ナホビノと蘭丸とザコちゃん   作:気力♪

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ナホビノくんの小旅行!(区切るところが見つからねぇ!)

 お台場にやってきた。ザコちゃんも蘭丸も連れずに一人で。あ、アオガミと一緒なは……どうカウントすればいいのだろう?まぁいいや。

 

 イシスの話だ。彼女がホルスの首を求めたのはホルスの首の太陽パワーをエジプトの連中に返す為、といった感じらしいが、なぜにこうも警戒されているのだろう?

 

 先程ぶちのめした『セト』という邪竜はなかなかに強そうだった。

 

「……おそらく、測りかねているのでしょう。貴方のことを」

 

 イシスはそう言う。それにしてはなかなかの洗礼だった、セトという邪龍はシンプルに強く、交渉する前に襲ってきたのだから。

 

「そんなセトを小鳥のようにあしらった貴方だから、警戒されているのよ」

 

 なるほど。と、納得はしたものの理解できるかは別問題なのだけれど。

 

 閑話休題、テクテクと歩いて行くと廃材を使ってのちょっとした神殿が造られていた。

 

 その中に入ると、頭に月の飾りを付けている男性型の悪魔が見えた。

 

「コンス様、イシスです」

「……すると、そちらがナホビノか?」

 

 ドーモと挨拶をする。彼がエジプトの大将らしい。

 

「正直、イシスの冗談だと思いたかったよ。どうしてこんな所まで来たんだい?」

 

 イシスに誘われて、なんとなく承諾した。正直に言えばそれだけだ。

 

 だが、何故エジプト支部が妖精の森にアレコレしていた理由はわかった。

 

「……へぇ、その理由ってのは?」

 

 ミヤズちゃん

 

 そう口にした瞬間にコンスからの殺意が高まってくる。そして、そのマガツヒも。

 

 そのマガツヒは、ミヤズちゃんから伝わってきた感覚にとてもよく似ていた。

 

 ならば伝えるべきは素直に感謝の言葉だろう。

 

 コンスがミヤズちゃんに何かをした。その結果彼女は病弱だった身体を気にせずにいられる。その理由がなんであれ、ミヤズちゃんの命が救われたのは事実なのだから。

 

 

 そんな事を伝えると、コンスはため息を吐いた。

 

「……こっちも理解した。君は相当にイカれてる」

 

 その言葉を無視して、ひとまずやるべき事をやる。まずは、ホルスの首を渡した。

 

 イシスがそれを受け取り、しっかりと保管用の壺へと入れていた。不思議な話だ。

 

「……お前はどうしてホルスの首を持ち歩いていた?」

 

 コンスが尋ねてくる。正直に言えばこれも『なんとなく』でしかないのだが、一応理屈をつけるなら死者にはそれなりの礼儀は尽くすべしと教えられ育った日本人だから、というのが理由だろう。

 

「……教育、か」

 

 なにやら考え込むコンス。彼らエジプト神話の連中から見ると秩序の神の世界で育った俺のような奴も、醜く思えるのだろうか? 

 

 まぁ、どうでも良いか。俺は帰るが、お前はなにかあるか? 

 

「それならば、問いをひとつ。君は、これから先の闘争についてどう考えている? 東京の奴にその力を捧げるつもりか?」

 

 微妙だ。越水長官の言ってる事はそんなに間違ってもいないだろうし『とりあえず』で味方をするなら彼だろう。

 

 もちろん明確な理由があるのなら袂を分かつつもりではいる。そのくらいだ。

 

「では、君自身が玉座に着くつもりはあるのかい?」

 

 他に適任が居なければやるが、やりたくはない。

 

「……ひとまず方針は決まったよ。君の動きに合わせてどうこうというのは、無軌道にしかならないようだ」

 

 ……あぁ、これは同盟の誘いとかその辺りだったのだろうか? 個人の話と思い適当に答えてしまったのだが。

 

「結ぶべきかを考えてはいた。キミ個人をそう見るべきだと思ってたからね。だが……約定がどうこうで縛れはしないだろう、キミは」

 

 そんな事をコンスは言う。行き当たりばったりで生きている自覚はあるので、全くもってその通りだった。

 

 というか、現在の雇い主(仮)である長官だろうが理由があれば敵対すると言ったのだからそりゃ深く関わりたくはなくなるだろうな、うん。

 

