ガールズバンドに振り回される日常 作:レイハントン
今週は予定を少し変更して木曜日と土曜日or日曜日に投稿しようと思います。
書き溜めていたものが徐々になくなってゆく……来週からは週1投稿になるかもですね。
今回はRoseliaの話とアニメの一部の話です。
それではどうぞ。
第19話 嫌な予感
数日後。この前約束通り2人にクレープを奢ったんだが、お礼に缶コーヒーを今井からもらった。しかも俺の好きなブランドのやつ。そういう細かいところに気が効くのが今井の良いところだ。宇多川からはなにも貰ってないからな?
「旭日君、旭日君。今日も彼女来てるのかい?」
「紗夜達ですか?」
CiRCLEのバイト中。ロビーで暇そうにしてると海藤先輩が話しかけてきた。ちなみに今日のメンバーは萩野と海藤さんだが、天道さんも居るから平和も平和。気が楽でついつい眠くなる。
「そうそう。今度のイベントなんだけどね」
「枠が余ってるって話ですか?」
「話が早くて助かるよ。交渉したら出てくれると思うかい?」
まぁ普通に考えて出てくれるだろう。確か有名なライブだしな。ここら辺じゃメジャーのスカウトにも来る登竜門的なライブ。枠があるならねじ込んでやろうかと思ったけど、今回はすんなりいけそうだ。
「出てくれると思いますよ。他に出るバンドないなら無理にでも押し通します」
「それなら頼もしい。いや〜ちょうどよかった」
これに出れれば少しは知名度も上がってフェスに近づければいいんだけどな。現実はそう上手くはいかないか。上手くいってるなら紗夜が何度もバンドから追い出されたりしないし。
するとちょうどスタジオの清掃から萩野が戻ってきたようだ。
「さっきのスタジオだけど、隅っこの方かなり汚れてたよ?」
「俺は埃が溜まってたらちゃんとやるぞ」
「夕君と同じく」
いや、そもそも海藤さんは掃除あんまり行かないよな? だいたいその場に居る人に押し付けて自分はロビーに居るし。となると、他に怪しいのは。
「じゃあ市野木さん?」
「そうだろ。あの人適当だし」
「女の子の扱いは丁寧なのにね」
「いろんな人に声かけてる時点で丁寧でもクズ野郎確定ですよ?」
「当たりが強いね〜」
市野木さんのことが嫌いなわけではない。仕事よりもナンパ優先するところとか、女の人のお願い事はすぐ受けるくせに男の人のお願い事は断るところとか。どちらも良い言い方をすれば素直だしな。
でも知っているんだ。あの人はえーと言いつつも気づかぬうちにやってくれることを。最初から素直にやってくれるのなら、言うことはないんだが。
「まぁ使う回数少ないスタジオだからな。基本手前のスタジオを優先で埋めるし」
「使ってないスタジオの清掃の回数を増やすよりも、ちゃんとやったかどうか確認した方が良さそうだね」
「萩野の言う通りだな。次回からそうしてみるか」
「その時は頼むね。2人とも」
「「海藤さんもやるんですよ」」
なぜ最初から人任せ前提なのだろうか。まぁ言ってもニコニコしてかわされるだけだからいいとしよう。それ以外のことはちゃんとやってくれるし。
数時間後。ロビーで機材の手入れをしていると聞きなれた声が聞こえてきた。
「ちょっと、宇田川さんも今井さんも。ここは通路なんだから、ダラダラしないで」
あの言い方。紗夜しかいない。俺が言われてるわけじゃないのになぜか罪悪感。
「そうよ。迷惑なら旭日にかけてちょうだい」
おかしい。俺にだけかけていい迷惑とはいったいなんなんだ? 誰だ、いじめると喜ぶなんて教えたのは。何度も言うが俺はMじゃない。罵られても嬉しくないならな。
「すみません。次回の予約、いいですか?」
海藤さんが居るからだろうか。さっきと全く違うんだが? さりげにここは俺がと手で制してから接客する海藤さん。結構サボってるの見るけど、普通に仕事出来る人なんだよな。無駄な燃費は消費しない的な感じ。
「毎度どうも、友希那ちゃん。そうだ、来月のことなんだけどさ。予定どうかな? 他でライブの予定とか入れちゃってる?」
「いえ、私たちはまだ….…」
俺に一度聞いてるのにも関わらず相手としっかりコミュニケーションを取る。真宗にも見習ってほしい。相手がどんな人であろうと海藤さんは顔色ひとつ変えない。
「あっ。最近ソロからバンドに変えたんだっけ? じゃあ大丈夫かな? 急遽イベントに穴が開いちゃってね。他に頼めそうな人、いなくてさ〜」
間髪入れず話きったよ。それにこの頼まれ方だと断りづらいよな。他に頼めそうな人居ないなんて言われたら余計に。まぁこの話を断る理由、湊たちにはないだろう。
「わかりました。そのお話受けます」
「ありがとう。今度詳細旭日君から伝えてもらうね」
「….…そこは俺なんですね」
後は任せたみたいな雰囲気醸し出してるけど、そこまでやったなら最後までやってほしいものだ。
