ガールズバンドに振り回される日常   作:レイハントン

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こんばんは。レイハントンです。

リアルが忙しくなってきてしまったので、更新ペースが落ちてしまうかもです……せめて週1は守りますが、週 2回は出したい感じです

今回は言うまでもなくバンドストーリーの最終話にして新たなる始まりです。

それではどうぞ。


第23話 Roselia 後半

第23話 Roselia 後編

 

 

 CiRCLE カフェテリア

 

 とうとうこの日がやってきた。湊達、5人の初ライブ。噂を聞きつけてか、すでにお客さんが押し寄せて来ている。毎度のことながら結構大変だ。あの天道さんも少しばかり大変そうだ。

 

「夕せんぱーい! ヘルプ! マジヘルプです!!」

 

 俺は主にあいつの世話が大変だ。近くにまりなさんが居るんだから外に居る俺に言うんな。そしてそんな大きな声で俺を呼ぶんじゃない。

 

 どれだけお客さんが来ているのか確認し終えると、ちょうど来たみたいだ。

 

「あっ、旭日先輩だ! あこ達のお出迎えですか?」

「んなわけないだろ。お客さんどれだけ来てるのか見に来ただけだ」

 

 そう言ってからふと白金の方に視線を向けた。だいぶ緊張しているみたいだな。もともと人前に出るのが苦手みたいだから、仕方ないことか。憐歌もその点は心配みたいだしな。

 

「ほらりんりん、このボード見て元気出して! あこ達のバンド名だよっ!」

「Roselia……そっか。友希那、色々考えてたけどこれにしたんだ〜」

 

 その色々を知りたいもんだな。バンド名が決まるのはずいぶんかかった。おかげでボード作るのもポスター作るのも結構大変だったな。まぁ割とあることだ。

 

「よーしっ! Roselia初ライブ!! 行くぞーー! おーーーっ!」

「「……っ! おー……」」

 

 おいおい。大丈夫なのか?

 

「……って、えっ? りんりんだけじゃなくて、リサ姉も緊張….…?」

「し….…っ! してない、してないよ〜……ダンスの大会でも、一緒にステージ出てるじゃん? あははは……」

 

 チラッと俺の方に視線を向けてきた今井。それは気づいてないよね? の視線なのか。はたまた助けてくれという視線なのか。まぁおそらく前者だろうな。今井が緊張しているのは少し意外だ。

 

「(……はぁ。とか言って、参った…。めちゃくちゃ緊張してるじゃんアタシ……。旭日君……気づいてる……よね?)」

 

 ここは何も言わずにスルーしておくか。いざとなったら人間やるしかないんだ。

 

「ほらほらいくよー! 時間ギリギリ! あの2人に怒られちゃう!」

 

 そういえばすでに2人が来ているのを忘れてた。怒ってないといいんだけどな。

 

 

 

 

 

楽屋

 

 今井達と楽屋に入ると、少々怒っている紗夜の姿があった。まぁそうだよな。怒ってない方が紗夜らしくない。

 

「1分35秒の遅刻よ」

 

 秒単位で怒られたら少しキツイものがある。それにきっちり数えてるのも紗夜らしい。そしてなぜそのお怒りの視線が向いているんだろうか。俺は一応スタッフなんだけどな。

 

 どれどれ。出演者が全員揃っているか確認したのを確認するだけだがちゃんとやらないと。ダブルチェックってやつだ。

 

「ご、ごめんごめん! おーっ! って気合い入れてたからさ。2人とも一緒にやりたかったな〜」

「馴れ合いはやめて。気持ちの整理は、個人で済ませてきてもらわないと困るわ」

 

 おーってやるくらい許してやってもいい気がするが、湊と紗夜の場合はそれも嫌らしい。この空気感に適応している3人がむしろすごいのではないだろうか。

 

「……っ! う、うんっ。大丈夫だって。それくらいちゃんと出来てるよ〜」

 

 さっきから緊張してるし、本当なんだろうか。若干心配なんだが。

 

「(本当かな……アタシ。ベースをやらなくなったのだって、友希那と釣り合わないと思ったからで……)」

 

