SAO ‐Gravity‐   作:たかてつ

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011 第二層 Part2

「ほな、さいなら」

 

俺の変な笑顔とヘンテコな関西弁のコンボにイライラしたのか、 「フンッ」 と鼻息荒く踵を返すと、すたすたすたすた撤収していくキバオウ一味。

 

「お疲れさま、ありがとな……」

 

コスプレ隊の両手剣使いはそっと耳打ちをして、LABを取って満足気なリンド達の背中を追った。

 

……よし、じゃあ行ってみるか。

 

猛牛ブルバス・バウの討伐から数分、俺は迷宮区塔に続くであろう道に向かって走り出した。

 

 

 

 

「おまえら、卑怯だぞ――!」

 

間違いなく誰もいないであろうジャングルの奥深く――俺は先ほどからハチとウシに追い回されている。

 

ワスプとカウの連携プレー。こんな酷い仕打ちはベータに無かった。

 

――とにかく、一石二鳥の方法を。

 

目前に巨木――ひらめきのまま、俺はそれに跳び掛った。

 

「ほいっ――!」

 

巨木の太い幹に右足の全体重を乗せるとバック転――同時にモーションをブースト。

 

逆さまになった状態でワスプに 《ホリゾンタル》 を叩き込んでカウの背中を左足で蹴る。

 

……ヤバい、成功しちゃったよ。

 

激しい激突音――ブモウォォ!! 巨木に頭突きを食らわしたカウが悲鳴を上げる。

 

即座にワスプへ追撃の 《スラント》 を浴びせ、タンブルしたカウを滅多斬り。

 

「……はあ、はあ、……これ、たどり着けるのかよ……」

 

生い茂る木々の隙間から僅かに見える塔――

 

俺はとりあえず、死を覚悟した。

 

「ん? 何だ、これ?」

 

ウインドウに表示されたドロップアイテムに目が止まる。

 

針や蜂蜜、皮や肉っぽいモノの中に、見たことも聞いたことも無いアイテム名が混ざっていた。

 

ささっと操作して 《YES》 をぽちっと。

 

シュパッと短い効果音――輝きをともなって現れたのは、とてつもなく軽い片手直剣だった。

 

「サーフェス・スティンガーって……安直な名前だな」

 

何度か適当に振り回してみる。

 

濃い紫色のグリップ、怪しく光る細く薄い剣身――あっという間に魅了された。

 

「……せっかくだし、もうちょっと頑張ってみるか」

 

俺は深いジャングルの奥へ、まだ遠い迷宮区塔を目指して踏み出す。

 

 

 

 

「どうりで……ジャングルより楽なわけだ」

 

数時間かけて辿りついた迷宮区塔――だが、予想外にモンスターはPOPせず、大半の宝箱が開けられていた。

 

若干の退屈さえ感じながら、ふらふらとマッピングをしていたら案の定、

 

「おっす、シグレ。フィールドボス戦、お疲れ!」

 

「…………」

 

楽しそうなキリトと、理由は全く分からないが、明らかに不機嫌なアスナがいた。

 

「お前、わざわざ森を抜けてきたのか?」

 

「ああ、死にかけた。もう行く気はしないな……」

 

「迂回路、知らなかったの?」

 

「知ってた。でも、つまんないでしょ? あっちは簡単すぎて」

 

「「…………」」

 

呆れるふたり。

 

「ああ、そうだ! キリト、これあげるよ」

 

素早く茶色い小瓶をオブジェクト化して、期待の表情を浮かべるキリトに手渡す。

 

「レアなほうのハチミツ、ドロップしたから何かに使って」

 

「ええっ!! いいのか、シグレ、……ありがとう」

 

「甘い物、俺はそんなに好きじゃないからな」

 

嬉しそうに破顔するキリト――それに鋭い眼差しを向けるアスナ。

 

――馬鹿な姫だな。こんな簡単な罠にハマりやがって。

 

俺はキリトの肩をぽんっと叩くと、

 

「アスナと仲良く使ってね!」

 

悪意と期待全開で――俺は素敵に笑ってみせた。

 

 

 

 

「おら、こいや、鼻ピアス!」

 

