ガールズバンドに振り回される日常   作:レイハントン

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こんにちは。

今回も書き溜めていた話です。
残り3話でバンドストーリーが完結です。

それではどうぞ。


第42話 Pastel*Palettes

第42話 Pastel*Palettes

 

 

花咲川女子学園 廊下

 

 放課後。例によって俺は花女に訪れている。頼まれるのはだいたい水曜日辺りってことで、その日のバイトは入れなかったり、1時間遅らせたりって感じだ。

 

 美奈川先生はちゃんと仕事をしているのだろうか。ただそれだけが心配だ。

 

 職員室にたどり着き、ノックをしてから中へと入った。

 

「失礼します。美奈川先生居ますか?」

「あら旭日君、こんにちは。美奈川先生なら自席に居ますよ」

「ありがとうございます」

 

 もはや高校名を言わなくても平気になってしまった。まぁ2年くらい経つし、そんなものか。

 

 美奈川先生の居る席まで行くと、今日は珍しく仕事をしていた。

 

「これ、いつもの」

「ありがとー。毎回悪いね」

「はい」

 

 書類の中身を確認してそのままデスクの引き出しにしまう。

 

「今日は珍しく仕事をしているんですね」

「珍しくとは失礼な」

「俺が来る時はなにもしてないですよ」

「たまたまやることがなかったんだね」

 

 だとしたらその確率高すぎるような気がするんですけど? おかしなこともあるもんだな。

 

「そうだ。夕君に頼みたいことがあるんだけどいいかな?」

「内容によります」

「ノート提出してもらったんだけど、1クラスだけ足りなくて」

「それを俺に催促しに行かせると?」

「ざっくり言うとそうなんだけどね」

 

 いや、それはざっくり言わなくてもそうだと思いますけど。それにしても他校の生徒に催促しに行かせるとは。いったいなんなんだ、この先生は。

 

「丸山さんと知り合いだよね?」

「まぁ……そうですけど」

「じゃあよろしくね」

 

 顔見知りなら仕方ない。そういう建前をたてて俺は頼み事を引き受けた。丸山とは少し話してみたいことがあったしな。ちょうどいい。

 

 そもそもなぜノートの提出に時間がかかっているんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 丸山が居るであろう教室へとやってきたが。空いていたドアから見えたのは案の定ドジを踏んでいるところ。

 

 ゴミ箱をひっくり返してしまったようだ。1年経っても変わらないな。こういうところは。もはや個性だ。

 

 彼女の元まで近づいていざゴミを拾い始めようとしたが、頬に光るものを見逃すことはできなかった。

 

「死んだ方がいいか?」

「ち、違うの! これは目にゴミが入って……旭日君初めて会った時もそれ言ってたよね?」

「そうかもしれないな」

 

 そう言ってから散らかしたゴミを拾い始める。

 

「今日も用事あってきたの?」

「まぁな。例のやつだ」

「そっか。大変だね」

「こう何回も来てると、さすがに慣れる」

 

 一通りゴミを拾い終えゴミ箱を元の位置であろう場所に戻す。ふと黒板を見ると日直の所に丸山と書いてあった。時間がかかっていのはそういうことらしい。

 

「日直の仕事とノートを集める仕事。やることがたくさんだな」

「う、うん。急いでたらゴミ箱ひっくり返しちゃって……」

「ドジだな」

「い、言われなくてもわかってるよー……」

「レッスンあるんだろ? 手伝うから早く終わらせるぞ」

 

 手伝うとは言ったものの普通ならおかしい光景だよなと思いつつ、俺は名簿を見ながらノートを名前の順にしている。丸山は日誌を書いているが思うように進まないらしい。レッスンに行きたくて焦っているんだろう。芸能人とはいえ、レッスンが理由では早く帰れないんだろうな。

 

「日菜から聞いたんだが……次のライブ。歌えそうか?」

「………うん。必ず歌うよ」

「楽しみにしてる」

「旭日君は……覚えてる?」

 

 一旦手を止めて丸山に視線を向けるとちょうどあった。

 

「デビューしたら歌を聴きに来てくれるって約束」

「………その約束か」

 

 丸山。その約束はな。

 

