ガールズバンドに振り回される日常   作:レイハントン

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こんばんは。レイハントンです。

昨日は少し忙しくて投稿忘れてしまいました……。

今回はあの元気なドラム担当のお話です。

それではどうぞ。



第13話 堕天使あこ

第13話 堕天使あこ

 

「友希那さん! バンドに入れてください!!」

「帰って。あなたに用はないわ」

 

 今日も今日とて敗北。これで一体何回目の敗北だろうな。3、4回くらいか? まぁなんにしても何回挑んだところで負けて終わるのは"今は"目に見えてる。この女にどっ直球に頼んでも許してもらえるわけがない。

 

 じゃあこの場合はどうしたらいいかって? そんなもん簡単だ。……自分の実力を示せばいい。少し強引でもいいから。

 

 いきなりのことでわからない事がほとんどだろう。この話をするには数日前にバンドを結成した帰りに戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 バイトの合間くらいならとバンドを手伝うことにした。その後、俺たち3人はライブハウスを後にしたが、外はすでに暗くなり始めていた。1人で帰るには危険な時間帯だ。

 

「……あなたと組めることになってよかったわ。もうスタジオの予約、入れていい? 時間を無駄にしたくないの」

 

 いやいや。この先の方針もまだ完全には定まってないのに決めることか? まずはメンバー集めが優先だろ。

 

「同感だわ。もう一度確認ですが、他に決まっているメンバーは?」

 

 ナイスだ紗夜。この女には俺が何言っても通じない。あれか。男苦手だったりするパターンか?

 

「いいえ。まだ誰も。そこの男が言った通り、ベース、ドラムのリズム隊。そしてこのジャンルに最も重要な役割のキーボード」

「ないとは思うが当てはあるのか?」

「当てがあればもう探してるわ」

 

棘のある言い方だな。いちいちこれに反応するわけにもいかない。ここは俺もスルーさせてもらう。

 

「あと3人……急ぎましょう。実力と向上心のあるメンバーを見つけ、少しでも練習時間を確保し───」

「最高の音楽を作り、最高のコンディションで、コンテストに挑む」

「……本当にあなたとはいい音楽が作れそう」

 

 2人はなかなかいい雰囲気だな。今のところは解散臭はしない。このまま仲良しこよしで行ってもらいたいもんだ。仲良しとはまた違うのか。

 

「あなたも。少しは期待してる」

「少しだけ……まぁ期待に答える努力はするさ」

 

 やれることはやる。めんどくさいが引き受けたのは自分だ。文句を言わずやるさ。

 

 湊を見ているとふとあることを思い出した。

 

「そう言えば曲はどうするんだ?」

「……そうね。メロディはさっき聴いてもらったのを、私の方で詰めてみるわ」

「では私の方で、今までの経験をまとめてみます。注意すべきことはたくさんありますから」

 

 意外と話が進むのが早いな。使えるもんは使うのは構わない。同じメロディーを使いまわしするのはよくないが。

 

 もう帰る雰囲気な2人。俺はまだバイトが残ってるからな。無理言ってちょっと出てきているだけだし。時間的にもそうかと思いながら一歩足を踏み出した直後。

 

 

 

 出会いは唐突にやってくる。

 

 

 

「ゆ、ゆ、友希那だ……。友希那だよりんりん……!」

 

 どこか緊張したような表情と言葉。たぶんというか100%湊のファンなのだろう。その後の言葉でそれが確信に変わる。宇多川巴の妹あこは湊のファンだったのか。それにしてもなぜ俺に気付かない。

 

「ど、どうしよう、ここで待ってたら会えるかもって言ったら本当に……本当に会え……っ」

「あ……あこちゃん……私、もう……帰……!」

 

 隣の人めっちゃ帰りたそうにしてるぞ。あこは湊に会えて周り見えなくなって、片方はすごい帰りたそうにしてて。いったいなんなんだ?