「さて、無駄話が過ぎたがホルスの首の受領は完了した。この辺りを見て回るのなら口添えくらいはしよう」

 

 コンスのその言葉に否定を返す。使うかどうかはともかくとして、備えなければならない時期なのだから。

 

 そんな感じで俺はお台場から去っていく。コンスという男は信用に足る。いざという時の逃げ場として提案くらいはしておこう。

 

 

 去っていく最中にコンスの意思が響く。

 

「守ってくれている事には感謝するが、それはそれとしてミヤズに手を出したら殺す」と。

 その思いに深く了承の意を返す。

 

 俺はミヤズちゃんを内心で女神と称えたいのであってねんごろになりたい訳ではないのだ。

 


 

 ぴょんぴょんと砂漠を飛び越えていく。

 

 ナホビノになった頃は移動一つにしても大変だったが、慣れというのはあるものだ。

 

 かつては出来なかった空中ダッシュも、魔法を使えばなんとか出来なくはなかったり。

 

 ……消費するマガツヒが重く、大した距離も飛べないので趣味以外で使う事はないだろうが。

 

 などとどうでも良い事を考えていると目の前の岩山が動いていた。

 

 よく見ると、それは悪魔だった。オオヤマツミ。たしか神田のオオクニヌシ達天津神の仲間だったか? 

 

 ちょっと挨拶しようと前に降り立つ。

 オオヤマツミは明らかに正気を失っている、昔に受けたダメージが原因だろう。

 

 恐怖は感じなかった。今の俺はただ一人、かつて死をもたらしかけた相手を前に、冷静さを崩してはいない。

 

 どうしてコイツは、今も『戦い続けている』のだろうか。そんな疑問が浮かぶ。

 

 傷にのたうち回った結果としての災害はあるだろう。オオヤマツミの巨体は凄まじく、普通に動くだけでも多くのモノを踏み潰して破壊している。

 

 だがそれは、ダメージが原因で誰が敵なのか認識できていないだけなのだ。

 

 その魂はずっと覚えている。戦うと決めた理由を。だから、狂っていても折れていない。

 

『……少年』

 

 アオガミが声をかけてくる。

 その言葉に肯定を返して、俺はオオヤマツミの『調伏』を始めるのだった。

 


 

 オオヤマツミは今、真っ当な状態ではない。故にまず会話が通じるように思考を戻す。

 

『あれは、マガツヒの肥大化が原因の一つだろう。戦うための巨体が邪魔になっていると思える』

 

 アオガミの言葉に従って、オオヤマツミの身体を削り始める。

 

 奴は頑丈ではあるが、剣などに耐性を持ってはいない。今の俺では末端を切り刻んでも核にダメージを通してしまうだろう。故に身体を削るための効率的な方法、それはやはり水だ。奴にはそちらへの耐性を持っている。

 

 幸いにも、アオガミの技には水を、というか海を操る技があった。

 

滄海原(アオウナバラ)ノ禍」

 

 海を作り出し、波を操る事でダメージを与える一発芸だ。殺傷力なら他の技の方が高く、『海を作る』ために生活面での色々な応用は効かない。

 

 だが、今の状況には適した技だった。岩を削り、小さく丸い優しいモノに還すために。

 

「……ァア」

 

 波に削られ身動きが取れなくなったオオヤマツミは、少しの発し始めた。

 

「スサノ……オ……」

 

 それはアオガミの素体になった悪魔なのだろう。疑問よりも納得が先に来た。めちゃくちゃに有名だった。なんとなくだが俺でも知っている。暴れん坊な日本の神様だ。

 

『どうやら、そうらしい』

 

 そういう事ならアオガミの力の方向性には納得だが、それはそれとしてスサノオさん本悪魔からしたら『自分の死体を改造人間の素材にされた』ようなモノではないだろうか。

 

 本人がどう思っているのかによってはぶちのめす敵が増えるな。

 

『実際私は造られている。本人の納得はあったか、もしくは了承だとかは得られないほどに弱っているのではないだろうか』

 

 確かにそうか。

 

 と、脱線していた俺とアオガミの意識をオオヤマツミに戻す。

 

 理性はある程度戻っている。ならばハイとかイエスとか答えられるだろう。

 

『オオヤマツミ、お前を一度要石に封じたい。お前の安定化のためだ。封じた後は神田の寺にいるお前の仲間の元へ帰す事を約束する』

 

 アオガミの実直な交渉。それをオオヤマツミは承諾した。それにより調伏は完了しオオヤマツミは封じられ、小さな石へと姿を変えた。

 

 これは……ミニサイズオオヤマツミ? 

