「……ねぇ、何で私こんな事してんの?」
働かざるモノ食うべからずと言うだろう。そういう事だ。
「いや働くってか騙くらかす算段をつけようとしている風にしか思えないんだけど」
「しかし、『作るモノを適正な価格で欲しい人に届けたい』という事になったのでありますよ?」
「そーそー。私たちは美味しくてマガツヒたっぷりのリンゴを食べられれば良いんだって」
目が死んでる樹島の言葉に答える蘭丸とザコちゃん。それに一言付け加える悪魔がいる。
「ククク……生産を独占しているのですからそこから先はどうとでも出来ますからね」
最近ちょっとした事でボコボコにして、命だけは助けてくれと助命してきたので契約で縛り仲魔にした『魔王ロキ』だ。
「……ねぇ、ちょっとした事なの?」
「後腐れなく終わったのですし良いと思うでありますよ」
「そーそー、細かい事は良いんだって。……ホント、考えてると頭痛で死ぬから」
何を言うか。ちょっとした意見の食い違いを殺し合いで解消しただけだ。
「そこの方、休むのはお仕事を終えてからにして下さいません?」
と、意見の食い違いの原因である『女神イズン』がやってきた。彼女は魔界で一番のリンゴ農家である。黄金のリンゴという魔界随一のブランドを持っており、ロキはそれを流通させるブローカーとして一旗揚げようとしたが俺が潰したのだった。
「しゅ、宗教も神話も何もかもが消えてる⁉︎」
そちらには詳しくない。だから聞いた事で判断してるのだ。
「えぇ……」
とはいえイズンのリンゴ農園に与えたダメージは大きく、俺たちはエンヤコラっと働いているのだった。
やる事は良い感じにマガツヒを渡すだけなのだけれども。
さて、のんびり林業というのも悪くないが少しだけ経緯の整理をしていく。
まず、ひとまず樹島を持って妖精の森に一時帰還した。磯野上が死んだ事には悲しまれてしまったがそれで足を止める人間は居なかった。
とはいえ、人間全員傷だらけだった。魔界で戦闘に巻き込まれたり色々あったのだろう、なので、治療のために黄金のリンゴを求めてイズンの元に訪れたのだ。
そして、ロキがいた。
今この瞬間にイズンを誘拐しようとしていたロキは、『え、マジかよ』という顔を見せてから商談を持ちかけてきた。
その話に俺は怒り、その怒り方にイズンがキレた。その結果農園はボロボロとなったのだった。
「いや、アレは私だってキレる。アンタに人の心がないのは知ってるけど、あそこまでとは思わなかったから」
……おかしい。真っ当な事しか言ってない気がしたのだが。
ロキは単純に「イズンを捕らえて脅せば『黄金のリンゴ』を独占できる!」という事を言い。
俺は「それだとイズンが存分に働かず、生産量が足りなくなる。捕らえるよりも農園をノウハウごと盗めば万事解決だろう」と言い。
イズンは、「盗める程度のノウハウだけでウチのリンゴが作れるかぁ! 林業舐めんな素人ども! 土の中からやり直せボケカスがぁ!」とブチギレて言ったのだった。
返す言葉もなかったが故に、俺もロキも反省して働いているのだった。
「……てかさ、何で私らまで働かなきゃならないの?」
そんな折、樹島がそんな事を言う。何を言っているのだろう? と思うと同調者が現れた。
「そうだよ……そうだよね! 何で! 私は! 当たり前みたいに! コイツの! 尻拭いを! してるのさ!」
ザコちゃんである。言いたい事は分かるが、意味はない。
みんなは一人のために! 仲魔は俺の為に! という風にできるのだし。
「思い直して、あの日の私ぃ……」
「ホント、ごめんね」
ザコちゃんには、『契約の内容はきちんと確認しましょう』という当たり前の言葉をあげよう。俺もやった時は別に騙すつもりはなかったけれども。
「しかし、ナホビノの悪魔召喚は不思議なモノですね。『悪魔に身体を与える代わりにその全てを支配する』とは。契約によって互いの利益の為に使い使われるのが悪魔使いだと思っていましたが、自由意志の否定まで出来るとは素晴らしい話です」
ああ。これなら裏切りの心配をする必要はなかった。道すがら命乞いをしてきた奴らはちゃんと仲魔にしてやろう。
