目の前の砂漠は広大だった。
友人の様子を見に行っただけの筈が、気付いたらこんな砂漠の只中に放り出されている。遠くに見える廃ビルと、背後の砂に埋もれているトンネルのほかに理解できるモノはない。
空に輝く太陽でないナニカを見て、“此処はもう違う世界なのか”と途方に暮れた時だった。
一筋の美しい流星が、砂漠に着弾した。
衝撃で巻き上がる砂が収まった頃、流星の落ちた場所には2本の棒が見えていた。
というか、足だった。犬神家スタイル(砂漠の姿)だ。
なんだか笑えてきたので、俺は足を動かし始めていた。
ジタバタ抜け出そうと動いている、両足の主を一目見てみたくなったのだ。
そんな事が、『俺たち』の始まりだった。
ずんばらりんと悪魔を切り裂く。両手から出るライトセイバー(仮)はとても鋭く、雷の力は強力で、なにより身体は頑丈だ。
これが、『アクマ』の力らしい。
俺、デーモンになっちゃったよ……
『少年、体を融合させているだけだ。君は人間のままだ』
ネタに真面目に返されると少し辛いが、だいたいデビルマンみたいなものだろうコレは。なんか青っぽいし、俺は様々なコンテンツに対して『わかるマン』になれるぞ。
『……少年がそう言うのなら、きっとそうなのだろう』
相棒が純粋過ぎて心配なんだが。
……とまぁ、数分前とは大分状況が変化した。
まず、砂漠の両足を見るためにホイホイ出歩いたら、悪魔っぽい悪魔に襲われた。ダイモーンというらしい。
さっき殺したが、この『アオガミ』と合体しなければ死んでいたのは俺だ。とても運が良かった。
と、一息ついてから流星の落ちた場所に目を向けるた。するとそこには、砂漠のど真ん中で体育座りで落ち込んでいる少女? がいた。
ブツブツと言いながら砂に“の”の字を書いている。古風だ。
『少年、注意しろ。そいつは強力な力を持っているぞ』
だとしても、話を聞くくらいは良いだろう。多分。
落ち込んでいる彼女に声をかけてみる。「どうしたんだ?」と。
「……あぁ、この星の人類の方ですか。蘭丸は……まぁ、落ち込んでいるであります」
理由を聞いても?
「最も強い蘭丸を決める超蘭丸決闘に参加できなかったのであります……あの宇宙生物を殺した事に後悔はなかったのですが、超時空ブラックホールから逃れられずにこの星にに漂流してしまったのでありますよ……」
宇宙人だったのか
「はい。ただ、蘭丸は“謎の蘭丸X”に意志を預けられなかった蘭丸星人の面汚しではありますが……」
だからそんなに落ち込んでいるのか。なりたかった『最強の蘭丸』になれず、『謎の蘭丸X』に思いを託す事も出来ずに此処に迷い込んでしまったから。
『少年? 意味が分かるのか?』
……人助けをして試験を受けられなかったとかそんな感じだろう、多分。
「という訳です、貴方は蘭丸を放っておいてさっさと行って下さい」
なら、迷子仲間として協力をしないか? 俺も気付いたらこの砂漠に放り出されていたんだ。ブラックホールだとかワープゲートとか、そういうのを探すにしても手がかりも何もない状態で、とても困っている。
君もここで落ち込んでいるよりは、ぷらぷら歩きながら帰る方法を探した方が、いくらかマシだろうとは思わないか?
「……そうで、ありますね。蘭丸は貴方と同行する事にします」
俺はユート、よろしく。
「はい、今後ともよろしくであります。ユート殿」
来訪者:『蘭丸』が仲魔になった!
「あ、所でランマニウムの補充をお願い出来ますか?」
マガツヒで良いだろうか?
「大丈夫であります。……これはこれでそこそこ美味しいでありますね」
『グルメ、なのだろうか?』
と、正体不明にして性別不詳。ついでに言うなら理解不能な蘭丸が仲魔になったのだが確認したい事はいくつかある。
「なんでありますか? ユート殿」
蘭丸は自由自在に駆け回っているが……空中ダッシュとか、できてしまうのだろうか?
「? もちろんできるであります。蘭丸基礎講習の初日で身につける基礎中の基礎でありますから」
その時、俺の感じた衝撃を言葉にするのは難しいだろう。ダッシュ速度をジャンプでの空中軌道に反映させることができない身としては是非とも身につけたい技術だった。ショートカットをする為、物陰に隠れたモノを探す為、この短い間で感じたストレスから解放されるのならば!
そんな熱意をそのままに空中ダッシュのコツを聞いてみた。
「まずは刀を用意するでありますよ。蘭丸の守り刀が最良でありますが、無いのでしたらランマニウムで代用刀を作るであります」
らんまにうむ
「はい。蘭丸殺法とは鍛え抜かれた肉体操作とランマニウム粒子のコントロールを組み合わせた技でありますから」
……なるほど、そうだったのか!
『少年、理解できたのか?』
俺は蘭丸ではないのだから無理なものは無理なのだ。大人しくぴょんぴょんする事にしよう。
蘭丸は「参考になりましたか?」とキラキラした目で、体の中のアオガミは『大丈夫かコイツ』という目で俺を見ていた。
東京砂漠は辛い所だ、うん。