 

 なんてどうでも良い事を呟くもツッコミが来ない。アオガミのスルースキルはとても高いのだ。

 

 ノってくる蘭丸やツッコんでくるザコちゃんがいなければ、意外と寂しいものなのだろう。

 

 

 寄り道を続ける。神田の寺まではなかなかに遠いが、急げばどうにでもなる距離だった。

 

 こうして余裕を持って東京観光はしたことがなかったか? と思っていると視界の中に天狗が入ってくる。

 

 東京タワーの根本でなんやかんやの準備をしているようだった。というか、そんな最中にザコちゃんが居た。

 

 何をやっているのだろうか? と近づいてみる。ザコちゃんは「……ヤバい、ヤバいって! 逃げないと死ぬからアンタら!」と必死な声を出す。

 

 天狗達は不審に思っているが、不審に思っているのは俺もだ。どういうことなのだろうか。

 

「い、いやー……アレだよアレ! 古巣に忘れ物があったから届けて貰ってた……的な?」

「何を言うかアマノザコ! 我ら国神の為に力を貸してくれるとの言葉は偽りか!」

「微妙に偽りじゃないからその話は後で! マジでお願いだから!」

 

 む? ザコちゃんは攫われたとかではないのか……

 

「残念そうにすんな」

 

 ザコちゃんからの説明(というか天狗達の弁明?)はこんな感じ。

 

 国津神のパワーを高める為にザコちゃんの力が必要だ! 故にザオウゴンゲンという悪魔に助っ人交渉人を頼んだのだ! 

 そこまで言われたんなら一肌脱ごうじゃあねぇか! とザコちゃんが了承した、と。

 

 そんな感じの事を高いテンションからなる破茶滅茶な言い方で言ってきた。だから何故にそこまで隠すのだし。

 

『少年、アマノザコは恥を感じているのではないだろうか?』

「そんなわけないから! ……まぁ? ちょっと最近世界の中心が私じゃない感じがして? もうちょい活躍して見返してやろうかな? とか思ってないからね!」

 

 なるほど、特訓をしようとしていたのか。

 

「アマノザコ、貴様は天津神を滅する為にアマノサクガミの復活に力を貸すとの言葉はやはり偽りか!」

「あのお馬鹿を産み直して何かなる訳ねぇでしょうが!」

 

 なんだか天狗連中と話が拗れているようだった。アマノサクガミとは何者だろうか? 

 

「アマノサクガミとは、我ら国津の九天の王よ! 荒神を統べる大悪魔の力をもって天津神を殲滅するのだ!」

 

 それで、そんな儀式を前にザコちゃんは何をしようとしていたのだろうか。生み出したそいつをしばいて下僕作るつもりだったり? 

 

「……大体合ってるのが本当にヤダ」

 

 ならば手を貸そう。さぁ、儀式を続けてくれ。出てきたそいつを大人気なくボコせば良いのだな? 

 

「……あのね? 私にも情とかあるのさ。あんまり仲良くはなかったけど、自分の子供をそんな死刑台に送る為に生み出すような真似はしないから」

 

 ザコちゃんは続ける。

 

「私がアマノサクガミの儀式をしようとしたのは、確信が欲しかったからなの。私がアマノザコで、スサノオから産まれた悪魔なら……って」

 

 あー、ザコちゃんとアオガミは兄弟的なサムシングなのか。

 

「やっぱアンタはスサノオだよねぇ……」

「なんと、お主はスサノオのナホビノであったのか! これはめでたい!」

『簡単に言うならば、スサノオとは高天原を追放された神であり、国津神の大元だ。故に彼ら国津神に連なる悪魔から見れば偉大な悪魔がナホビノとして戻ってきたと言えるのだろう』

 

 なんだか、今日は『なるほど』とか『どう言う事だろうか?』とかのテンプレートな事ばかり言っている気がしてならないがそれはそれ。

 

 ザコちゃんは何を確かめたかったのか、については問わない。彼女にとって大切な事なのだろうから。

 

 

 まぁ、既に全てがぐだぐだになっているのだけれども。

 

「誰のせいだ誰の」

 


 

