ガールズバンドに振り回される日常 作:レイハントン
さていよいよRoseliaのバンドストーリー前半も終盤です。ここまでくるのに23話。しかも前編ときたもんです笑 投稿ペースを上げたいのですが、なかなか話が書けなくてですね……
それではどうぞ。
第23話 Roselia 前編
花咲川高校 教室
あれから時は過ぎてライブ前日の授業中。
俺はいつもより上の空で授業を受けていた。明日はいよいよ紗夜達のライブの日。同時にバイトがものすごい忙しい日でもある。ライブなのだから仕方ないことだ。なにも問題が起きずに普通に終わってくれれば1番良いんだけどな。
機材トラブルとかがあってなかなかそうもいかない時がある。お客さんを待たせるのは絶対にダメだからな。SPACEのオーナーがよく言っていた言葉だ。
紗夜も以前のようなことにはならないだろう。これで少しは心配しなくて済みそうだな。俺は明日のライブが円滑に進められるよう頑張ればいい。
上の空で受けていた授業はいつの間にか終わり、すでにお昼の時間になった。ここ最近昼を抜いてることが紗夜になぜかバレて、お小言を少々いただいたわけだが。なぜバレてしまうんだろう。これはあれだ。誰かが告げ口しているか、バレてしまう運命なんだな。
バレてしまう運命は納得いかないが、告げ口しているような奴は俺の周りに居ない。……はずだ。智紀と涼子が紗夜と話しているのはほとんど見ないからな。
「なーに難しい顔してるんだよ」
「別になんでもない」
「ホントかー? あれだろ。明日のライブのことだろ」
全く違うんだが、こうなるとしつこいからな。適当に話合わせておくか。
話そうとすると俺の前の空いている席に智紀が座った。
「明日は紗夜さんが出るもんな」
「そうだな。人がたくさん来そうだ」
そう言いながら鞄から前日に買ったやまぶきベーカリーのパンを5個だした。
「お前の鞄にはパンしか詰まってないのか?」
「朝食ってないんだよ」
そうは言ってるけど智紀なんて弁当に加えて売店で買ってきたのであろうおにぎり2つあるからな。部活があるとはいえ、お前もなかなか食ってる方だと思う。
「2人ともすごいね」
「涼子かー。珍しいな、こっち来るなんて」
「友達はいいのか?」
「うん。明日のライブのこと話したかったし」
お昼は俺の所に智紀が来たり、来なかったり。涼子は基本友達と過ごしてることが多いが、ライブの前日になるとこうして話に来る。
隣の席に座ると、机を俺達の方へと向け椅子に座った。
「明日かー。オレも行きてぇなー」
「エースストライカーが休んだら大変だろ」
「まぁな〜」
まんざらでもない顔しやがった。実際上手いわけなんだが、少しは謙遜というものをだな。………しないかコイツは。
「そういえばさ。紗夜ちゃん達のバンド名ってもう決まってるの?」
「今日言いに来るとさ。結構悩んでたみたいだな」
「そんな時間かかってもいいもんなのか? 明日なのに」
「そこは夕君の腕の見せ所だよ」
なんだその智紀のなるほどみたいな顔は。バンド名決まってないと大変なんだからな。出演バンド名のところどう誤魔化すのか考えないといけないんだから。1バンドだけバンド名決まってないポスターなんて見たことないだろ?
