ガールズバンドに振り回される日常   作:レイハントン

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こんばんは。レイハントンです。

予定通り土曜日に投稿です。
今回は後輩たちとのお話ですね。新しい登場人物が3人居ます。

それではどうぞ。


第9話 後輩とパン屋の娘とツンデレ

第9話 後輩とパン屋の娘とツンデレ

 

 Glitter*Grrenのライブから数日。

 

 放課後。花高から自転車(今日は紗夜に起こされてから二度寝してしまった為)を漕いで向かったのは商店街。この時間になると主婦の人や小学生、高校生が多く見られる。特に部活をやっていない高校生だな。俺もだが……。

 

 1つ目のよく行く店は羽沢珈琲店。2つ目はパンが美味しいあの店。

 

 やまぶきベーカリー。商店街に通う人で知らない人が居ないんじゃないかって程人気なパン屋。店長には娘さんが居る。ここ最近は店番してることが多い。前はあまり見なかったんだが……あるきっかけだろう。親の手伝いはいいことだ。

 

 自転車を外に留めて鍵を2つかける。お店のドアを開けて入るとベルの音が鳴り響く。

 

「いらっしゃいませ、旭日先輩」

「おつかれ、山吹。今日も店番か?」

 

 やまぶきベーカリーの看板娘と言ってもいいだろう。名前は山吹沙綾(やまぶきさあや)。セミロングの髪をいつもポニーテールにしている。紗夜と同じ高校に通う1年生だ。

 

「はい。もうすっかり常連ですね」

「まぁな。否定はしない」

 

 ここの店も結構通っててな。いつの間にか山吹とも仲が良くなった。年は1つ下なのにすごくしっかりしている。紗夜から厳しさを抜いて代わりに優しさを入れたみたいな。………怒られそうだからやめとくか。

 

「部活とかやってないんですよね?」

「めんどくさいからな。勧誘はされたが断った」

 

 トレイとトングを取って今日買っていくパンを眺める。バイトで得たお金は基本好きなものに消えてゆく。その一部がやまぶきベーカリーのパンなわけだ。

 

「今日のおすすめは?」

「全部です」

 

 迷いない笑顔で答えられた。だけどそういうことじゃない。

 

「よし全部買っていこう。とはならん」

「えー? 旭日先輩なら出来ると思いますよ〜」

「その自信はどっから来るんだ?」

 

 なんて山吹といつもの冗談を話していると、お店のドアが開いた。ベルの音とともに訪れたのは。

 

「あー! やっぱり夕先輩だ! それにさーやも!」

 

 これまた少し厄介なのが来たな。とは思いつつ嫌なわけではないので普通に対応する。

 

「久しぶりだな香澄。元気にしてたか?」

「はい! 夕先輩も元気そうですね」

 

 元気そうに見えるか? 俺は普段からはしゃいだりしないタイプだぞ。

 

 この元気なのは戸山香澄(とやまかすみ)。中学の時に少し訳あって仲良くなった後輩だ。猫耳みたいな髪型をしているが、本人は星形と言っている。

 

 それにしても頭が良いってわけじゃないのによく花女に入れたもんだ。裏口入学とかじゃないよな? 俺は心配だ……。

 

「香澄のこと知ってるんですか?」

「ああ。中学の後輩。まさか山吹と仲良かったなんてな」

「入学式で捕まったんですよ」

 

 苦笑いに近い笑顔を浮かべながら言う山吹。

 

「なるほどな。それは災難だ」

「え〜酷い〜」

 

 今度はクスクス笑う山吹。外から見ると親と子供。いや、姉と妹って感じがするな。まぁ実際山吹には弟と妹が居るんだ。あまり会ったことはない。

 

「夕先輩このあと暇ですか?」

「急にどうした?」

「久しぶりに会ったから少し話したいな〜って」

「そういうことか」

 

 俺も1年コイツが何してたのか気になる。人様に迷惑かけてないかとか、勉強はどうしたとか。やる気だけはあるけど、いざやるとなかなか集中力がなかったからな。香澄は。

 

「なんか食いたいのあったら買っていいぞ」

「やった〜」

 