「俺じゃなくて母さんとの約束だろ?」

「えっ!? あっ…そうだったけ?!」

「記憶違いだったらすまない」

「ううん。旭日君と陽子先生って似てるから勘違いしちゃった」

「似てるかどうかはわからないが……」

 

 代わりにやれることをするということは。約束を代わりに果たすのも。役目だよな。

 

「母さんの代わりにライブは見に行く。だから絶対…歌を聞かせてくれ」

「うん!」

 

 日菜から聞いていた話はいったいなんなんだろうと思うくらい。丸山からは迷いは感じられなかった。これも白鷺千聖という人間が影響しているんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旭日家 自室 ベランダ

 

 若干バイトに遅れてしまったが、特に問題なく終えることができた。今日は狩場さんが居たからな。いつもサボり気味の人たちは少しばかり気を張っていたことだろう。

 

 風呂上がりに外で涼んでいた頃。俺はスマホと睨めっこしていた。別にそういう趣味ではない。決して。

 

 着信が来ているんだが、その相手がなぜだがかけてくるとは到底思えない人物なんだ。

 

 とりあえず恐る恐る電話に出た。

 

「旭日です」

『ずいぶん待たせるのね』

「今まで面と向かってしか話したことがない人から電話が来たら驚くだろ」

『それに関してはごめんなさい。少しあなたと話したかったのよ』

 

 意外な相手から電話が来たかと思えば、意外なことを聞いてしまった。いったいどういう風の吹き回しだろう。

 

 それと日菜が教えたんだろうな……人の連絡先をホイホイ教えないでほしいところだ。

 

「どうかしたのか?」

『ただの雑談よ。毎日遅くまで起きているみたいだから』

「毎日バイトで遅くまで働いてるからな」

 

 全く。いったい誰から聞いたんだか。まぁこの場合ペラペラおしゃべりするのはどう考えても1人しかいないわけだが……。俺の脳裏に浮かぶのはニコニコ笑顔を浮かべる日菜の姿。

 

 ただの雑談にしては遅い時間帯な気もする。

 

「……眠れないのか?」

『そういう風に見える?』

「いや……と、言いたいが人間は緊張する生き物だし、一度失敗してる。ぐっすり眠れる方がこの際すごいと思う」

『そうね。本当はぐっすり眠りたいところだけれど』

 

 小さい頃から芸能界に居るとはいえ、緊張あるいは不安なんだろうな。失敗の方にも問題があったとは思う。そもそもアイドルバンドと言って売り出したのにエアーというのがおかしな話だ。

 

『旭日君?』

「なんでもない……。丸山とはもめているようだな」

『日菜ちゃんから聞いたの?』

「まぁそんなところだ。毎度言いくるめるのも大変だろう?」

『あら、失礼しちゃうわね。私はバンドの成長の為に意見を言っただけよ」

 

 きっと電話の向こうでは普通を装った怖い笑顔を浮かべているんだろうな。

 

 そんな時。ふと気になった。なぜ友達である松原やほかのメンバーに話相手になってもらわなかったのか。正直俺なんかよりも適任な気がしてならない。

 

「なぜ俺にかけてきた?」

『………言ったでしょう? 単純に雑談したかっただけよ』

「松原でもよかった……違うか?」

『時には聞かない方が、いいこともあるわよ』

 

 ……これ以上詮索するのはやめておこう。互いにメリットはないしな。

 

「本番前とかはいつも緊張するのか?」

『いいえ。眠れないほどではないわ。それに緊張ではないの……ただ。不安なだけ』

「仕方ない。……失敗しないために練習してきたんだろ? だったら大丈夫だと思う。あとは自分を信じるだけだ」

『(やっぱり陽子先生みたいなことを言うのね……あなたは)』

 

 しばらく返事は返ってこなかったが、特に催促することもなく俺はお世辞にも綺麗とは言えない夜空を眺めていた。

 

『そう……ね』

「信じるものは変わらないだろ? ただ少しだけ。努力を……丸山彩を信じて見る気になっただけだ」

『旭日君は……どうなのかしら?』

「信じる以前の話だ。俺にはないもの。ただそれだけだ」

 

 昔から面倒ごとは後回し。出来ないものは出来ない。出来るようにしないといけないものだけは出来るようにしてきた。丸山ほど俺は努力を積み重ねることは出来ない。だから……少しだけ羨ましいのかもな。

 

