ガールズバンドに振り回される日常   作:レイハントン

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あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

レイハントンです。
かなり遅刻してしまいましたが、急遽季節ネタを書き上げたので投稿しました!
本編に全く関係ないわけではないのですが、こういうこともあったんだなと思ってくれれば幸いです。ちなみに元ネタはガルパの紗夜さんが言っていた前に一度除夜の鐘を聞きにいったことがあるという話です。

それではどうぞ


Special Episode
除夜の鐘


除夜の鐘

 

「夕。こっちの写真の整理、終わったわ」

「ありがとう。こっちももうすぐ終わる」

 

 今日は紗夜に手伝ってもらって母さんの溜めに溜めた写真の整理をしている。年別、日付別にしてもらったわけだ。写真もよりどりみどりだよ。母さんの中学時代のものから亡くなる直前までの写真。俺だけじゃなく、紗夜や日菜の写真。あとは父さんの写真。本当にたくさんだ。

 

「意外ね。おばさんならしっかり整理整頓しているかと思ったのだけれど」

「母さんはああ見えて、ガサツなところがあるからな。特に自分のことに関しては」

 

 撮り溜めた写真も例外ではない。おそらく撮って現像してはダンボールに入れていたのだろう。

 

 普通サイズのダンボールから何枚か写真を取り出して、後ろの日付を確認する。これは……。

 

「除夜の鐘を…聴きに行った時ね」

「そうだな。もう2年経つのか」

 

 取り出した写真は紗夜の言う通り、2年前に除夜の鐘を聴きに行った時の写真だ。今手に持っているのは最後に氷川家、旭日家のみんなで撮ったものだ。

 

「少し休憩するか」

「そうね」

 

 少しだけ。昔話をしようか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2年前。

 

 年末。一年の終わり。また、その年の決算や片付けを済ませ、来るべき年の準備をする期間。

 

 正直冬休みだと年末休みという感覚はない。よく母さんは年末休みだーと言っているが俺は学生だしな。

 

 正月。1年の最初の月。また新年を祝う諸行事や、行事の行われる期間だけをいう。

 

 アメリカでは1月1日だけ休みらしい。……正月の休みだけは短いんだなと思った今日この頃。

 

 みんなはどんな風に年末を過ごしているのだろうか。俺は毎年寝て年を越している。だから今年も……と、言いたいところだが。なにやら日菜が。

 

「除夜の鐘聞きに行こうよ〜」

「年越しは寝てたい」

 

 中学3年の年末。リビングのソファーに寝転んでスマホをいじっていると、突然日菜が現れてそんなことを言い出した。

 

 そしてなぜ俺も連れて行こうとしているのだろうか。おばさんたちと行くなら俺はいらないと思うんだ。決して行くのがめんどくさいわけじゃ……めんどくさいな。

 

「行くのは日菜だけじゃないだろ?」

「そうだよ? おじさんもおばさんも行くって」

「俺だけ留守番か。まぁ問題ない」

 

 それはそれで好都合だ。

 

「えぇ〜。1人でお留守番するの?」

「留守番というか俺は寝てる」

「ホント寝るの好きだよね」

「なんだったら今も眠い」

 

 まだ夜ご飯も食べてないが。いつでも俺は寝ることが出来るぞ。

 

 なんて言っててもな。日菜を突破しても最終的には母さんを論破しなければ俺は留守番をすることは出来ない。それはほぼ不可能だ。

 

「あんたも行くの」

「そうくると思った」

 

 なら最初から聞かなくてよくないか? と最近思うようになった。もうこれはあれだ。無意味なやり取りだ。かと言ってすぐ受け入れるのも嫌だな。

 

「今年くらいはいいじゃない」

「まぁ…今年くらいは」

「煩悩祓ってもらうといいわ」

 

 108個で足りなかったらどうしようとか思ったのはここだけの話。おそらく108個も煩悩なんてものは誰でもないと思う。

 

 結局夜遅くに神社に行くことになったわけだが……紗夜は。来るんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 時は過ぎてあっという間に出かける時間になった。ソファーの上でごろごろしていたら、若干というか。かなり眠くなってしまったな。いつものことなんだが……。たった1つの救いは珍しくお酒を飲んでいないから、母さんに絡まれることはなかったってところだけか。酔うと絡んでくるし。

 

「夕は準備出来たの? 寝転がってるけど」

「出来てる出来てる」

 

 行く前に着替えるのがめんどうだった俺はご飯を食べ、風呂に入った後。すぐに出かける服に着替えた。これでギリギリまでごろごろ出来るわけだ。

 