 

 憧れの人が目の前に居て緊張するのはわかる。たぶん俺も憧れの人が居たらそうなるだろうから。

 

「あ、あのっ! さっきの話、本当ですか?! 友希那….…さん、バンド組むんですか?」

「そうね。その予定よ」

「……バンド! ……あ、あこっ、ずっと友希那さんのファンでした!」

 

 この話だとサインくださいが普通な状況だろうな。でも湊の奴が簡単にサインなんてしてやるとは思えない。握手くらいが良いところだろう。

 

 しかし、次の言葉に俺は思わず驚きの表情が出てしまった。

 

「だ……だからお願いっ! あこも入れてっ!」

「……?! あこ…….ちゃん?」

「お前マジか?」

 

 あこが頼んできたのはサインのお願いではなかった。予想を遥かに超え、バンドに入れてほしいという願い。湊がどう答えるのか少し楽しみしながら次の言葉を待つ。

 

「あこ、世界で2番目に上手いドラマーですっ! 1番はお姉ちゃんなんですけど! だから……もし、もし……一緒に組めたら……」

 

 流石に組むとなると話は変わってくる。ここでドラマーまで揃えられたら言うことなしだが、それは叶わないな。世界で2番目に上手いという口説き文句では湊が頷くはずはない。

 

「ちょっとあなた、私たちは本気でバンドを……」

「遊びはよそでやって。私は2番目を自慢するような人間とは組まない。……行くわよ、紗夜」

 

 バイトがあるからいいんだが。せめて自己紹介くらいはさせて欲しかった。今更ながら出来るわけもなく、今回は仕方ないと飲み込むしかない。

 

 落ち込むあこを視界の端に映ると同時に帰りたそうにしていた黒髪の花女の生徒がじっと見ているのが気になった。

 

 ここ最近見たことあるようなという感覚を感じがちだ。紗夜の迎え行ったりしているし1、2回は見たことがあるかもしれない。しかし、俺が感じた見たことあるという感覚とは違う。

 

「バイト、ちゃんやるのよ?」

「ああ。気をつけて帰れよ」

 

出会いはいつだって唐突に訪れる。

 

「(あの人……前に…話をしたことが…ある人だ)」

 

 落ち込んでいるあこに声をかけることなく、バイトへと戻っていった。俺ってそんなに影薄いか?

 

 抜けていた分しっかり働いたが、天堂さんにちょっとどやされたけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜。バイトから帰った俺はとりあえず自室のベランダに出ることがほとんどだ。今日の出来事を思い出したり、ぼーっとするために。たまに先客が居たりする。

 

 それは紗夜だ。部屋が隣同士だからな。

 

 だが今日はあまり多くを話さない。強く当たったことをまだ気にしているのだろうか。別に俺が言うことでもないんだがな。

 

「巻き込んでごめんなさい」

「なんで謝る? 決めたのは自分だ。気にするな」

「そう….…」

 

 ライブ…か。出演する日にちとかはわかっていると思う。俺のやることといえば、何番目に出てもらうか。この2人が揃って出る時にどのくらい人が来てくれそうか。告知の方法。ひいきにはなってしまうが、ここだけの話。初めてではない。あるだろ? 常連さんでお客さんも多く来る時は。

 

「お互い頑張らないとな」

「そうね」

 

 それからお互いに会話はなかったが、夜は老けていった。

 

 

 

 

 

 

 次の日。今日は平手打ちをかわしたが、直後から飛んできた枕によって俺の朝は始まった。起きない俺が悪いのはよーくわかっている。しかし、平手打ちをかわしたら、枕が飛んでくるとは聞いていない。これをご褒美と思えばいいのか……? 俺は。

 

 父さんは夜間明けで爆睡だし、さっさと用意を済ませて学校へと向かった。

 

 起きられるようになるまでは、俺の平穏な朝は迎えられそうにない。

 

 

 

 

 

 商店街 やまぶきベーカリー周辺

 

 なんと昨日に続いて今日も香澄たちに遭遇した。そしてなにやら箱を持っているようだ。

 

