ガールズバンドに振り回される日常   作:レイハントン

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こんばんは。レイハントンです。

昨日は完全に投稿するのを忘れてしまいました……。

さて今回は前回から少し話が進みます。割と重要な所だと個人的には思いますね。
主人公、紗夜、友希那の関係やいかに。

それではどうぞ


第12話 成すべきと思ったことを

第12話 成すべきと思ったことを 

 

 少しすると控室のドアが開いて紗夜が出てきた。

 

「……っ! ……ごめんなさい。人が居たのに気づきませんでした」

「さっき、あなたがステージで演奏しているのを見たわ」

 

 喧嘩のことなどどうでもいいと言わんばかりに次の話に進めた。多少というかかなり強引だな。そして紗夜は俺に視線を合わせようとしない。もはや居ない扱いだ。たぶん気まずいんだろう。

 

「……そうですか。ラストの曲、アウトロで油断して、コードチェンジが遅れてしまいました。拙いものを見せてしまって、申し訳ありません」

 

 やっぱりミスってたのか。ほんの一瞬顔に出てたのを俺は見逃していない。一般の人ならわかる人はほぼいないだろうな。あそこで気付いた人は何人居たのか……。

 

「確かに…ほんの一瞬、遅れていた。でも、ほとんど気にならない程度だったわ。……あなたは気づいたのかしら?」

「なんとなくは」

 

 怪しいと言いたげな表情を浮かべながら、"そう"とだけ返してきた。

 

「……紗夜って言ったわね。あなたに提案があるの。……私とバンドを組んでほしい」

「え?」

 

 これはうれしい誤算と言っていい。一度セッションなりもう1度演奏を聴いてからとなってもおかしくはない状況。それがバンドを組んでほしいという話にまで飛躍したのだから。

 

「私とあなたで……バンド? すみませんが、あなたの実力もわかりませんし、今はお答え出来ません」

 

 当然の反応だろう。さっきの事も考えると実力のわからない人と簡単にバンドを組むという考えはもうないだろう。夢のためには少しでも実力がないと辛いか。

 

「私はこのライブハウスは初めてなんですが、あなたは常連の方なんですか?」

「そうね。私は湊友希那。今はソロでボーカルをしてる」

 

 自己紹介を淡々と済ませてから本題の話を始めた。

 

「"FUTURE WARLD FES."に出る為のメンバーを探しているの。あなた位なら、聞いたことない?」

 

 するとFUTURE WARLD FES.という単語に紗夜が驚きの表情に変わる。音楽の最高峰と呼ばれる大会ともなるとこの際知らない人の方が少ないだろう。特にバンド活動をガチでやっているなら。

 

「私もFUTURE WARLD FES.には以前から出たいと……でも、フェスに出るためのコンテストですらプロでも落選が当たり前のこのジャンルでは原点と言われるイベントですよね?」

「そうね。この前の結果でもプロが普通に落とされていたわ」

「私はいくつもバンドを組んできました。けれど、アマチュアでもコンテストには出られるとはいえ、実力が足りず、諦めてきた……」

 

 なかなか認識や目指すべき先が合うメンバーに出会えていなかったからな。長続きしない理由はまさに"FUTURE WARLD FES."に出場というわけだ。

 

「ですから、それなりに実力と覚悟のある方でなければ……」

 

 ここまで言われても湊友希那が折れることはなかった。変わらぬ表情で淡々と答えを紗夜に返す。これも自信の表れか。

 

「あなたと私が組めばいける。私の出番は次の次。聴いてもらえればわかるわ」

「待ってください」

 

 いくつもバンドを解散してきたからだろう。そう簡単には頷かない。たぶんこれ以上時間を無駄にはしていられない……と思っていそうだな。解散しては組んでを繰り返している紗夜には。

 

「たとえ実力があっても、あなたが音楽に対してどこまで本気なのかは、一度聴いたくらいではわかりません」

「それは、才能があっても、あぐらをかいて努力しない人間のように見えるということ?」

 