「じゃあお父さんと外で待ってなさい。すぐに行くから」

「わかった」

 

 流石に防寒着までは着ていられなかったので、家を出る前に防寒着だけ着た。中学で買わされるウインドブレーカーってやつだな。普段も割と中学校指定のジャージで居ることがほとんどだ。部屋着に着替えるのがめんどくてな……。土日は別だが。

 

 外に出るとすでに氷川家は集合していたらしい。

 

 もちろんそこには言い出しっぺの日菜。それと……あまり乗り気じゃない雰囲気の紗夜。

 

「こんばんは、氷川さん」

「こんばんは。今日は突然ごめんなさいね」

「いえいえ。たまにはいいものですよ」

 

 親同士の挨拶をよそに、日菜が俺の元へとやってきた。

 

「楽しみだね!」

「まぁ…少しは。寒いから早く帰りたいが」

「動けばあったかくなるよ?」

「そこら辺走ってこいと?」

「ゆーくんが走ってるところ想像出来ない」

「あのな。俺だって走ったりはするからな?」

 

 俺のことをいったいなんだと思ってるんだ日菜の奴。いくらぐーたらでも走らなければ行けない時。つまり学校を遅刻しそうな時くらいは走るぞ。それは間に合う時のみだが……。間に合わない時は諦めて歩く。

 

「お待たせ〜」

「揃ったし行きましょうか」

 

 旭日家と氷川家はこうして時折家族ぐるみで出かけることがある。楽しいと言えば楽しいのだが……。刺さるんだよなー。日菜と紗夜のお父さんからの視線が。もちろん何かした覚えはない。

 

「行こう! ゆーくん!」

「わかったから引っ張るな」

 

 本当に。いつも楽しそうだな。

 

「日菜。夕君を引っ張らないの」

「大丈夫よ。うちの子は頑丈だから」

 

 全然大丈夫じゃないんだが? 割と日菜の引っ張る力って強いから普通に痛い。なんて考えていると。

 

「おっと……!」

 

 日菜の足がもつれて倒れそうになった。それを間一髪なのところで俺が支える。

 

「いきなり走るからだ」

「えへへ〜ごめんなさーい」

 

 危ないと思ってないな。もっと気にしないといけないのに。あまりそういうことをやっているとだな。

 

 母さんたちの前を歩いていた紗夜がその先に居た俺たちの元にやってきた。

 

「日菜。さっきもお母さんに言われたばかりでしょう?」

 

 おばさん以上に厳しい人から説教されることになる。

 

「ごめんなさい。おねーちゃん……」

「夕に迷惑ばかりかけないでちょうだい」

「まぁまぁ。俺は気にしてないから大丈夫だ。……心配してくれてありがとうな」

「私は別に……」

 

 そう言うとそっぽを向いて歩いて行ってしまった。紗夜の気持ちはよくわからない。心配じゃなければいったいなんのだろう。

 

「あーっ。待ってよ〜おねーちゃん!」

 

 先に行ってしまう2人をじっと眺めながら歩く。

 

 なぜだろう。2人の背中が……ひどく遠く感じる。俺なんかより、優秀で。自分を持っている2人が。少しばかり羨ましかった。俺にはなにもない。才能もなにも。

 

 なにもしてこなかった自分が悪いと言えばそれまでだが。生きてきた中で自分に才能を見出せなかったんだ。

 

「夕! 2人と一緒に居てあげなさい!」

 

 ふとその場で立ち止まって後ろに振り返る。そう言う母さんはなぜか笑顔だった。冷やかしだろうか。

 

 それとも。いや……やめておこう。

 

「わかってるよ」

 

 それだけ言って俺は2人の後を追った。

 

 

 

 

 

 神社。

 

 割と遠くからでも鐘をつく音が聞こえていたが、こうして近いとさらに大きく聴こえてくるな。

 

「わ〜結構居るんだね〜」

「はぐれないようにするのよ」

「はーい」

 

 除夜の鐘を聴きに来る人は、割とたくさん居るようだ。一度見失ったら見つけるのは少し苦労するかもな。主に危ないのは日菜と……。

 

「ちょっとお父さん。すぐあちこち行かないで」

「いや〜珍しくてつい」

 

 普段仕事が忙しいからなんだろうな。こういう風に出かけることもあまりないからな。俺が言うのもなんだけど、親と子供みたいだ。

 

「ほーら。さっさと行くわよ」

「わかっているよ」

 

 俺たち3人も母さんたちの後を追った。 

 

 鐘のある所に向かう道中、ふと日菜が口を開いた。

 

