ナホビノと蘭丸とザコちゃん   作:気力♪

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見るがいい(コミュ力微妙な)人類の極点を!

 目の前の巨人を見る。

 

 怒りや恐怖、そういった余分な感情が全て消え、純粋な戦意だけがその目にあった。

 

 アラマサとレーヴァテインは互角ではない。

 

 俺の持っている刀は所詮付け焼き刃、タケミカヅチから貰った『錬気の剣』に自分の力を込めて作ったモノだ。結界を破るためだけに。

 

 対して、スルトのレーヴァテインは本物だ。スルトと共に戦い抜いた過去が、その輝きをより強くしている。

 

 あと数回剣を合わせればアラマサは消し飛ぶだろう。遠距離戦で本領を発揮できていないのはスルトも同じだったらしい。

 

 

「足元!」

 

 ザコちゃんの声がした。スルトが振った剣の『余熱』が足元を溶かし、足を取られたタイミングで炎を叩き込む算段らしい。

 

 溶けて消える前に前に飛び出し、雷を放つ。“ジオダイン”、雷の魔法の大技だ。

 

 だが、空中に飛ぶ事はスルトにとっては計算内だったのだろう。雷を受け止めながらレーヴァテインをしっかり構え、俺に直撃させてきた。

 

 ガードはしたが踏ん張れない空中では衝撃は殺せず、ビル群への弾丸ライナーが決まってしまった。ボールが俺でなければ拍手喝采だったろうに! 

 

 ダメージは中々に大きい。しかし回復に時間は割く事不可能だ。

 

 火球の雨が間髪入れずに俺のいるあたりに降り始めたからだ。一発一発の火力は程々に、ダメージを負った俺を仕留められる程度。見た目に似合わずクレバーな奴! 

 

 瓦礫を抜けて火球をかわしていく。しかしスルトは俺を見逃さず、レーヴァテインから伸ばした炎の斬撃で狙ってくる。

 

 火球の雨が天井となり、回避に使えるスペースはほとんどない。

 

 そんな中で、身体は勝手に動いた。火球の天井と斬撃の間に体を潜らせて前に一回転、そのまま速度を維持して火球の範囲から抜ける。

 

 体育の授業がこんな時に役立つとは、義務教育は捨てたモノではないらしい。

 

「蘭丸の事を忘れて貰っては困るでありますよ!」

 

 そんな時、しっかりちゃっかり間合いを詰めた蘭丸が暴れ出す。

 

 無数の刀がスルトの喉元を切り裂き、反撃の炎を回避した後にレーヴァテインを持つ腕を切り刻む。

 

 スルトの巨体は大怪獣の如きものだが、それ故に小回りが効かない。

 

 定石通り、間合いの内側に入れば有利に戦えるようだ。

 

「蘭丸! 長居すると焼け死ぬよ!」

「理解してるでありますよ!」

 

 とはいえ、それはあくまで有利というだけだ。スルト本人の熱だけで有象無象は焼き払えるのだ。どんなに強い奴でも、その熱は手傷になり得てしまう。

 

 強い強いとは思っていたが、ここまでとは。

 もしかすれば、スルトを遠距離で仕留めようと思いついたのは『近接戦闘をすれば殺される』という恐怖がどこかにあったからかもしれない。

 

 だが、そんなことはどうでもいい。

 

 

 スルトは今、致命的な隙を晒している。俺への攻撃でのマガツヒ消費、蘭丸からのダメージ、それらが重なったが故だ。

 

 

 そう判断して全速力のままでスルトに突っ込み、奴の頭にアラマサを突き刺す。

 

 そしてそのまま雷を解き放つ体内からの雷はスルトの体を焼き尽くし、その命を焼き払った。

 

 

 再生はしない。どれだけの治癒能力があろうと、一撃で命を落とせば意味はない。

 

 楽しかったとスルトの死体に告げた後、俺たちは魔王城へと進むのだった。

 


 

 

 魔王城へと進む俺たち。不思議なことに襲われる事は少なくなった。本拠地なのだから腕利きの連中がゴロゴロ居ると思っていたのに残念だ。

 

 そんな事を思っていた時だった。

 

「……ユート殿、ザコ殿」

 

 蘭丸から、ピリついた声が聞こえる。蘭丸の指差す方を見れば、そこにはマガツヒに解けかけている死体があった。

 

 蘭丸の仕業ではない。蘭丸だとしてもここに転がっている連中を仕留めるには時間がかかるからだ。

 

