ガールズバンドに振り回される日常   作:レイハントン

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こんばんは。レイハントンです。

やっとRoseliaバンドストーリー前半です。
ここまで来るのに結構かかってしまいましたね笑
実はバンドストーリーの1話の前半は日常編でやっていたりします。今回から本格的に始まるということで。

それではどうぞ。



バンドストーリー編
第11話 歌姫との出会いは唐突


第11話 歌姫との出会いは唐突

 

旭日家 自室

 

 声が聞こえる。誰かの声が。

 

「夕…!」

 

 誰だ?

 

「いい加減起きないさい!」

 

 誰なんだ? 俺を呼んでいる……のか?

 

「学校遅刻するわよ?! 昨日、遅刻したんだから起きなさい!」

 

 この声は……紗夜?

 

 ゆっくりと目を開けた。まだ視界がボヤけているが、はっきりとわかることがある。あの髪の色。声。容赦なく人の布団を引き剥がしてくるのは。

 

「紗……夜。もう朝───」

 

 そこまで言ったところで飛び起きた。

 

「なんだ……何にも」

「急にどうしたのよ。具合でも悪いの?」

 

 怒られるかと思ったが、あまりの奇行に心配されてしまった。具合は悪くない。むしろ調子がいいくらいだ。

 

「妙にリアルな夢を見たような……見てないような」

「本当に大丈夫なの? ……前にも刺される夢を見たとか言っていたけれど」

「そんなこともあったな。……まぁ大丈夫だ」

 

 ストレスなのか。寝不足なのか。理由はよくわからんが、大丈夫だろう。こうして生きているわけだし。……刺される夢とかはあんまりよくなってネットに書いてあった……。

 

「私は先に行くわね」

「気をつけてな。それと、ライブ頑張れよ」

 

 部屋を出て行く紗夜を見送り、俺は再びベッドに倒れ込んだ。

 

 今日は紗夜が出るライブの日だ。開始時間は夕方だが、学校が終わったらすぐCiRCLEに行かないと。準備やらなんやらで俺たちスタッフは働かなければいけない。

 

 前日遅くまで残っていたから、帰るのが遅かったのもあって今日は寝不足気味だ。いつも通りに起こしてもらったが、また変なことを言ってしまった。

 

 起きた時間的には全然学校に間に合うが、すぐには動きたくない。と言っても現実は動かないといけないから無理なようだ。

 

「今日も頑張るか……」

 

 ふと机の上のパソコンに目を向ける。ネットサーフィンの途中で寝落ちパターンだったんだろう。電源が付いたままだ。

 

 パソコンの電源を落としてリビングへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 リビングに行くと珍しく父さんがコップを片手にノートパソコンをいじっていた。

 

「おはよう、夕。さっき紗夜ちゃんに会ったよ」

「おはよう。いつも助かってる」

 

 それにしても今日は珍しいな。

 

「夜勤明けじゃないのか?」

「明日休みだし、たまには夕の顔も見ておかないとと思ってね」

 

 父さんの仕事はサーバーエンジニア。24時間体制で監視したり……まぁ結構大変な仕事だってことを知ってもらえればいい。でもそういった仕事をする人が居ないと、ネット関係のものは使い物にならない。

 

「コーヒー飲むかい?」

「評価が変わるといいな」

「言ってくれるね〜」

 

 とは言ったものの父さんの作るコーヒーは本当に美味しくない。味が安定していない。甘過ぎたり、苦過ぎたり。さて、今日はいったいどんな味になるのか。

 

 スマホをポケットから取り出して、誰かから連絡が来ていないか確認した。さすが遅くまで寝ているだけはある。通知がごっそり溜まってる。まず1つは紗夜。もう1つは日菜。なぜ日菜? そして智紀。あとはほっといていいやつだな。

 

「よーし。出来たぞ、夕」

 

