ガールズバンドに振り回される日常 作:レイハントン
第0話といいつつ、10話後に読んだ方がおすすめです!
今回は 1話よりも前の話です。
母親のことが少しだけ語られています。
紹介の方には後々出していこうと思っているので、お待ちください。
あと新キャラが1人……
2022/6/21 追記
注意書きがキャラクター紹介に載っているので一度目を通して捉えるとありがたいです。
第11話からバンドストーリーRoselia編の始まりなので、11話から見ることを強くおすすめします。
それではどうぞ
第0話 動きだす時間
第0話 動き出す時間
商店街
今日は3月に入って最初の土曜日。俺は母さんの赤いギターが入ったケースを背負って、ある場所に向かっていた。
ことの発端は2月末でバイトを辞めた日。帰り際オーナーから言われたことだ。
『向き合う向き合わないは夕の勝手だ。でも、ギターのメンテナンスくらいはちゃんとしてやりな』
言われるまで気づくことが出来なかった。自分のことでいっぱいだったのもあるが、何よりも………思い出したく…なかったのかもな。
オーナーは母さんと昔からの知り合いで、俺のことを気にかけてくれたんだと思う。
寝室のクローゼットから探しだして今に至るわけだ。
母さんが体調崩してから開けていた様子はないのに、中身を確認したら割と綺麗だった。半年くらいは手入れされてないはずなのに。まぁそういう時は一旦詳しい奴に見てもらった方がいい。そう判断した。
商店街を抜けて少し先に進むと、目的地が見えた。楽器はやっぱり楽器店に持っていくべきだな。
商店街から数十分歩いてたどり着いたのは江戸川楽器店。母さんがよく来ていたお店だ。
ドアを抜けて中に入ると、やはり店番をしている友人が居た。
「おー夕か。珍しいな」
「まずはいらっしゃいませじゃないのか? 大輝」
コイツは神原大輝。クラスは違うが同じ高校に通う友達だ。顔見知りというか、友達だと人が変わったようにこの態度で接客する。お客さんだとガラッと変わる。オンオフがしっかりしていると言えば聞こえは言いな。
「夕だしいいかなって。それよりもそのギター? ベース? はどうした? バンドでもやるのか?」
「違う。これは母さんのギターだ」
「はぁ?! あの赤薔薇のアリスのギター?!」
「そんなに驚くことか?」
そう言いながら店員さんとお客さんが向かい合って話せるスペースの方へと移動してギターケースを下ろした。
ちなみに赤薔薇のアリスって言うのは学生時代に付いた母さんの通り名だ。詳しい話はいつの日か。
そんなことよりも。大輝も楽器オタクみたいな所がある。話始めると、次から次へと理解出来ない単語を並べてくる。
「わざわざ見せに来てくれたのか?!」
「んなわけないだろ。メンテナンスしてほしいんだよ。半年くらい手入れされてないっぽいから」
ケースから出すと、俺を押しのけて母さんのギターをまじまじと見始めた。
「うぉ〜〜! GrassRootsのG-FR-62GTじゃねぇか!!」
「そんなにすごいのか?」
「もう生産してないからな。それよりもかなり使い込まれてるのに綺麗だ。メンテナンスをちゃんとしてたんだな」
そこまではよかったんだが、この後わけわからんことをペラペラ話しだしたから俺はもれなくスルーさせてもらった。わからんもんはわからん。………ちゃんと調べておくか。
昨日の夜に思ったことだが、ざっとギターのことを調べただけで情報量が多い。メーカー、形、使い心地、色。他に選ぶ基準を考え出したらキリがない。なんで母さんはこの赤いギターにしたんだろうか。色は間違いなく好きな色だからだろうな。
「ってことだ。わかってくれたか?」
「わかるかバカ。とりあえずメンテナンス頼めるか?」
「もちろん。そんな時間はかからないと思うだけど、どうする?」
「だったら待ってる」
「了解。すぐ取りかかる」
ギターのメンテナンスを大輝に頼み、俺は一旦江戸川楽器店を後にした。その後は朝ご飯を食べていないことを思い出し、やまぶきベーカリーに買いに行った。ついでに昼ご飯も買うために。
やまぶきベーカリーで用事を済ませた俺は江戸川楽器店へと戻った。
店内へと足を踏み入れるとそこには。
「ん? 奇遇だな」
ちょうど何かを買いに来ていた紗夜の姿があった。
「そうね。夕は何をしにここへ?」
一瞬隠そうとも思ったが特に隠す理由もない。
「……母さんのギターをメンテナンスに出しに来たんだ」
「それって……」
「別に弾きたいとかではない。辞めたバイト先のオーナーに言われたんだ。メンテナンスくらいはしてやりなって」
「そう。メンテナンスは大事よ。ちゃんとすることね」
「わかってる」
どう…なんだろうな。そのままの形で残すっていう方法もあったとは思う。でも、朽ちてゆくのは、それはそれで見るに耐えない。結果的には来てよかった。
「いらっしゃいませ。氷川さん、旭日さん」
コイツ猫被ったな。ニコニコ営業スマイル浮かべて。よく瞬時に変えられるな。
「2人は知り合いなんですか?」
「幼なじみだ。話したことなかったか?」
「初耳ですね」
誰に言って誰に言ってないのかよくわからなくなってきたな。
「夕と神原さんはどうなんでしょうか」
「クラスは違いますが友達ですよ」
「そうですか。しっかりしていますね」
おそらく俺への当てつけだろう。あなたももう少し、しっかりしたらどうなの? と言葉ではなく圧で伝えてくるんだが。実際問題お店で働いてる友達にはタメ口だよな……?
