ガールズバンドに振り回される日常   作:レイハントン

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こんにちは。
今回やっとメインヒロインの登場です。さらにその他バンドのキャラも登場するので、ぜひ読んでいってください。

それではどうぞ


第2話 余計なひとこと

第2話 余計なひとこと

 

 ───夕。もう朝よ?

 

 誰かの声が聞こえてくる。まだ寝始めて1時間くらいだぞ? 誰であろうと……紗夜以外は起こすのは許さん。起きる時間でもないのにおこされるのが1番嫌いなんだよ。

 

 ───いい加減起きなさい。

 

 ゆっくり目を開けると、ぼやける視界の中には水色の髪? が見える。長さがはっきりしない。日菜か? それとも……紗夜か? それとも……。

 

「やっと起きた。なかなか起きないから心配したのよ?」

 

 ん? ……心配? 何かが俺の中に引っかかる。失礼になるだろうが、言わしてもらいたい。

 

「……ね、熱でもあるのか?」

「熱? 夕、熱でもあるの?」

 

 そう言うと人のベッドに日菜と同じように侵入してくる。俺の前髪と自分の前髪をあげると、そっとおでこをくっつけてきた。

 

 何回でも言うぞ。コイツどうした? いつもの紗夜と違いすぎる。

 

「んー熱はないわね。でも汗がすごいじゃない」

 

 冷や汗がな。

 

「特に体調悪そうには見えないけど、休んだ方が良さそう」

 

 おいおい。悪い夢なら覚めてくれ……。

 

「とりあえず汗拭いてあげるわ」

「い、いや……待て。紗夜? お前今日どこかおかしい───」

 

 そこまで言った所で完全に覚醒した。壁に掛けてある時計に視線を向けると、紗夜が来る前の時間。つまり起こしにくる前に起きたわけだ。こんなこと1ヶ月に1回あるかどうかの確率。それを今日引いたと言われてしまえばそれまでだが、今日は絶対違う。

 

 しばらくすると、部屋に近づく足音が聞こえてきた。おそらく紗夜だろう。

 

 ドアが開き、紗夜と視線が交差する。珍しく起きている俺に少し驚いた表情を浮かべていた。

 

「今日は……雨でも降るのかしら?」

「今日は訳ありだ」

 

 いつもと変わらない紗夜。この違和感が全くない会話。どうやらあれは夢だったらしい。

 

「訳あり?」

「妙に優しい紗夜の夢を見た……」

「なっ……普段の私は優しくないってこと?」

「そういうわけじゃ…」

 

 俺の言葉が届く前に紗夜は大きめの音を立てながらドアを閉めて行ってしまった。どうやら逆鱗とまではいかないが、気に障ってしまったらしい。

 

 別に優しくない紗夜が嫌いなわけではない。優しいよりも普段みたいに厳しい方が俺的には居心地がいいだけなんだ。昔からガミガミ言ってくる奴だったからな。それがないとどうも調子が狂う。

 

「夕なんて知らない……バカ」

 

 その言葉が俺に届くことはなかった。

 

「さて……どう謝るか」

 

 珍しく早起き出来た俺は朝ごはんのパンを食べながら準備を進めた。

 

 

 

 

 

 

 1日考えた結果。紗夜にどう謝るか考えてたからか、授業中寝ることはなかった。が、同時に解決策が生まれることもなかった。起きてたのが珍しかったのか、腐れ縁の1人、智紀が「お前どうした?」って言ってきたな。俺だって起きてる時はある……考えないといけない事がある時限定だが。

 

 ふと窓の外を見る。まだ4月。暗くなり始める時間ではない。若干の夕焼け空になりつつある空を見上げる。

 

「旭日君。そろそろ教室閉めるよー」

「今出ます」

 

 いつの間にか俺だけになっていたとはな。他の奴らはみんな部活だバイトで忙しいんだろう。生憎俺は今日シフトに入ってない。こういう時は大抵ネットサーフィンをしているか、寝ているか、ゲームをしているかだ。本当の暇人だな……。まぁ仕方ない。

 

 教室を後にした俺は昇降口で靴に履き替えて、校門を抜けた。このまま真っ直ぐ帰っても答えは出そうにない。そんな時はいつも寄る場所がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 商店街。

 

「いらっしゃいませ、旭日先輩」

「いつもの頼む」

 

 羽沢珈琲店。商店街にある俺の行きつけの店の1つ。ここはだいぶ通ってる店でな。週1回は来てる。特にコーヒーが美味い。言い方は悪いが珈琲店でも美味しくない所はある。その代わり別の物が美味しいことが多い。

 

 奥の席に座ると、ここの看板娘─羽沢(はざわ)つぐみがお冷やをお盆に乗せて持ってきてくれた。変わらずエプロンがよく似合うな。

 