 意気込んで持ってきたコーヒーをテーブルに置く父さん。しかし、なぜかコーヒーの色ではなく白く濁っている。

 

「何入れた?」

「牛乳」

「もはやコーヒーじゃなくてカフェオレだ」

 

 やっぱり俺の父さんは少しズレてる。

 

 だとしたら……めんどくさがりなところはいったいどっちから来てるんだ? 父さんはああ見えて結構マメなんだよな。じゃあ母さんか? ああ見えてしっかりしてたんだよな。

 

「今日はバイトかい?」

「バイトだよ。ライブの日」

「ライブか。大変だね」

 

 大変と言えば大変なんだが。今日はバイトリーダーもスタッフさんもたくさん居るし大丈夫だろう。

 

 それに今日はある人の歌を聞きたいのもあるんだ。あまり歌に興味を示さないから、割と珍しいことでもある。

 

「夕が居ないと回らないか?」

「割と居なくても問題はないけど、毎回駆り出される」

「居ないとダメなんじゃないか」

 

 果たしてそうなのだろうか。おそらくめんどうな人たちの面倒を見る人がいないからなんだろうけど。そう言えば、ここ最近は後輩の面倒を見ることが増えたな。

 

「夕。何事も経験だ」

 

父さんの言葉はどこか重くて心に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 いつも通りの時間に家を出た。ふと駐輪場に止めてあるバイクに視線がいく。

 

 高校入ってすぐに免許をとらせてもらったんだ。母さんがたまにバイク乗っててカッコいいと思ったのがきっかけで興味を持った。ちなみに今乗ってるのは母さんのバイク。高校の校則で登校する時に乗るのはダメだが。

 

 もうすぐ1年経つから2人乗りが出来る。人を乗せて走る勇気もないし、基本は乗せることはないだろう。

 

 いつまでも見ていても校則が変わるわけじゃない。学校へと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく歩き花女付近にたどり着いた。今更ながらせめて自転車で来ればよかったと思う。だがな……最近運動不足気味でな。体力が落ちた気がする。

 

「おはよう、夕君」

「涼子か。おはよう。今日は遅いんだな?」

「昨日遅くまで残ってたからね」

 

 流石に涼子も無理があるか。機材トラブルさえなければすぐに帰ることが出来たんだけどな。厄介なもんだよ。全く。

 

「夕せんぱーい! 涼子せんぱーい!」

「ねぇ、なんかギターの声聞こえない?」

「それに香澄の声も」

 

 香澄の声はまだわかる。だが何でギターの音まで聞こえてくるんだ? ……まさか、な。そんなわけないよな? だって登校中だぞ?

 

 俺はしばらく会わないうちに奴の恐ろしさを忘れていた。

 

「おっはようございまーす!」

「おはよう……香澄ちゃん。それと、久しぶりだね」

「はい! 元気そうでよかったです!」

 

 朝からギターを弾きながら登校とは。市ヶ谷さんも大変なことで。心中お察ししますという言葉をここで使うことになるとは。香澄の後ろから走ってくる市ヶ谷さんに視線を向けながらそんなことを思う。本当に大変そうだ。

 

「香澄! やめろって言ってんだろ!?」

「おはよう、市ヶ谷さん。朝から大変だな」

「お、おはようございます……先輩。と」

 

 そうか。涼子のことはまだ知らないんだよな。

 

「俺の腐れ縁の1人」

「瀬名涼子です。香澄ちゃんがお世話になってます」

「あ、はい……市ヶ谷有咲です。お世話してます」

 

 言葉の通りだな、全く。そしてたちが悪いのは香澄自身気にしていないということ。そんな状態紗夜に見られたらあとが怖いぞ? というか、生徒会に取り締まられるだろ。

 

「まぁなんだ。……頑張れ」

「私たちの思いは託したよ」

「丸投げはキツイです…先輩」

 