そんな挑発に切れたのか、ブモモと変な奇声を上げながら迫りくるトーラス。

 

頑強そうなハンマーで俺の頭を叩き割ろうと勢い良く振り上げた瞬間――腕ごと吹き飛ばすサーフェス・スティンガー。

 

――うへえ、凄っ。もうアニールブレードには戻れないな。

 

相性抜群の新たな相棒の正確さと鋭さに関心しながら、俺は肩に担ぐように素早く構える。

 

「うらあああ――!」

 

これまでよりも遥かにキレを増した 《レイジスパイク》 が筋骨隆々な裸体を切り裂く。

 

鮮やかに暴散する最中、後ろからぱちぱちと拍手が聞こえた。

 

「さすが、シグレ! あれからこんな奥までひとりで来るとは――――」

 

コスプレ隊の両手剣使いは笑顔で俺を持ち上げ続ける。

 

……気持ち悪ぃなあ。一応、用心しとくか。

 

俺は剣先を下げたまま小さく会釈して、

 

「あの時は危なかったな……あんたらのリーダー、もう少し何とかならないのか?」

 

すまなそうに目を伏せると、両手剣使いは俺に近づきながら、

 

「いや……リンドさんも大変、一生懸命なんだよ。何としてもディアベルさんに恥じないように……みたいな感じさ」

 

「そうか。でも、こんな時間まであんたらにマッピングさせて、上の連中は祝勝会とかしちゃってんだろ? 俺からすれば、最悪だけどなあ……ま、頑張ってね」

 

俺は悪戯にウインクすると、彼にくるりと背を向けて何度か手を振った。

 

「じゃあ、またな……」

 

彼の声には複雑な心境が入り混じっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、夜通し迷宮区でトーラスを斬りながら宝箱を開けまくってボロボロになった俺はタランへ。

 

入村直後、 【ちょっといいか?】 そんなメッセージが届いて、ふらふらしながら二人が待つNPC食堂に向かった。

 

 

 

 

何度も欠伸をしながら 《強化詐欺事件》 のあらましを聞いた俺は、

 

「そんな奴、ぶっ殺せばいいよ」

 

あまりにも極論すぎる発言に、キリトは苦笑いを浮かべて、アスナは、「ふざけないで」 俺を思いっきり睨みつけるなり、ぷいっとそっぽを向いた。

 

「ごめん、ごめん。冗談だから……ああ、そういえば、 《はじまりの街》 にも、そんな感じの奴、いたな……ちょっと手法は違うけど」

 

首を傾げるキリト。

 

「そうか……そういえばお前、何しに戻ったの?」

 

瞬間――目が覚めた。完全に失言である。

 

……まずいな。何て言おうか。

 

だが、寝不足と疲労で頭は動かない。

 

……どうしよう、全然思いつかねえよ。困った。

 

「ええっと……察してくれ」

 

小声でぼそっと呟く。

 

「は? ……何?」

 

キリトが怪訝な表情で再びそれを聞こうとすると、アスナが素早く袖を引っぱる。

 

「なんだよ……」

 

「もういいから……へえぇ、シグレ君にそういう人、いたんだね」

 

フードの下から覗き見える口元が少し笑っているように窺える。

 

――よし、馬鹿が勘違いしてくれた。

 

「ああ、そうなんだ……アスナ、後でこの鈍感に説明しといてくれ。よろしく!」

 

「了解」

 

「なんだよ、それ。ワケが、」

 

「いいから、……じゃあね、シグレ君」

 

席から立ち上がった俺に手を振るアスナ。

 

それに少し微笑んで見せると、俺は急いで宿に向かった。

 

――もう駄目だ。眠すぎて倒れそう。まじで死んじゃうよ。

 

 

 

(終わり)




ワスプ系からドロップしそうなのはレイピアやピックやスピア……

そんなわけで 《サーフェス》 と名づけてみました。

《シバルリック・レイピア》 並みの片手直剣です。(本日の思いつき)

軽量かつ特殊効果有りの武器は、単純に筆者の嗜好でございます。(前作参照)


それでは、次回もお願い致します。
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