「で、あのアイディアってことか」
「それなんだけど、私じゃ思いつかなかったよ」
そう涼子が言うと、スマホの画面を俺達に見せてきた。
「たまたま上手くいっただけだ」
「ご謙遜を〜」
お前は少しくらい謙遜しろ。
出演バンドを書いた所には、"あの歌姫がバンドを結成!"とだけ書いてある。別に秘密にする必要もないが、バンド名が決まってない以上こうするしかなかった。まぁ気になって来てくれる人も居るだろうし、湊は知名度が結構あるからな。歌姫とだけ書けばわかる。
スマホの画面を裏にして机の上におきながら会話を続ける涼子。
「その効果かわからないけど、チケットすぐ売り切れだったしね」
「へ〜。さすがだな。巷で話題の湊友希那は」
「追加でライブしてもまだ儲けられるな」
「夕君、悪い顔だよ」
いやいや。儲けられるならそれに越したことはない。いっそのことライブ配信なんてしたらもっと儲けられるんじゃないかって思うくらいだ。今の世の中はネットだからな。
「部活引退したら3人でバンドでもやらね?」
「唐突だな。急にどうした?」
「前からやってみたかったんだよ」
バンドか….…。誰が何をやるのか全く想像出来ないんだが。
「面白そうだけど、なんか想像出来ないね」
「同意見だ」
「やるってなった時考えればいいんじゃね?」
なんて適当な奴なんだ。言い出しっぺがこんなんでは先が思いやられる。………とは言うものの、心のどこかでは少しだけ期待したのは内緒だ。
CiRCLE ロビー
放課後。
学校が終わってすぐにバイト先に来たわけだが、絶賛忙しい。学生が多く来る時間帯と俺のシフトが重なるからなんだが。
外のカフェにも花女、羽丘、月ノ森の生徒が多く見受けられる。ちなみに月ノ森はお嬢様の高校……前に駅前でギャルっぽい子を見たが、たぶんそうだ。
「やっぱりこの時間はすごいね〜」
「そうですね。高校生がわんさか来ますから」
まぁ仕方のないことだ。外のスタッフさんも忙しそだが、回ってないわけではない。よっぽどの時は呼ばれるんだけどな。たまにスタッフなのに一緒にお茶してる奴がいるのがなんとも言えないところだ。
予約して来てくれたお客さんを一通り通し終えた辺りで一旦落ち着いた。
「そうだ夕君。男の人に今度お茶行かないって誘われたんだけど….…これってデートかな?」
予約リストを眺めながら四十崎さんがいつもの出来事を話しかけてくる。
「デートって考えるのが妥当じゃないですか?」
「でも誘われたカフェが猫カフェなんだよね〜」
「なるほど」
3度の飯より猫が好きと自分で断言していた四十崎を猫で釣るとは。頭がいいのか、バカなのか。ちなみに四十崎さんとは何回か猫カフェに行ったけど、俺の話どころか存在そっちのけで猫とずっと戯れてた。俺は俺でコーヒーとか飲みに来たかっただけだからいいけど。
つまりそういうことだ。
「いいんじゃないですか。ただで猫と遊べますよ?」
「だよね〜じゃなくて、さすがにそれは悪いよ」
バツの悪い表情を浮かべる四十崎さん。この人は本当に優しい人だ。
「いやいや。こういう時は相手がお金出してくれるんですから甘えないと。なんなら巻き上げる勢いでいった方がいいです」
「夕君ってたまに心ないこと言うよね……」
そんなことはないと思う………はずだ。最近そういうことを言われることが増えた気がする。
なんて考えているとCiRCLEの扉が開いた。いつもの御一行だ。今日はちゃんと制服着てるし大丈夫だろう。
「こんにちは、友希那ちゃん」
「こんにちは。予約していた湊です」
「はい。いつものスタジオですね」
この時間はだいたい誰か居るからな。俺が相手をすることはほとんどないんだが。
「旭日先輩、今日はちゃんと制服着てるんですねっ!」
「あこ〜。旭日君だってちゃんとしてる時はしてるよ〜」
「だらけている時の方が多いわ」
あこにまで言われるようになったか。それに今井は全くフォローになってない。紗夜に至ってはトドメ刺しに来たからな。確かにだらけていることは多いが何もそこまで指摘しなくても。まだあまり俺のことを知らない白金が勘違いしてしまうだろ。
「旭日さんって……しっかりしてる…イメージだけど」
「りんりん。それはゲームの中での話だよ?」
「おい。俺だってちゃんとしてる時はあるからな」
全く……いらん誤解を与えるんじゃない。敬ってくれる後輩は羽沢達だけだよ。若干1名怪しいのがいるがな。
「お喋りはそのくらいにして、早く行くわよ」
「はーい」
ようやくスタジオの方へと向かっていくRoselia一行。移動する直前、四十崎さんが何やら湊に耳打ちをしたような気が……。気のせいだろうか。
「湊に何か言いました?」
「ううん。時間だけ気をつけてねって」
「そうですか」
小声で言う必要あったのだろうか。まぁ深入りする必要もないしいいか。後でバンド名聞いておかないとな。
また平穏な日常へと戻っていく。
しばらく経った頃。
四十崎さんは、さっきまで使われていたスタジオの掃除へと行った。俺は引き続きロビーで受付をしている。まぁ次の予約を表に書いているだけだが。
「ちょうどいいところに」
「天堂さん? どうかしました?」
「次のライブで聞きたいことがあってな」
次のライブって明日のやつのことだろうか。思い当たることは1つだけだ。
「君の幼なじみが居るバンドの名前まだ決まってないようだが」
「それに関してはもう少し待ってもらっても大丈夫ですか?」
「わかった。ずいぶん肩入れするんだね」
「そういうわけでは………」
「冗談だよ」
天堂さんが言うと冗談に聞こえないのは俺だけだろうか。いや、決してそんなことはないはず。……天堂さんも冗談を言うんだな。
すると何かの音が聞こえてきた。これは……電話か?