 こうして朝からとんでもない光景を目にした俺と涼子は香澄たちと別れて学校へと向かった。そして「あり得ないからー!」と花女の校門付近から声が聞こえてきたのを聞いた俺はそっと思う。

 

 だろうな。と。

 

「ライブ頑張らないとね」

「機材トラブルがなければいいな」

 

 ライブか。今度紗夜にファストフード店でポテトでも奢るか。ここ最近ライブの練習で頑張ってたし。人間ご褒美がないとしんどい。何かあるたびにご褒美だと思ってコーヒー飲みに行ってる奴が言っても信用性はないか。

 

 

 

 

 

 

 

 時は過ぎて、あっという間に放課後。決してぼーっとして過ごしたわけじゃない。

 

 学校から数十分ほどで着いたのは俺のバイト先でもあるライブハウスCiRCLE。ついでに言うと昨日も今井と来た。ここのコーヒーはなかなか美味いぞ。

 

 今日はライブがあるからかいつもより人が多い。特に女子。学生が大半だろうか。ガールズバンドは学生の間で流行ってるらしいしな。俺の通う学校でも話題になっている。

 

 周りを少し見渡すと、ある1人の人物が視界に入った。背中の辺りまで届く白髪。キリッとした目。黄色い瞳。間違いない。

 

 

 湊友希那。

 

 

 紗夜の演奏を聴きに行く以外で唯一ライブを見た人物。スタジオの予約にもよく来るお客さんの1人だからよく覚えている。

 

 そんな時、ふとあることが気になった俺は真意を確かめるために声をかけた。

 

「湊友希那…さん?」

「あなたは……ここのスタッフの人。それにリサが話してた」

「今井を知って……前に一緒に居た人ですか?」

「敬語はいらないわ」

 

 とりあえず繋がりはあったというかこの前出来たばっかりだったな。世の中狭いもんだ。

 

 周りから見ればかなり目立っていることだろう。湊友希那のライブを何度か観に行ったことがあるが、どんでもない歓声で鼓膜が破れるかと思った。紗夜の時も結構な歓声が上がるけどその比じゃない。別に紗夜が負けてるとかそう言う意味じゃないからな。

 

「いつもソロだな。あんた」

「いいメンバーが見つからないだけ」

「ってことはいい人が居たらスカウトするのか?」

「そうね。フェスの為に必要だから」

 

 フェス? それよりも湊友希那はまだ氷川紗夜というギタリストを知らないのか? なら今すぐ知るべきだと俺は思う。もしかしたら紗夜なら。

 

「メンバー探してるなら、氷川紗夜って名前。覚えておいた方が今後の為になる」

「氷川…紗夜?」

「ああ」

 

 少しばかり考えた後に振り返った。そして。

 

「覚えておくわ」

 そう言って湊友希那はライブハウスの方へと足を運んで行った。………なぜだろう。ずっと前にもこんな話をしたような気がする。湊友希那と話すのはこれが初めてなのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 休みの日。用事ついでに外に出たわけだが、なぜだか遠回りをして帰りたくなってしまった。気づけば見慣れない場所に来ていた。いつもとはかなり違う帰り道をマウンテンバイクで颯爽と走る。角があれば右へ左へ当てもなく曲がり、進んだ先には大きな川が流れる土手が現れた。

 

 ランニングをする人。犬の散歩をする人。買い物帰りの主婦。部活終わりの学生。よく見る光景が広がる中進んでいくと、白髪の長い髪の学生が川を眺めながら歌っていた。俺はその歌に惹かれて自転車を止めて聞き入った。

 

 知らない人が歌っているのにここまで心惹かれたのは初めてかもしれない。しかも同年代くらいか。見た目だけだからなんとも言えないが。背は紗夜と日菜と同じくらい。

 

 スマホが震えたので取り出してみる。……別に噂をしたわけじゃないんだがな。

 

「どうした? 日菜」

 

 通話ボタンを押して電話に出るととても元気な声が聞こえてくる。

 