「いえいえ。旭日さんもやる時はやる人間ですよ?」
「フォローになってないからな」
「すいません。今、ギター持ってきますね」
ニコニコ笑顔を浮かべてそういうと、ギターを取りに奥へと戻っていった。
いじるだけいじって楽しんで終わりとは。知り合いじゃない奴の前だとあの化けの皮は剥がせないだろうな。とてと厄介だ。
「お待たせしました。特に破損している所はありませんでしたので、基本調整のみとなります」
となると3000円か。破損しているところがなかったのはよかった。これからも大切にしないとな。
自分の支払いを先に済ませ、紗夜に一声かけてから外に出た。
「外で待ってる」
「わかったわ」
支払いを終えた俺は江戸川楽器店を後にした。
慣れないギターの重さだ。今までこうしてメンテナンスに持ってくるとか、外に弾きに行くってことはなかったからな。少し新鮮な気持ちになる。……多少なりとも重いものを背負って紗夜は肩が凝らないんだろうか。
1人呆けていると、楽器店のドアが開いた。中から出てきたのはもちろん紗夜。
そして──嵐は突然やってくる。
「あれ? おねーちゃんとゆーくん? 何してるの?」
突然聞こえてきた日菜の声に紗夜が一瞬驚く。そしてこの状況は非常にまずいと思ったんだろう。焦りが見える。
紗夜は日菜にギターを弾いていることを秘密にしている。知られれば絶対真似をされるから。
「楽器屋から出てきたけど」
「(今、日菜に知られたら……)」
だが、こういう時。慌てても仕方ない。
「そうだ。母さんのギターをメンテナンスしてもらいに来たんだ。ついでにメンテナンス用品も買う予定だったから、紗夜には荷物多かったら手伝ってもらおうと思ってついてきたもらった」
「そっかー。でも、あんまり荷物ないような」
「夜ご飯の買い物もしないといけないからな。増えるのはこれからさ」
表情1つ変えずに嘘を吐き続けた。無表情というのは、こういう時は非常にありがたく感じてしまう。
「なるほどね! あたしまだ行く所あるから。じゃあねー!」
「気をつけてな」
突然現れたかと思った矢先、すぐにどこかへ走っていってしまった。本当に嵐みたいな奴だ。
一難は去ったが、紗夜の表情は晴れない。
「ごめんなさい……また、嘘を」
「気にするな。今更1つや2つ増えたところで変わりはしない」
そうは言っても簡単にはい、そうですかとはならない。俺はどうなったって構わないのに。紗夜はいつもそうやって心配してくれる。優しいな……。
ふと昔のことを思い出した。
「夕…お嫁さんもらうならどっちがいい?」
「寝言は寝てから言ってくれ」
ソファーに寝っ転がりながらテレビを観ていると、ダイニングテーブルで飲みまくっている母さんが突然わけわからないことを言い始めた。明日は休みのようで、最初から飛ばしている。これは二日酔い確定だな。
「あんたはいつも冷たいわね〜。そんなことじゃ紗夜に振り向いてもらえないわよー」
「なんで紗夜が出てくるんだ」
「そ、そうなのか?! 父さん、もう結婚とか考えないといけない年?!」
「当たり前でしょー? 夕はもう高校1年生よ?」
いや、高校1年生なんだからまだ結婚とかいう話じゃないだろ。そもそも、そんな先のことなんて考えている暇はない。俺は星座の特集を見るので、忙しいんだ。酔っ払いに構っている暇は───。
「ちょっと聞いてるのー?」
「邪魔なんだけど。あと酒臭い」
「はぁー? 冷たい態度だけじゃなくて冷たい言葉まで……」
いきなり目の前に来たと思ったら今度は泣き崩れた。情緒不安定というか、なんというか。本当に酔っ払っているといつもこうだ。被害者ヅラしてるけど、こっちが被害者だからな。
再び俺の視界入ってきた。
「2人とはなにもないの?」
「ない。だいたい、紗夜と日菜が恋愛するタイプに見えるか?」
「わかってないわね〜。女の子はみんな夢を見るものなの。紗夜と日菜だって恋の1つや2つするのよ」
そんなもんなのか。なんだか実感がわかないな……2人の隣に俺以外の別の男が親しげに居る。
なんだ……? なんで紗夜の顔が思い浮かぶんだ? それにこの感覚。すごく……。
「今、紗夜のこと考えた?」