 羽沢は羽丘の高校1年生。とても頑張り屋だけど、時折無理をしてしまう。だがとてもいい子だ。とてもいい子っていうのが肝だからな。

 

「また悩みごとですか?」

「まぁ…そんな所だ。よくわかったな」

「ここに来たってことはそうなのかなって」

 

 気が効くというとかなんというか。いい子なんだ、羽沢は。

 

「なるほど。悩みがなくても来るときはあるさ」

「ふふっ。わかってますよ」

 

 笑顔で告げるとキッチンの方へと向かっていった。だいぶここに通ってるからか、考えが少しずつ読まれ始めたな。紗夜ほど危険じゃないが、危険になられると困る。いやまず、どうやって考え読むんだ?

 

 ふと店内を見渡していると、時折見かける2人組みを見つけた。両方とも花女。紗夜と同じ学校の生徒だ。年は….…わからん。片方は水色の髪をサイドテールにしていて、もう片方はクリーム色の髪が背中の辺りまで届いている。クリーム色の髪の方はここ以外の場所でも見た気がする……気のせいか。

 

「お待たせしました。アイスコーヒーです」

 

 アイスコーヒーを1つ。ガムシロップとミルクが入った小さいカップをそれぞれ1つ。そしてもう1つアイスコーヒー……ん? もう1つ?

 

「休憩もらったので、一緒にいいですか?」

「そういうことか。構わない」

「ありがとうございます」

 

 エプロンを外して椅子の背もたれにかけてから座る羽沢。たまにこうして2人でコーヒー飲んだりしてる。その度にどこからかいやーな視線を感じる気がするんだが、気のせいだろうか。いや……気のせいじゃない気が。

 

「そういえば今度の悩みはなんですか?」

「いつものやつだ。また幼なじみを怒らせた」

「あはは…。仲良いですね」

「仲良かったら怒らせたりしないだろ」

 

 アイスコーヒーをブラックのまま一口飲む。この苦すぎず、かといって甘くない絶妙なコーヒーが美味い。今度はミルクと砂糖を入れてスプーンでかき混ぜた。すると、先にミルクと砂糖を入れてかき混ぜ始めていた羽沢が口を開いた。

 

「今日はなに言って怒らせちゃったんですか?」

「妙に優しくしてくる夢を見たってって言ったら機嫌を損ねた」

「その幼なじみさん、普段は優しくないんですか?」

 

 コーヒーを一口飲み、静かにカップを置いた。

 

「優しくない……ってわけじゃない。なんだろうな。変に優しくされるよりもありのままでいてほしいんだ」

「なるほど……それならきちんと伝えてあげてください。そうすればすぐ解決すると思いますよ」

「そうか。……そうさせてもらう」

 

 羽沢にはいつもこの手の悩みをいつも相談している。ほぼ苦笑いするがな。どうも女子の気持ちというのが理解できない。羽沢にも羽沢の幼なじみにも乙女心がわかってないと言われた。だが一つ言わせてもらうと自分の気持ちは自分しかわからないと思う。人っていうのはなかなか難しい。

 

 再びコーヒーを飲み、テーブルにおくと何やらスマホを操作していた羽沢が画面を俺の向きに合わせてテーブルに置いた。

 

「最近オープンしたカフェなんですけど知ってます?」

「あーこれか。新しいカフェができたことしかまだわかってない」

 

 コーヒーが好きでよくカフェ巡りすることが多いが今回新しくできたカフェの情報は調べてないな。最近の夜は忙しくてな。日菜の相手したり、バイトしたりとか。

 

「ドッグカフェみたいなんですけど、スイーツとかコーヒーも美味しそうなんですよ~」

「なによりワンちゃんが可愛い~」

「まてまて。また急に人の話に入ってくるな上原(うえはら)

 

 いつものごとくピンク色の髪のおさげが会話に割って入ってくる。名前は上原ひまり。1つ年下の羽沢の幼なじみで、同じ学校に通ってる。あの日菜とたまに登校するもんだから、割と俺は有名人らしい。全く困ったもんだ。

 

「旭日先輩お疲れ様です! ここに来たということはまた悩みですか?」

「まぁな。急に現れては人の話に割って入ってくる輩に悩んでてな」

「えー?! それって私のこと?!」

「当たり前だ」

 

 ったくコイツは。流石に慣れてはきたが鬱陶しい。毎回ケーキねだってくるし、図々しい奴だ。……憎めないのがさらに腹立つな。

 

「旭日先輩に悩みがあると思ってきたんですよー?」

「お前はただ単に俺が居れば何か奢ってもらえると思ったんだろ?」

「そ、そんなことないですよ〜」

「図星だな。隠すの下手くそか」

 

