<軍>の人じゃ、ないんですか?」
「違うよ、上の層から降りてきたんだよ」三3三
俺たち4人とも、剣はおろか戦闘用の装備を
何一つ装備していないし、軍のプレイヤーは
常にユニフォームのタンクみたいな重装備なので
格好だけで軍の所属じゃ無いと解るはずだ
「ほんとに…….軍の徴税隊じゃないんですね……?」
ドアが開き黒縁の大きなメガネをかけた修道院服
のような服の女性が出てきた。
アスナが女性に微笑みかける
「ええ、わたしたちは人を探していて、今日上から
来たばかりなんです。軍とは何の関係もないです」
アスナがそう言った瞬間に少年の声と共にドアが
勢いよく開き数名の少年少女たちが出てきた
「上から!?って事は本物の剣士なのかよ!?」
髪をつんつん逆立てた少年が走り寄り、俺たちを
眺め回している
「こら、あんたたち、部屋に隠れてなさいって
言ったじゃない!」
慌てたように子供たちを部屋に押し戻そうとするが
まったく命令に従う子はいない
「なんだよ、剣の一本も持ってないじゃん
ねぇあんた、上から来たんだろ?
武器くらい持ってないのかよ?
後半はキリトに向けて言い、キリトは
目を白黒させる
「い、いや、ないことはないけど………」
キリトの言葉に再び子供たちの顔が輝き
見せて!とキリトに集まる
………保育園の先生みたいだな……
「こら!初対面の方に失礼な事言っちゃだめでしょ?
……すみません、普段お客さんなんて
来ないので……」
子供たちへの対応と違い学校の先生のように
礼儀正しく頭を下げる女性にアスナが慌てて言う
「い、いえ、構わないです………キリト君
幾つか武器見せてあげたら?」
「私たちも出しましょ………確か余ってたのが
あったはず……」
アスナの提案にミトが賛同して俺に言ったので
頷きウインドウを開き、近くにあった長机に
前の作成で余っていた防具を出していき
キリトは武器を積み上げると、子供たちの
歓声が上がる、剣や防具を持ち
「すごーい」「重ーい!」などの声が聞こえる
………圏内だしダメージ受けないから良いけど
普通なら危な過ぎるな、これ
「すみません、ほんとに……あの、こちらへどうぞ
今お茶の準備しますので……」
小部屋に案内してもらい話を聞くと
眼鏡の女性プレイヤー……サーシャさんが
街じゅうを回って子供を探していたようで
一度見ていればわかるらしくユイとストレアは
見た事が無いらしい。そこまで聞き
はじまりの街にいる人たちの話になったところで
部屋のドアが音と共に開き数人の子供たちが
流れ込んできた
「こら、お客様に失礼じゃない!」
「それどころじゃないよ!!」
先ほどの髪を逆立てた赤毛の少年が
涙目になりながら叫ぶ
「ギン兄ィたちが、軍のやつらに
捕まっちゃったんだよ!!」
「場所は!?」
先ほどまで落ち着いて話していた女性とは
別人のように毅然とした表情で立ち上がった
サーシャさんが少年に訊ねる
「東五区の道具屋裏の空き地
軍が10人ぐらいで通路をブロックしてる
コッタだけが逃げれて教えてくれたんだ」
「わかった、すぐに行くわ
すみませんが……」
こちらに軽く頭を下げようとするサーシャさん
の言葉をミトが遮る
「大丈夫です、私たちも行きますよ
でしょ?3人とも?」
「もちろん」三3三
俺の返事にキリトとアスナも頷き
サーシャさんに向き直ると
サーシャさんは深く一礼をして
眼鏡をぐっと押し上げる
「ありがとうございます
お気持ちに甘えさせていただきます」
そのまま教会を飛び出し、NPCショップや
民家の庭を突っ切って行くと前方の細い路地を
塞ぐ一団が目に入る………あー服装的に軍で
正解だなこれ……先に路地に駆け込んだ
サーシャさんが足を止めると、軍のプレイヤーが
それに気づきこちらに振り向く
「おっ、保母さんの登場だぜ」
「……子供たちを返してください」
硬い声でサーシャさんがそう言うと
軍のプレイヤーは余裕を持った声で答える
「人聞きの悪いこと言うなって
すぐに返してやるよ、ちょっと社会常識って
もんを教えてやったらな」
「そうそう、市民には納税の義務があるからな」
いかにもすぐにやられる雑魚キャラのような事を
言い甲高い笑い声を上げる
「ギン!ケイン!ミナ!!そこにいるの!?」
サーシャさんが向こう側にいるであろう
子供たちへ声かけをすると、怯えた声で
いらえがあった
「先生!先生……助けて!」
「お金なんていいから、全部渡してしまいなさい!
