ガールズバンドに振り回される日常   作:レイハントン

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こんばんは。レイハントンです。

やっとこの回が来ました……長かったです笑 ただひたすらに。

今回はどんなお話なのか。

それではどうぞ。


第22話 5人の音

第22話 5人の音

 

 CiRCLE カフェテリア

 

 予想通り湊、今井、あこの姿があった。俺達を見つけるなり、あこが手を振りながら大きな声を上げる。

 

「あっ。れんさん、りんりんいたーっ!」

 

 今日も元気なことだ。その元気はどこか湧いてくるのやら。

 

 3人の所に行くと、あこがすぐに白金に歩み寄って話しかけ始めた。

 

「もーっ。ピアノ弾けたなんて驚きだよっ! 何年も付き合ってるのに、全然知らなかったぁ。れんさんも教えてくれなかったし!」

「てっきり僕はもう知ってるのかと思ったよ」

「あこちゃん……ごめんなさい……伝える機会が……」

 

 2人が会っている時はわからないが、少なくともNFOをやっている時にピアノの話題は全く上がらないな。いつも通りのくだらない雑談を永遠4人または5人でしているわけだし。

 

「あっ、違うの。悲しいとかじゃなくて、びっくりしただけなの」

「この子が燐子ちゃん? へーっ。あこの友達って言うから、なんてゆーか……似たよーなタイプの子想像してたけど」

 

 話に割って入ってきたのは今井。偏見ではあるけど、あこの友達となると似たようなタイプって想像するのはわかる。俺もチャットを見た感じ結構話すタイプの人かと思ったしな。実際は全く違ったが。

 

「りんりんはすっごいんだよっ。ネトゲでは無敵なんだからっ!」

「ゲ、ゲームの……話は…あこちゃん……あんまり……!」

「音楽の話が聞きたいわ。燐子さんといったかしら? 課題曲はあなたのレベルに合ってた?」

 

 まさに一刀両断。今日はセッションをしに来たわけだし。そして湊の問いに白金が必死に答え始めた。だいぶ緊張しているんだろうな。そりゃあそうか。結果次第ではこのバンドのメンバーになる上にライブにも出ないといけないわけだし。

 

「友希那…さん…! あ…わ、わた…し。動画と……その…たくさん…一緒に」

「動画? 演奏レベルを確認したいのだけれど、それは難しかったという意味?」

 

 なかなか会話が噛み合わない。それでも話は次々に進んでいく。今度は紗夜が話し始めた。

 

「白金さん。同じクラスだけど、こうして話すのは初めてね。ピアノ、有名なコンクールでの受賞歴もあるそうですね。いつも学校では静かなので、こういった場に来るとは思いませんでした」

 

 受賞歴もあるんだな。そうすると結構すごいじゃないか? 確かピアノのコンクールはいかに正確に演奏出来るかだったはず。となると譜面通りに演奏するのは普通に出来そうだ。

 

「……コンクールは…小さな……ころの、話で…。わたし……ただ」

 

 威圧的な態度ではないけど、少々圧が強い2人だからな。思ったように話せないのはわかる。俺もその圧に押されることがほとんどだ。湊に至っては聞いた上で、バッサリ切り捨てるからな。

 

「(ただ、この人達と……演奏したい。その気持ちだけで……わたし…来てしまったけど……)」

 

 なかなか続かない会話に紗夜が心配そうな言葉を並べ始めた。

 

「宇田川さん。本当に大丈夫なんでしょうね?」

「りんりんはあこの戦友で、大大大親友ですっ。だから、あこは絶対大丈夫って信じてますっ!」

「…っ! あこちゃん……」

 

 戦友って。それはゲームの話だろうよ。さっきから俺の隣で憐歌は頑張れみたいな感じで見てるけど、少しくらいフォロー入れてやれよな。

 

「でも、この子が演奏しているの、見たことないんでしょう」

「なくても、信じてますっ!!」

 

 すごい信頼感だ。そしてその信頼感が今の白金にどれだけ重くのしかかることか。いや……もしかすると、期待に応えようとして頑張れるかもしれない。

 

「……オーディションはあなたの時と同じで、1曲だけよ。それでダメなら帰ってもらう」

 

 いつもの厳しいセットだな。こう言う時の湊は冷たいというか、きっぱりしているというか。

 