 今日早すぎるったくコイツはと言いたくなるほどだが、何気に話してるからあまり責められないのも事実。ほとんど上原の恋ばなとかダイエットがどうとかだけどな。

 

「そ、そんな旭日先輩にこれあげちゃいます!」

「なんだこれは」

 

 上原が鞄から取り出して置いたのは新しく出来たドッグカフェの割引券らしきもの。いやそうなんだろう。

 

「これ使えば安くなるので旭日先輩にプレゼントしちゃいます!」

「どうも。だからってケーキは奢らないからな」

「で、ですよね〜」

 

 さて。そろそろいい時間だし帰るか。紗夜に謝らないといけないしな。そういつまでも怒っては……ないはず。

 

「そろそろ帰るな」

「はい。また来てくださいね」

 

 そう言うと笑顔を浮かべる。その笑顔がどこかあの優しい紗夜に似ていた。

 

「もちろん。あとショートケーキとチョコレートケーキを2人に」

「えー?! 良いんですか?!」

「割引券もらったしな」

 

 それだけ言って、コーヒーを飲み干しテーブルに置く。リュックを持って会計するためにカウンターへと向かった。

 

「太るなよ、上原」

「ゔっ……痛いところを」

 

 会計を済ませた俺は歩いて家へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 時は過ぎて夜。簡単な夜ご飯を済ませ、俺は自分の部屋の窓を開けた。特に景色が言い訳じゃないが、たまに星が少し綺麗に見える。まずは出てきてもらわないとな。

 

スマホで紗夜に連絡を取り、ベランダに出てきてくれるように頼む。

 

「今日ばっかりはダメかもな」

 

 すぐに返事が返ってくるわけもない。

 

 とりあえず部屋に戻ってベッドに寝転がった。この時間はギターの練習してる。ってことは気づかなくてもおかしくはないか。

 

 思えば紗夜を怒らせた時はほとんど同じような感じだった気がする。なかなか起きない時は容赦なく平手打ちかましてくるくせに、調子悪かった次の日はゆすって起こしてくれた時もそうだな。余計なことを言って怒らせた。

 

 最後にもう一度だけ確認しようと再びベランダに出た。すると開かずの窓だと思っていた窓が開く音がした。急いでベランダに出ると、ジト目で俺のことを見る紗夜の姿があった。

 

「紗夜…今日は悪かった」

「話はそれだけかしら?」

 

 よっぽど怒っていたのか帰ろうとする。

 

「待ってくれ! 別に優しい紗夜が嫌なわけじゃない。いつも通りの紗夜がいいんだ。妙に優しいと調子が狂う」

 

 羽沢に言われた通り思ったことを伝えたが、当の本人はなぜか俺と同じ方向を見ている。なぜ急に背を向けた?

 

「きゅ、急にそんなこと言われても……私は別に怒ってないわよ」

「本当か? 朝急に出て行ったのは?」

「あ、あれは……日直だったのを思い出しのよ」

「そうか……」

 

 本当かどうかは怪しいところだが、まぁ怒ってないならそれでいいか。普通で居てくれる方が居心地がいいしな。……次は怒らせないように気をつけるとしよう。

 

「課題は何も出なかったの?」

「今日はなかった。あの学校課題多すぎるんだよ」

「仕方ないわ。そういう学校なのよ」

 

 にしても多すぎる。確かにそこそこな学力ないと入れない高校ではあるが、週4回も出してくるのは、中学サボりまくっていた俺にはキツイものがある。中学で楽をしてると後がツライからみんな気をつけろよ。

 

「そうだ。新しく出来たドッグカフェに今度行くんだけど来るか?」

「ドッグカフェ? ……ゆ、夕が行きたいって言うならいいわよ?」

 

 そうは言ってるけど若干顔がいきいきしてるな。クールな感じで見られることがほとんどだが、主に子犬。ふわふわしたものが好きだ。自分が好きなことをあまり表に出さないから、言い過ぎるとめんどくさいことになる。

 

「俺が行きたいだけだ。割引券2つもらったしな」

「そ、そう」

「今度の日曜日辺りでいいか?」

「ええ。それで構わないわ」

 

 こうして機嫌が直ってくれたついでにその埋め合わせも出来そうでなによりって感じだな。すんなり許してくれたのがいまいち腑に落ちないが、本人がいいと言うならいいか。

 

 なんとか解決してよかった。今度は……気をつけないとな。

 




紗夜さんにはたくさんお小言もらいたいなとか思ってしまう笑

ということで新たにAfterglowの2人が登場しました!
結構後輩に懐かれる主人公笑
結局おごってしまうというね笑

さて次回は紗夜さんとのデート回です。
感想、評価お待ちしております。
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