 そんな彼女達の話を聞きつつ手に持っている出演者リストと照らし合わせる。このメンバーはすでに顔見知りなんだけどな。一応ってことで。

 

「わ、わ…たしも。皆さんと……演奏するって…決めたから……。が、頑張り……ます」

「口ではなく、音での証明をお願いね」

 

 キツい言い方だな。白金だって頑張ってきてるんだ。後は何も問題なく演奏出来れば白金の技術力なら大丈夫だろう。

 

 話を聞きながらだが全員居るのを確認出来た。途中体調崩す人が居たりしなければ問題なく進めることができるだろう。

 

「(……バンドの技術が足りないのは、アタシだけ。……やるしかない。結果を出して、友希那の隣に居るんだ…!)」

 

 ここまで来たらやるしかないと決心がついたのか今井の表情が変わった。残りは宇田川は なんだが、さっきから彼女に緊張という2文字は感じられない。さすがと言うべきか。

 

「Roselia/闇のドラマー!! あこもがんばりますっ! Roseliaって響きがカッコイイ……あ、そういえば。なんでバンド名、Roseliaなんですか?」

 

 受付をした時、理由までは聞かなかったな。Roselia……薔薇が関係してるのはわかる。あとはなんだ。

 

「薔薇のRoseと、椿のCamelliaからとったわ。特に、青い薔薇……そんな、イメージだから……」

「イメージ?」

 

 青い薔薇。花言葉は確か……なんだったけか。

 

「(青い薔薇……花言葉は"不可能を成し遂げる"……だっけ)」

 

 そんなことを考えながらリストにペケを付け終わると、ちょうど控室の扉がノックの後に開いた。視線を向けた先には萩野。多分ダブルチェックの件だろう。

 

「失礼します。ダブルチェック終わった?」

「ちょうどな。音響とかの方はどうだ?」

「問題ないみたい。トラブルさえなければ」

「起きても大丈夫なようにしておかないとな。今日は結構大きいイベントだし」

 

 わかってるよとだけ言い残して萩野は戻っていった。この時間だと人の入りが多くなるからロビーの方に誰か回さないとな。たぶん萩野が行ってくれるから大丈夫か? 次は忙しいとテンパる真宗に助言は….…いいか。それとまりなさんに報告。

 

「失礼します。あ、居た居た! 夕くん、出演者は全員居るかな?」

 

 ちょうど良いところにまりなさんが来てくれた。今日はあまり動かなくて済みそうだな。

 

「今最後の確認取れたところです。お客さんの入り多いですよね」

「結構来てるね〜。今日は音楽ライターの人とか特に」

 

 登竜門と言われるだけあるな。時間ある時たまに話したりするだけど、今日はいかんせん人が多い。イベントが大きいのと、今回は湊が居るのも結構あると俺は思う。

 

「そういうイベントですから。人足りないなら萩野を回して、真宗は問答無用でドリンカーに回してもらえますか?」

「うん。伝えておくね」

「あと天堂さん見かけたら、すぐヘルプ行くって伝えておいてほしいです」

「了解」

 

 まりなさんを見送り、ライブ開始までにやることを整理しながら考える。音響と照明はリハからいじってないから大丈夫。ライブに合わせて操作するのは慣れている人だから大丈夫。

 

 大体はやったから、開演時間近くなったら最初の出演者に声をかけないとだな。

 

「旭日君ってなんて言うか。……意外と仕事出来る人なんだね」

「そうですね。夕はああ見えて頼りにされているのよ」

「普段はやる気をあまり感じられないのに。人は見かけによらないのね」

 

 お前らな。俺だってちゃんとやる時はやるんだよ。普段から頑張るといざとなった時、頑張れないだろ? 普段出来ないことは本番でも出来ないって言うけど、そこはちゃんと出来てる。

 

「んじゃあ、時間になったら呼びに来るから」

 

 それだけ言い残して俺は控室を後にした。

 

 さてと。1つ1つやることを片付けていかなければ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間はあっという間に過ぎて、Roseliaの出番までもう少し。舞台袖で機材の準備が整うのを見ていた。後ろには紗夜達がスタンバイしている。

