強烈な閃光が巨大な二枚扉の向こう側に見えた直後、そこから倒れるように飛び出した男達。
疾駆する俺に、 「アルゴから話は聞いた――頼むぜ、シグレ!」 その絶叫が回廊中に反響する。
――了解。任せとけ。
瞬間、王室の門前を守るように湧き出たトーラス。
「どけよ、おらあ――ッ!!」
ハンマーを振りかぶる寸前、最高速のホリゾンタル――
「そいつは俺達がやる。行け、シグレ!」
カーソルが半減した両手剣使いの言葉に小さく頷くと、さらにダッシュを速めて絶叫と轟音が響くボス部屋に突入した。
――こんなところで、イチャついてんじゃねえよ。
寄り添うキリトとアスナを追い越してさらに加速。
フードの奥で、にやりと笑うアルゴ。
驚愕の直後、露骨に嫌そうな表情に変わるリンドとキバオウ。
荒れ狂うトーラス王が巨大すぎるハンマーと突き上げると同時に、俺はフロアを思いっきり蹴って跳んだ。
「なっ、」
左足の踏み台になった成金詐欺師は突然のことに驚愕の声を上げる。
――うるさい、悪趣味野郎。
空中でグリップを引いた瞬間、驚異的な加速――緑色の閃光が空中に鮮やかな軌跡を描く。
「ひどいな、われ……」
どうやら俺の天才的な戦術に百戦錬磨のリーダー様も呆れたようだ。
「いいだろ、別に」
隙を見て一気にダッシュ。
《ナミング・デトネーション》 に耐え切ったブレイブスのメンバーの脇を擦り抜けカウンターのホリゾンタル。
「来るぞ!」
その叫びに一旦後退すると見せかけて……
「ほいっと!」
豪華装備のオニーサンを踏み台にジャンプする。
「サンキュー!」
「……」
空中で反転しながらカウンターのレイジ・スパイクを決めて着地すると、隣でリンドのシミターが巨大な脚を切り裂いた。
「勝手に攻撃するな!」
「うるせえ、バカ。これしかできねえんだよ!」
そんなやりとりにキバオウ一味とコスプレ軍団は皆、お手上げ状態。
とはいえ、流石にスタンはまずいので後退。
「ちょっと、自由すぎ――――」
そんな姫の説教を無視してキリトに、
「俺は下に突っ込むから、お前らは飛んでくれ」
「ああ、まかせろ」
打てば響く――ラスト・アタッカー。
「じゃあ、お先に」
ダッシュでブレイブスの背後にまわりこみ、ハンマーが振り上げられた瞬間、さらに加速して巨大なトーラス王に突進する。
「ヴォラ――――――ッ!!」
放射状に広がる波動が眼前の犯罪者を飲み込んだ瞬間、俺は全力でジャンプする。
「どりゃ――ッ!」
膝から崩れ落ちる高級装備を踏み台にしてさらに高く――
「くたばれ、ウシイ――――!!」
眩い緑の光塊となったサーフェス・スティンガーがトーラス王の脇腹に直撃。
次の瞬間、王冠を襲う二閃が交わる。
……おお、さすが、仲良しコンビ。
光り輝くアニールブレードとウインドフルーレが巨大な王冠ごと額を貫いた。
……ああ、まただ。毎回これやんのか、こいつら。
「命で償えよ、詐欺師!」
「死んでケジメつけろよPK野郎!」
「殺せ! クソ詐欺野郎を殺せ!!」
……そう思うなら、黙って後ろから斬ればいいじゃん。
目の前の茶番にウンザリした俺は、だらしなく座ってなりゆきを見守る。
隣ではぷるぷるしているアスナを必死で制するキリト。
……ほら、姫。全員PKしちゃってこい。どうせ言っても分からん連中だ。こいつら。
「ネズオ……ネズハは俺達の仲間です――――」
……謝るなら、最初からやんなよ……つまんな。
俺はさっと立ち上がって、 「アクティベート、よろしく」 キリトの肩をひとつ叩いて二枚扉へ向かった。
「お疲れさん、アルゴ」
「お疲れさん、シグレ」
覗き見大好き少女は、予想通り扉の後ろに隠れていた。
「ベータの経験、ボス戦では全然だな」
「そうだナー、この先が思いやられるゼ」
何故か俺も扉の影に隠れる。
「次からあのクエストも始まるし……さらにもめるんだろうな、こいつら」
「だろうナー。オマエはどうするんダ?」
「めんどくせえから、スルーしたいんだけど……だって九層だぞ」
「だろうナー。オマエはそう言うと思ったヨ」
「それに、もし九層で終わらなかったら……やる気しねえよ」
「だろうナー。オマエ、耐えられなさそうだもんナー」
「ああ……無理だよ。絶対途中で投げ出すと思う」
「だろうナー」
「……俺って、そう思われてるのか?」
「分かるだろ、そんなの自分でサー」
「ああ、……まあ、いいけど……」
「あの子は、投げ出すなヨ」
「…………はい」
「ふーん……で、その人達どうなるの?」
珍しくエール酒を味わうミト。
「知らんし……まあ、ごちゃごちゃ言ってたけど、お宝山分けしてホクホクだろうから、それで手打ちにするんじゃないの?」
俺も真似してエール酒。
「そう……赦しを得たって、ことか……」
どこか寂しげに俯くミト。
「赦しねえ……その報いも今後……まあ、関係無いからどうでもいいけど」
「そうね……ところで、シグレはどうして戻ってきたの?」
俯いたままの問いに、俺は素直に答えた。
「いや、次の層から本格的に死にそうだから……行く前にミトの顔、見ておこうと思って」
「…………」
無視だ。想定内だが。
「まあ、クリスマスまでは死にたくないけどな……ミト、お前、イブってあいてる?」
「…………」
小さくこくりと頷いた。
(終わり)
何とかSAOP第1巻が終わりました。
ここまで読んでいただいた方々、ありがとうございました。
とりあえず、適当なところでSAOPからSAOアインクラッドにジャンプする予定……ですが、気分次第でございます。
ごめんなさい。
では、次回もお願い致します。