 太刀筋はもう読み取れない。死体は消えかかっているからだ。だが、刀でやられたモノ、銃で撃たれたモノもいるような気がする。

 

「……ねぇ、一旦下がらない? これは私たち要らない気がするよ?」

 

 そんな気がしないでもないが、下がったところでどうしたという話になる。

 

 どこにいようと、コレを作った奴と戦うのならば誤差でしかないと。

 

 

 スルトやメルキセデク、アブディエルと同格の超強力悪魔が瞬殺されている、この首塚を。

 

 

 

「ほう、ナホビノの姿ではないのか」

 

 東京砂漠にて出会った強者。

 

 軍帽マントに日本刀、肩に風切る悪魔狩り。

 

 八雲ショウヘイがそこにいた。

 

 

「……ヤバい」

 

 ザコちゃんが反射的に戦闘姿勢に移っている。逃走を考慮に入れる事ができないが故にだ。

 

 蘭丸は刀を無数に展開し、マガツヒを全力を込めていた。

 

 そして、俺の身体は実力を『理解できた』事に震えていた。

 

 

 自分が、好き勝手に振るっていたナホビノの力の片鱗。その数倍の力を八雲は持っている。

 

 俺に出来ることで目の前のコイツに出来ない事はないだろう。俺は流れるままに強くなった結果であり、コイツはその先なのだから。

 

 

「……貴様、何故笑う?」

 

 そう言われて気付いた。俺は笑っているのだと。

 目の前の強敵に、勝てる訳のない戦いをする。そういうのが楽しいと思うからだろうか? 

 

 それとも、ただの強がりなのだろうか? 

 

 まぁ、どっちでもいいだろう。理由が分からなくてもやる事は変わらない。

 

 

 押し通る。目の前のコイツが敵ならば。死力を尽くすしか道はない。

 

 

 俺と八雲は笑いながら刀を打ち合わせる。アラマサの刃は容易く砕けた。

 蘭丸が刀だけを飛ばして包囲網を作る、マントを振るっただけで全て撃墜される。

 ザコちゃんの風が放たれる。八雲のマガツヒだけで無惨に散った。

 

 無理矢理近づいて頭突きをかまそうとする。速度が乗り切る前に刀の柄で撃ち落とされた。

 ザコちゃんが治癒魔法をかける、傷が深すぎて致命傷のままだ。

 そして蘭丸が本命の一太刀を解き放つ。俺たちを囮にして力を貯めた一撃だ。

 

 流星のように蘭丸は飛び、絶殺の一撃が放たれた。

 

 

 そして、その流星は八雲の左手で掴み地面に投げつけられた。

 

 そして俺に刀を、蘭丸に銃を突きつけた。

 

 俺も蘭丸も最後の力で絶殺の間合いからは逃れたが、それ以上何か出来る余力はない。

 

「……なるほど、多少はやるようだ」

 

 

 完膚なきまでに負けた。

 死んでないだけでこれ以上なにもできない。命を捨てても、傷一つにすら届かない。それが理解できるほどには、賢しく強くなれてしまった。

 

 

 その上八雲は死屍累々の俺たちを前にしても隙を見せない。眼を曇らせない。呼吸ひとつするだけで切り捨てらる確信がある。

 

 そんな極限の緊張の中で八雲は一つ声を出した。

 

「貴様、ナホビノにはならんのか?」と。

 

 それになんとか『今は相方も別行動をしている』と答えられた。

 

「ならばまだ使えるな」

 

 目の前の男はそんな事を言って武器を収める。何が目的だ? 

 

「貴様はベテルの狗なのだろう? ならば東京駅に行くがいい。貴様なら連中を多少は崩せるだろうからな」

 

 ……ベテル側は、勝てないと? 

 

「貴様が居なければスルトで全滅していただろうに」

 

『だから先に魔王城の連中を殺していたのだな』という納得がある。ベテルが全滅するのなら、魔王軍を滅ぼせば全部死ぬ。そういう事だ。

 

 

 だが、何故俺を見逃す? 絶対的な力の差はあるが、それは今この瞬間の事でしかない。

 

「それは貴様らが無価値だからだ。どれだけ強くなろうが信念も決意もコトワリもない貴様には負けはせん」

 

 

 つまり、舐めてると? 