 自分が買う分をトレイに乗せてからトングをセットで香澄に渡した。ついでに財布から買える分のお金を渡す。

 

「山吹。また来る」

「毎度ありがとうございます」

「外で待ってるぞ」

「はーい」

 

支払いは香澄に任せて俺は一足先にやまぶきベーカリーを後にした。

 

 山吹とはここ最近の付き合いだが、割と仲が良い気がする。そんなことはないと言われればそうなんだが。冗談を言い合えるくらいがちょうどいい。

 

 自転車の鍵を2つとも外し、香澄が来るのを待った。数分もしないうちにあるドアの開く音が聞こえてくる。

 

「お待たせしました! それとお釣りです」

 

いや早いな。どんな会計したんだよ。

 

 お釣りを受け取り財布に入れる。話すとは言ったものの場所が決まってないな。

 

「じゃあ適当に場所見つけて話すか」

「ん〜。それなら良いところがありますよ」

「そんな所があるのか。なら場所は香澄に任せる」

 

 早速、こっちですと言って歩き始める香澄。その後ろを自転車を押して着いていく。こうして香澄の後ろ姿を見ながら自転車を押すのは1年ぶりか。月日が経つのは早い。

 

「相変わらず楽しそうだな」

「はい! 新しい場所で友達出来て、部活の体験してもう最高ですよ〜」

「お前らしい。だが授業は変わらず寝てるんだろ?」

「そ、そんなことないですよ〜。夕先輩も同じじゃないんですか?」

「否定はしない」

 

あんなもん催眠療法か何かだろ? 話を聞いてるだけでどんどん眠くなってくるのはおかしい。中でも眠くなるような声をしている人が居るとほぼ100%の確率で寝るな。

 

「そうだ! 最近私、バンドやりたいな〜って思ったんですよ!」

 

 バンド? 最近の女子高生はみんなバンドを始めたがる季節なのか?

 

「急だな。誰かに誘われたりしたか?」

「この前ありさとライブ見に行ったんですけど、その時キラキラドキドキして」

 

 待て待て。誰だありさって。新しい友達の名前言われたってわからんぞ俺は。……新しい友達が出来るのは良いことだ。

 

「それで始めようとしてるのか?」

「はい。そのうちライブやるので、夕先輩も呼びますね!」

「ああ。楽しみにしてる」

 

 ここ最近バンド始める奴が多い気がするな。日菜には内緒にしてるみたいだが、紗夜もバンドを組んでいる。あまり長続きはしていないみたいだが。羽沢と上原も幼なじみとバンド組んでるみたいだしな。これはガールズバンド時代到来だったりするか?

 

 なんて考えているといつの間にか香澄との距離が空いていた。少し足早に歩いていくと少し細い道へと入って行く。時折香澄が見ている星のシール? ようなものが目に入る。出会った時から星が好きみたいだから目に入るのも仕方ないか。

 

だが道が入り組み過ぎだ。

 

「香澄。どこに行くんだ?」

 

少し不安が出たので香澄に聞いてみる。

 

「さっき言ってたありさの家です」

「急に押しかけて大丈夫なのか? しかも知らん奴まで居て」

「大丈夫ですよ! ありさなんだかんだ優しいので!」

 

本当か? いくらなんでも知らない奴まで歓迎してくれるのは少し怪しいぞ。そもそもどこで出会って、なに繋がりで仲良くなったんだ? 謎が多過ぎて着いて行くしか選択肢がないのが辛すぎる。

 

しばらく道を曲がったり進んだりすると立派な門らしきものと木の塀に囲まれたデカイ家が視界に入ってきた。こんな所にこんなデカイ家があったとは知らなかったぞ。

 

「ここがありさの家です」

「デカイな。それに遠い」

「夕先輩ならすぐじゃないですか〜」

「否定しづらいな」

 

 自転車を漕ぐのは割と早い方だと勝手に思ってるだけだから気にしないでくれ。早ければ早いほど喜ぶのは日菜。怒るのは紗夜。これ重要だ。

 

 すると香澄は門の小さなドアをノックもせず開けると中に入って行った。普通勝手に入っていいものなのか。つうかインターホン付いてるしな。

 