『遅くにごめんなさいね』

「構わないさ。暇つぶし程度になるならいつでも。家に居ればな」

『ありがとう。おやすみなさい』

「おやすみ」

『旭日君の詮索しないところ、好きよ』

「なに……切りやがった」

 

 アイドルが。ましては芸能人が一般人に言っていい言葉ではないだろう。

 

 まためんどくさいことを引き受けてしまった気もするが……まぁいいだろう。明日はいいライブが見れそうだ。

 

 軽く背伸びをして戻ろうとした時。

 

「誰かと電話していたの?」

 

 紗夜の声だ。

 

「まぁそんなところだ」

 

 こっちも眠れないのだろうか。

 

「夕は……明日行くのよね?」

「そうだが……気にしてるのか?」

 

 特に返事は返ってこなかった。まだわかりあうことが出来ていないことを考えると気になるのもわかる。

 

 ……日菜の音を聞こうとはまだ思えないよな。

 

「言っただろ? 少しずつでいいって。焦ったところでいいことはない」

「わかって……いるわ」

「だったらいい」

 

 ずっと見てきたからか。紗夜はどこか焦っている部分がある。そんな気がしてならない。しっかり見ていないと………いつの日か。母さんのように────。

 

「夕?」

「いや……なにかあったら言ってくれ」

 

 それだけ言い残して俺は部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は過ぎて昼過ぎ。俺は珍しく紘翔が来る前に家の外に出ていた。

 

 理由はとても簡単だ。朝から突撃してきた輩が1人居たからな。それはもう勢いよく。

 

『おはようー!! ライブの日だよ!』

 

 そんなことは言われなくてもわかってる。だがな日菜は事前に会場に入りするから朝から行くんだろうが、俺たち客が入れるのは昼過ぎなんだよ。

 

 とまぁ朝から叩き起こされた俺は再び二度寝して出かける1時間前に起きたわけだ。朝早くなければ起きることは苦ではない。

 

 スマホを見ると珍しく少し遅れるというメッセージが来てきた。普段待たせている側としてはなんの問題もない。

 

 

 

 

 

 

 

 ぼーっと空を眺めて5分が経過した頃。

 

「ごめん! 待たせたよね?」

「本来なら俺のセリフだ。問題ない」

「それもどうかと思うけど」

「確かにな。それじゃあ行くか」

 

 

 ここから会場までは歩きと電車で向かう必要がある。まぁ会場は駅から近いところにあるし問題ない。帰りだな問題は。

 

「紘翔は母親のライブとか観たことあるのか?」

「んー実は観たことはないんだ」

「意外だな。ライブ映像とか残ってないのか?」

「初回盤には付いてるとか……そんな感じだったかな?」

「萩野に聞いた方が早そうだが、面倒だな」

 

 アイドルという4文字を出すとこれでもかと食いついて来るからな。まるで大輝や今日見に行く麻弥みたいだ。マニアっていうのは話出すと止まらなくなる。

 

「観る機会があればいいな」

「その時は君もどう?」

「気が向いたらな」

 

 今日も他愛無い会話をしながら会場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 会場前

 

 さて……会場に着いたのはいい。だが想像以上の人混みに俺と紘翔は呆気に囚われていた。

 

「すごい人の数だね……」

「パスパレ以外のアイドルも出るからな」

 

 今までライブと言っても芸能人のライブではなかったからな。ここまで人が居るとは思わなかった。あちこちに俗に言うオタクと呼ばれる人たちが居る。法被を着たり、グッズを見せ合ったり、写真を撮っている人も居る。

 

 俺は特にハマっているものはないからな。聴いている音楽もアニソンが中心だが見ていなかったりするものがほとんど。こう言うのを好きな人からすると『にわか』と言うんだろう。

 

「関係者席でよかったのかもな」

「僕たちもファンだったら一般席の方が楽しいんだと思うけど……」

「身内や友達が出ているから来ているようなもんだしな」

「そう……だね」

「気にすることはない」

 

 こういうファンが居るからライブというのは成り立つわけだからな。なくてはならない存在だ。

 

 俺たち2人は関係者の方から会場へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 会場内

 

 関係者席へとやってきた俺たちは自分の席へと座り一息ついた。それとなく辺りを見ていた紘翔が話しかけてくる。

 

