ガールズバンドに振り回される日常   作:レイハントン

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第28話 愚直な努力

第28話 愚直な努力

 

花咲川女子学園 廊下

 

 俺はある陰謀で花女に来ている。

 

 陰謀と言うと語弊があると思うが、そう呼ばせてほしい。なぜ花女に来ているのかは、後々話すとしようか。

 

 今は床に落ちているプリントを花女の生徒と拾っている最中だ。

 

「1枚踏んでる」

「えっ!? あっ、本当だ…」

「すぐトチるよな。丸山は」

「そ、そんなことないよ!」

 

 そう言うが数々のとちり具合が脳裏によぎる。特に以前話した、ポテトLサイズ2つがMサイズ2つで来たこと。あれはボタンを押し間違えたのか。それとも聞き間違えたのかはわからない。

 

「今回も悪かったな。完全によそ見してた」

「ううん。私もプリント見ながら歩いてたから」

 

 花女に来て早々、廊下をよそ見しながら歩いていたら大量のプリントを持った丸山にぶつかってしまい、ばら撒いたというわけだ。

 

「なんだか懐かしいね……」

「去年も同じことがあったな。あの時の方がもっと大変だったが」

「そ、そうだね。でも今は大丈夫だよ!」

「ならいい。今度は気をつける」

「私も気をつけるね」

 

 丸山と別れ、ようやく目的地に向かって歩き始めた。そうだな……丸山とのことも話したいが、今はここに来る前に何があったのか、出来事を話そう。

 

 

 

 

 

 

 

 花咲川高校。現生徒会長は──自意識過剰なところがある。突然なにを言い出しているのだろうと思うところもあるだろう。ここは1つ、まずは話を聞いてほしい。

 

 俺の通う花高の生徒会長は、前生徒会長の推薦。もしくは生徒会長選挙によって決まる。確か花女も羽丘もそんな感じだ。話を戻そう。

 

 現生徒会長は元々副会長でら前生徒会長の推薦で決まった。まぁ全く生徒会のことを知らない俺でもそこら辺の聞こえてくる日常会話でわかるくらい真面目で、行動力のある人物。たが1つ欠点があった。

 

「ということで、花咲川女子学園に行き慣れている君に仕事を任せたい」

「お断りします」

 

 放送でいきなり呼び出されたかと思ったらこれだ。

 

「即答だね……!」

「当たり前です。めんどくさいので」

「そ、そこをなんとか……! 僕ではどんな目で見られるかわからないじゃないか!」

 

 現生徒会長は自意識過剰なところがあると思う。気持ちはわからなくもない。

 

 詳しく説明するとだな。女子ばかりの所に行くのは不安で、なにを言われるかわからないと。しかし、俺は言いたい。それは俺も同じなのではと。むしろ剣道部、弓道部、柔道部とかは花女で部活を合同で行っている点を考えると、別に花高の生徒が居てもおかしくないのだ。なぜ合同なのかはまた次の機会に話そう。

 

 そして俺は知らない。昔、現生徒会長が副会長という立場なのがまだ認知されていない時。女子バスケ部の部室に必要な書類を催促しに行き、そこで部長以外の部員が、「あれは誰?」「副会長じゃなかったっけ?」などのコソコソ話を、「なにあの人」「キモくない?」と悪口だと勘違いしたという話を。

 

「山梨先生が君なら快く引き受けてくれると言っていたのに!」

 

 担任にして生徒会の顧問め。よくも余計な情報をポンコツ生徒会長に教えたな。……あの先生のことだ。悪気は全くないのだろう。

 

 さっき少し出た話だが、なぜ俺が花女に行き慣れているのかは説明する必要があるな。簡単に言うと花高、花女、羽丘でやり取りしている資料を届けるため。ついでに行く先々に居る母さんの教師仲間に顔を見せるためだ。毎回毎回俺が行くわけではないが。

 

