SAO ‐Gravity‐   作:たかてつ

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008 第一層 Part8

雷鳴のような剣戟音――

 

迫り来る太刀を果敢に弾くアイアン・サイズ。

 

「スイッチ!」

 

瞬時に下げた剣先が床に擦る瞬間、強烈な加速が俺を襲う。

 

「ぐっ、」

 

薄青い閃光と化したアニールブレードはコボルト王の巨体に迫る。

 

「うおおりゃ――!!」

 

瞬く間に突進技 《レイジスパイク》 の閃光が斬り抜けた直後、眩しいほど赤色に輝いた太刀が俺の背中を斬りつけようと……

 

ガアン、硬質の爆音と視界を染めるライトエフェクト――同時に柔らかな白い背中が激突。

 

「痛あ、」 「くっわ、」

 

そのまま数メートル転がってうつ伏せに倒れた。

 

「こっちに飛ばされるなよ!」

 

巨体を睨みつけながら苦言が飛び出た。

 

「しょうがないだろ!」

 

即座に起き上がるミト。

 

――あと、数撃ってところか。

 

俺は唸るコボルト王の命の残数を確認した。

 

「う…おおッ!!」

 

その瞬間、太刀が跳ね上がる。

 

「セアアッ!!」

 

一筋の流星――獰猛なコボルト王の巨体が後ろに退く。

 

……ここだ、今ならこいつを殺せる。

 

「行くぞ、ミト、」

 

俺は隣に視線を向けた――勇敢な死神は、唖然としていた。

 

「何して、……くそッ!」

 

俺は強引に足を踏み出す。

 

 

 

 

羨むほどに鮮やかな 《レイジスパイク》 がコボルト王をノックバックさせる。

 

「くっ……おおりゃあ!」

 

「グッルルアー!」

 

右腕が振り切られた瞬間、破壊的な咆哮。

 

「悪い、遅くなっ、」

 

「後でいい」

 

キリトの言葉を遮り、次の連撃に備える。

 

「こいつ、オロチと同じか?」

 

俺の短い問い掛けに、キリトは駆け出す瞬間、 「ああ、今のところ」 振り向かずに答えた。

 

「うおおお!」

 

前を行くアニールブレードが眩い輝きを放つと同時に、俺はスキルモーションをブーストさせる。

 

――頼むぞ、キリト。

 

ガンッと重く硬い低音の直後に巨体と薄青い光が俺の視界を染める。

 

――続け、アスナ。

 

だが、後方からの援護は、無い。

 

「チッ」

 

硬直を終わらそうと、無理矢理に身体を捻ってみる、が動かない。

 

……なに遊んでんだよ、姫。

 

直後、硬直が解ける。

 

「キリト!」

 

「ああ!」

 

ほぼ同時に剣を構えた瞬間、

 

「ハアアア―!」

 

アスナの鋭い気勢が耳に届く。

 

「駄目だ、アスナ!」

 

視線をコボルト王に……間に合え。

 

限界を超えて加速した俺の身体はアスナの向かう方向へ跳ぶ。

 

「「うおおッ!!」」

 

ほぼ同時に飛び込んだキリト――三本の閃光が交錯すると、勢い勝る太刀に吹き飛ばされる。

 

……あ、死んだかも。

 

宙を舞う最中、真っ赤なカーソルがゆっくりと絶対的な死に向かう。

 

フロアに叩きつけられた瞬間、視界の端で二人も重なるように倒れ込んだ。

 

――あっちはまだ大丈夫っぽいな……他人の心配なんて、してる場合か? 

 

すでに赤いラインはもう残って……残った。僅かに。

 

「死ぬかよ!」

 

我ながら現金なものである。

 

「ハアッ――!」

 

短い雄叫びと驚異的な跳躍でコボルト王を襲うアイアン・サイズ。

 

……遅えよ。馬鹿女。

 

笑みと同時に剣身を担ぎ上げた。

 

「いい加減、死ねよ、てめえ――――!」

 

 

 

《ソニックリープ》 が決まると同時に、びびるほどの絶叫を伴った 《ワールウインド》 が太刀を弾く。

 

「おお、すげぇ……」

 

俺の情けない感嘆の声に、ニヤっと笑みを見せるエギル。 

 

「うおお……りゃああッ!」

 

さらに追撃を加えるキリト。

 

反射的に俺の脚は限界まで屈曲し、それに連動して振りあがる右腕。直後に爆発的な加速――

 

「ぐおあ――ッ!」

 

高速で振り斬った剣尖は、輝くまま流れるように上昇する。

 

――死ね。

 

視界には数限り無く弾け散るポリゴンの美しい光彩。

 

片手剣二連撃技、 《バーチカル・アーク》 ――。

 

「グラアウッ!!」

 

喚きを上げるとばたばたと太い腕を振り乱す。

 

――タンブルか!?

 

「全員――フルアタック! 囲んでいい!!」

 

「お……オオオオオ!」

 

キリトの叫びに反応するエギル達。

 

刹那、飛び込んだのはミト。

 

「ハアッ――――!!」

 

高速で回転、アイアン・サイズの連撃が赤いカーソルを削る。

 

その後方から鞘を投げ捨て迫るアスナ――

 

「セアア――!」

 

渾身の 《リニアー》 が脇腹を突く。

 

……さあ、決めろ、キリト。

 

最もそれにふさわしい――あの男に視線を向けると、同時に叫ぶ。

 

『スイッチ!!』

 

一瞬だけ不敵な笑みを浮かべると、絶叫を響かせながら弾けるように加速――

 

 

 

 

 

 

 

 

《イルファング・ザ・コボルドロード》 を形作っていた煌く断片が俺に降り注ぐと、薄暗かった部屋が瞬く間に明るくなった。

 

僅かに残っていたセンチネルは消滅――先ほどまでの聴覚が狂うほどの絶叫も消え去った。

 

静寂…………ふいに緊張の糸がぷつんと切れる音を聞く。

 

どさっと腰を下ろすと、まだ剣を握り締めたまま固まっているキリトの元へアスナが向かった。

 

メッセージ――経験値、コルの額、アイテム。

 

「「うおおおおーー!!!!」」

 

「うわっ!」

 

至る所から突然湧き上がった大歓声に驚いて変な声が出た。

 

溜息をひとつ。

 

……よく生きてたな。まあ、次はどうだか。

 

ふいに白い肌――細い指先が俺の肩に触れる。

 

「お疲れ様」

 

穏やかなその声に、俺は苦笑いを浮かべながら、

 

「お疲れ……そうそう、あれがプレゼント……」

 

キリトに寄り添うアスナに向けて指を差す。

 

「ありがとう……でも、気持ちだけ受け取っておくよ」

 

「……そうっすか。残念」

 

俺がのっそりと立ち上がると、

 

「でも、いつからシグレのものになったんだよ」

 

こつんと大鎌で後頭部を叩かれた。

 

「誰かのものになる前に、しっかり捕まえとけよ……」

 

そんな戯言が口から出た――瞬間だった。 

 

 

 

 

『――――なんで、ディアベルさんを見殺しにしたんだ!!』

 

 

 

 

(終わり)




楽しいけれど、しんどいです。ボス戦の執筆。

そのうち 「おりゃー」 と 「せああー」 だけになりそうで怖いっす(笑)。

ここから始まる糾弾会も小説とアニメで全く印象が変わります。

ですから……なりゆきにまかせます。ごめんなさい。


では、次回もお願いいたします。
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