仕方なく俺も自転車に鍵をかけて勝手に入った。この場合は仕方ない許してくれ紗夜。

 

「あーりーさ! 遊びに来たよ!」

 

これでもかと言うくらいの大きな声。元気があってよろしいが、近所迷惑的に考えると全然よろしくない。元気なのは香澄の取り柄だから許してやってほしい。

 

しばらくすると2階の窓が開いた。そして。

 

「うっせー!  大声で人の名前呼ぶなー!」

 

 ド正論。グーの音も出ない。しかしそれはブーメランだぞ金髪ツインテールの香澄の友達。なんなら君の方が声デカイ。

 

「ありさ〜。先輩連れてきた〜」

「ちょっ?! ……戸山さん。先輩を連れてくるなら早めに言ってくれるかしら?」

 

 急に声のボリューム下がって言葉遣い変わったぞ。それに全然聞こえないんだが?

 

「だって、夕先輩」

「ああ。とりあえずめんどくせぇのはわかった」

 

これはまた骨が折れそうな奴が出てきたもんだ。

 

 

 

 

 

 あの後、近くの蔵のに移動して自己紹介からスタートした。中には沢山の段ボールやら荷物がある。片付けをしているんだろうか。

 

 金髪ツインテールの子は市ヶ谷有咲(いちがやありさ)。香澄と同じ花咲川の生徒。性格はツンデレそのものだな。だが俺が1番驚いたのは自主休講をしていることだ。

 

「君が自主休講してる子なんだな」

「私のこと知ってるんですか?」

「まぁな。幼なじみが同じ高校で、前に話を少し聞いたことを記憶の隅から引っ張りだしてきた」

 

 つまりほとんど覚えていなかったと言うことだ。だが少し違うのは記憶に埃が被っていただけであって、忘れていたわけではない。聞いたのは4月の頭なんだけどな。記憶力が無さすぎる。

 

「入学式に代表者が休んで、初日からたるんでるって」

「うっ……」

「あんまり気負うなよ。少ししっかりし過ぎてる奴なんだ」

 

 買ってきたメロンパンを袋から取り出して一口食べた。結構厳しめな口調で話すようだが、目上に対して敬語だ。実は口悪いパターンはさっき見たしな。

 

「旭日先輩はコイ……戸山さんとどういう関係なんですか?」

「いや、猫かぶらなくていいぞ? 中学の時からの先輩後輩。結構大変だ」

「そ、そうですか。なんかそれ、すげーわかります」

 

 変わり方がすごいな。そしてなんの話? と言わんばかりに首を傾げる当の本人だが、一緒に居ると大変だって言ってるんだよ。元気が良すぎるのも時には……な?

 

「本当に旭日先輩が普通な人でよかったです」

「ずいぶん香澄に悩まされてるようだな。だがこのくらいでへばってたら、もたないぞ?」

「えー?! マジですか?」

「マジだ。マジ」

 

 言われてる本人もいつの間にか俺の買ってあげたパンを食べている。揃って紗夜にお叱りを受けるやつだな。行儀悪いわよって。

 

 香澄もなんだかんだ、俺を真似てしまった部分ある。あとは智紀の悪い部分か。なぜ涼子のいい部分を真似なかったんだろうなコイツは。

 

「悪い奴ではないんだ。ただ少し勘違いを招いたりする」

「勘違い…ですか?」

「ああ。少し昔話をしよう。香澄には内緒だぞ」

 

 俺はそう市ヶ谷に告げてパンの入っている袋を鞄にしまった。

 

「香澄。自転車敷地内に停めさせてくれるみたいだから市ヶ谷さんと移動しに行ってくる」

「はーい」

 

 香澄に告げて俺と市ヶ谷さんは蔵を後にした。蔵の外に移動し、ある程度離れたところで一旦立ち止まる。

 

「さてと。どこから話すか」

 

 あれは中学2年生の2月の寒い季節だった。世間ではバレンタインデーという言葉が飛び交う。学校でもその話題でもちきりだったな。

 

 

 

 

 

 

「なぁなぁ、お前何個貰った?」

「3つくらいかなー」

 