「いや、邪魔だからどいてくれないかなって」
「またまた〜。嘘ついちゃって」
本当に鬱陶しい。父さんはどこ行った? いつもみたいに羨ましそうに見てないで助けてほしいんだけど。
「……夕」
名前を呼ぶと、酔っているにしてはふざけている感じは一切なく。優しい笑顔を浮かべながら母さんは言った。
「あなたが繋ぎ止めてあげるのよ? 今は無理かもしれないけど、いつの日か。必ず夕の力が必要になる時がくる。その時は……ちゃんと向き合ってあげなさい」
真剣な話をしている時の顔だ。
「なんだそれ。その時が来たらの話だろ?」
微笑んでからそう……答えた。
その時にでも。言ってくれればいいのに。
正直何を言っているのか……あの時の俺にはよくわからなかった。
でも今は……。
「夕? どうかしたの?」
「いや…なんでもない。買い物して帰ろう」
嘘にしないために。買い物をするべく次の目的地へと向かった。
紗夜の手を──引きながら。
旭日家 寝室
夜。
あれから数週間が過ぎた。高校2年生の生活はさほど変わらず、バイトの日以外は退屈な毎日を過ごしている。
そう。新しいバイト先が見つかったんだ。今までの経験を活かせると思う。
風呂上がりにはだいたいベランダで涼んでいるが、今日は違った。
母さんの寝室。正確には母さんと父さんの寝室だが、今のままで残したいという父さんの思いからそのままの形で残っている。
俺はこうして時折、忍び込んでいる。別に寂しいとかそういうわけじゃない。人は忘却をする生き物だ。辛いことを忘れて楽になろうとする。だから俺は……こうして忘れないように足を運んでいるんだ。他にもいろいろとある。
ふとベッドの横に視線を向けた。その先にはギタースタンドがある。置かれているのは母さんの残していった赤いギターだ。特に弾くわけでもなく。時折手入れして。ただ……置かれている。
自分のバンドのことなんていっさい話さなかったのは、過去のことが本当に恥ずかしかったからなのか……。それともまた別の理由か。話してはくれなかったけど、消えてしまわないように残したいとも思う。CDとか動画とかじゃなくて。自分で弾いて。だけど………。
俺は母さんの音楽とは向き合えない。
今の状態じゃ心の底から楽しめないんだ。
そんなの母さんに失礼になる。いつもお酒を片手に楽しそうに音楽について語る姿が今でも鮮明に記憶に残っている。いや……記憶にこびりついていると言った方が正しい。絶対に忘れたくないと思ったからか。それとも……いつの日か。
母さんの音楽と向き合うためか。
その答えはわからない。でも、いつかは向き合いたい。心の底から楽しいと思いながら……母さんのギターを弾いてみたい。
そう思いながら俺は時折、母さんの部屋で弾いている。お下がりでもらった真っ白なギターを。
いつか向き合えて……母さんのバンドが奏でた曲を。あの赤いギターで弾くために。
「それから……どうでもいい報告。やっぱり朝は起きられないみたいだ。だから、紗夜に頼んだよ」
いつかは…必ず起きるようにはするから。
『知ってた。あんたはそういう子だもん』
聞こえるはずのない。母さんの声が聞こえた気がした。
書いている途中またまたヒロイン不在でした笑
これはまずいと思もったので、急遽話を追加した次第です。
嘘をつく時顔に出てしまうキャラもそれはそれで面白いのですが、主人公は表情筋死んでいるのかってくらい無表情です笑
意外と紗夜さんって嘘下手なんですよね笑 そこもまたたまらないです。
次回はようやくバンドストーリーです。Roseliaの。
気になった方は一度見てみるといいですよ! 面白いので!
それではまた次回
作者の書くギスギスしたバンドリの話が好きですか?
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ギスドリ回の方が好き
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明るい話の方が好き
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どっちも好き