「はいっ! がんばりますっ!」

 

 白金が答える所をなぜかあこが答えた。確かにセッションとはいえあこも頑張らないといけないんだが、1番頑張らないといけないのは白金なんだよ。

 

「あはは、あこ。頑張るのはあんたじゃないでしょ〜」

「あこちゃんらしいな〜」

 

 呑気なもんだな、憐歌。この様子を見ると本当にただ見学に来ただけのようだ。

 

「はい……わたし…が、がん….ばり…ます」

「……はぁ。期待に応えてくれることを、祈っているわ」

「なるようにしかならないだろ」

 

 そう言ってお店の方へと向かって歩きだすと、俺の隣に憐歌が歩み寄ってきた。

 

「燐ちゃん、大丈夫そうでよかったよ」

「あれで大丈夫なのか?」

「大丈夫じゃなかったらここには来ないからね」

 

 なるほどな。確かに大人しい子だし、自分からオーディション受けたいって言った時点で相当覚悟はしているみたいだな。何事も自分から挑戦するっていうのは意外と怖いもんだ。失敗したらどうしようなんて思うし。

 

「それにいざとなったら夕君も居るしね」

「俺をあまり当てにするな。ただのバイトなんだから」

 

 俺には紗夜達ほど音楽の才能なんてない。強いて言えば多少知識がある程度か。

 

 CiRCLEの中に入ると、ロビーには涼子と鈴音が受付をしていた。早乙女だと必ずと言っていいほど変わってくださる? と言ってくるんだよ。真面目に仕事をしてほしい。

 

「あれ? 夕君早くない?」

 

 受付の前で一旦立ち止まって答える。

 

「今日は湊達のオーディションの日なんだよ」

「ということはキーボード出来る人見つかったんだね」

「加入出来るかはまた別の話だけど」

 

 そう言い残して俺は着替えるために事務所の方へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私服から着替えて向かったのはAスタジオ。おそらくすでにセッションする準備は整っているだろう。

 

 ノックをしてから扉を開けて中に入ると、ちょうどセッションが始まる前だったらしい。いつもの定位置に湊達が着いている。俺は離れて様子を見ている憐歌の隣に立った。

 

「いきますよ。白金さん、いいですか?」

「は、はい……」

 

 緊張した様子で紗夜に答える白金。

 

 始まる前にスマホを録画モードにして手に持った。もしかするとこのセッションも良いものになるかもしれないからな。

 

 そしていよいよセッションが始まった。

 

 

 

 

 

 

 セッションが始まって数秒。5人の音の一体感に驚きを隠せない。キーボードが居ることで普段とはかなり違うのはわかる。だがそれだけじゃない。

 

「(すごい……動画と合わせるより、ぜんぜん…)」

 

 前回のセッションと同じ。その場でしか出せない音が2回も聴けていることに正直驚きを隠せない。

 

「(……この子……! 何なの? 私、このキーボードに引き寄せられて…。──いえ。違うわ。この感覚……)」

 

「(この感じ…同じだ…! 初めて4人で演ったときと….! それに….…友希那。昔みたいに…)」

 

「(やっぱ……りんりんは無敵だねっ!)」

 

「(…楽しい……! 1人より……ぜんぜん。楽しい……! もっと…弾きたい。わたし……弾きたい!)」

 

 演奏はあっという間に終わってしまった。だがずっと頭の中に残っている。スマホの録画をずっとしたままなのさえ忘れてしまうセッション。これはもしかするかもしれない。

 

「なんか…すごかった。4人より……」

「私は問題ないと思いました。……ただ。ちなみに、湊さんの意見は?」

「……なぜ? こんなこと、何度も……おかしいわ」

 

 たぶんあのその場でしか出せない音に2度も遭遇したことに多少混乱してるのかもな。水分補給をしながらだが、まるで聞いていない。実際のところ俺も同じ気持ちだ。この短期間で2回も聴けるなんて普通思わない。

 

「えっ。そ、それって……こ、こんなによかったのにダメってこと? な、なんでですかっ?」

 

 話を全く聞いていなかった湊の言葉と宇田川のなんとも言えない食い違い。合ってるけど合ってないのがすごいな。

 

 数秒後。ようやく反応した。

 