「ゆーくん! 早く帰ってきてよ!」

「うるさいなー……。なんでだよ」

「お姉ちゃんと3人でテレビ見るって約束じゃん!」

 

 そう言えばそんな約束もしてたな、ははは。完全に忘れていた。

 

「わかったから。大人しく待ってろ」

「早く帰ってきてよね!」

「ああ」

 

 通話を終了してスマホをポケットにしまい。家の方へと走り出した。せっかくいい歌を聴いていたのに。まぁ、この世に奇跡という言葉があってまた出会えるのなら今度は話しかけてみよう。

 

 なんて考えて帰って、意外にも紗夜に説教を食らってしまったのは意外すぎた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気のせいか」

 

 俺はなにかを思い出しかけたが、こんなことをしている場合ではないことを思い出した。興味ないものの暗記は好きではなくてな。強く印象に残らなければなおさら。今、誰かから強めのツッコミが入った気がする………。

 

 

 

 

 

 

 考えごとを一旦やめ、とりあえず中に入る。ロビーの前を通ると、受付をしている涼子を手伝に来たあるバイト仲間に遭遇した。

 

「あら、旭日さん。お手伝い変わってくださるんですか?」

「んなわけないだろ、しっかり働け早乙女(すおとめ)

 

 隙あらばサボろうとするんだからな。それが本心なのか冗談なのかはよくわからない。ライブの日は結構真面目なんだが。

 

「ケチなのですね旭日さんは」

「これが普通なんだよ。俺は別に仕事あるし」

「リーダーが居るからってしっかりしなくても」

 

 おい待て。その言い方だとリーダーが居ない時はサボってるみたいな言い方だろ。実際間違ってない部分もあるが、基本働いてるからな。あ…当たり前か。

 

「天堂さん、旭日さんのこと探してましたわよ?」

「それはもっと早く言ってくれ」

 

 ロビーを後にして、更衣室に向かった。

 

 外には四十崎さん、萩野、普通のスタッフさん。中には涼子、早乙女、海藤さん。あと天堂さんか。ライブの日でもスタジオの貸し出しとかはしてるから、余計に人手がかかってしまう。

 

 着替えて事務所にに行くと、バイトリーダーの天堂奈菜さんに遭遇した。

 

「旭日遅かったな」

「すいません。考えごとしてて」

 

 ふっと笑ってから「問題ない」と言う天堂さん。この人はバイト仲間の中でもっとも頼れる人だ。たまに厳しいけど、それはこちらを思ってのことだしな。

 

「今日は人が多いからな。音楽ライターもたくさんだよ」

「湊友希那目当てでしょうね」

 

 天堂さんと会話をしながら無線機を腰に引っ掛けて、片耳にイヤホンをする。ちゃんと制服を着れているか鏡で最終チェックをした。今日ばかりはちゃんとしないといけないからな。

 

「出演者のチェック1回してるからもう1回頼む。終わったらまりなさんに報告も忘れずにな」

「了解。様子見て萩野中に入れちゃいますね」

「話が早くて助かるよ」

 

 天堂さんと別れてからまずはチェックリストを持って出演者の居る控室を回った。

 

 開演30分前だからさすがに遅れている人は居ないだろう。でも割と居たりするんだよな。少し困る。電車とかで来てるひとは遅延とかも影響してしまうから、仕方ないと言えば仕方ないのだが。前のバイト先、SPACEでは遅れるのは許されない。最悪出禁だ。

 

 ここはそこまで厳しくはないから大丈夫なはず。あまりいい目では見られないだろうけど。

 

 出演者の確認をしているということは自ずと紗夜の顔も見ることになる。控室に入って全員居るか確認した際には1人静かに座っていた。メンバーは紗夜を含めて3人。残りの2人は会話をしていた。今回もあまり仲は良くないらしい。

 