「テレビで観たことがある人が多いね」

「そう…なのか?」

「うん。僕もそこまで詳しくはないけど」

 

 言われてみれば見たことがあるような……ないような。アイドルのライブだからその家族とか友達が多いんだろう。

 

 いつかはここに……紗夜が来るんだろうか。それか同じステージに……いや、それはないな。紗夜がアイドルをやるとは思えない。

 

 可能性としてはこういう大きな会場じゃなくてライブハウスとかのステージとか。あとは………Roseliaがメジャーデビューとかならあり得るかもしれないのか。

 

「それはないか」

「なにが?」

「いや、こっちの話だ」

 

 紘翔とそんな話をしていると、ステージ以外が暗くなった。

 

 

 

 

─────☆

 

 アイドルのライブというのも相当熱気がすごいらしい。

 

 ステージや会場を見ながら旭日夕はそんなことを思った。

 

 ズレのないコール&レスポンス。事前に練習したわけではないはずなのに、まるで一心同体なのではないかと錯覚するほどだ。身内がアイドルでなければ一生見なかったであろう光景。

 

「こういうのもいいね。すごく楽しそう」

「曲によってはペンライトが一色になることがあったりして。すごいな」

 

 2人で思い思いのことを話しながらライブを鑑賞する。ペンライトを振る紘翔とは、違いじっとステージを腕組みしながら眺める夕。

 

「夕くんも振ればいいのに」

「いや、俺はいつもこのスタンスだからな。いつもと違う感じで面白い」

「(ペンライト振ってたらそれはそれで違和感があるかも)」

 

 ライブは順調に進み、そして───。

 

 

 

 

 

「みなさーん! こんにちはーっ!私達……」

「「「「「Pastel*Palettesです!」」」」」

 

 いよいよ出番が回ってきた。

 

「まずは1曲、聴いてください! しゅわりん⭐︎どり〜みん!」

 

 始まってすぐに前回とは全く違うことがわかる。演奏も。歌も。

 

 それはお客さんにも届いているらしい。さっきまでペンライトを振って声援を送っていたお客さんの中にコソコソ話している者が何人か見受けられたからだ。

 

「(相当、練習したんだろうな。初ライブがこういう大きな会場だと緊張するはずなのに、ちゃんと演奏できている。丸山はたまに音程外してる気もするが……)」

「(こんな大きい会場で堂々として歌えているのは、本当にすごい。………お母さんはどんな気持ちだったんだろう)」

 

 それぞれ思うところがある中、気づけば1曲目の終わりを迎えていた。その後のMCでは、ファンに前回の出来事を謝ると同時に自分たちがどういうキャラなのかをアピール出来た。そして2曲目へと続く───。

 

 

 

 

 

 

 思った以上の反響の中、Pastel*Palettesの出番は終わった。

 

─────☆

 

 会場 関係者席

 

「さてと。ライブも終わったことだし、混む前に帰るか」

「そうだね。そうだ、帰る前に楽屋には行かないの?」

「行けるものなのか?」

「たぶん……」

 

 行っても茶化されそうだしな。誰かとは言わないが。誰かとは。こういう時は感想だけ送ってさっさと帰るに限る。

 

「感想を日菜に送るが、紘翔は何かあるか?」

 

 スマホを渡すとぽちぽち文字を打っていく。俺はもう送る言葉は決まっている。こういう時はあれしかない。

 

「これでいいかな」

「わかった。……送ったぞ」

「早くない?」

「俺はたった一言だけだからな」

 

 メッセージを送信してからスマホをポケットにしまった。日菜が帰ってきたら少しばかり面倒なことになりそうだが……今日くらいは多めに見るとしよう。

 

 

 

 

 

『ライブお疲れ様。演奏も歌もすごく良かった! おかげで楽しいひと時を過ごせたよ。またライブがあったら絶対観に行くから』

 

 

 

 

『いいライブだった』

 

 




感情を表に出さない主人公が真顔でペンライト振ってたらとても怖そうですね笑

さて残りはハロハピだけになりました。
正直ハロハピと交流するのは結構難しいんですよね……。あっちこっち飛び回っているイメージなので。

とりあえずあと2話でバンドストーリーは完結。
ちなみに11話からやってるので34話使ってます笑

2023/2/3
気が向いたら次のを投稿します。
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