 表情1つ変えなかった湊友希那が少し真剣な表情を浮かべて言葉を紗夜に返す。徐々に嫌悪な雰囲気になりつつこの場。湊友希那がなぜフェスに出たいのかはわからないが、実力という点では申し分ない。少し口を挟ませてもらう。

 

「まぁ待て、紗夜。彼女は本気でフェスに出ようと歌っている。だからまずは聴いてみたらどうだ? その後でも考えるのは十分間に合うと思う」

「……わかったわ。とりあえず聴くだけ聴きます」

 

 よし。きっとこの話は紗夜の分岐点になるはずなんだ。フェスに出られるか出られないかの。なら俺は成すべきと思ったことをするだけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 先にステージの方へと行ってしまった湊友希那を追いかけることなく、俺と紗夜の2人だけになった。さっきの言い合いの事もあるのだろう。静寂がこの場を支配している。

 

「なにも……言わないのね」

「紗夜の気持ちはわかっているつもりだ。まだ焦る必要はないと思う」

「そう……」

 

 戻ろうかと1歩踏み出した直後。紗夜が口を開いた。

 

「夕はあの人と知り合いなの?」

「知り合いというか友達の友達ってやつだ」

「そう。その割には仲が良いのね」

「別に良くはない。今日初めて話した」

 

 あれを会話と捉えていいのかは不安になる。

 

「紗夜。湊の歌は本物だ」

「どうしてそこまで押すのかしら?」

「……現にライブの時は大抵聴いてるしな」

「夕が? 珍しいこともあるのね」

 

 本当に。自分が一番思ってる。対して興味がないものには目もくれないが、また聴きたいと思った歌。それが湊が歌っている歌だ。

 

 なぜかはわからないが少し懐かしさもある。まるで昔聴いたことがあるような。どうしても思い出せないが。

 

 ふと気になったことを紗夜に伝えた。

 

「まだ諦めてなかったんだな。フェスのこと」

「……当たり前よ。私の夢なの。日菜と比べられない為にも、必ず出場してみせる」

 

 その言葉を最後に紗夜との会話を終えた。

 

 少しだけ紗夜と話してから舞台袖へと向かった。急に居なくなったことに対して少しだけお小言を天堂さんからもらってしまったが。

 

 

 

 

─────☆

 

 あなたは優しすぎる。

 

 何度思ったことだろう。冷静さを欠いていたとは言え、思ったことをストレートに伝えすぎてしまった。それなのに……彼は見捨てない。

 

「私に……その優しさはもったいない」

 

 その言葉が彼。旭日夕に届くことはない。

 

 本当にいつか返せるのだろうか。今まで受けた恩を。

 

─────☆

 

 舞台袖に戻ると相変わらずお客さんの熱気がすごい。しかも次の次は湊友希那の出番だからな。なおさらすごいか。それにしても前の方詰めすぎだろ。

 

 別に芸能人じゃないんだから近くで見れるぞ。話すとなんだコイツって思いたくなることが多々あるが。

 

 そんな中ふとさっきの紗夜との会話を思い出した。

 

 比べられない為にも……か。紗夜は昔からよく日菜と比べられて育ってきた。勉強。普段の生活からなにまで。しっかりした姉となんでも出来る天才。そこにやる気のない俺が居れば当然俺が浮くわけだからよく見られがちだ。

 

 だが俺が居なければどうだ? いくら努力しても追いつけない秀才と見ただけで出来る天才。当然褒められるのは日菜。昔から比べられてきたからなのだろう。その反動が今来ている。

 

 2人の道が完全に別れてしまったかのように今は一緒に居る所は見ない。

 

「準備に手間取って悪いな」

 

 少し機材トラブルで押してしまっている。そんな中特に変わった様子もなく湊友希那は俺の後ろで目を瞑って立っている。

 

「機材トラブルは仕方ないことよ」

「そうか」

 