「じゃあ他の生徒会の人と行けば良くないですか?」

「今日は生憎、みんな部活と委員会で居ないのだよ」

「そうなんですか。では頑張ってください」

「待ってくれよぉ!」

 

 めんどくさい……。いくら困っている人を助けたいという思いがあっても、この先のことを考えると俺が行くべきではないと思う。

 

「だったら一緒に行くのが条件です」

「今日は仕事がたくさん残っててね……」

「ふざけてるんですか?」

「そんな怖い顔をしないでくれ……仕事が残っているのは本当のことなんだ」

 

 本当にこの人が生徒会長でいいのか? そもそもこんな性格でよく生徒会長になろうと思ったな。

 

 俺は憧れの前生徒会長に推薦されたのが嬉しくて後先考えずにOKしたことを知らない。

 

 

 

 

 

 

 結局今回だけはという理由で来た。花女の生徒会とは面識あるし問題はない。すぐに終わるかと思ったが、来て早々に丸山にぶつかってしまったわけだ。

 

 こうして花女に来るたびに何かしらあるような…ないような……。最近はいろいろあり過ぎて特に気にもならなくなってきた。……それでいいのか?

 

 そして、やっとたどり着いた生徒会室。ノックを3回してから扉を開ける。

 

「失礼します。花高から生徒会の書類を届けに来た旭日夕です」

「いらっしゃい、旭日君。わざわざありがとうね」

 

 花咲川女子学園の生徒会長。鰐部七菜先輩。Glitter*Grrenのキーボード担当。しかしを周りの人はそれをあまり認知していないが。

 

 わざわざ資料を受け取りに来てくれた先輩に書類を渡した。

 

「旭日君、生徒会に入っていたかしら?」

「あ、今日は代理で持ってきました」

 

 ポンコツ生徒会長の代わりに。

 

「そうなのね。ありがとう」

「いえ。俺はこれで失礼します」

 

 会釈をしてから生徒会室を後にした。ただ渡しにくるだけなら、こんな風に一瞬なのには。次は絶対連れてこよう。

 

 そう誓い、おつかいを終えた俺は事務所の方へと足を進める。入る前に入館証をもらわないといけない。帰りはまた逆のことをしないといけないんだ。

 

 ふと廊下で足を止めて窓の外を眺める。

 

 ……花女に来慣れている理由は他にもある。母さんは花女の教師だったからな。時折家に忘れていく弁当だったり忘れ物を届けに来ていた。

 

 

 

 

 

 

 1年前 花咲川女子学園

 

 放課後。俺は花女に訪れていた。

 

 別に不法侵入してやろうとかそういうわけじゃない。母さんが家に忘れ物をしたと言うので、一旦家に帰ってわざわざ持ってきたんだ。中身はわからん。ベッドの上に置いてある手提げ袋を持ってきてくれとしか言われてないからな。

 

 非常にめんどくさいが、持っていかない方がめんどくさい。後から怒られるのは目に目えるからな。

 

「めんどくせぇな……」

 

 そんな言葉を吐き出しながら廊下を歩き、まずは事務所に通行証的なものを取りに来た。

 

「こんにちは。旭日陽子先生の忘れ物届けに来たんですけど」

「こんにちは〜。前みたいに書類書いてもらてるかしら?」

「わかりました」

 

 流石に4度目にもなると書き慣れるものだな。最初は書くのがめんどくさくて帰ろうかと思った。いや、冗談なしに。

 

 すぐに書類を書き終えて受付をしてくれた事務員さんに渡すと、引き換えに通行証……ではなく入館証をもらった。入館証だったか。

 

 ストラップが付いているので、それを首からかけて先へと進んだ。

 

 そういえば今日はどこに居るんだろうか。この前は職員室。その前は……教室。その前は………どこに居たっけか。いろんな所探し回ったような気がする。つまりどこに居るのか予想出来ない。

 