「あ……いえ、演奏は問題ないわ。技術も表現力も合格よ。……旭日、あなたの意見を聞かせてほしい」

「……毎度毎度。なんで俺なんだ?」

「それは、私も疑問に思うわ」

 

 紗夜も疑問に思ってしまう辺り俺はやはりポンコツなのだろうか。

 

 別に意見を言うのは構わない。全くと言っていいほど楽器の演奏経験なんてないし、演奏を見たきただけだ。湊が欲しがるような意見を出すのは厳しい。

 

「ふざけているわけじゃないのよ。ただ、あなたの観察眼は素晴らしい。だから聞いてるのよ」

 

 その言葉。あの人もよく言ってたよ。『あんたは人のことをよく見てる。その観察眼は素晴らしいよ』ってな。ミスとか焦りはよっぽど顔や態度に出ない人の方が稀だ。例としては紗夜か。

 

 まぁ1番見てわかるのは本気で演奏してるかしてないかだな。そう言った部分では……SPACEのオーナーと同じだった。

 

「特に着眼点がよくテレビに出ている東雲早希と似ている」

 

 あーあの。元DiVAって音楽ユニットの人か。なんか冷たい人だよな。すごい厳しいって話だし………そんな話ではない。

 

「なるほどな。……確かに、今のセッションは良かった。なんらかの形で合わせていたのは容易に想像出来る。他の曲でも同じく出来るだろうな」

「そう……ならぜひ加入して」

 

 俺の言葉を否定することなく飲み込み、加入が決まった。今思えば練習を見てから意見を言った時否定することはなかったな。練習以外での当たりは妙に強いが。

 

「……あ……」

「や……やったぁーーー!! やっぱりりんりんはすごい最強だよ!! この短い期間でノーミスだったもんねっ!」

 

 短期間。それだけの時間でよくここまで合うものだ。さっきも言ったがなんらかの形で合わせていたとは思う。それを差し引いても今のセッションは素晴らしかったと思う。

 

 今思い出したスマホの録画を止めた。後で要らない部分を切らないとな。

 

「やっぱり燐ちゃんはすごいや」

「こんなことならもっと早く話を聞いてればよかった」

「確かに。でも何か引っかかる……」

 

 その何かについてはすぐには出てこないようだ。俺と2人で話しているよそでこれでもかと喜んでいる宇田川と白金。

 

「あ……りがとう。でも……家で…動画と、一緒に……何度も…弾いてたから」

「あ! あこがあげた練習動画のこと? あれで練習してたんだ」

 

 やっぱりな。練習動画ってことは前に撮影したやつか。何かのヒントになればと思ってやったが、ここで実を結ぶとは。何事もやってみなくちゃわからないってことか。……要らない部分の編集大変だったんだけどな。

 

「……なるほど…」

「妙に一体感があっとは思いましたが……」

「あなたの観察眼も侮れないわね。さすがだわ」

「なんだ急に……気持ち悪い」

 

 隣でくすくす笑ってる憐歌だが普段こんなことないんだからな? そんな褒められたら普通に気持ち悪い。普段の態度見てるとなおさら。……とうとう飴と鞭の使い方を覚えたのか?

 

「いいわ。あこ、燐子さん、……リサ。あなた達も含めて、一度この5人でライブに出る」

 

 出るとは言いつつも宇田川と今井は含まれてなかったのか。あの了承の仕方だと4人で出るみたいな感じだったんだけどな。

 

「ラ、ライブ……!? うそ……」

「あ〜、このことか」

「このこと?」

 

 引っかかる要素がわかったのか、珍しくどうしようという表情を浮かべている。ライブに出るのが何か問題でもあるのか? その件も了承して……。

 

「やったねー! じゃあ……燐子ちゃん。いや、燐子。これからもよろしく!」

 

 喜ぶ今井だが、白金の様子の変化に気づいたようだ。今の白金を見てわからない人は居ないと思うが。

 

「……って燐子、どうしたの? 慌てて。なんか顔色悪いよ!? あこ、ちゃんと説明した?」

「したよ〜っ。バンドしよって! スタジオであこ達と一緒に、キーボード弾きに来てって!」

 

 ……はぁ。ここにきて全てをあこに任せたのが仇になりかけてる。ちゃんと伝えることを確認しなかった俺たちも悪いがその言い方だとな。普通なら。

 

