この東京砂漠には龍脈というものがある。土地に流れる力の流れであり、そこからは“マガツヒ”というエネルギーが取り出せる。
見た目はセーブポイントだし、効能的にも
ただし、金がかかる。
「ヒヒッ! マッカを出さねぇと休ませてはやれねぇなぁ!」
「ユート殿! こいつをぶっ殺すであります!」
「オイオイオイ、龍脈ってのは荒れてるんだぜ? ちゃんとした場所から力を抜かねぇと逆に飲み込まれちまう。嬢ちゃんにそんな知識があるようには見えねぇがなぁ! ま、死んでも良いなら止めねぇよ」
「うぐぐぐぐ」
歯噛みする蘭丸。ケラケラと笑うガイコツの“ギュスターヴ”。背後に見える金銀財宝に薬や道具の数々。
この東京砂漠で実に“良い”商売をしているようだった。
「で、どうすんだ?」
「お金は……足りないであります」
そんな訳で、何か自分達に振れるバイトはないだろうか。なかなかに強い俺たちは、使えると思うぞ。
「あー、なら“ミマン”を探して来ちゃくれねぇか?」
「ミマン、でありますか? これまで戦った悪魔にはそんな者たちは居なかったでありますが」
「まぁ、連中は悪魔とはちと違ってな。弱いが、しぶとい。だから探し物とかに行かせたんだがちっとも帰って来ねぇ。最近は魔界が荒れてるからな、手軽に使える駒は手元に戻してぇのさ」
「……なるほど」
つまり、従業員が心配だから探しに行ってくれと?
「そんな感じだ。さ、行ってきな」
「うぐぐ、了解したであります」
龍脈点の内側から出る。蘭丸は結構複雑な表情だ。
ギュスターヴはそんなに悪い奴ではなかったようだが……
「分かってるであります。ただ、ミマンという者を語る時の顔がどうにも……」
まぁ、本人というか本悪魔に聞いてみれば良いだろう。互いに思う所があってもとりあえずの納得があれば雇用関係は続けられるのだから。
「そんなものでありますかね?」
これは現代日本で軽いバイトしかしていない奴の意見だから、悪魔だったり過去の人だったりしで違う意見になるとは思うが、な。
などと雑談をしながら砂に埋もれつつある道路を進んでいく。すると、ガキの群れがピクシーほどの大きさの小さい悪魔と紅い結晶を頭にした悪魔を襲っていた。
小さいのは紅いのをうまく盾にして無傷だった。喚き声がうるさいが。
「ぎゃー! ぎゃー! ちょっとやめて! 口臭い! 私食べても美味しくないから! コイツ! コイツ食べときなさいよ! ねぇ!」
「オマエも、美味そう!」
「喰う、喰う!」
「オレサマ、オマエ、マルカジリ!」
蘭丸と目を合わせ、不意打ちを仕掛ける。目の前の奴を食おうと集中しているその背中は隙だらけだった。一人ずつ始末して、終わらせた。
「あぁー、私死ぬんだ、此処で死ぬんだぁ!」頭を抱えて蹲り、諦めたそいつを紅いのが慰めている。人間味というかクソ雑魚な空気がある悪魔もいるのだな。
「えっと、ミマンという方はいらっしゃいますか?」
「エッ、ボク?」
「おや、貴方でしたか。ギュスターヴ殿から探して来いとの依頼を受けたモノであります。無事……ではないようですが、生きていて何よりです」
「イマ、帰ル所ダッタ」
と、頭の上に小さいのを乗せたままミマンは龍脈点まで同行し、ギュスターヴの領域へとやってきた。頭の上の奴は疲れて寝ている。なんだコイツ。
「おう、戻ったか……って何乗せてんだ?」
「土産」
土産だったのか。
「土産だったんでありますね」
『土産だった……のか?」
と、小さい悪魔を落として、頭から何かを取り出してギュスターヴへと渡した。
それは、空き缶だった。なんか変哲もないコーヒーの空き缶だ。
「良くやった! 状態の良い遺物じゃねぇか!」
「え、そっちでありますか⁉︎」
「悪魔なんてどこにでも居るだろうが。それよりもコレよコレ!」
ギュスターヴは缶を手に持ってクルクルと舐め回すように見ていた。とても楽しそうだ。
「うっし、そんじゃ休んでいいぜ。ついでにいくつか薬も融通してやるよ」
「ギュスターヴ殿はその空き缶を探していたのでありますか?」
「まぁな、東京がこんなになってから人の作った面白いもんは見なくなっちまったのさ。そういう遺物を集めてるんだよ、俺は」
空き缶は面白いものなのか……
「ギュスターヴ様、変。気ニスルナ」
と、そんなこんなで俺と蘭丸と小さいのはマガツヒを補充して、一休みするのだった。
「え、なんか知らない連中に囲まれてるんだけど」
「ユート殿。この悪魔、気が付いたでありますよ」
起きたか。助けてやったから報酬を寄越せ。マッカでいい。
「え、何で寝起き一発目でタカられなきゃならないの私」
「ユート殿、とりあえず自己紹介が先では?」
そうだな。俺はユート。コイツは蘭丸。迷子をやっている。
「私はアマノザコ。……探しものをして旅してるよ」
「ほぅ! ユート殿、旅人でありますよ!」
それは良い。聞きたいことがあるんだが
「……いいけど、高いよ?」
おっと手が滑ったー(棒読み)
「痛ッ! 痛いから! 指だけでアイアンクローとかしなくていいから!」
「ユート殿、器用でありますねー」
と、“快く”情報を渡してくれるようになったらしい。まぁ、命を助けられた身の上で何かしらの要求を重ねてくるような奴は悪魔にも居ないらしい。
「……ねぇ、アンタはコイツやばいと思わないの?」
「何がでありますか?」
「おかしいと思おうよ……」
そんなやりとりののちに、アマノザコの知る情報は語られた。
ここ、『魔界』では十八年前に大きな戦いがあったのだとか。その戦いは『誰が勝ったのかすら分からない』ほど凄惨なものだったようで、その戦いでまともな自分保てなくなった悪魔も多くなったのだとか。
その一体が東京タワーの大蛇。炎と毒で目の前の敵を跡形もなく溶かし殺すのだとか。
「……毒ですか。厄介な手合いでありますね」
「多少の毒なら私が魔法で治せるんだけど、跡形もなくなってたらねぇ……」
東京タワーまでまだ距離があるのだから、熱対策ができる奴の協力でも取り付けよう。
幻魔:アマノザコ が仲魔になった!
「じゃ、今後ともよろしく。あんたらはそれなりに強そうだしね。けど、適当な所で逃げないとヤバいよねぇ……