「おはようございます!」

「おはよう。その箱なんだ?」

「これですか? これはですね〜」

「作戦みたいです」

 

 なんだ作戦とは。朝からいったいなにをする気なのだろうか。

 

 すると香澄はやまぶきベーカリーの店内へと入っていった。少しすると、箱だけを山吹に渡して戻ってくる。プレゼントでもあげたのか? サプライズ的な作戦。

 

「夕先輩、隠れましょう」

「隠れる? お前は朝から何を言って──」

「早くしないとりみりん来ちゃいます!」

 

 腕を引っ張られて曲がり角に身を潜める。半ば強引に。わけわからんから流れに身を任せることにしよう。そうでもしないとやっていけない……。

 

 しばらく待っていると、やまぶきベーカリーにりみが訪れた。りみりんってまさかのゆりさんの妹さんだったとは。けど、何を企んでいるのかはわからないままだ。

 

「この茶番いつまで続くんだ?」

「香澄次第です、先輩」

 

 市ヶ谷さんと話していると、りみがさっきの箱を持ってやまぶきベーカリーから出てきた。そして同時に香澄と市ヶ谷さんが曲がり角から出て行く。

 

「確保ー!」

「ばっちこーい!!」

 

 ・・・は?

 

「えっ? なに、香澄ちゃん?!」

「とりゃあー! 捕まえた〜!」

 

 叫んだ香澄はりみに抱きついた。すると箱を落としてしまったようだが。

 

「作戦終了」

 

 そう言って箱を拾って再びりみに渡す市ヶ谷さん。もう、わけがわからないんだが? それと確保って叫んだの市ヶ谷さんなんだな。ぶっ飛び過ぎてて今思考が追いついたんだが?

 

「ふぁぁ〜。帰る」

「えっ? 今日行く日って」

「疲れた」

「えぇ〜〜」

 

 作戦っていう作戦でもなかったが、疲れたのは俺も同感だ。居るだけで疲れるというのが戸山香澄という人間。エネルギーを吸い取られているかのようだ。

 

「香澄ちゃん」

「ごめん。やっぱりちゃんと聞きたくて。無理に誘っちゃったのごめんね。でも、バンド自体は嫌じゃないって言ってたから。なにかあったのかなって」

 

 なるほどな。りみをバンドメンバーに誘っていたわけか。だけど断られた。

 

 だからゆり先輩から、『もし見かけたら様子を見てくれるとありがたいな』ってメッセージが来たのか。心配、なんだな。

 

「りみりんと話すの楽しかった。バンドのこととか、ライブのこととか。いろいろ教えてもらってドキドキした」

 

 こういう時の香澄は素直に気持ちをド直球で伝える。だから….…より深く分かりあえるのかもしれない。

 

「りみりん、出来ることがあったら言って。私、一緒にやりたい。りみりんのお姉さんみたいに───」

「ごめん…なさい。ごめんなさい……。私……」

「りみりんごめん。ごめんね! 言いたくなかったら全然!」

「違う…違うの…….!」

 

 するとりみは箱を抱えたまま走って行ってしまった。いったいなにが縛り付けているんだろう。言うのが辛いことを聞かれたから。ではなさそうだ。それなら……。

 

 考えても答えは出ない。だがあのまま放っておくことはしないんだろう。香澄のことだからな。

 

「香澄。あまり思いつめるなよ」

「はい……」

「きっとなにかしらの理由があると思う。それが何かまではわかないが、本人が話すまでは無理に聞き出さない方がいいかもな」

 

 そう言い残して、学校の方へと歩き始めた。なんだかんだ言って、最後まで様子を見ているんだな。市ヶ谷さんは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後。バンドの練習中。俺はスタジオに訪れていた。少しでも時間を無駄にはしたくないということなので、俺は聞きたいことが湊に山ほどある。

 

「湊。連絡先くれ」

 

 ということで連絡先を催促してみる。

 

「な、なによ急に…」

「夕。いきなりは非常識だと思うわ」

 

