SAO ‐Gravity‐   作:たかてつ

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006 第一層 Part6

『――みんな、今はこの情報に感謝しよう!』

 

相変わらずディアベルが中央の高いところから偉そうに語る最中、俺はアルゴの攻略本 《第一層ボス編》 を読み直していた。

 

唐突にキリトが肘で小突く。

 

「アルゴ、大丈夫かな?」

 

確かに――これでは 《私はβテスターです》 とカミングアウトしたようなものだ。

 

「まあ、あいつは上手くやるんじゃないのか?」

 

キリトは無言で頷くと、ディアベルのほうへ視線を戻した。

 

――気持ちは分かるが、びびりすぎじゃないのか?

 

βテスターがどうこう言われるのは、もはやどうしようもない事――俺はそう割り切ってしまっていた。

 

およそ三百――その事実さえ理解出来ないのだから、どうすることも出来ない、と。

 

『――近くにいる人と、パーティーを組んでみてくれ!』

 

……ん? あいつパーティーって、言ったか、今?

 

隣に視線を向けると……あからさまに動揺を隠そうとしている少年の姿。

 

溜息をひとつ。キリトの腕を肘で小突くと、 「あれも誘ってきて」 再び攻略本に目を落とした。

 

 

 

 

「そっちから申請するなら受けてあげないでもないわ」

 

……めんどくせぇお姫さまだなあ。こんなの天使じゃねえな。

 

二人のやりとりを聞き流しながら、俺は攻略本に集中した。

 

 

 

「――E隊のサポートをお願いしていいかな」

 

……はいはい、雑魚処理係ということですね。

 

ふいに殺気を感じ……どうやら不本意なのは、お姫さまも同じらしい。

 

「了解。重要な役目だな、任せておいてくれ」

 

俺達を制しながら、最大限の社交性を発揮するキリト。

 

「ああ、頼んだよ」

 

イケメン風が噴水のほうに戻るのを見計らって、

 

「「どこが重要な役目、」」

 

ぎろりと睨むと、姫も睨む。

 

――まじめんどくせえな、こいつ。

 

困ったように、苦笑いで俺達をなだめるキリト……

 

 

 

 

五時半――第二回攻略会議が終了した。

 

俺は素早くキリトの腕を掴むと耳元で、

 

「後はこのお姫さまと仲良くやってくれ、俺は迷宮区に遊びに行くから」

 

「うわぁ、……じゃあ、気をつけろよ」

 

キリトの背中をぱんっと押して、二人に向けてにっこり笑ってみせるなり、急いで噴水広場の出口を目指した。

 

 

 

 

ちょうど迷宮区塔の半分、十階の回廊で探し人は見つかった。

 

「キリトが心配してたぞ。ほれっ」

 

俺はポケットから二枚コインを取り出して放り投げた。

 

それを軽やかにキャッチすると、

 

「そりゃー嬉しいナ……キバオウだ、どうしてもアイツのアニールブレードが欲しいらしいゾ」 

 

――なんだそりゃ? キバちゃん、あいつのファンだったのか?

 

ふいに最悪の妄想――もし、それが本当の狙いだったら、最低最悪の事態だろう。

 

「なかなかすぐには一枚岩って、ワケにもいかないもんだよナー……にゃハハッ」

 

アルゴは横を通り過ぎると、小さく笑って何度か手を振った。

 

 

 

 

カーソルが半分以下になっても相変わらず 《アイアン・サイズ》 を振り回し続ける姫……というより死神の自暴自棄に居ても立っても居られなくなった俺は、

 

「おらあああ――――」

 

アニールブレードを発光させながら、コボルトの群れに突っ込んだ。

 

「ちっ、」

 

……助けられて、舌打ちしてんじゃねえよ、馬鹿。

 

と、言ってしまっては元も子も無いので、コボルトに八つ当たり――

 

 

 

 

最後の一匹が暴散すると、無言で立ち去ろうとする死神。

 

「おい、いいかげんにしろよ、ミト。毎回助けられるわけじゃねえんだから」

 

すっと足が止まる。俺に背を向けたまま、小さく何かを呟いた。

 

「……は? なんて?」

 

「…………ほんとに助けて欲しかった時、いなかった。もし、あの時、シグレがいたら……」

 

……理由が分からないが、言わんとする事は理解出来た。

 

「それって、俺がひとりで、」

 

「違う! ……今更だから、もういい」

 

本当、助けて欲しい、俺、ひとり、違う、今更……俺は必死でキーワード、これまで気付けなかったミトからの無言のメッセージを繋ぎ合わせる。

 

その答えが脳裏に浮かんだ瞬間、無意識に身体は動いた。

 

――マズい、頼む、押すなよ。

 

その細く小さな身体を後ろから優しく抱きしめる――

 

「大丈夫。明日、終わったら俺からのプレゼント、楽しみにしておいて」

 

即座に離れる――ミトは驚愕のあまり固まっていた。

 

――お願いします。押さないでね。牢獄ぐらしなんて絶対嫌!

 

俺は、にこっと笑って後ずさりしながら、

 

「だから、明日は死なないでくれよ。じゃあな!」

 

くるりと踵を返すなり、全速力で回廊を走りぬけた。

 

 

 

安宿のベッドでごろごろしながら自己嫌悪を解消するべく、ひとり反省会。

 

……うわあ、なんであんなことしちゃったんだろう。

 

とにかく恥ずかしい。あげく間違っていたら……それこそ死ぬしかない。

 

「まあ、どうせ死ぬから……」

 

いつものオチに落ち着いたところで、 【何やってんの?】 キリトにメッセージを送る。

 

キリトにしてはかなり遅い返信――

 

【風呂】 とだけ。

 

――ああ、あいつの宿、ヤバい風呂あったな。

 

数日前、あの農家の豪華過ぎる風呂を借りたばかりだ。

 

――あれは、ハマってしまう。でも毎晩はなあ……迷惑だよなあ。

 

ふと、あいつの剣のことが気になりアルゴにメッセージ。

 

【お前どこにいるの?言い値でいい】

 

【キリトの宿。100コル】

 

ボッタクリというほどでもない金額で助かった。

 

……ん? 風呂じゃなかったのか? まあ、いいや。

 

退屈しのぎに本日仲間になった姫にもメッセージを送ってみた……が、無視。

 

――あいつ、最低だな。明日から無視してやる。

 

とはいえ、そんなものだろう。お姫さまメンタルなんて。

 

返信を待つ間、睡魔に襲われた俺はぼんやりと……妄想が膨らんだ。

 

【そこにアスナ、いたりする?100コル】

 

【いるヨ。10000コル】

 

――うへえ、凄いな、キリト。攻めるなー。

 

俺は、にやにやしながら瞼を閉じた。

 

 

 

 

……寝られねえよ。えろいことしか思いつかないじゃん。馬鹿野郎。

 

 

 

 

(終わり) 




果たして、湯気と光は消えるのか!?

……すいません。ごめんなさい。

では、次回もお願いいたします。
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