 

「舐められる程度のモノしか持ち合わせておらんだろうが、()()()は」

 

 

 

ブチ殺す

 

 

 

 

 世界がクリアになる。マガツヒの流れがどこかに流れている事も理解できた。その使い方も。なら、その流れからマガツヒを掬い上げて力にできる。

 

 抜き打ちで放った至高の魔弾に似たナニカ。それは八雲の手で弾かれた。しかしその力は空気中に拡散し、蘭丸の元へと届いたのだ。

 

 

「……マガツヒではない?」

 

 

 これは『ランマニウム』という宇宙物質らしいぞ。とある宇宙人の力の源だそうだ。

 

 

 蘭丸が折れて転がっていたアラマサを握る。その柄からランマニウムで新たに刀が作られる。

 

 反射する光の中に銀河があるような、奇妙な大太刀が。

 

「いくであります」

 

 蘭丸からの平坦な声がする。大太刀に乗った蘭丸は、今までの比較にならない殺意で流星になった。

 

 八雲は刀を抜き、八度振る。

 

 八度の音が鳴り響き、八雲に8つの傷がつく。

 

 

「蘭丸ゥウ……シュトラール」

 

 そして、蘭丸の本命が放たれた。星を征く蘭丸の光。その一撃を八雲は刀で防御した。

 

「今だよ!」

 

 ザコちゃんがなけなしのマガツヒで回復を飛ばしてきた。これで限界を超えた動きがまだできる。そして、もう一度ランマニウムを精製して放出。それは蘭丸の背を押す風となり、八雲の防御を貫き吹き飛ばした。

 

「ユート殿! ザコ殿!」

「わかってる! アレで死ぬ訳ない!」

 

 ザコちゃんの回復の間合いに入り、防陣を組む。蘭丸も残りの力は少ない。ランマニウムは一時的に作り出したモノでしかなく、もう使い切られている。

 

 俺は当然死にかけだ。傷はギリギリ大丈夫だが、マガツヒが空である。気合いが、戦うだ意志が切れたらそのまま死ぬ。

 

 

 八雲が立ち上がりこちらに向かってくる。片手に刀を持ち、もう片方に棒状の何かを持って。

 

「見逃すと告げたつもりだったがな」

 

 そう八雲が言う。しかしそんな事は理解している。

 

 単純に腹が立ってブチ切れただけだ。

 

「そうであります。蘭丸星には、故のない侮辱は1000倍で返せという決まりがあった気がするのでありますよ」

「……まぁ、コイツらは雰囲気で生きてるからね。なんかするとは思ってたのさ」

「図星を突かれたから、という訳ではないようだが」

 

 俺に価値がないのは俺が一番知っている。たまたまアオガミと会っただけの人間で、自分勝手に生きている。だから俺への侮辱は正しい。

 

 だが、俺にあるのはお前程度に舐められるモノだけじゃない。少なくとも友人については宇宙に誇れるとと。

 

「なるほど、ジョカが気にかけるだけはあったな。謂われない侮辱については詫びよう。だが力の差は変わらんぞ?」

「力に差はあれど、生きれば勝者で死ねば敗者でありますよ」

「まぁ、私は見逃してくれるってんなら逃げるけどね!」

 

 さぁ、続きをしよう。そう八雲に向けて言えば八雲は刀を収めた。

 

「愉快奴らだ。殺すのは最後にしてやろう」

 

 ……嘘だな? 

 

「さて、どうだかな」

 

 そう、獰猛な笑みを浮かべて八雲は去っていった。先にあるのはベテルの陣地だ。

 

 そんな無警戒な去り際に一撃入れようとするも「やめんか」と叱責される。

 

 八雲の、仲魔ジョカだった。

 

「勝ち取った命を粗末にするモノではない。あの八雲に謝らせたのだぞ? あの一意専心カタブツ馬鹿をだ」

「アンタ、相方に酷い言い方するね」

「半身であるからな。己程度にはわかっておるよ」

 

 見逃される理由は、魔王軍を俺に殺させるためか? 

 

「お主は誘導せんでも勝手にやる類の人間だろうに」

 

 それはそうか。

 

「主らは、八雲の敵になったのだ。世に蔓延る悪魔(害虫)でなく、誇りを持って斬り合う敵にな。だからこそよ」

 

 それはなんともありがたい限りだ。どの道殺し合うのなら、気持ちよくやりたい。

 

 

 

 だが、そういう語らなかった胸の内を勝手に語るのは酷いのではないだろうか? 

 

「なぁに気まぐれよ。そちらの方が面白いとの思いつきとも言える」

 

 良い性格の悪魔だコトで。

 

 そんな俺の軽口をジョカは聞き流し、八雲の方へと向かっていった。

 

 

 東京駅はもう目の端に映っている。もうすぐ楽しい城攻めとなるだろう。

 

 

 

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