「電話鳴ってませんか?」
「私か?」
「おそらく」
バイト中は通知切ってるからな。俺ではない。
自分のスマホを取り出し、電話をかけてきた相手を確認するなりすぐに切ってしまった。バイト中だからと言っても、大事な用かもしれない。それすらもわかりきっているなら話は別だが。
「いいんですか?」
「構わない。またお見合いの相手だ」
「お見合い?」
「旭日が気にすることはない」
そう言う天堂さんはふっと笑って事務所の方へと戻っていった。確かにしっかりした性格な上に美人だ。お見合いの話も来て当然と言えば当然か。………ちゃんと天堂さんという人の内側を知りたいと思う人たち。なんだろうか。
あれから早いもので1時間が過ぎていた。もうぼちぼち日が沈み始める時間帯だ。今日は珍しくあの人とシフトが被ってるのに絡まれていない。まぁ絡んでこなくていいんだが。
オレンジ色に染まる外の風景をぼーっと眺めているとスタジオのある通路の方から足音が聞こえてきた。
「なーに黄昏てるの? 旭日君」
この声は今井か。彼女の声が聞こえてきた方に視線を向けた。
「休憩か?」
「まぁ、そんなところ。旭日君は? もしかしてサボりー?」
「んなわけあるか。ロビーに誰か居ないと困るだろ?」
今は暇だがこの後が忙しいんだ。学生の次は入れ替えで社会人が多く来るんだよな。仕事終わりとか大学のサークル終わりとか。どの時間も絶えずお客さんは居るって感じだ。
「そっか。そう言えば市野木さん見ないね」
「見ない方がいいだろ。あんなナンパバカ」
「一応年上だよ?」
市野木さんは以前紹介したから補足しよう。テンションが高く、コミュ力抜群。ただしバイトの目的が可愛い女の子を見るためという不純極まりない為やはり残念な先輩。真宗とは正反対だな。一応ムードメーカー的な人。
「まぁ一応だがな」
「あはは〜….…あたし、飲み物買ってくるね」
今井もさりげに一応って言ってるからな。なんか年上って感じがしないんだよ。あの人。
「チョリース。リサちゃん元気ー? 今度お茶しない?」
今時聞かない挨拶をしながら扉を開けて入ってくる市野木さんが今井と入れ違いで現れた。これでも仕事はちゃんとするからなんとも言えないんだよな。
「こんにちは、元気ですよ〜。お茶はまた今度の機会に」
「そりゃあ残念」
まずは息をするようにナンパをするんじゃない。全くこの人は……気がつくといつもナンパをしている。どこにでもいるナンパ野郎だ。
今井が外に出ていくのを確認してから声をかけた。
「後輩からの頼みなんですけど、早乙女なんとかしてきてくれませんか?」
「あーそれはムリぽー」
なんだその腹立つ言い方は。
「あの子早乙女財閥の1人娘だよ? 何されるかわからないじゃん〜」
その気持ちはわからなくもないけど、それを言ったら俺も同じなんだが? なんなら粛清されてもおかしくないレベルまできている気がしてならない。
「ところで旭日……話があるんだけど」
「また面白そうなバンド見つけたって話ですか?」
「いいや……君の幼なじみのバンドのキーボードの子を紹介してほしい」
どうやら張っ倒すだけじゃ物足りないらしい。もういっそのこと頭を吹き飛ばした方がいいのではないだろうか。なに堂々とキメ顔で言ってんの? 絶対ナンパする気だよな?
「あの子に声をかけないなんて、オレのナンパ道に反く行為だ!!」
「よろしい。戦争だ」
「怖い怖い!!」
何がナンパ道だ。アンタはナンパしてる暇があるなら外でビラ配ってきたらいい。ついでにお客さんも連れてくるんだぞ? 売り上げに貢献するんだ。
「相変わらず君はケチだな〜。可愛い子の1人や2人ナンパさせてくれよ〜」
「お客さんに手をだすな。バイト以外の時にやれ」
「お、おう。先輩としての威厳がない……」
アンタにはもともとなかったから安心しろ。見ず知らずの人に息を吐くように声をかけられることは素晴らしいことだが、その才能の使い方を間違っているからやはりダメだ。
「じゃあ外行ってくるんで、お願いしますね」
「ほーい。任せておけって」
信用できないんだが?