 2回目の出演者のチェックを済ませてまりなさんに報告。その後、様子を見て萩野に受付を手伝うように指示を飛ばして、ステージの準備を手伝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてあっという間に開演時間となった。紗夜の出番は思ったよりも早い。さっきも言ったが、あまり仲は良くないから今回キリかもな。このバンドも。

 

 紗夜のレベルは確かに高い。でも周りとの意識の差が亀裂を生んでしまう。そうして何度も組んでは解散を繰り返して、仲間に対する気持ちが荒んでいった。

 

 もちろん辛い思いを紗夜にしてほしくない。何度も手を差し伸べようとした。だが俺に助けられるのを嫌う。

 

 だからいつも表立って手助けはしない。ライブ近くになったら日菜を家から連れ出したり。どれだけ忙しくてもライブだけは見に行って、少しでもためになればと気づいたことを言う。

 

 いつになったら。紗夜の努力は……報われるんだろうか。

 

 

 

 ライブが始まり、周りが騒がしくなる中。俺は舞台袖で遠くを眺めるように演奏者たちを見た。みんな楽しそうに演奏している。いつか紗夜にもこんな日がくればいいな……。

 

 

 

 

 

 ライブというものは時間が経つのが早い。あっという間に紗夜の出番。ちゃんと覚えていてくれているなら湊友希那もここに来ているはず。

 

 ドアの方を眺めていると静かに入ってくる人物が1人。少し離れた場所からでもわかる。あの威圧感のある姿は。

 

 これで湊友希那が認めれば紗夜はバンドに誘われるのだろうか。悪くはないどころか、いい話に俺はなると思う。

 

 なんて考えていると紗夜のバンドが出ないと行けない時間になった。

 

「ではお願いします」

 

 ステージに上がり、MCを少し挟んでから演奏が始まった。相変わらず1人だけずば抜けて上手い。それ故にバランスが悪くなっている。

 

「珍しいね。いつも虚な目で眺めている君が」

「そんな虚な目ですか?」

 

 普段はしっかり見ているわけじゃないからか、天堂さんが声をかけてきた。

 

「頭ひとつ抜けているね。君のお気に入りは」

「幼なじみなんですよ」

 

 「なるほど」とだけ言うと同じように演奏に見入る。するとぼそっと声が聞こえてきた。

 

「どれだけの練習をしているんだろうね。彼女は」

「たくさん……ですね」

 

 この場はそう言うしかない。紗夜の練習量は俺では測りきれないからな。むしろ聞きたいくらいさ。

 

 演奏が終盤に入り終わりが見えてきた。毎日聴いていたからだろうか。最後の最後で紗夜にミスが出た。多分周りが気づかない程度の。

 

 曲が終わり挨拶を始める。

 

「ありがとうございました」

 

 演奏が終わり周りから黄色い歓声が一斉に上がると同時にステージ裏に戻ってくる紗夜の表情が一瞬曇った。あれは完全にあのことを悔やんでるな。

 

 ふと湊友希那に視線を向けると、見知らぬ人が3人話しかけていた。当の彼女は特に返事を返すわけでもなく1人、出口に向かっていった。ガン無視とはなかなかだな湊友希那。

 

 何か気に障ったことがあったのかは遠すぎてわからない。

 

天堂さんも居るから大丈夫だろうと、一旦会場を後にして控室に向かった。

 

 

 

 

 

 

「このバンドはもう先がないわね」

 

 すると同じことを考えていたのか、湊友希那が居た。直後聞こえてきた冷たく突き放すような紗夜の一言。だが俺の中に戸惑いや驚きはない。遅くない未来。こうなっていただろうと思ったからだ。

 

 するともう我慢の限界だったのだろう。紗夜のバンドメンバーが大きな声を上げて彼女に訴えた。

 

「もう無理! あなたとはやっていけない!!」

 

 それを聞いた湊友希那は多少驚いた表情を浮かべていた。いきなりドアの向こうで喧嘩をしていれば当然の反応か。

 