 

 こうして舞台袖からステージを眺めるのは何度目だろう。しかも熱気がかなりすごい中をだ。この熱気は今まであまり経験がないほど熱い。

 

 なんて考えていると準備が終わり狩場さんがこっちに戻ってきた。

 

「準備完了。いつでも大丈夫だ」

「ありがとうございます。では、Roseliaの皆さん。ステージの方へ」

 

 そう言うと湊達がステージへと出ていく。最後尾の紗夜が通り過ぎる直後。手のひらを出す。

 

 母さんが昔からよくやっていたことだ。何かあるたびにやるもんだから俺まで癖がついてしまった。そして紗夜は何にも言わずに乗ってくれる。

 

 ハイタッチを交わすと颯爽とステージに出て行った。

 

 

 

 

 

 今日ここに。Roseliaというバンドが戦慄を巻き起こす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライブ中。旭日夕は舞台袖からとんでもない光景を目の当たりにしていた。

 

「ラスト、聴いてください。"BLACK SHOUT"」

 

 友希那がそう言っただけで大きな歓声が上がった。すでに2曲終えているというのにまだ盛り上がるらしい。こんな大きな歓声が何度も上がるのはGlitter*Grrenくらいかと夕は心の中で思う。

 

「友希那ーーーー!!」

 

 鳴り止まない歓声の中。

 

「高校生でこのレベル! Roselia……。この子達話題出ますよ。今月のPV数、トップも狙えるかも!」

 

 ライブの様子を見にきていた音楽ライターの人が興奮した様子で隣の音楽ライターと話している。この歓声の中だとなかなか声が聞こえづらい。

 

「今までどこのスカウトも受けなかったが……。友希那はバンドが組みたかったのか……?」

 

 だが今はそんなのがどうでもいいくらい、Roseliaというバンドは輝いている。頭の割れそうな歓声の中、ラストの曲を歌うボーカル。それを支える音。全員が全員お互いの音を意識しているのか。はたまた無意識なのか。それほど5人の音は重なっている。

 

「(わーいっ! ほらもっと見てっ! Roseliaって超ーっカッコイイでしょっ!)」

 

「(不思議……あんなに緊張してたのに……。わたし…すごく……楽しんでる。こんな自分が居るなんて….…知らなかった)」

 

「(……やっぱりこのバンドには、何かある。1人の時より、ずっと上手く弾ける……!)」

 

「(今井さんのベース。また上手くなってる。宇田川さんも白金さんも……。そしてこの前よりも、もっと"音"に引き寄せられる….…!)」

 

「(行けるかもしれない。このバンドなら!)」

 

 それぞれの思いが交錯する中。舞台袖の彼は彼女達を眺めていた。

 

 きっとこのバンドなら。変えてくれるかもしれない。彼女を。運命という歯車を。

 

 そんな時。ふと同じような光景を目にしたような気がした。正夢というには朧げで、気のせいにしては少し鮮明だ。ライブの光景を何度も見ているからだろうと考えを落とし込んで、頭の片隅においやった。

 

 

 

 

 

 

 夜。

 

 バイトが終わり、ヘッドホンをしながら暗い夜道を歩く。

 

 今日のライブはRoseliaとしてかなり大きいものとなるだろう。記録に残しておきたかったが、そうもいかない。それくらい印象に強く残るライブだった。

 

 これはもしかすると本当にFUTURE WARLD FES.に出場も夢じゃないかもしれない。プロも落選当たり前のイベントに高校生。しかも最近結成したばかりのバンドが。

 

 でも同時に思ってしまう。それが達成された時。紗夜は日菜と向き合えるのだろうかと。比べられない為と言っていたけど、フェスに出ることで本当に比べられないのだろうか。

 

 ふと立ち止まって考え込む。そもそも紗夜は今でも日菜と比べられているのだろうかと。俺は……比べてはいないはず。いや、一概にも言い切れないか。

 