 ほんきでぐだぐだしていたら儀式を行う月齢が過ぎたらしい。『それでいいのか天狗?』と訝しんだが、国津神の連中は誰も儀式がまともに進むとは思っていなかったとのこと。

 だからこその助っ人のザオウゴンゲンさんが呼ばれたらしい。ヤバい事になった際に対処する為に。

 

 儀式をしていた天狗くんは知らなかったので「ま、誠ですか⁉︎」と狼狽えていたのだが。

 

 尚、ザオウゴンゲンさんは語らずに一礼だけして去っていった。彼の目の中にあった安堵とザコちゃんへの深い感謝は……まぁ色々あったのだろう。うん。

 

「間違いなくアンタと殺し合わなくて良かったって思ってたからだよ」

 

 しかし、アマノサクガミ関係の事は謝罪するべきだろうか? そこまで深く思い悩んでいないように見えたのだが。

 

「……まぁ、ね。自分の子供と殺し合う覚悟はあったけどやっぱりやりたくはなかったし」

 

 そこまでして確かめたい事なのか? 

 

「うん」

 

 ザコちゃんは、しっかりと言葉を発する。

 

「……ねぇ、アンタは神様になったら何したい?」

 

 ……なる予定はないのだが。

 

「もしもの話だよ、もしもの。アオガミの為に、天津神として多くの神と悪魔の世界にしたい? 今まで見たく、秩序に守られた世界にしたい? それとも……」

 

「全部全部、なにもかもなかったことにしたい?」

 

 ザコちゃんの目は、縋っているように見えた。俺に対してでも、アオガミに対してでもない。

 

 ならば、答えは素直に俺の事だけ考えていればいい。

 

外宇宙(そら)の友人に、誇れるようにしたい」

 

 口がすんなりと動いた。その言葉でザコちゃんはニカっと笑い。

 

「なんか、すっごく良いね!」

 

 と大きな声で口にした。

 

「まぁ、具体的には何も考えてないって事も分かったんだけどさ」

 

 それは仕方なかろう。神様なんぞやりたい奴がやれば良いのだから。

 少なくとも俺はやりたくない。

 

「はいはい」

 

 ザコちゃんはなんだか『あー、またなんか馬鹿考えてるよこの馬鹿親父は』とても言いたげな目でこちらを見ていた。

 

「あー、また言ってるよこの馬鹿は」

 

 というか、口に出して言いやがった。口に出してはいないぞ。

 

「目は口ほどに物を言うとか、そんな感じで」

 

 

 このやろう

 


 

 国津神連中にオオヤマツミを引き渡して感謝され、ついでにまた刀を貰った。あの神社なんでかしらんが錬気の剣が沢山ある。神田あたりで暴れていたサマナーが『捨てるのも勿体無いから』と残したモノらしい。

 

 この刀はザコちゃんのパワーを込めてザコちゃんソードにしてみようか? と尋ねるも否定された。『絶対にヤダ』との事。

 

 そして、妖精の森への帰路につく。なんとなくだがシナガワ周りに近づくほどに妖精の影響力が増しているようだ。

 

 妖精達もやはり善意だけではないようだ。構わないとはいえ、しっぺ返しに巻き込まれたくはない。

 

「大丈夫じゃない? アンタをどうにかできるようなしっぺ返しはそうそうないし」

 

 ザコちゃんの言い方はとても雑だが、間違ってはいないのだ。いないのだが……

 

「あ、デメテルだ」

 

 ザコちゃんが指し示す。そこには土に紙を刺して何かを記録している彼女がいた。

 

 ザコちゃんが声をかけると、元気に手を振りかえしてくれる。良い奴だよな本当に。

 

「やっほー、何やってんの?」

「拾った本を参考に、土の性質を調べてたの! サイエンスって素敵ね!」

 

 紙で調べるとは……リトマス試験紙? 

 

「そう! 作ってみたの!」

 

 この女神様本当に農業技術についてはノーブレーキだ。そのうち大規模野菜工場とか作りそう。

 

 だが、そういう調べ方をしてもどうにかできるものなのか? 