カフェテリアに出ると例の如くお客さんと楽しそうに会話している早乙女の姿が。前にも少し話したとは思うから、こちらも補足。
早乙女は月ノ森に通う高校1年生。ナンパする先輩と違うところは本当にお客さんがライブを見に来てくれるという所だ。本人はライブが本当に好きで情熱的に語る。それに影響されて見に来てくれるって話だ。
ただバイト中だから注意しないといけない。そこは疎かにはできない。
「楽しいお話中すいません。早乙女さん、バイト中ですので」
「あら旭日さん。わざわざご忠告ありがとうございます」
なんだその今いいところだったのにみたいな顔は。一応注意しないとダメなんだから仕方ないだろ。こういう役回りは慣れてるからいいが。
「え〜麗華ちゃんもう行っちゃうの?」
「もう少しだけ話そうよ〜」
どんだけ仲良くなってんだよ。もはやそれは才能と呼んでもいいくらいだ。
「っておっしゃられているんですけど……」
「一応バイト中だ」
「そうですよね。ならもう少しだけ」
そう言いながら女子会を再び始める早乙女。これは弱ったな。あまりよろしくはないが、ここまでだ。ライブの時はテキパキ仕事をこなしてくれるんだが。普段からはそうもいかない。
「旭日さん、紅茶のおかわり持ってきていただけます?」
「……俺が行くのか?」
「お願いしますね」
この純粋な笑顔に悪意は全く感じられない。さすが早乙女麗華。純粋ゆえの狂気だな。
結局紅茶を取りに行ったわけだが….…俺は知っている。早乙女がシフトに入っている時は1人多めに人が入っていることを。
全くCiRCLEにはユニークな人が多すぎる。飽きないだろ?
再びロビーに戻るとさっきまでテンション高かった人がまるで蛇に睨まれたカエルのように動けずいた。なぜかと言うとだな。市野木さんの前には狩場さんが腕を組んで睨んでいるからだ。
「いやホント……真面目にやるんで……」
「その言葉は聞き飽きた。次からは気をつけるんだな」
「はい……」
注意してもなおす気のない人があんなに反省している。ここ2週間くらい狩場さんを見てきたが、大抵の人は頭が上がらないらしい。まりなさんと違ってちゃんと注意をする人だからな。いや、まりなさんも注意はしてるが優しい人だからあまり強くは言わないだけか。
「とりあえず今空いてるスタジオの掃除してきてくれ」
「わかりました。全部ですか?」
「全部だ」
「で、ですよね〜」
すると市野木さんは大人しく空いているスタジオの掃除へと向かった。軽くため息を吐き出すと、近くに居る俺の存在に気づいて話しかけてきた。
「あの人はいつもあんな感じで困る。旭日も大変だろう?」
「まぁ…でも市野木さんはそういう人だって割り切っているので。忙しい時はちゃんと仕事してくれますし」
「心が広いな。だがサボり過ぎはよくない」
「そこは同意します」
この後、取り置きの件をすっかり忘れていたことを思い出した。結局狩場さん監査のもと早乙女が自分で処理をしていたが。
旭日家 自室 ベランダ
今日のバイトもハードだった。別の意味で。ナンパバカとお嬢様を相手にするのは結構疲れる。特にナンパバカ。一応先輩だけどあの人は使える時と使えない時がはっきりしている。まりなさんも大変なはずだ。
「俺もしっかりしないとな……」
明日はライブだから余計に気合を入れなければいけない。トラブルがあるとお客さんや出演者にも迷惑だし。SPACEの時は何故かスタッフと出演者が協力して対処してたな。あれはあれでよかった。
とりあえず何かあっても今は狩場さん、まりなさん、天堂さんが居るから大丈夫だろう。
夜空を眺めていると、隣の窓が開く音が聞こえてきた。
「今日も遅かったのね」
「明日はライブだしな」
いつからだろうか。仕切り越しの相手を確認しないで話すようになったのは。ベランダに出るのは基本俺と紗夜とだからってのもあるけど、普通は確認するよな。ちょっと乗り出せば見えるんだが。
「いい演奏出来そうか?」
「もちろんよ。練習の成果を出す時だもの」
今回はライブ終わったら解散なんてことはおそらくないだろう。もしかするとFUTURE WARLD FES.だって夢じゃないかもしれない。
いつからか紗夜はフェスを追うようになった。日菜と比べられない為に。その夢が叶ったら……紗夜はどうするんだろうか。ギターはやめてしまうのだろうか。
「紗夜…」
「どうしたの?」
「….…いや。明日頑張れよ」
そう言い残して俺は部屋に戻っていった。
仮にフェスに出たらギターをやめるって言ったら俺は……たぶん。止めるんだろう。たとえどんな思いで弾いていたとしても。
紗夜の音が1番心地よくて、好きだ。
次回本当に前半終わります。
そしてRoseliaの後半とその他バンドのストーリーのお話へと移っていきます。今のところ20話を予定しています。1週2話あげても10週かかりますね笑
その間はきちんと書いて、途切れなく投稿したいと思っています!
このバンドストーリーで主人公とバンドの関係がだいたい明らかになる感じですね。
バンドストーリー終わってもポピパの結成編後にポピパのバンドストーリー、メインストーリーなので、イベントストーリーはまだまだ先です。
お気に入り、高評価ありがとうございます!
次回もお楽しみに。