次回の予約をしてからCiRCLEを後にする4人。なんだろう。こういう時の嫌な予感ほど当たる。ロビーを後にして4人の後を追った。気づかれないように。
「すごいっ……早速ライブ出演が決まった! メジャーのスカウトも来るって噂のイベント」
ライブが決まったのが嬉しいんだろう。すごい嬉しそうだ。
さっきの話にもう少し補足すると実際にスカウトされていた所を見たことがある。去年の話だからCiRCLEでバイトはしてないが。たまたま見に行った時だ。
「も…もしかして、あこ達も……?」
「確かにこの地区のバンドにとっては、登竜門と呼ばれているイベントね」
よく知ってらっしゃる。紗夜なら当たり前か。と言うよりもライブハウスに来ている人なら、知らない人の方が少ない気もする。
「けれど私達はメジャーと言うより、もっと……」
「そう。もっと高みを目指しているわ。……メジャーは決して、音楽の頂点じゃない」
今思えばFUTURE WARLD FES.に出る以外の目標は聞いてないな。まぁフェスに出る為に集まったようなものか。
「あこ。そう思えない人は、このバンドに要らないわ」
「えっ。そうなんですか? でも……メジャーデビューしたらあこも、カッコいい人になれるかなって……」
割と冷たいことを言われてる宇田川だがケロッとしている。カッコいいか……宇多川はよくお姉さん。つまり宇田川巴の話をすることがほとんどだ。本当に好きなのだろう。紗夜と日菜とはまるで違う姉妹の形。
「どこがカッコいいの? メジャーなんて『音楽を売るため』の場所よ。本当の音楽のことなんて、なにもわかってない……」
音楽を売るための場所。そう言えなくもないか。売れないバンドや歌手は年々見なくなってしまうものだ。
「全てがそうではないと、私は思いますけれど?」
珍しいこともあるもんだな。紗夜と湊の意見が割れた。
「(湊さん……どうしたのかしら。なんだかムキになっているようにも見える)」
嫌な予感というのは唐突に訪れる。
わかっている"つもり"はいつも怖い。
「でも、そうね。私達は『自分たちだけの』頂点を見つけるためにここに居るはず」
繋ぎ止めていた"つもり"なのに。気づけば紗夜手は俺の手から離れていた。だけどそれに俺はまだ気づけていない。単にあこの態度に我慢の限界がきた。なんて思うしかなかった。
「宇多川さん。あなた、よくお姉さんの話をしているけれど、あなたが音楽をやりたいのではなく、お姉さんに憧れて、お姉さんのようになりたいだけなら、私達とではなく、お姉さんとバンドを組んだ方がいいわ」
やたらとお姉さんという単語を口にする紗夜。それに加えて姉妹の話。感情に任せて話している。いつもの紗夜らしくない。
「あ、あこはこのバンドがいいですっ! お、おねーちゃんもドラムだし…っ。だからっ、あこも、おねーちゃんみたいになりたくて、ドラムを……」
「お姉ちゃん……」
一瞬見せたあの表情。俺はどこかで一度見ている。どこだ……?
記憶を遡っている束の間。紗夜の言葉は止まらない。
「宇田川さん。……私は今、あなたの技術は認めています。でも、あなたのカッコいいは、ただの『真似』だわ」
「……っ。ち、違うもんっ! あ、あこは……っ!」
「違わない! じゃあ答えてみて。お姉さんではない、あなた自身にとってのカッコいいって、何なのかしら?」
中学生相手に大人気ない。普段の紗夜ならあり得ない行動な気もするが、周りから見ればそこまで複雑な問題には見えて居ないのだろう。おそらく紗夜がただあこの普段の態度、考え方に怒っているだけ。
「そ、それは……」
若干というか。普通に涙目になっている宇田川。
「わかったでしょう。あなたのその意識は、バンドを高める為に、必ず変えて貰わないと困る」
流石に見てられないので、4人のもとに歩いて行く。
「紗夜、その辺にしておけ。高校生が中学生を泣かすな」
もちろん居たの? みたいな表情を浮かべてくる。盗み聞きよくないけど、こうでもしないとな。
俺はあこの頭にそっと手を置いた。悪いな。すぐに止めに入ってやりたかったんだけど、紗夜の思いを少しは知らないと。一度だって真っ直ぐ気持ちをぶつけてきたことがないんだからな。
「旭日君のいう通りだよ紗夜。その辺でっ」
もう少し早く仲裁して欲しかった間はあるがこの場合は仕方ない。紗夜の迫力は結構あった。
「あこはこう見えてしっかりしてる所あるし、……ちゃんと自分で考えられるって、ね? ほら、あこ」
「……う、うん」
今井のフォローによって多少は取り繕えたか。それでも今のこの空気は重い。まるで鉛のようだ。
「でしたら構いませんが。今井さん自身も大丈夫ですか? このジャンルやシーンについての知識はあるの? それにブランクのせいで、大分無理してるみたいだけれど」
ふと今井の指を見る。だいぶ傷だらけなの誰が見てもすぐにわかる。湊だけじゃなく紗夜も気づいていたようだ。