 舞台袖から再び観客席を見ると、なんか騒がしそうなツインテールの子を見つけた。

 

 あの制服羽丘の奴か。昔羽沢たちが着てたな。……あれは、よく見たら宇多川妹だな。

 

 ふと隣の紗夜に視線を向けるとずいぶんご立腹なんだろう。今にも注意してやろうかという表情を浮かべている。

 

 そういう所には厳しいからな。紗夜は……。

 

「旭日、もう出していいぞ」

「ってことだ。よろしく頼む」

「ええ」

 

湊友希那が会場に現れると、一気に湧き上がると同時に耳を塞ぎたくなるような大きな声が響く。そして湊友希那の歌声が会場を包み込む。

 

 この歌を聴く為だけにバイトやら部活やらを休んでくる学生とかが大勢いるんだろうな。世に言う休日というやつだし。

 

 いつ聴いても不思議だ。ただの歌のはずなのに。言葉ひとつひとつでイメージが出来る。一体どれだけの時間、歌うことに費やしてきたのだろうか。

 

 とてつもない時間なんだろう。

 

 俺になんか想像も出来ないくらいの。

 

 

 

 

 

 

 

 ライブが終わり、控室に俺を含めた3人が居る。今度はちゃんと抜けることを伝えたから大丈夫だろう。

 

「どうだった? 私の歌」

「なにも……言うことはないわ。私が今まで聴いたどの音楽よりも、あなたの歌は素晴らしかった」

 

 紗夜が褒めるなんてあまり見ないレアなシーンだな。まぁ今回ばかりは当然だろう。湊なら紗夜が目指す理想。いや、理想のその先に行けるはずだ。アマチュアでフェスに出ることも夢じゃない。

 

「あなたと組ませてほしい。そして……」

 

 言葉の途中で俯く紗夜。特に急かす様子はなく次の言葉を待つ。

 

「FUTURE WARLD FES.に出たい。あなたとなら、私の理想……頂点を目指せる」

「私もよ。よろしくね」

 

 2人にとってはまだスタート地点に立っただけ。これから長く険しい道が続くんだろう。今度は夢の先まで続くことを信じたいものだ。それに……このバンドの行く先を知りたくなった。

 

「今更で悪いわね。なぜあなたが居るの?」

「ただ見に来ただけだ。気にするな」

 

 相変わらず冷たい女だ。悪いことはしていないはずなのに。

 

「あなたここのバイトなのよね?」

「そうだが?」

「なら練習の時間はとりやすそうね」

 

 それはあれか。スタジオを使えるようにねじ込めと? まぁ出来ないこともないがそれはあまり好ましくない。

 

「空いている時間を教えて欲しいの」

「別に構わないが……」

 

 ねじ込むとか変なこと考えて……ないよな? 空いてる時間教えるくらいなら出来る。というかそれだけでいいなら楽だ。

 

「空いてない時に無理矢理にでもスタジオを空けてくれるならやってほしいところね」

「本気で言ってるのか?」

「当たり前よ。私に妥協はない」

 

 妥協ないって……少しは相手側のことも考えてほしい。

 

「出来ないなら構わないわ」

「空いてる日くらいなら前もって連絡はできる。それで勘弁してくれ」

「そうしてもらえると助かるわ」

 

 こうして今、2人のバンドが誕生した。今の俺にできることは2人が分裂しないように見守るだけか。

 

 このバンドが予想を大きく上回るバンドになっていくことをまだ俺は知らない。

 

 




まずは2人と手伝いが1人。あんな喧嘩があった後でも誘える友希那さんはやっぱりすごい笑 主人公には少し当たりが強めですが……。

そしてやはり紗夜さんには甘い主人公ですね笑 そんな彼に抱いている思いとはいったい。

次回はあの子が登場です!

毎度思うことですが、個人的趣味全開なお話を読んでもらえてとても嬉しい限りです。息抜きに書いている方もぜひ、読んでみてください。

それではまた次回。

2023/11/13 一部修正しました
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