「……う〜ん、あこ。その説明、ちょ〜っと足りないかも」

「そうなるよな。人前が苦手ならなおさら」

「あはは〜。あこちゃんらしいけど……」

 

 見ろ。あの憐歌が苦笑いを浮かべてるぞ。白金の事情を知っているなら1番伝えないといけない部分だろ。一緒に弾けるかどうかよりも。そしてそんなことを言うと大体は。

 

「わた…し、そこまで……考えて……」

「なら、もう帰って」

 

 だろうな。湊友希那がそう言わないわけがない。もともとバンドを組む以上ライブをするなんて必須だからな。だがもう少し言い方と言うものがある。そこも紗夜と似ている。

 

「どんなに力があっても、やる気のない人間に、割く時間はない。他のキーボードを探すだけよ」

 

 そう言う彼女は真剣そのものだ。そんな湊の姿を見ると憐歌は数歩前に出て白金の方に向いた。庇護するような言葉を言うんだろうか。

 

「燐ちゃん、この人は本気だよ? 本気で音楽と向き合ってる。……燐ちゃんは違う?」

 

 意外にも憐歌は全く違う言葉をかけた。ああ……そうか。ゲームの類には本気で打ち込む憐歌だからこそ、わかるんだろう。湊がどれほど本気なのか。

 

「ここでやめるのも1つの手だと思う。一度挑戦して情報を集めるのは基本だからね」

「憐さん?! ゆ、友希那さ───」

 

 宇田川の言葉を遮ったのは意外な人物だった。

 

「……っ…わ、わた…し。……きたい!」

「っ!? り、りんりんの大きな声、初めて……」

 

 長い時間一緒にいる宇田川が驚いてるってことは本当に大人しい子なんだろう。ここまで様子を見てると少々驚くのはわかるが。正直このまま引き下がると思ってた。

 

「わ、わたし……皆さんと。弾きたいです…っ。が、がんばります……。お、おねがい……します……!」

「……そう。燐子。その気持ち、ライブで見せてもらうわ」

 

 なんとか5人揃ったということでいいだろうか。まだ不安要素が多すぎるが、この5人なら……ライブをしても大丈夫だろう。後は白金の気が滅入らないようにフォローでも入れないとな。でないとスパルタ2人がやらかしそうだ。

 

「夕君。時々燐ちゃんの様子見てくれると嬉しいんだけど」

「そのつもりだ。じゃないとあの2人に潰されかねない」

「ありがとう。……やっぱり夕君はすごいね」

 

 今の会話でなぜそう思ったんだ? 今までの会話だって。

 

「湊さんの言葉に何も言わなかった。普通あんな言い方したら怒るでしょ」

 

 そのことか。まぁ憐歌の言葉もわからなくはない。

 

「湊友希那はそういう奴ってわかってるからな。それに音楽にかける情熱を知ればああ言ってしまうのも納得してしまう」

「本気だからだね。僕にも少しだけわかるよ」

「ああ。遊びじゃないんだ」

 

 だからこそ紗夜と湊は分かり合えてる。お互いに本気だから。FUTURE WARLD FES.に出るために。その為には同じ気持ちのメンバーでなければついては来れない。だから今までだって……。

 

「じゃあ僕はそろそろ帰るね。ライブ観に行くから」

 

 それだけ言い残して憐歌は1人帰っていった。まぁこのまま白金含めて練習だろうしな。セッションだけして終わりとかさすがに。俺もいつまでもバイトに穴を開けとくわけにもいかないから戻るとするか。

 

「俺もバイトに戻る。時間厳守で頼む」

「わかっているわ」

 

 以前セッションをした時のものと一緒にバックアップをとっておくとするか。いつの日か…こんな音をずっと奏でられる日が来るのだろうか。

 

 

 

 5人揃ったはずなのに。俺の中でまだ不安は拭いきれない。

 




やっと5人が揃いました笑
そして長かったRoseliaのバンドストーリーも残り2話で終わりです。
オリジナルの話が多くて時間がかかってしまった感じですが、意味のある話ばかりです。

この章が終わると今度はバンドストーリー編でRoseliaの後半、Afterglow、Pastel*Palettes、ハロー、ハッピーワールド!、Poppin'partyのストーリーとなります。Roselia以外は一部のみって感じですね。おそらく20話くらいかかります笑笑

それではまた次回。

2022/3/26(土)追記
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