「あーうんっ。この指は心配しないでっ。……それにこのジャンルについては、なんてゆーかその、うん。アタシは昔から、友希那から話……聞いてたし」
ところどころ言葉が止まる所はあったが、湊から聞いていたのであれば多少は大丈夫なのだろう。知識だけで言ったら俺なんかよりもあるしな。
「(……そっか。友希那のお父さんのこと知ってるの、バンドでアタシだけなんだ……。友希那はいつ話すつもりなんだろう……) 」
結構なことになっているにも関わらず何か考え事をしているようだ。湊友希那は。もう少しはメンバーのことを見てやればいいのに。
「……友希那?」
「それよりもキーボードよ。ずっと探してるけど……キーボードなしでこのジャンル特有の音の厚みは出せない。ライブが決まったのに……」
「うーん。……とにかくみんなで、もっと探してみるしか、ないよね……」
心当たりならあるんだが、やっぱり人前に出るのが苦手というのが引っかかる。そういう人をわざわざ観客の前に引っ張り出すのは絶対に良くない。
「旭日君?」
それに問題は山積みだな。紗夜のこと。どうするか。無理に話を聞いたって言ってくれるわけでもない。理由がわかっているのに解決策が出ないのがもどかしいところだ。……その理由も本当に正しいのか? 俺は一度だって……。
「おーい。もしもーし」
「考え事してるみたいね」
何かないか? 無理矢理じゃなくて、自然に話を聞く方法。それか───
「旭日君!」
「ん? 呼んだか?」
「さっきからずっと呼んでるよ。アタシ達はもう帰るね」
「悪い。気をつけてな」
それだけ言い残してCiRCLEに戻っていった。立て続けに盗み聞きをしてしまのは流石にまずいよな。今度は今井から聞くなりするか。
「(やっぱり……なにも言わないのね。あなたは……)」
どうしたらいいのか……まだ明確な答えは…出ない。
次の日 昼休み
珍しく昼寝をすることなく過ごしている。というのも少し訳ありだ。香澄の持っているランダムスターについて大輝に聞きたいことがあるんでな。
というわけで。B組に訪れ、本人が居ないか見ると1番前の席で憐歌と話している姿が目に入った。机の間を抜けて2人の元へと向かい、大輝の席の前に立つ。
「大輝、今いいか?」
「おう…ってか起きてるの珍しいな」
「夕君毎日寝てるわけじゃないでしょ?」
「……どうだったかな」
「え〜」
割と寝ていたりする。30分でも寝ることが出来るならそれはそれで大変素晴らしいことだ。午後の授業にも差し支えるしな。まぁ俺は寝ても起きてても差し支えるが。
「ところで何か話があるのか?」
「ギターに関してなんだが……」
ちょうど話そうとした時、スマホに何か通知が来たようだ。内容だけ見るために電源ボタンを押した。
『ランダムスター持ってる人って変態なんですか?!』
いったいどういう意味だ。変態ではない。だが変ではあるな。
「ランダムスター持ってる人は変態なのか?」
「まぁ…そうだな。長くなるぞ」
「構わない。それを聞きにきたんだ」
ランダムスターについてしばらく話を聞いた。
午後 授業中
結論から言うと、初心者向けのギターではないらしい。順を追うとだな。まず香澄の持っているランダムスターは変形ギターという種類。そこは俺もなんとなくわかる。形は結構独特だしな。
次に変態という意味だが。ギタリストにとっては褒め言葉らしい。つまり俺は紗夜に対して変態と言えば褒め言葉になる……とは到底思えないんだが。ギタリストでない俺が言ってもビンタされそうだ。話が脱線してしまったな。つまり相当なテクニックを持っている人が愛用していたりすると大輝は言っていた。
あとはオリジナルとは違って香澄のはカスタムらしい。以前送ってきた画像を見せたら、あれやこれや情報が出てきて俺には理解不能だった。ここまで楽器に詳しいのは大輝を含めて2人知っている。どちらも知識量は変態だな。
簡単に説明するとだな。ランダムスターは変形型で、初心者にはあまりおすすめ出来ないギター。テクニックを要する。こんなところか。
「───じゃあここを珍しく起きている旭日。読んでみろ」
しまった。今は現代国語の時間だったな。
指名されてしまったので、とりあえず立ってみる。チラッと涼子の方を見ると、右手で3と左手で8を表していた。次に右手で右側を指して、左手で5を表す。つまり38ページの右から5行目だな。
とりあえず指定されたところを読んでみた。
「いつもその調子で頼むぞ」
「はい」
いつも涼子には助けられているな。聞いていないというのも瞬時に察してくれたし。後で飲み物でもおごろうか。
紗夜さんの当たりが強い笑
それを見ている主人公。なぜ見てるんです!って言われてもおかしくないですね笑
サブタイトル適当に付けているわけではないんですけど、サブタイトルによっては読んでもらえたりするのでもっと考えないとなって思いました。
さていつになったら残り1人のメンバーが出てくるのやら……
それではまた次回。