───神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。
───神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。
───神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。
───そして最後にもう一人……。記すことさえはばかれる……。
アマラの果て。闇の淵のようなそこへ、一点の光が灯る。光は見る見る大きくなり、人一人ほどの大きさに広がる。「おや」と声がし振り返ると、いつからそこへ居たのか、喪服の老婆がたたずんでいた。
「この空間に召喚の門なんぞが開きましたか」
鏡のように形を変えたその光は、どうやら召喚の門と言うらしい。
「終の決戦において、君はアマラの大海を渡り歩き、いくつもの創世の芽を潰してきました」
また別の声がし振り向くと、そこには老婆と同じ喪服をまとった淑女の姿があった。
「だけれど、大いなる意思とまみえることはいまだ叶わず、我々は手詰まりの状態にあります」
老婆が虚空を見上げ二度、三度、相槌を打つ様に頷くとこちらへ向き直る。
「恐れ多くも坊ちゃまは、貴方に暇を与えよと仰せです。貴方はこの申し出を受けねばなりません」
ついに放逐か。勇んで決戦に臨んだものの、肝心の敵と戦うすべすらいまだ見出せていない以上、それも無理からぬことだろう。そんな風に考えていると後の台詞を淑女が引き継ぐ。
「我々は少々急ぎすぎていたのかもしれません。どうやったら大いなる意思を打ち倒すことができるか、その方法を私たちの方でも少し探してみます。その間君はこの召喚に応じ、その先でさらなる経験を積んで欲しいのです。君を召喚できるほどの存在がどういった者なのかわからないけれど、現状では動きようがない以上、これはいい機会かもしれないわ」
女の物言いにきな臭さを覚える。それが具体的に何なのかはわからぬが、ずいぶんと都合がいいような気がするのだ。本当にこの召喚は思いがけず起きたことなのだろうか。どうにもまたあの老人が何かしら裏で糸を引いている気がしてならない。
ともかく、この召喚が偶然にしろ何らかの思惑が絡んでいるにしろ、選択肢はないようだ。毎度のことと諦めつつ、召喚の門へと足を踏み出す。
「その先で貴方が如何なる選択をするか、それは貴方の御勝手、どうぞお好きに。ただ坊ちゃまにつまらぬ最後なぞ見せぬよう頼みますよ」
老婆のそんな言葉を背に受けながら、白く輝く光の中へ身を躍らせた。
召喚の門を超え、最初に目に飛び込んできたのは、もうもうと立ち込める土煙であった。それが徐々に晴れ、次いで感じたのは陽の光。全身を包むこの暖かさはいつぶりのことだろうか。
視線を前に向けると呆然とこちらを見ている存在に気付く。少しやせ気味の、幼い雰囲気を残した少女。ブラウスとスカートはかつての世界の一般的なものとそう変わらないが、ピンクがかったブロンドという珍しい髪色と、肩に羽織った黒いマントが印象深い。門をくぐってすぐ目の前に立っているあたり、おそらくこの子が召喚者なのだろう。
周りに視線を巡らせる。青い空と豊かな草原。これらも最後に見たのは遠い昔のように感じる。同じ年ごろと見られる何人もの少年少女が、遠巻きにこちらをうかがっている。目の前の少女も含め、皆一様に同じ服装をしているところを見るに、もしかしてここは学校のような場所で、彼らはそこの学生だろうか。その証拠のように、子供たちに紛れて一人だけ服装の違う中年の男性がいる。きっと引率の先生か何かだろう。
彼らのかたわらには、よく知る動物からゲームやアニメに出てきそうなモンスターまで、多種多様な生き物がじっと身じろぎもせず大人しく控えている。それを見て、あらためてここがまったく“コトワリ”の異なる世界なのだと実感する。
「あんた誰?」
そんな風に周りを観察していると召喚者の少女が話しかける。さてどう答えたものか。今まで散々召喚する側になったことはあるが、自身が召喚されるのは初めてのことだ。何か気の利いた台詞をと思ったが、元々口下手な自分にはすぐにそんなもの思いつくはずもない。数秒あれこれと考えた結果、結局は何度も仲魔から聞いたお決まりの台詞を口にすることにした。
───魔人 人修羅。今後ともよろしく───
初投稿です。ひと月に1~2話くらいのペースであげられればいいな。
ゼロ魔×真3というこすりにこすられまくったネタを令和の時代にあえてもう一度やってみる。
4FINALや5は未プレイです。基本3本編の設定準拠で、一部DDSATの設定が出てくるかも。
温かい目でお読みください。