「はい、これ友チョコ」

「ありがとう〜」

 

 あっちこっちでチョコの話か。別に食ってないのに口の中が甘く感じる。毎年毎年飽きないのな。

 

 俺は対して行事ごとに興味はない。周りで行事ごとに興味があるのは日菜くらいか。この前は氷川家と一緒にスキーに連れてかれ。夏は海、花火。数えたらきりがない。

 

 学校が楽しいなんて思ったことは一度もない。特にやりたい勉強もないしな。ここに来るくらいなら家で寝ているか、バイクいじってる方がいくらかましだ。

 

 わいわい騒いでいる教室は居心地が悪い。

 

 

 

 

 

 

 

 時は過ぎて放課後。授業がすべて終わりみんな部活へと行くんだが、今日はどこの部活もないようだ。今日は寒いからとっとと帰るか。どうせ日菜は家に速攻帰ってこたつにでも入ってるんだろうな。そして寝て紗夜に怒られる。いつものパターンだ。

 

 今日は早めに帰ろうとさっさと準備をして教室を後にした。ストーブで温まった教室を出ると、廊下はひときわ寒い。吐く息も白くなる。階段を下りて、昇降口で靴に履き替える。駐輪場に行くと今の時間帯に帰ろうとしている生徒は少ないようだ。

 

 自分の自転車を引っ張り出して一足先に家の方へと漕ぎ始めた。

 

 途中まで帰ったところで大事なものを学校に忘れてきたことを思い出した俺は再び引き返し、あの子と出会った。少し息を切らしながら登る階段は妙に辛く、教室がある廊下は長く感じた。教室のドアの前まで辿り着くと、中から何やら声が聞こえてきたが強めにドアを開け放つ。

 

 そこには男子生徒に両肩を捕まれた猫耳みたいな髪型をしている同じ中学の女子生徒の姿があった。

 

「取り込み中悪かったな。すぐ済む」

 

 そう言って教室に入る。無神経にも程がある? それはど正論だが早く帰りたいんでな。

 

「待てって! 普通見なかったことにしてドア閉めるだろ!」

「そんな時間俺にはない。すぐ終わるんだ。そのあと楽しめ」

 

 告白してる途中なんだか、いけないことをしてるのかは俺にはどうでもいい。日菜から朝もらったチョコを忘れてくるのは本人に悪いからな。ちゃんと食わないと。

 

「んだよアイツ……」

 

 舌打ちの後に聞こえてきた声に特に反応することなく自分の机の中からラッピングされた箱を取り出した。すぐに見つかり後は帰るだけ。なのになぜだろう。俺はそのまま後ろに振り返った。

 

「嫌なら断れ。嫌なもん引きずって過ごしても何にもいいことなんかない」

「お前何言って───」

「どうなんだ?」

 

 別に助けるメリットはない。なのになぜだろう。少しでも俺に良心があったのかもな。

 

 

 

 

 

 

「なんとなくで人助けしたんですか?」

「まぁそうなる。もの好きなんだ。たぶん」

 

 自転車を敷地内に移動して鍵をかけた。

 

「もう俺は側に居てやれない。強いように見えて香澄は弱い所もあるんだ。だから市ヶ谷さん。香澄のこと頼むな」

 

 きっと市ヶ谷さんなら。いい友達になってくれると思った。苦労する部分もたくさん……というより、苦労する部分が大半だろう。でも、一緒に居ると楽しいのは保証出来る。

 

「何かあったら言ってくれ。連絡先は香澄から適当に聞いてくれればいいから。それから、学校も悪くないもんだぞ? 意外と」

「そう……ですか。何かあれば相談します」

 

 めんどくさがりだけど、根は真面目そうないい子みたいだな。市ヶ谷さんは。

 

 また1人。知り合いが増えた。

 

 そしてなぜか蔵の片付けを手伝わされた。

 

 




どんどん広がっていく主人公の友人の輪。果たしてどこまで広がってゆくのか。お楽しみに。

さて次回は日常編の最後で主人公にとって大事な立ち位置のキャラが出てきます。そしてようやく本格的にRoseliaのバンドストーリーに突入します。

それではまた次回。
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