と、そんな風に口を動かしながら後始末諸々を終わらせた。給金代わりの黄金のリンゴは先払いで妖精の森に送ってあるので現地解散だ。
「それでは、ご機嫌よう」
そんな言葉を言いながら内心では『次はねぇぞわかってんな屑どもが』という空気が伝わってくる気がする。そんな女神様だった。
あ、それはそれとして
林業いつもお疲れ様です。黄金のリンゴ、とても美味しかったです。また買いにきます。
その言葉に、イズンは心から笑っていた。
さて。
現在、俺たち縄文高校魔界遭難隊には東京に帰る手段がない。
それは品川からベテルの転送装置のある議会まで歩ける真っ当な道がない事、無理目な道は悪魔だらけで間違いなく死者が出ること、そもそも人間という美味しい『餌』は探して追い詰め食い殺す! というスタンスの悪魔が周りに多すぎる事が理由だ。
その辺りに対処する為に俺は活動している。『ラフムは完全に俺の制御下にあり利用できる』として連れねきた樹島と、仲魔のザコちゃんと、深い理由なく着いてきてくれた蘭丸を引き連れて。
あ、さっき仲魔になったロキの事忘れてた。
「んで……次どこだっけ?」
「予定はないですありますよ。向こうとも連絡は取れたのでありますし、急ぎでしなくてはならない事はないであります」
「それじゃあ!」
あぁ、ようやく魔界探索だ。
ザコちゃんをぶちのめした存在。それは『悪魔っぽい』存在だったようだ。容姿は人間大で、青白い鋼のような体皮に金色の骨組みだけの翼を持つモノ。
いつのまにかそこにいた『不安定なモノ』だったとかなので、次も同じ姿とは限らないが。
「とは言ったものの、アテはないんだよねぇ……」
「なら、傭兵殿を訪ねてみてはどうでありますか?」
傭兵殿?
「はい。ミヤズ殿と皆を助けていた時に手を貸してくれた方であります。名を『フィン=マックール』と」
「……あれ、どっかの神話の人間じゃなかったっけ? その人。聞いた事ある」
悪魔は、語られたり知られたりする事で情報が集まり、そこにマガツヒが肉となり生まれる生き物だ。昔の人だってたくさん話されたら悪魔にだってなるだろう。多分。
「あれ、どこでソレ聞いたの?」
……どこだっただろうか? 忘れた。
大体合ってるだろうし、良いのではないか?
尚、そのフィン何某は傭兵としてぷらぷらしてるらしく結局アテはないのには変わらなかった。
その苛立ちをそこらへんの悪魔にぶつけていたら「ハーベスト!」と声がした。
何ぞや? と声の方を見ると、女神がいた。
その姿を見て、イズン以上の何かを感じた。こう、『農』な感じが。
「アナタ達! とってもとってもマーベラス!」
そんな事を言うマーベラスでファーミングな貴方は?
「あら、ごめんなさい。私はデメテル、魔界の土地に作物を実らせたくて色々やってる女神よ!」
「あ、ファーミングで合ってるんだ」
して、どのあたりがハーベスト?
「ええ! 貴方が倒した彼らは、土地を汚す困ったちゃん達だったの! 彼らのライフスタイルだから仕方ないとは思うけど、ダーティー過ぎるとお互いにバッドなの! 綺麗じゃないと汚せなくて彼らはマガツヒを得られないしね!」
とはいえ、綺麗な土地でなければ農業はできないのでは?
「それはノーよ! 綺麗過ぎる土には栄養が足りないもの! 草木は育つだろうけど、ファーミングはできないわ! そんな土地を農地にしたら東京はもっともっとハードな砂漠になってしまうの!」
「へー」と全員の声が揃う。
「……それならば、悪魔どもを殺した報酬をいただけませぬか?」
と、ロキが一つ提案をする。別に構わないのだが。
「そうね……あげられるものは思いつかないわ。ごめんなさい。けれど、何か力にはなれると思うわ! 言ってみてちょうだい!」
なら、探し人……ならぬ探し悪魔を。
と、ザコちゃんを襲った悪魔の特徴を話すが知らないとの事。しかしながらフィン何某の居場所なら考えがあると」
「フィンちゃんに会いたいなら、依頼をすれば良いのよ! 私にもなんとかしたい悪魔もいたから、とってもハーベストね!」
そんなことになった。
これから先の展開とは全く関係ないんですけど、これから殺す予定のキャラが“まだ”生きている時って『原作死亡キャラ生存』とかのタグって必要なんですかね?