 出かける時はどっちがどうとか思ってるのは事実だ。でも、それを一度だって2人に言ったことはない。別に嫌ではないんだ。

 

 紗夜と日菜は双子ではあるけど、全く同じ人間ではない。

 

「らしくないな。早く帰ろう」

 

 今日はなぜかいつも以上に考え込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ると、父さんはすでにリビングで爆睡していた。毎日お疲れ様としか言いようがない。ふとテーブルに視線を向けると、俺の分のご飯が置いてあった。スーパーの売れ残りの弁当だが文句は言えない。ありがたく弁当を持って自分の部屋に持っていった。

 

 持ってきた弁当を机の上に置いてから、荷物を無造作に床へと置く。すぐに食べるのではなく、リュックから飲みかけのお茶を持ってベランダに出て行った。

 

 手すりに寄りかかりながらお茶をひと口飲む。ランダム再生されている曲を手動で適当に何回か飛ばしてから止めた。流れたのは某ロボットアニメ。飛行機が人型になったり足だけ出たりするアニメの挿入歌だ。この曲は割と好きでよく聞いている。

 

 ぼーっとしながら口ずさみ始めた。

 

 カラオケには智紀と涼子としか行かないし、俺はあんまり歌わない。人前で歌うのはあまり好きじゃないからだ。

 

 一通り口ずさみ終わり、隣から視線を感じるのでヘッドホンを外して視線を向ける。

 

「ずいぶん上機嫌ね」

「そうか? 紗夜もライブ中楽しそうだったがな」

「べ、別に楽しそうには。……いい演奏は出来たと思うわ」

 

 楽しいは否定するのか。まぁいいけどな。いい演奏か。本人達もそれを感じることが出来たならよかった。あんなライブしておいて何も感じないは流石にな。

 

「あなたの歌い方。誰かに似ている気がする」

「ん? 誰かにって、母さんから教わったわけじゃないんだけどな」

「おばさんじゃないわ。………もっと違う誰か」

 

 違う誰か。それがわかることはなかったけど、少なくとも母さんじゃないらしい。鼻歌くらいは聞いたことあるけど、本格的に歌っていることを聴いたことはなかったからな。

 

「ごめんなさい。今のは忘れてちょうだい」

「……ああ」

 

 母さんの歌か……。音楽のことは、話しか聞いてなかったな。実際に歌を聴いたりとか、ギターを演奏してもらったりとか。いちおうCDとか演奏している動画のデータは残っている。まだ一度も見れてはいないが。

 

「夕? 何か考え事?」

「まぁな……その時が来たのかもって」

「その時っていったい何を指しているの?」

「母さんの音楽」

 

 そう言うと紗夜は少し驚いた表情を浮かべた。もしかすると紗夜は意図的に避けていたことを察していたのかもな。

 

「母さんからは話しか聞いたことがなかったからさ。少し知りたくなった」

「そう。私もおばさんの音楽には興味があるわ」

「まだ向き合えるかはわからない。母さんの音楽の話を思い出すとな………自分のことを許せない自分がいることを強く感じる」

 

 俺1人のせいじゃないってわかってる。気づいていたとしても、どうにか出来ていたのか? と言われれば否定しきれないのも事実だ。

 

 結局完全には断ち切れていないんだ。

 

「(……おばさんは癌で亡くなったのよね。確かかなり見つかりづらい癌で。夕は何も悪くはない。けれど……私はそれを真っ直ぐ伝えられない)」

 

 向き合えたら……いつか。紗夜と一緒にギターを弾いてみたい。

 

「紗夜……いや、なんでもない。そろそろ戻るな」

「ええ……明日も寝坊しないようにするのよ」

「努力はする」

 

 それだけ言い残して俺は部屋に戻っていった。明日は寝坊せずに起きたいものだ。なかなか無理な注文か。

 




作者は近年にマクロスにハマりました笑
もっと前から知りたかった作品ですね。

さて次回からは各バンドストーリーを展開していきます。あちこちに話が飛んでしまいますので、そこはご了承ください。

各バンドストーリー、ポピパのみアニメ1期を見ておくと面白いと思います。

それではまた次回。
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