「私は事実を言っているだけよ。今の練習では先はないの。バンド全体の意識を変えないと……」

 

 声を荒げられても特に揺らぐことはなかった。冷静に淡々と今思っていることを3人のメンバーに伝えている。辛辣な物言いだ。

 

「ずっと聞いてるのか?」

「興味があるのよ。あの子に」

 

 湊友希那が人の喧嘩を聞くのが趣味にはとても思えないが、止めないのを見ると趣味なのかもな。……そんなことはないか。悪趣味にも程があるもんな。って人のこと言えないか、俺も。

 

「いくらパフォーマンスで誤魔化しても、基礎のレベルを上げなければ、後から出てきたバンドに追い抜かれるわ」

 

 紗夜の言ってることは正しい。基礎のレベルがなければ最高のパフォーマンスは出来ない。どのバンドも基礎の練習はみんな欠かさずやっているだろう。その絶対の土台があったから応用が効くパフォーマンスに発展する。

 

「でも……いくらそうでも! あなたが入ってから、私たちまだ高校生なのにみんな課題と練習で寝る時間もないのよ……!」

 

 メンバーの言うこともまた正しい。いくら高校生だからと言っても、本文は勉強。どこまでもバンドにかけられるわけではないか。趣味に時間をかけてる俺が言えたことじゃないが……。

 

「……ねぇ紗夜。あなたの理想はわかる。でもあなたには、バンドの技術以外に大切なものはないの?」

 

 バンドのリーダー的な人が 悩むような質問を投げかけるも紗夜は一瞬にして答えてしまう。まるでその質問を待っていたかのように。

 

「ないわ。そうでなければわざわざ時間と労力をかけて集まって、バンドなんかやらない」

 

 紗夜の冷たい言葉に1番怒りを露わにしているメンバーが再び声を上げた。

 

「っ……! 酷いよ! 私たちは確かに、いつかプロを…って目指して集まったけど。でも仲間なんだよ?!」

「仲間?  馴れ合いがしたいだけなら、楽器もスタジオもライブハウスも要らない。高校生らしく、カラオケかファミレスにでも集まって騒いでいれば十分でしょう?」

 

 酷い言葉だ。同じバンド仲間だと言ってくれたメンバーの気持ちも考えないで放った一言だったが、俺の中に怒りは存在しない。だが……その考えをぶつける相手は違うと思う。

 

「似てるか? あんたと」

「ええ。すごく似てるわ。考え方が」

 

 そうだよな。あんたも馴れ合いとか要らないみたいな顔してたよ。会った時から。

 

「……最低! もういい! こんなバンド解散よ!」

「落ち着きなって、私たちがバラバラになる必要はない。この中で考え方が違うのは1人だけ。……紗夜? そうだよね」

 

 落ち着いた声音で言う紗夜のバンドメンバー。今目の前で1つのバンドが解散の危機に晒されているが、この流れは誰も止められない。

 

「……そうね。私が抜けるから、あなたたちは続けて。その方がお互いの為になると思う。今までありがとう」

 

 その言葉に本当に感謝の念が込められているのだろうか。いいや、恐らく皮肉が大半だろうな。ここ最近の紗夜はかなりピリピリしてたし。俺には特段強い当たりはなかった。小さい当たりすらも。

 

 逆にそれが……不安だった。何も言ってくれないことが。

 

 




主人公はなんだかんだ紗夜さんに甘いです笑
明確な理由は後々……
ギターを弾きながら登校する香澄はさすがとしか言いようがないですね笑
有咲も大変だ〜

そしてようやく劇場版Roseliaのブルーレイを手に入れました!
やっと劇場版の内容を書けます……。
後々書いていこうと思います!

次回はいよいよ友希那が歌う回です。

お気に入り登録してくださった方ありがとうございます!

それではまた次回。

2023/11/13 一部修正しました
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