「先生……だめなんだ………」
今度は絞り出すような声でそう言った
「くひひっ」
道を塞ぐ男の1人が、引き攣ったような
気持ち悪い笑いを吐き出した
「あんたら、ずいぶん税金を滞納してるからなぁ
……金だけじゃ足りないよなぁ」
「そうそうら装備も置いてってもらわないとなァー
防具も全部……何から何までな」
男たちの下卑た笑い声が聞こえて
路地の奥で何が起きてるのか察した
………あーなるほど力があると勘違いしたバカが
やらかす奴だなこれ………痛い目見ないと
わかんないかな、これ
………サーシャさんも察したのか、殴りかからん
ばかりの勢いで男たちにに詰め寄った
「そこを……そこをどきなさい!
……さもないと……」
そこまで聞いた時点でキリトとアスナに指示を出し
俺とミトで路地の裏へ跳躍する
俺たちを呆然とした表情で見上げる男たちを
軽々と飛び越え、奥の空き地へと降り立ち
ミトが子供たちに声をかける
「もう大丈夫よ、装備を戻していいわ」
急に来た俺たち2人を目をぱちくりさせながら
見ていた子供たちはすぐにこくりと
頷き、装備を戻し始める
「おい……オイオイオイ!!」
ここでようやく我に帰った軍のプレイヤーが
喚き声を上げた
「なんなんだお前らは?」
「我々軍の任務を妨害するのか!?」
「ま、待て」
声を上げた2人を押し留めながらおそらく
リーダー的な奴が出てきた
「あんたら見ない顔だけど、解放軍に
楯突く意味がわかってんだろうな!?」
そう言いながらカッコつけたように腰の
ブロードソードを引き抜き上に振り上げると
後ろ子供たちが小さな悲鳴を上げる
………やっぱりいるんだなこういうやつ
「はー………ミト、ストレアを頼む」
「わかったわ………ま、やり過ぎないようにね」
ミトにストレアを預け、剣だけを実体化させて
軍のプレイヤーに近づく
「ねぇ、俺、解放軍の上の人と知り合いなんだけど
これって本当に幹部とかの上からの指示?」
俺の最終勧告にまだ自分が上だと
勘違いして、ヘラヘラしている
「そうに決まってんだろ」
「ふーん………お前つまんないウソつくね」
「は?」
言葉を聞く前に剣を鞘から抜きながら
首目掛けて横薙ぎに振り抜く
周囲が青色の光に染まり、物凄い衝撃音と共に
男が壁に叩きつけられる
何が起きたかわからない様子でこちらを見る
軍のプレイヤーたちに目線を向ける
「どうする?サンドバッグになりたいなら
続けるけど………」
「お前ら!見てないでなんとかしろ!!」
俺の言葉で我に帰ったのか壁に叩きつけられた
男がそう喚くと後ろにいた男たちも腰の剣に
手をかけるが、俺が剣をだらんとさせながら
ニコリと笑い距離を詰めると
全員が悲鳴を上げながら一目散に逃げていく
俺は納刀しながら振り返る
「大丈夫だったか?」三3三
俺の様子に固まっていた3人の子供たちは
目を輝かせながらこちらへ駆け寄ってくる
「すげぇ……すげぇよあんた!!」
「初めて見たよあんなの!」
「うん凄くカッコよかった!」
俺と同じぐらいの年齢だからかタメ口で
そう言われ、その後の2人には憧れの人を
見るような目で見られる、まぁまぁと
宥めているとサーシャさんが両手を胸の前で
握りしめながらこちらへ寄ってくる
「ありがとうございました」
その言葉に返答しようとした所だった
「みんなのこころが……」
「ユイ!どうしたんだ!ユイ?」
通路手前側にいたキリトたちのほうを向くと
細い声で少し苦しそうなそんな声が聞こえた
「うう………」
「ストレア!?どうしたの?」
前を見るとミトに抱えられてたストレアも
同じように苦しそうに頭を抱えている
俺は子供たちにごめんと謝り
ミトとストレアに駆け寄る
「ストレア何か思い出したのか?」
「わたし………くらいところで
ずっと1人だった……だけど…………」
そこまで言うと何か思い出すように
顔をしかめた瞬間
「うあ……あああ!!」
後方からユイの高い悲鳴が
聞こえたと同時にザザッという
ノイズめいた音が聞こえ
ユイが崩れ落ちるのが見えた
「うう………」
「ストレア?ストレア!?」
ミトの声にまた振り返ると
こちらは悲鳴を上げなかったが
ミトの腕の中で意識をなくしてしまった
「なんだ………今の音………?」
To be continued……
雪染遊真です
アニメと小説で展開が少し違うので
どうするか迷いましたが
混ぜて書きました
この後も少しオリ展開を混ぜながら
書きますのでしばらくお待ちください