 こうなると職員室に行くのが妥当だろう。美奈川先生も居るだろうし、なんとかしてくれるな。よし、そうしよう。

 

 過度な期待は無駄だということを俺はまだ知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 職員室

 

 なんだろう。職員室入るのってなんか緊張するな。別に母さんが居るかどうか確認するだけなのに。他の先生に今日息子が忘れ物届けに来るくらいは言ってある….…よな? ………考えるのもめんどくさい。さっさと用事済ませて帰ろう。

 

 3回ノックして扉を開けた。

 

「失礼します。花咲川高校から来ました。母の忘れ物を届けに来たんですけど、旭日陽子先生はいらっしゃいますか?」

 

 開けると案の定先生たちから注目される。そんなに見るもんじゃないと思うんだ。

 

 すると近くに座っていた女性の先生が対応してくれた。

 

「陽子先生の息子さん? なのね。ちょうどさっき職員室出て行っちゃったのよ」

「そうなんですか」

 

 タイミングが悪かったな。

 

「たぶん部活だと思うんだけど……渡しておこうか?」

 

 それならそれで………。

 

『ごめん、夕。私のベッドの上に置いてある手提げ袋今すぐ持ってきてくれない? 部活で使うから』

 

 仕方ない……。

 

「自分で渡しに行きます。軽音楽部ですよね?」

「そうそう。場所わかる?」

「特別棟ですよね。たぶん大丈夫です」

「悪いけれどお願いね」

 

 職員室を後にした俺は特別棟の方へと足を進めた。今度ハンバーグでも作ってもらおう。……そういえば美奈川先生は?

 

 

 

 

 

 廊下

 

 夕方の校舎というのはあまり人が居ないようだ。すごく助かる。入館証を持っているとはいえ、部活をしに来たわけでもない他校生が居るのは目に止まるからな。

 

 しばらく歩き、角を曲がった直後──何かにぶつかった。

 

「いたっ……!」

 

 声と共に宙に舞うプリント。どうやら人にぶつかってしまったようだ。

 

「すいません。大丈夫ですか?」

 

 床に尻もちを着いているのは花女の生徒。ピンク色のセミロング。年は……わからん。ここの学校は先輩後輩の区別がつかないからな。

 

「だ、大丈夫です。よそ見しちゃってて……」

「いや……ぶつかったのと…その」

 

 よっぽど痛かったのか。

 

 それとも俺が嫌だったのかはわからない。

 

 なぜかぶつかった子は涙を流していた。

 

「死んだ方がいいですか?」

「違っ……! これは……本当に…なんでもないんです……だから」

 

 なんでもないならいいか。プリント拾って……行けるわけないよな。

 

 頭を掻いてからプリントを1枚1枚広い上げる。ふと名前が記載されている所が見えた。どうやら高校1年生らしい。同い年だ。

 

「すいません……手伝わしてしまって」

「いいですよ。ぶつかったのは俺ですし。プリント拾うよりも涙拭いた方がいいですよ? 酷いことになってます」

 

 そう言ってブレザーの上着からハンカチを取り出して渡した。

 

「ティッシュの方がいいですか?」

「い、いえ……! ありがとうございます!」

 

 そう言って受け取ると涙を拭きはじめる。そして……鼻までかんだ。それハンカチなんだが?

 

「あっ! す、すいません! 洗って返すので……」

 

 泣いた次は顔を赤くして謝っている。忙しい人だなーと思うと同時になんだか笑えてきた。

 

「ふっ……すいません。忙しい人ですね」

「恥ずかしい………」

 

 とりあえず落ちているプリントを全て拾ってまとめ上げる。これはあれか? 名前の順的なやつか?