「そういえばさ。除夜の鐘って108回以上つくところもあるんだって」

「らしいな。場所によるんだったか?」

「うん! ここの神社は108回だったけど」

 

 日菜の言う通りで、場所によっては108回以上鳴らすところもある。そもそも除夜の鐘ってなんなんだって思うよな。

 

 除夜の鐘は大晦日の夜に、寺院の梵鐘をつく日本仏教の行事の一つらしい。詳しい話をしてしまうと大変なことになるから、気になった人は一度調べてみるといいかもな。俺も出かける前に少し調べた。

 

 あとはそうだな。108回つくのなら、107回は大晦日について、残り1回は新年につくみたいだ。

 

 鐘の近くに来ると、俺たちと同じように見物客で溢れていた。ちなみに一般の人でも鐘をつけるところはあるらしい。

 

「音結構すごいね」

「そうだな。疲れそうだ」

「ゆーくんじゃ絶対無理だね」

「こればっかりは言い訳出来ないな」

 

 1回つくだけでも絶対大変なはず。俺だったら10回いかないくらいでギブアップだろうな。体力は少しばかり自信はあるが、筋力なんてほとんどないだろうと思う今日この頃。

 

 みんなで鐘の音を聞いている最中。俺はふと横目で紗夜に視線を向けた。

 

 いつもなら行くないと言うと思った。俺と同じように。理由までは違うと思うが、少なくとも行ってもいい理由があったのだろうか。

 

 まぁ……いいか。そんなことは。こうして3人で除夜の鐘を聴くことが出来ているのだから。

 

 視線を再び鐘に向ける。

 

「あけましておめでとうございます」

「あけましておめでとう」

 

 除夜の鐘を聴いているうちに、いつの間にか年が開けていたらしい。あちこちから新年の挨拶が聞こえてくる。俺たちの後ろに居た日菜も母さんたちと新年の挨拶をしているようだ。

 

「あけましておめでとう。今年もよろしくな」

「あけましておめでとう。こちらこそよろしくね」

 

 初めてか。1番初めの新年の挨拶を家族以外の人にしたのは。

 

「来年も。また来れるといいな」

「何事もなければ……ね」

「そうだな」

 

 本当に。人生というのは。なにがあるかわからないものだ。

 

「鐘もつき終わったみたいだし、帰りましょうか」

「そうね。さっきよりも冷えてきたし」

 

 言われてみればさっきよりも寒いような寒くないような。

 

 なんて考えていると、さっさと母さんたちが鐘を離れて行った。その後を追うように俺も歩き始める。そして───歩き始めた紗夜が段差か何かにつまずいた。

 

「あっ……」

「危なっ───」

 

 咄嗟に支えたのはいい。しかし、この状態だと。周りからは完全にハグをしているように見えてしまう。だからと言って突き放すわけにはいかない。

 

「大……丈夫か?」

「え、ええ……ごめんなさい」

 

 とても顔が近い。整った顔立ちに思わず目をそらしてしまった。いつの間にか、こんなに変わっていたことを俺はずっと気が付かなかったんだな。

 

 

 

 

 お互いの顔があったのは一瞬だった。

 

 

 

 

 それなのに。その一瞬の時間が……永遠に感じるほど長かった。

 

 

 

 

 

 幸いにも家族含めて周りには見られていなかったようだ。本当に一瞬だったしな。

 

 紗夜を離すと、足早にその場を離れて行った。

 

「らしくないな……」

 

 思わず離したくなくなってしまったのは。ここだけの話だ。

 

 最後は思い出したように母さんの持ってきていたカメラで写真を撮った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「日菜には引っ張り回されてたな」

「変わらないわね、日菜は」

 

 そう言うと、隣に座る紗夜は頭をそっと俺の左肩に乗せてきた。

 

「そうだな。……だからこそ、俺と紗夜は変われたのかもな」

 

 思い出を振り返るのも。たまにはいいな。

 

 写真をめくりながら、俺も紗夜に寄り添う。

 

 こうして。紗夜と一緒に居られる日々が過ごせるのだから。

 

 




主人公の母親のことはまだまだ情報が出てないですが、そのうちキャラクター一覧を作成しようと思うのでその時にでも。
そのうち本編にも話ができます。

少しだけ出てきた紗夜日菜のお父さんはちょっとだけ過保護なところがあるんですよー笑

さて次回は予定通り日常回投稿するのでぜひ読んでください!

それではまた次回。

ちなみにさよひな誕生日に向けてガルパで石貯めてます笑
あと1万個で目標に…!


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