東京砂漠を飛び越えて、魔王城(勝手知ったるトウキョウ駅)へと向かっていく。
そして俺たちは目にしたのだ。飛んで火に入る夏の虫というコトワザは正しかったのだと!
「虫じゃねぇよ! 天使様達だよ!」
などと太宰が喚いている。羽が生えてるし似た様なモノだと思うのだ。
とはいえ一応味方陣営だ。炎の巨人スルトが作っている炎の壁はどうにでもなるが、そこに飛び込んで消えていく天使はそのうち弾除けとかになる。
「……どうにかなるの?」
アレを殺せば良いのだろう? なら遠距離から大技使ったりすれば良い。そういう技術はどこにでもあるだろう。ミサイルみたいなのとか。
「なんと……ユート殿は随分と力に慣れたのでありますな」
「え、慣れの問題なの? ……あ、コレが若者の人間離れってヤツか」
などと馬鹿らしい話をして居ながらも、周囲の景色はとても破滅的だ。
どこを見ても死体だらけ。マガツヒに解けて消えたのも含めると犠牲になった悪魔は万単位なのではないだろうか?
あ、さっき殺したキマイラの死体あそこに積めば近道できるな。ポイッと。
「……え、この上通んのか⁉︎」
太宰が喚くが、これは致し方ない犠牲だ。人間の脚力でもマガツヒで強化すれば地番沈下と崩落だらけのこのあたりを抜けられるだろう。だがしかし、そうやって跳躍すれば流れ弾が当たるしなんなら狙われもするだろう。
この戦場で強いと感じる奴らは、どいつもこいつも一筋縄ではいかない連中なのだから。
「あれは……アブディエル様!」
そんな時太宰がアブディエルを見つけた。
ゆったりと歩きながら片手間で悪魔を殺している。
「……貴様は、太宰イチロウだったか? 東京支部が何をしに来た」
「俺たちも悪魔達から東京を守りたいんです! だから、戦いに来ました!」
「愚か者が。貴様程度の力では何もならずに死ぬ。死体が増えたところで悪魔どもはどうにもならないという事がなぜ分からない?」
「それでも、『正しさ』を信じて居たいんです」
そんな(こちらの事情を放り捨てた)太宰のキラキラ忠犬わんこな雰囲気の為かアブディエルはひとまず秘めていた殺意を納めたようだ。
「……ならば貴様に天使を付けてやろう。ここまで来たならばどの道戦うしかないのだ。ならば秩序のために戦え」
お目付役、あるいは東京支部への密偵だろうか? 偉い人たちは大変だ。太宰は知らないフリをしておくと無難だぞ。多分。
「だったらそれ口に出さないでくれねぇか⁉︎……いやいやいや! ソロネ様もドミニオン様もありがたい限りですから! 間違いなく!」
早速天使どもに媚び諂っている太宰よ。きっと彼は天使の手先として勤勉に働くのだろう。あぁ、楽しみだ。
「……えっと、どゆこと?」
今の太宰と殺し合うのはきっと、面白い。
そんな事を言外に匂わせると、あからさまに顔を顰められた。不思議だ。
「……狂犬が。私が手づから躾けてやろうか?」
その時はベテルの大将がいなくなるわけだが、問題はないのか?
「ナホビノの姿ではないと言うのに口だけは達者だな」
アオガミが抑えて居ないからな。それにこんな戦争日和なのだから気分が高揚するのも仕方ない。実際、貴女もそうなっている。
その言葉に鼻を鳴らし、アブディエルは去っていく。太宰に『その男にも他の悪魔にも殺されないようにな』と。
「なんで大天使様に喧嘩売ってんだよテメェはぁ⁉︎」
そして太宰がキレる。
なぜと聞かれても良い感じに揉めれば殺せると踏んだからだ。
「……いやいやわかんねぇから」
樹島の件だよ。あんなのがベテルの頭だと、ちゃんと対応しなきゃならなくて面倒だろう。
「あぁ……って納得できるか! ちゃんと話し合え!」
でも面倒じゃないか? どうせ結論は変わらないのだし。
「なんでそんな事思うんだよ?」
なんとなく。
「根拠ゼロか!」
そんなこんなの俺たち特攻野郎
俺! 太宰! 蘭丸! ザコちゃん!
以上4名! 終わり!
樹島は妖精の森で留守番をしている。生徒達はやはり極上のエサであるし、そもそも妖精どもが反旗を翻したら大変だ。
樹島は不満そうにしていたが、古巣を襲うのは気が引けたのだろう。最終的には不承不承了承した。
さてさて、現在の戦況はとても悪い。
総戦力では負けていないが、スルトを筆頭に大物を狩れる奴が少ないのだ。
アブディエル、メルキセデクというペプシマンみたいな見た目の大天使、フィン=マックール、あと俺と蘭丸。見かけたのはこれくらいか?
そんな事を考えながら片手間で悪魔を始末する。氷結魔法で固めた悪魔を武器にしての大暴れ。やれないことはないのだな。
「そういやお前さ、なんかナホビノ? になってる時より強くなってないか?」
「それは蘭丸も不思議に思っていたでありますよ。悪魔の身体がどうたらというお話ではなかったのでありますか?」
それについては俺もよくわからない。ナホビノだった頃に蓄えたマガツヒで俺が強くなったとかそんなんではないだろうか?
と返すと「それは違う」と隣から声がした。
ザコちゃんの声だった。
「ザコ殿?」
「……あれ? えっと、私?」
「なんか、『それは違う』って言ってたけどどうなんだ?」
「あぁ、ソレか……うん、違うよ。コイツはなんというか、慣れたんだよ。マガツヒに」
訳知り顔でザコちゃんが言い始める。
「コイツは悪魔の身体を一度手に入れて、マガツヒを知覚した。アオガミの補助があって、使い方を理解した。それでこの前、コイツ自身の感覚でマガツヒを使い方を習熟したんだよ。ほら、技術って頭でも身体でも慣れなきゃじゃん?」
「あー」と納得の声が出る。その理屈にようやく納得が来た。
「アマノザコ、だったか? よく知ってんな」
「まぁねぇ。私なかなかの神様だったっぽいし。wikiあったからね」
「知名度の基準そこかよ⁉︎」
そんな話をしながらスルトの炎の結界の前にやってきた。
まずは小手調べ。スルトの頭上に雷を落とす。直撃、しかしダメージは少ない。
スルトがこちらを見る。そして火球を放り投げてくるが、それを蹴り返してついでに雷を込める。
手傷は与えられた。ならば時間の問題だろう。などと思ったところでスルトの傷が癒えていくのが見える。
あの巨体を癒すマガツヒは多い、そう長くは戦えまい。とフラグを立てたのがいけなかったか、どうにも致命傷まで届かない。
これ以上は無駄だろう。一旦退く。
この時、俺の姿を見ている悪魔どもは、俺を化け物を見る目で見ていた。目の前のスルトでさえも。