 

「これ名前の順ですか?」

「そうですけど……後はやっておくので…」

「じゃあお願いします」

「(あれ……? 手伝ってくれる流れじゃ……)」

 

 早く忘れ物届けて家に帰りたい……だがここで無視して行ってしまったとしよう。後々母さんにバレてガミガミ言われる方がめんどいな……その可能性は低いがどうする? 少しでも自分に不利益をなくすには……。

 

「やっぱり手伝います」

 

 これ一択。

 

「あ、はい。ありがとうございます……」

 

 なぜか他校生と廊下でプリントを名前の順に並べる作業をし始めた。とても不思議な感じだ。

 

 それはどうでもいいんだが……なんか見たことあるんだよな。どこでだ?

 

 じっとピンク色のセミロングの子を見つめる。

 

「(すごい見られてる……。も、もしかして私の……ファン?!)」

 

 あー思い出した。

 

「べろべろに酔っ払った母さんが見せてきた写真に写ってた人だ」

「何がですか?! ま、まさか……隠し撮り…?」

「いやいや。俺の母親は旭日陽子先生なんですよ」

「えーー?!」

 

 確か名前は……丸山さんだったか。アイドルの研究生で頑張り屋さんとかなんとかすっごい自慢してきたんだよな。すごい酒臭かったのしか覚えてなくて危うく忘れるところだった。

 

「俺の名前は旭日夕。たぶん同い年」

 

 プリントを整理しながら自己紹介を始めた。

 

「あなたが陽子先生の息子さん……。私は丸山彩っていいます」

「同い年だし、敬語は要らない。先生の息子だからって別に特別じゃないし」

「じゃあ…お言葉に甘えてそうしようかな」

 

 すっかり忘れていたがなんで泣いていたんだろう。

 

「なんで泣いてたんだ?」

「あっ……それは」

「……唐突だったな。言いたくないならいい」

「(旭日君…聞かないでくれるんだ)」

「相談されてもめんどくさいし」

「えーーー!?」

 

 そんな大声で叫ばないでくれ。確かに今の発言は勘違いを産むものたったけども。そこまで叫ぶことでもないと思うんだ。

 

「そういうのは俺じゃなくて母さんに相談した方がいいと思う。ちゃんと聞いてくれる人だし」

「陽子先生に……でも」

 

 そう言うとなぜか黙ってしまう丸山。それと同時に名前の順にプリントを並べ終わった。

 

「(前に一度相談してるんだよね……。確かその時は……)」

 

『機会があれば私の息子と話してみるといいわ。運が良ければ答えが見つかると思う』

 

「旭日君は……努力が報われない時ってどうする?」

「……めんどくさ…難しい質問だな」

 

 そう言ってプリントの束を持って立ち上がった。

 

 危ない危ない。つい本音が。つうか母さんさしがねだな? 相談を勧めた直後なのに聞いてくるのは。

 

「俺は努力とかめんどくさいから基本しない……だけど、ずっと見てきた。確かに報われないこともある。むしろその方が多いと思うのが個人的な意見」

 

 ふと思い出すのは夜遅くまで起きて何かをしている母さんや紗夜のこと。

 

「でも……俺はずっと続けるのは苦手だから、その努力を続けられるのは1つの武器だと思う。だから努力を諦めるな」

「1つの……武器」

「自分に出来ることをしていけばいいんじゃないか? 俺なんていつもそうだ」

 

 プリントの束を丸山に渡すと、受け取ってくれた。流石に持っていくのは勘弁してほしい。さっさと用事を済ませたいし。

 

「夕? こんな所に居たのね。それと彩も」

 

 後ろに振り返ると、そこには母さんの姿があった。

 

「ばら撒いたプリント拾ってたら遅れた。ぶつかったのは俺だけど」

「気をつけなさいよ? どうせぼーっとしてたんでしょ?」

「割と周りは見てた」

「余計ダメじゃない……」

 

 呆れる母さんを前に俺は手提げ袋を渡した。これで俺の用事は終わった。さっさと帰ろう。

 

「じゃあ俺はこれで」

 

 思ったよりも時間がかかってしまったが……今日はいいか。

 




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