 

「もちろん! 汚染だとかの『不確定な状態』のままで対処するよりも、原因を特定して『定義した原因』に対処するのが良いらしいの!」

 

 ……すまん、分からん。

 

「私もあんまり分かってないわ!」

 

 マジか。とびっくりした所でザコちゃんの解説が入る。

 

「……情報に関連性を付けてるんだよ。『リトマス紙で調べた結果』と『その対処法としての過去の情報』に」

「マーベラス! もっと教えてくれないかしらアマノザコ!」

「ほら、悪魔って情報生命体だから。悪魔連中の残したあれこれだって情報をマガツヒで形にしてるのさ。だけどそういうのは不安定だから、他の情報で性質を上書きできるのさ。測って定めれば」

 

 ……それは、レッテルを貼ったらその通りになるという事だろうか? 

 

「貼るにしても根拠は必要だけどね。今回みたく『見えないモノ』に対しては効果あるんじゃないかな?」

 

 ほら、土の汚れ具合とか普通測れないしね。との言葉が加わる。

 

 だがそれならばデメテルほどの悪魔なら気合い一つで豊かな土地にできるのでは? 

 

「出来るんじゃないかな? 豊穣の女神の加護によって、土が綺麗になった! って説得力が足りてればさ」

「……それが原因なら、やっぱり私の力が衰えたからかしら」

 

 そんな風に落ち込むデメテル。ザコちゃんは付け加える。

 

「情報を定義する主体は人間だからね。誰も見てないところだと、デメテルが何かしても根拠にならないんだよ」

「センキュー、アマノザコ。そっか、だから試験紙なのね。人間の歴史が、科学が情報のバックボーンになる! とってもとってもハーベストね! 素敵だわ!」

 

 落ち込んだ調子が一瞬で喜び由来のハイテンションに切り替わる。素敵な心の悪魔だな、本当に。

 

「……あ、ごめんなさいついついこっちに夢中になってて用件を忘れていたわ! 私、貴方達に用があって来たの!」

 

 デメテルは言った。

 

「魔王軍の残党の魔王モロクを倒してくれないかしら?」

 

 ……理由を聞いても? 

 

「彼は、生贄をするタイプの魔王らしいの。それ自体は別に構わないのだけど、彼の生贄のやり方が問題でね、子供を炎に焚べるのよ」

「……え、魔界で子供?」

「そう! だから子供って所を諦めて『新しく産まれたモノ』を燃やしてるの!」

 

 ……新芽? 

 

「ザッツライ! だから仕留めたいんだけど、ホームの味方は頼りにならなくて助っ人を頼みたいの!」

 

 こんなにも母親じみているデメテルから頼りにされないとか、ギリシャ連中は泣いて良いのでは? 

 

 などと思ったが敵についても理由についても嘘は言ってはいないのだし、利用されてもいいだろう。了承だと返した。

 

「センキューソーマッチ! 代わりにやって欲しいことは何でも言って! 力になるわ!」

 

 蘭丸を誘うついでに妖精連中に聞いてみよう。

 

 デメテルを連れて森に入る。蘭丸はすぐに見つかった。蘭丸は樹島と共に色々と作っていた。食事の準備のようだ。妖精達がつまみ食いしようとして、蘭丸の小刀に追い返されている。

 

「ユート殿! ザコ殿!」

「あぁ、戻って来たのね」

「ただいまー」

「お帰りなさいであります!」

 

 作っているのは炊き込みご飯と汁物、具材は魚が多めだった。肉はその辺にあるだろうに何故だろう? 

 

「ずっと肉ばっかだったからよ」

 

 樹島はそう言う。肉ばかりだと魚が恋しくなるのだろうか? と思ったが食ってる肉がその辺で殺した悪魔の肉ならばナーバスにもなるか、うん。

 

「それにしても、蘭丸もサホリも手際良いよね」

「……まぁ、ずっとミヤズにやらせる訳にもいかないから」

「ミヤズ殿は頑張り過ぎてしまうでありますからね、手早くやらねば起きてしまうのでありますよ」

 

 なるほど。いい話だ。

 だがそれは急ぐ理由であって手際が良い理由とは違うのでは? 

 

「……うっさい」

「花嫁修行として仕込まれたというのは別に隠す事ではないでありますよ。蘭丸のも究極の蘭丸になる為に鍛えた技術の一つでありますから」

 

 なるほど。現実に帰ったら『素直に真面目に花嫁修行に打ち込んだ前時代的価値観の樹島サホリ』についておちょくってやろう。恥じる事では決してないが、割と面白い反応が返って来そうだし。

 





合計7754文字らしいです。書き終わる前にどっかで区切れ……
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