 なにその反応。ド直球はダメだと? シンプルでいいだろ。すまん、ふざけただけだ。

 

「おいおい。時間無駄にしたくない奴がなに言ってる。こっちは聞きたいことが山ほどあるんだ」

「そういうことなら先に言いなさいよ」

 

 確かにな。たまにあるだろ? ふざけたくなる時が。滅多に見られない湊の焦り顔が見れたから俺はもう満足だ。

 

「あなた性格悪いわね」

「たまに言われる」

 

 呆れたようなため息が横から聞こえてくるがスルーだ。どうせ怒られるだけだしな。

 

 結局湊が要件がわかってくれたので連絡先を手早く交換。ついでに名前も丁寧に教えてやった。

 

「都合いい時間教えてくれると助かる」

「わかったわ。寝落ちしないことね」

「一言余計だ」

 

 とりあえず意見交換だ。バイトは真面目先輩さん居るし大丈夫だろう。あといちおう市野木さん。

 

 

 

 

 

 

 

 俺は絶賛困っている。というより意見が違い過ぎることにな。

 

 早速意見交換をしているが、湊とは全然意見が合わない。

 

「その演出だといまいち盛り上がりにかけるんじゃないか?」

「あなたの意見もわかるわ。でもそれだと全体を見れていない」

 

 さっきから曲のことで何度も何度も同じことを言っては言われを繰り返している。曲にまでは口出しをする話ではなかったが、意見を求められたから話たらこうなった。確かに湊の意見も間違ってはないし、ありだ。だが、緩急を作った方がいい。

 

 と、まぁここまで意見は真っ二つなわけだ。今に始まったことじゃない。なんなら昨日の夜に連絡を取り合ってからだ。これからの練習の方針でももめたな。

 

「いいか? 1つの可能性よりもいろんな可能性があった方がいいだろ?」

「……それはそうね。でも他の可能性もあると思うわ」

「なら、探求しないとな」

 

 3人だけの空間で練習はまだまだ続く。

 

 危うくバイトのことは忘れかけていたが。思い出したからセーフだ。今日は人が多めだからな。そろそろ戻るか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間というのはあっという間だ。数時間の長い練習が終わり、3人で片付けをしてライブハウスを後にした。外はすっかり夕焼けの時間帯だ。俺はまだまだバイトだがな。

 

「友希那さん! 待ってましたよ!」

「あなたはこの前の」

 

 また来たのか宇多川妹よ。この前冷たく突き放されるように言われたのに、メンタル強すぎだろ。あの紗夜も驚いてるしな。

 

「あれ?! 旭日先輩?!」

「今気づいたのかお前は。前からずっといたんだが?」

「ホ、ホントですか? すいません….…」

 

 そのしょんぼりした顔。ついつい許したくなってしまう。まぁ今回はさほど問題など感じないからいいさ。

 

「気にするな。それより何か言いに来たんじゃないのか?」

「そ、そうでした! お願いします! あこをバンドに入れてください!」

 

 やはりその件か。頭を下げてお願いするが。

 

「帰って」

 

 その一言だけで話は終わってしまう。

 

 何度も同じやり方じゃ結果は見えてるのにな。ただ……ほっとくのも少し気が引ける。もう1回来る根性があったら少しばかり手助けをしてやるか。

 

「知り合いなの?」

「まぁな。よく行く喫茶店にたまに来る子だ」

「そう。それはそうと、あなた少し気になってるでしょ」

「多少な。……紗夜は気にするな」

 

 そう言って、先に行ってしまった湊の後ろ姿を眺めてから、断られた少女の方へと視線を向けた。何度断られようとも諦めない姿勢は嫌いじゃない。

 

 




なんだかんだ世話焼きな主人公。でも昔は……後々明らかになっていくと思います。

ふと主人公たちの服ってどんなのだろうとここ最近ずっと考えています。制服とかも含めて……。そのうち設定に書いておこうと思います。

次回はまだまだドラム担当の話です。

お気に入り登録してくださった方ありがとうございます!

それではまた次回。
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